Cover Artist | スキマスイッチ -前編-

フェンダーはやっぱりずっと憧れのギター

日本を代表するメロディメーカーとしてこれまで数多の名曲を世に放ち、2023年にメジャーデビュー20周年を迎えてもなお聴き手の琴線に触れる作品を丁寧に作り続けているスキマスイッチが、FenderNewsのCover Artistに初登場! インタビュー前編では、2人の音楽的な遍歴を辿りながら、フェンダーの魅力、そして10月に発売されたばかりのHighwayシリーズについて話を聞いた。

コードの響きと自分の脳がつながることが、ギター上達の一番の方法

──まずは音楽に目覚めたきっかけを教えてください。

大橋卓弥(以下:大橋) 最初に触れたのは母親のエレクトーンです。母親がエレクトーンを習っていて、家にありました。それを触ったりするのが好きで、そこからどうしてもクラシックピアノを習いたくて両親にお願いしたんですけど、何をやっても飽きっぽくてすぐに辞めちゃう子だったので、きっとピアノも続かないだろうからって習わせてくれなくて。どうしてもやりたくてずっとお願いしていたら、小学生になってやっとピアノ教室に通わせてもらえるようになりました。で、中学校では学園祭のテーマ曲を生徒が作ったりしていたので、“曲を作ってみないか?”と音楽の先生に言われたのが初めての作曲。それが中2の時です。あとは音楽の授業で、“大橋、みんなのお手本で前に出て歌ってみろ”とか言われて歌っていました。上手かったかどうかはわからないですけど、歌うことは好きでした。お手本をさせられていたので、先生から見て音程は外れていなかったと思うんですけど(笑)。

──最初に作曲した学園祭の曲はどうなったんですか?

大橋 全校生徒で歌いました。歌詞は別のクラスメイトが書いたので僕は作曲だけです。

──その曲は、7月に発売になった20周年記念のベストアルバム『POPMAN’S WORLD -Second-』には入ってないんですよね(笑)?

大橋 入っていないですね(笑)。全校生徒で歌ったのはその1回だけだったんですけど、それこそ僕がスキマスイッチとしてデビューしてから、その曲がまた歌われるようになり、今も学園祭とかで歌ってくれているみたいです。

──J-POPに目覚めたのはいつですか?

大橋 小学校の時は、いわゆるヒットチャートに出てくるアーティストを皆と同じように聴いていました。小学5〜6年生の時、父親の部屋にザ・ビートルズのレコードがあったので、それをこっそりと聴いたりしていて。元はと言えばビートルズなのかもしれないけど、それから当時はMr.Children、スピッツ、槇原敬之さんとか、父親の車の中でもCHAGE and ASKAやサザンオールスターズ、浜田省吾さんが流れていました。その辺がルーツになっているんでしょうね。中学生の時に街に初めてカラオケボックスができて、みんなで遊びに行って、そこで初めて自分の歌というものを意識しました。人より自分は歌えるのかもしれないって。

──ギターを弾き始めたのはいつ頃ですか?

大橋 僕は愛知県出身ですが、小学校の時に父親が中日ドラゴンズの応援歌「燃えよドラゴンズ」をフォークギターで弾いてくれて、弾き語りって面白いなと思って練習を始めました。初めて弾けるようになった曲は荒井由美さんの「ルージュの伝言」ですが、それも父親が持っていたフォーク大全集みたいな歌本を見て、コードが4つぐらいだったので弾けるようになりました。

──常田さんは?

常田真太郎(以下:常田) 高1の時のクラスメイトが、ピアノがめちゃくちゃ上手くてカッコいいなぁって思ったんです。それまで音楽に興味がなくて、音楽の成績もずっと2だったんですよ。中学はサッカー部で、高校では柔道部に入りました。柔道部は本当に女の子から認知されていなくて。ただ、2学年上の先輩ですごく人気のある方がいて、その方が軽音楽部に入っていたんですよ。で、これだ!とすごく短絡的に思ってしまいました(笑)。そのピアノが上手いクラスメイトに“ピアノを教えてもらえる?”ってお願いして、休み時間とかに音楽室でピアノの手ほどきを受けたのがきっかけです。で、その彼からコードというものがあると聞いて、たどたどしく弾くんですけど、ちゃんと伴奏になったんですよ。“すげー!”ってなって。結局、その彼とバンドを組むことになるんです。で、高校3年生になった時に、これまた奇遇なんですけど、僕も文化祭のテーマソングを担当するんですよ。

──え! テーマソングな二人ですね(笑)。

常田 僕は卓弥みたいに素養がないので、周りに助けてもらいながらでしたけど。作詞作曲と何となくアレンジをして、みんなに弾いてもらいました。今思えばそれが最初のアレンジャーとプロデュースの体験ですね。

──それは柔道部もやりながら?

常田 兼部しながらですね。で、高2の1月か2月に、軽音楽部の冬ライヴをやったのが最初のステージでした。

──誰の曲を演奏したのですか?

常田 ユニコーンでした。他のライヴではユニコーン以外もやろうと言って、シャ乱Qの「シングルベッド」とかもやりましたね。

──結果、女子にはモテましたか?

常田 モテましたね(笑)。一応、チョコとかもらいました。兼部してよかったです(笑)。

──文化祭のテーマ曲は、今どうなっているんですか?

常田 文化祭のたびに後輩たちがカヴァーしてくれて、歌ってくれているみたいですね。ただ、『POPMAN’S WORLD -Second-』には収録されていないです(笑)。

──(笑)。大橋さんのギターの練習方法を教えてください。

大橋 僕の場合は歌を歌うためのギターなので、ギタリスト的な練習はしていないです。運指練習はやったりしますけど、とにかくひたすら歌いながら弾いていました。ある程度のコードは知っていますが、テンションコードとなるとあまりわかっていなくて。学生の頃から“この曲ってどんなコードなんだろう?”と耳コピしていたので、知っている曲は基本的に自分のキーに変えれば、コード譜がなくても弾けるんです。それはやっぱりよく聴いていたからで、その響きと自分の脳がつながることが、ギター上達の一番の方法なんじゃないかなと思います。早く上達するという意味では、いろいろなコードを耳コピして、とにかくたくさんの曲を弾いてみるのが一番じゃないかなと思いますね。あとは、気づく時があるんですよね。例えば、ギターを始めたての人からすると、6本の弦でここにフレットがあって…って正直よくわからない仕組みじゃないですか? でも、この楽器がよくできているなと気づく瞬間が、僕も中学ぐらいの時にあって。1フレットが半音ずつ区切られているから、Amを半音ずらせばA#mになるという仕組みがわかると、コードを覚えるスピードが劇的に上がると思います。よくわからないまま弾くのもいいんですけど、“こことここが何度ズレてるんだろう?”とか、楽器の仕組みを覚えると上達が早いと思うんですよね。

──たしかに!

大橋 何もわからずに始めると覚えることがたくさんあるけれど、基本やセオリーを覚えれば、あとはその応用ですからね。

──スキマスイッチの曲で、ビギナーがカヴァーするとしたらどの曲がおすすめですか?

大橋 うちはとにかくコードが多いのでちょっと難しいんですけど、その中でもベストにも入っている「吠えろ!」はすごくシンプルで、コードも4〜5つ知っていれば弾き語れるので簡単かなと思います。

──鍵盤視点ではどうですか?

常田 鍵盤だと「吠えろ!」は大変だな。転調するまでの「雫」という曲がいいと思います。基本はCなんですよ。転調しちゃうと半音上がってややこしくなるんですけどね。コードの数も少なめなんですけど、ギターに関しては途中にバレーコードが出てくるんですよね。だから、うちらの曲はあまりコピーされないよね?

大橋 されないね…(苦笑)。

常田 コピーしてほしいですけどね。“コピーバンドをやってます”っていう子、めったに会わないですね。

Dreadnoughtは手軽に使えるし、バンドサウンドの中でも埋もれずに聴こえる

──フェンダーについてお伺いします。正直、大橋さんはフェンダーを弾いているイメージがあまりないのですが…。

大橋 そうですね。もちろん、フェンダーのギターは持っていますよ。ただ、最近は日本のクラフトマンに作ってもらったギターを使うことが多いから、僕にフェンダーというイメージはあまりないと思うんですけど、やっぱりずっと憧れのギターではありますよね。世界的に見ても名だたるミュージシャンが使ってきたギターなので。ただ最初はUSAのフェンダーは買えないから、違う国のものを買っていました(笑)。

──ここ最近だとAcoustasonic Player Telecasterを使ってくれていますよね?

大橋 はい。アコスタは家で作曲する時にずっと使っています。

──アコスタはどうですか?

大橋 めちゃめちゃいいと思います。やっぱり1本で、アコギとエレキに切り替えられるのはかなり大きいですよね。最近はアコスタを持って、一人で弾き語りをしている人が多いですね。例えばギター、ベース、ドラムの3ピースで、ソロを弾く時にエレキの音にしているのを見ると、どんどん使い手が出てくるだろうなって気がします。

──常田さんも実はギターを何本かお持ちだと聞きました。

常田 はい。ちなみに、ファーストギターは日本製のフェンダーですね。

──そうですか!

常田 19〜20歳の時でストラトです。

──なぜそれを選んだのですか?

常田 ギタリストの友達から譲ってもらったんです。エレキも弾いてみたい衝動があったので。ミスチルの「車の中でかくれてキスをしよう」だけ弾けたので、それをひたすら弾いていました。そのストラトを友達に貸していて、その友達が引っ越しちゃったんです。ギターの存在自体は確認しているのですが、まだ返してもらえていないです(笑)。

──今回、大橋さんにはHighwayシリーズのDreadnoughtを弾いていただきましたが、インプレッションをお聞かせください。

大橋 これこそ、弾き語りにめちゃめちゃ使いやすそうですね。ジャカジャカ弾いている時と、指弾きの時の音量差がしっかりとある。僕はあまりプリアンプとかシミュレーターを自分で用意して使わないので、Highwayシリーズはそれがギター1本でできる感じがあって、すごく便利だなと思いました。手軽に使えるし、バンドサウンドの中でも埋もれずに聴こえそうです。大体、アコギの音って消えちゃいがちで、アンサンブルの中で存在感を出すためにはかなり作り込まないといけないと思うんです。だけど、Highwayシリーズはアンプにぶっ差して弾いたら、チャキっと出てくる感じがあるので使いやすそうだなと思います。

──ネック周りはどうですか?

大橋 もちろん個人差はあると思うんですけど、みんなが弾きやすいと思います。厚み、太さ、幅もとても弾きやすいです。すごくオールマイティに作られている気がします。

──お持ちの他のアコースティックと比べて、優れている点を挙げると?

大橋 ツマミ一つで切り替えられるところ。あと、よりアコースティックギターを追求した機種なので、生音も意外と大きい。フルボディのアコギよりも、家で練習するのに使いやすいんじゃないですかね。

常田 これで練習すればアコギも弾けるようになる?

大橋 うん。なるだろうね。これいくらでしたっけ?

──15万円ぐらいです。※143,000円(税込)

大橋 ビギナーには難しいけど(笑)、買えない値段じゃないですね。10万円を超えるのが一つのハードルですが、利便性で言うとかなりいいんじゃないですかね。

常田:Vintera II 60s Stratocaster | 大橋:Highway Series Dreadnought

>> 後編に続く(近日公開)


スキマスイッチ
99年、大橋卓弥が自分の曲のアレンジを常田真太郎に依頼したのがきっかけとなり、スキマスイッチ結成。2001年、新宿・渋谷を拠点にライヴ活動を開始。2002年8月、AUGUSTA CAMP 2002千葉マリンスタジアムのサブステージに出演。観客30,000人の前でのパフォーマンスが好評を博し、以来、口コミが広がり着実にライヴの動員を増やしてゆく。2003年7月、1stシングル「view」でオーガスタレコード第一弾新人としてメジャーデビュー。2013年8月、デビュー10周年を記念した初のオールタイムベストアルバム『POPMAN’S WORLD~All Time Best 2003-2013~』をリリース。2023年7月5日にデビュー20周年ベスト『POPMAN’S WORLD -Second-』を、9月6日にテレビ番組『しまじろうのわお!』のために書き下ろした「コトバリズム」を配信リリース。11月25日(土)大阪城ホール、12月22日(金)日本武道館にて〈スキマスイッチ 20th ANNIVERSARY “POPMAN’S WORLD 2023 premium”〉を開催。
https://www.office-augusta.com/sukimaswitch

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