Cover Artist | 小林壱誓&穴見真吾(緑黄色社会) -後編-

フェンダーは現在進行形の楽器というイメージ

昨年末NHK『紅白歌合戦』に3年連続3回目の出場を果たし、勢いそのまま来たる2月19日にはニューアルバム『Channel U』をリリースする4人組バンド、緑黄色社会の小林壱誓(Gt)と穴見真吾(Ba)がFenderNewsのCover Artistに登場。インタビューの後編では、フェンダーを使い続けてきた2人にフェンダーの魅力を語ってもらった。さらに、2月19日にリリースする5thアルバム『Channel U』のギターおよびベースの聴きどころも聞いた。

海外でライヴをする時も、フェンダーのアクティヴベースがあれば安心なんです

──お2人ともフェンダーのギターとベースを使っていらっしゃいますが、ここまで使い続けてきたお2人にとって、フェンダーのイメージや魅力はどんなところでしょうか?

穴見真吾(以下:穴見) ヴィンテージもフェンダーの素晴らしいところだと思いながらも、最近は新しい楽器の研究具合というか、ニーズに対する応え方に改めてびっくりしています。僕が今、ライヴで使っている理由もそこで、現代のアンサンブル、ミックス、マスタリングの中で、どれだけおいしく聴こえるかがすごく考えられている。プロ目線というか、現場目線かもしれないけど、本当に使い勝手がいいから即戦力になる。たとえば海外でライヴする時に、アンプを含め普段使っている機材を持っていけないこともあるんですが、フェンダーのアクティヴベースがあれば安心なんです。エンターテイメントとして、ちゃんと成立する音を出しているところが素晴らしい。現在進行形の楽器っていうイメージですね。昔の素晴らしいヴィンテージにだけ頼っていないというか、そういうところにも胸を打たれますね。

──小林さんはいかがですか?

小林壱誓(以下:小林) 今日、フェンダーのAmerican Ultra IIシリーズを弾かせてもらってかなり印象が変わったんですけど、元々は個性が強いというイメージがありました。今使っている赤いTelecasterは歪ませた時のギラつき方はすごく気に入っているんですけど、いい意味でやんちゃなんですよ。そこをどう右手で制御するかみたいなところもあるんですが、そんなところも含めて長い付き合いなので自分が一番理解している。そういう愛着があって手放せない1本になっているというか。ただ、フェンダーのギターについて“個性が強い”と言っている人が周りにあまりいなくて。“フェンダーだったらどれを選んでも間違いないよ”みたいに言っている人が多いんですけど、逆に僕は個性の違いの良さを認めてあげたいと思っていて。

──好みのギターを探す面白さがあると。

小林 そうですね。本当にその人の好みでしかないと思うので、自分がやりたい音楽性とかバンド編成を考えて、どういうギターが必要なのか選んだらいいんじゃないかなって思います。単体でいい音が鳴りすぎるギターって、バンドに混ざると案外“うん?”ってなったりするんですよ。

穴見 確かに、単体で弾いていいやつと、混ざっていいやつってあるよね。もちろん、どっちもいいやつもあるけど、そうじゃないパターンってけっこうあるんですよね。

ここでもう一つ仕掛けないと音楽人生が充実しない

──ここからは直近の活動についてお聞きしたいのですが、2月19日にリリースする最新アルバムの『Channel U』はどんな作品になりましたか?

穴見 “これがリョクシャカの曲です”って胸を張ってリリースしてきた楽曲が9曲も含まれているので、緑黄色社会の歴史に残る必聴盤として完璧に仕上げたい気持ちがありました。その中で、アルバムとして没入できる要素がかなり大事だなと思って、いろいろ言葉を探していく中で『Channel U』っていうタイトルに辿りついたんですけど、“channel”ってもともとは水路を意味する“カナル”から来ているそうなんです。何かを運ぶものとか、道とか、語源としてはそういう意味がある。つまり『Channel U』って“道、あなた”という意味で、あなたにはいろいろな道があるんですよという気持ちとともに、僕たちにもこれだけの道ができましたというさまざまなストーリーを、インタールードを含む全17曲で表現しているんです。

──基本編成以外の楽器もふんだんに使いながら、塗りつぶされているように聴こえないバンドサウンドも聴きどころだと思いました。今回、ギタリスト、ベーシストとしてどうアプローチしていったのでしょうか?

穴見 生に聴こえるけど“実は打ち込みでした”っていう音楽が多くなってきた中で、生で演奏する意義やギターとベースという楽器を使う意味を掘り下げていくと、それだけでしか出せない音を出すことが自分も一番気持ちがいいし、聴いている側もちゃんとエンターテイメントとして受け入れられるんじゃないかって。今振り返ると、そういうものを模索した前作(『pink blue』)からの2年だったのかなと思います。打ち込みでは表現できないものという位置付けで、今回は楽器の音作り、フレーズ作りができたのかなと。だからこそ、基本編成外の楽器の音としっかり分離ができて、両方の音を活かせたんだと思います。

──その中でギターやベースの聴きどころは?

小林 1曲目「PLAYER 1」のリードギターですね。真っ直ぐな歪みとファズの成分を重ねているんですけど、この音色は最近なかなか聴けないと思います。最近のミニマムな音楽の作り方に対して、ギターの音だけは、“やっぱりギターにしか出せないよね”ってことを体現してる曲なんじゃないかな。

──「コーヒーとましゅまろ」もギターの音が前に出ていると思うのですが。

小林 そうですね。これは僕がDTMで作ったものにできるだけ近づける感じでレコーディングしたんですけど、リードのギターフレーズは家から持ってきた練習用の小さなアンプで録ったんです。本当にギターとアンプっていう、実際にそこにある物体でしか鳴らない音を異物として混入させる。そういう面白さも追求したいことの一つだったんですけど、結果的に小さいアンプってめちゃめちゃ音が抜けるんだなっていうことがわかりました(笑)。

──曲のいろいろなところで鳴っているリフやキャッチーなパッセージが、小林さんの得意技なんだとアルバムを聴きながら改めて思いました。

小林 得意技というか、僕がギターをギターと思っていないから鳴らせるフレーズなんだと思います(笑)。

──そこが前編でおっしゃっていた“ギターにハマっていない”という発言につながるわけですね。

小林 流れるようなというか、踊るような指使いに何の興奮も覚えないので、それに対するアンチテーゼじゃないですけど、そういう気持ちもちょっとあるんですかね。

──その一方で、穴見さんのベースは自由度の高いフレージングがアンサンブルの背骨として鳴っている印象があります。

穴見 基本的な立ち回りとしては、そうですね。リョクシャカは女性ヴォーカルであるぶん、ミックス的にベースが前に出やすいんですよ。それもあってベースで埋めやすい。だから(フレーズを)動かしたくなるんだと思います。

──そんな穴見さんの今回のベースの聴きどころは?

穴見 今回はスラップが多いですね。「PLAYER 1」は音源ではシンベなんですけど、ライヴでは生で弾いてスラップも増し増しにしようと思ってるんですよ。半分ぐらいの曲でスラップしているので、ベースキッズは必聴かもしれません。中でも「Monkey Dance」とか「馬鹿の一つ覚え」はぜひチャレンジしてほしい。実は今回、フレーズを作る時“もし自分が中高生だったら絶対にコピーしたくなる”という裏テーマがあったんですよ。

──3月8日からは〈Channel U tour 2025〉と題した全国ホールツアーが始まりますが、2025年の抱負を聞かせていただけますか?

小林 僕たちに期待してくれている人たちにとって、“ここからリョクシャカは何をするんだろう?”ってこれまでで一番気になってるだろうなと思います。僕ら的にも、ここでもう一つ仕掛けないと音楽人生が充実しないとも思っているし。だから、活動を止めずに、ずっとアクティヴに期待を裏切り続けることをしないといけない。外に外にという気持ちでやっていく予定ではいるんですけど、その一方で時代を作る音楽作りもしていきたいと思っていて。僕らにしかできないことはもちろん、見せ方だったり存在感をもっと大きくしていきながら、世の中にアプローチしていけたらいいのかなって思ってます。

──最後に、ギターおよびベースのビギナーにアドバイスを含めメッセージをお願いします。

小林 たぶん、最初の3ヶ月とか半年であきらめちゃう人もいっぱいいると思うんですよね。でも、そんな時は緑黄色社会の小林壱誓を思い出してほしいです(笑)。こんなでも10何年、バンドでギターをやってると思ってもらったら、ギターを続けるきっかけになるんじゃないかなと思います。

穴見 とりあえず、自分の近くにベースを置くようにしましょう。僕も学生の時は寝ながら手に取れる場所に置いていました。それはけっこう大事だと思います。練習していくと、指の形とか筋肉の作りとかが変わるので、楽器ってスポーツに近いところがあるんですよ。だから、全身の神経を張り巡らせて弾く努力をしたら、自然と適応して弾けるようになる。上手くならないとかあまり考えずに、時間をかけて弾き続けてみたらいいんじゃないかなと思います。

American Ultra II Telecaster(Avalanche) | American Ultra II Jazz Bass(Noble Blue)

>> 前編はこちら


緑黄色社会
愛知県出身4人組バンド。愛称は“リョクシャカ”。メンバーは、長屋晴子(Vo,Gt)、小林壱誓(Gt)、peppe(Kb)、穴見真吾(Ba)。2012年に結成。「Mela!」がストリーミング再生数4億回、「花になって」が同2億回、「キャラクター」「サマータイムシンデレラ」が同1億回を突破するなど話題曲をコンスタントに発表。2022年には初の日本武道館公演、2023年~2024年にかけてアリーナツアーを成功させるなど躍進を続けている。「NHK紅白歌合戦」3年連続出場(2022~2024年)、第65回日本レコード大賞優秀作品賞受賞(2023年/サマータイムシンデレラ)。2025年は2月19日にアルバム『Channel U』をリリースし全国ツアーを回る。
https://www.ryokushaka.com

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