Cover Artist | 石原慎也&秋澤和貴(Saucy Dog) -後編-

フェンダーの“まだまだ行けるでしょ”みたいなところが好きです

3ピースギターロックバンド、Saucy Dogが3年ぶりにFenderNewsのCover Artistに登場。その3年の間にNHK紅白歌合戦出演やアリーナツアーの成功を経て、大きな飛躍を遂げた彼らは現在も進化を求め続けている真っ最中だ。インタビューの後編では、フェンダーのイメージや昨年12月にリリースした最新ミニアルバム『ニューゲート』をひっさげ、全国を廻る〈Saucy Dog HALL TOUR 2025〉の意気込みを語ってもらった。


一音鳴らしただけで自分の中の世界が変わる

──インタビューの前編ではAmerican Ultra IIシリーズを試奏していただきましたが、後編ではお2人が初めて持ったフェンダーについて聞かせてください。

秋澤和貴(以下:秋澤) 僕は高校1年の時に買ったメキシコ製のPrecision Bassです。それまで別メーカーのベースを使って、足元にでっかいマルチエフェクターを置いてスラップしていたんですけど…。

石原慎也(以下:石原) 嘘つけ(笑)。

秋澤 ほんとにやってたよ。だって俺、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが好きだったから、練習して練習して、死ぬほど練習したのにちっとも上手くならないから、俺には無理だと思ったというか、自分には合わないと思って高校生の時にやめたんです。そのタイミングでザ・ビートルズを聴き始めたんですけど、ベースと言えばやっぱりフェンダーだろうと思って、見た目的にはプレベのほうが好きだったから、ゴールドトップのメキシコ製を買ってずっと使っていました。

──音と弾き心地も気に入っていたんですか?

秋澤 そうですね。思ったよりポンポンいうタイプのベースでした。フラットワウンド弦を張っているわけじゃないのに、フラットワウンド弦みたいな音がするところが僕はすごく好きで、高校を卒業してからもずっと使ってましたね。

──石原さんは23歳の時に買ったカスタムショップ製の白いTelecasterが初フェンダーだったそうですね。

石原 そうです。その時はギターを1本しか持ってなくて、サブがないと今後心配だから、もう1本ギターがあったほうがいいよと言われて、じゃあ買いに行こうかって思ったんですけど、まだ楽器とか機材とかそんなに興味はなかったから、正直何でもよかったんですよ(笑)。でも、フェンダーが一番有名だから、フェンダーのギターを買っておこうと思って、白というかクリーム色のTelecasterを買いました。ちょっとヴィンテージ加工されているギターで、音はハイが前に出て、下のふっくらした部分はちょっと薄いぐらいの感じでした。今でもたまにレコーディングで使いますね。

──それからフェンダーのイメージは変わりましたか? それとも変わらない?

秋澤 フェンダーのイメージですか。何だろうな? でも、他のベースにはもういけないかもしれない。僕の好きなベーシストも、フェンダーのベースを使っている人が多いんですよ。

──以前、秋澤さんはフェンダーのベースは弾き手に任せるところがあって、自由に音色を作れるとおっしゃっていましたが、その印象も変わらないですか?

秋澤 そうですね。その人を表すというか、そういうところはすごく好きですね。あと、見た目が好きなんですよ。ベースを探すとなったらやっぱり最初にフェンダーを見ちゃうので。やっぱり安定していると思います。

──石原さんはいかがですか?

石原 フェンダーってブランドを確立しているにもかかわらず、年々進化していると思いますね。

秋澤 それは俺も思ってるよ。

石原 自分に驕らずじゃないですけど、今の地位を別に気にしていないというか、むしろ“まだまだ行けるでしょ”みたいなところが俺は好きです。

──お2人にとってギター、ベースってどんな存在でしょうか?

石原 “腕”ですね。

──腕ですか?

石原 イベントとかでピンヴォーカルで歌うことがたまにあるんですけど、ギターがあるとないとでは体のバランスが違うというか。

──なるほど!

石原 腕ってなくなったら、たぶん歩くのが難しくなるじゃないですか。そういう感じというか、自分の体の一部みたいなところがありますね。ライヴをするとなっても、やっぱり持っていないと落ち着かない。

秋澤 慎也が腕なら、僕は“夢”だな。楽器を見ていると、ベースを始めた当時のことを思い出したり、好きなアーティストのことを思い浮かべたりするんですけど、一音鳴らしただけで自分の中の世界が変わるような気もして。それってたぶん、上手になってもあるんじゃないかなと思っていて。そういう気持ちをずっと忘れないって意味でも夢だと思います。

──ギターとベースを選ぶ時、お2人は何を重視しますか?

秋澤 僕は音ですね。あとはシグネイチャーモデルとか、誰がそれを使っているからという理由で手に入れることもあります。

──石原さんも音ですか?

石原 そうですね。自分に合う音、曲に合う音なのかと、すごい細かいところ、例えばボリュームノブのカーブとかで決めることもあります。見た目ももちろん大事ですよ。渋いギターがやっぱりカッコいいなとは思います。だからフェンダーの中でも、奇抜よりはAmerican Ultra II TelecasterのAvalancheみたいな色がやっぱり渋くていいなって思います。


好きじゃないとできないですよ

──4月9日から始まる計22公演の〈Saucy Dog HALL TOUR 2025〉の意気込みを聞かせてください。

石原 誤解を恐れずに言うと、ホールツアーはSaucy Dogの肌や音に合っていると思うんですよ。歌がまずポンッと飛んでくることを考えると。しかも、バラードがわりと多めだから響きもすごく大事だし、逆にアップテンポの曲もちゃんと受け入れてくれる感じもあって、その広がってくれるホールの感じがすごく俺は好きなんです。

秋澤 お客さんもホールツアーから入ってくれた人が多くて。着席してゆったり見てくれると、僕たちの曲の良さが一番伝わりやすい。そう考えると、やっぱりホールがいいのかなって思います。セットリストも、アリーナでやるぐらいの曲数はやると思います。

石原 うん。20曲とか22曲とか。

秋澤 しかも今回は全箇所2daysなんですよ。ありがたいことに、ホールツアーを廻るのは3回目なんですけど慣れないですね。初日はめっちゃ緊張すると思います。そういうことを乗り越えながら、ホールツアーはいつもしているんですけど。

石原 ね、頑張りましょう。ホールってシアター感が出ますよね。作品感が出るというか。

──なるほど。その作品感もSaucy Dogの音楽には合っていますね。

石原 僕もけっこうストーリー性のある曲を書いたりするので。

──今のところホールツアーで頭がいっぱいだとは思いますが、2025年はどんなふうに活動していこうと考えていますか?

石原 ホールツアーが終わったら、ちょいちょい曲を出してという意味では例年通りですけど、良い話も頂いてるので、制作しています。3〜4曲ぐらい、またいい曲が生まれそうです。

──おっ。

石原 いや、良い曲にしないといけないから、もう良い曲にします(笑)。

──楽しみにしています。最後にギターとベースのビギナーにアドバイスをお願いします。

石原 どんな曲でも半分のテンポから弾いてみたらいいと思います。

秋澤 え、ガチなやつ(笑)?

石原 クリックを聴きながら、テンポ100の曲だったら50から。50は言い過ぎだけどね。テンポ200の曲で、テンポ100から110、120、130と少しずつ上げていって、最終的に200で弾けるようにする練習方法があります。

──石原さんもそうやってきたんですか?

石原 やりましたね。

秋澤 俺も昔やってた。

石原 和貴は? アドバイス。

秋澤 そうだな。楽しい気持ちと好きな気持ちを忘れないことですかね。

石原 それ大事だな。

秋澤 もちろん、練習も大事だけど、それはその後についてくるって言うか。楽器が好きになったら、さっき慎也が言っていたことも面白いと思うんですよ。楽しいとか好きって気持ちはそういうところにつながってくると思うし、楽器に対しても愛着が湧くと思うから、初心者にはそういうところで自分の世界を広げていってもらえたらすごくいいんじゃないかなって思います。好きじゃないとできないですよ。

石原 続かないよね。

秋澤 あとはもう、ほんとに1人でも楽しく家で弾けるようになれば上手になると思います。

石原 あとは高いギターを買え、だな。簡単にやめられなくなるから(笑)。

American Ultra II Telecaster(Avalanche) | American Ultra II Jazz Bass(Noble Blue)

>> 前編はこちら


Saucy Dog
2013年結成。メンバーは、石原慎也(Vo,Gt)、秋澤和貴(Ba)、せとゆいか(Dr,Cho)。メンバーチェンジを経て2016年度 MASH A&RのオーディションでGP受賞。2017年5月、初の全国流通作品である1stミニアルバム『カントリーロード』をリリース。代表曲「シンデレラボーイ」「いつか」の MVは再生回数それぞれ1億回を突破、さらに楽曲ストリーミング総回数は16億回を突破。大規模アリーナツアーの成功や大型ロックフェスへの出演などライブ活動も勢力的におこなっており、2022年には、NHK紅白歌合戦に出演。2024年12月18日、8thミニアルバム『ニューゲート』をリリース。2025年4月より〈Saucy Dog HALL TOUR 2025〉を開催する。
https://saucydog.jp

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