Cover Artist | Rei -前編-

フェンダーは伝統を守りつつ、それを壊して進化していく姿勢がカッコいい

今回、Cover Artistに登場するのはシンガーソングライターのRei。4歳でギターを始め、ブルーズやクラシックロックのエッセンスを取り込みながら、現在進行形のオルタナティヴロックを鳴らし続ける彼女は、フェンダーのギターとどのように出会ったのか。前編では、フェンダーとの出会いはもちろん、自身のお気に入りのギターで、1980年代前半にUS製で展開されたシリーズであるInternational Color Stratocaster®️を、今年日本製でリイシューされたばかりのMade in Japan Limited International Color Stratocaster®と弾き比べながら、その魅力について、たっぷりと語ってくれた。

ギターを自分好みにカスタマイズしていくのが楽しくて仕方がなかった

──Reiさんとフェンダーの「出会い」は?

Rei 私は4歳の時に、当時住んでいたアメリカのニューヨークでギターを始めました。その時はテレビでギターを弾く女性を見て“I want that!(私もあのギターが欲しい!)”とおねだりして、クラシックギターを買ってもらったんです。5歳になると、当時通っていた学校のビッグバンドでジャズブルーズを演奏するようになりました。エレキギターを弾くようになったのもその頃ですね。それは子ども用に作られた、めっちゃ小さいショートスケールのエレキギターだったんですけど、家にあったフェンダーのStratocaster®︎も触っていました。今も使っている、ネックがLead IIでボディがイングヴェイ・マルムスティーンモデルという合体したギターがあるのですが、そのネックの出所のLead IIもアメリカにいた当時に触れたギターの一つです。

──それが小学生の頃ですか…。

Rei 当時はスモールボディのスチューデントモデルを好んで使っていて、その頃にLead II とStratocasterのハイブリッドを工房に出して作ってもらったり、火事場から救出していい感じに燻されたダフネブルーのDuo-Sonicを、小学生の女子感覚でめっちゃキレイにリフィニッシュしたり(笑)、自分の体や好みに合わせてどんどん改造していました。
幼い頃から絵を描いたり色を塗ったりするのが好きだったんです。その延長線上で、ギターを自分好みにカスタマイズしていくのが楽しくて仕方がなかった。ルールもわからずにやっていたことなのですが、むしろルールがわからないからこそ大胆なカスタマイズもできたように思います。

──子どもの頃からさまざまなギターに慣れ親しんだReiさんから見たフェンダーの特徴とは?

Rei フェンダーは“エレキギターのパイオニア”だけあって、総合的な基準が高いと思いますね。テレキャスター、ストラトキャスター、ムスタング、ジャズマスター…他のメーカーのリファレンスにもなったデザインはどれも斬新ですし、ネックの厚みや木材へのこだわり、フレットの操作性などすべてが計算されている。さらにそこにピックアップやコンデンサーなど独自のエレクトロニクスを搭載することで、他にないサウンドを築き上げた。しかも、それが年々改良されて進化しているんですよ。どの部門をとっても画期的だなと。

──変わらず引き継いできた伝統と、日々変化していく革新性の両方を兼ね備えているというか。

Rei 毎年新しいモデルを精力的にリリースされているじゃないですか。Acoustasonicにしてもフィッシュマンと共同開発をしているし。International Colorシリーズで言えば、ディマジオのようなものすごくパワーのあるピックアップが登場した時に、それに対抗する形でパワーのあるピックアップに改良したと聞いたことがあります。伝統を守りつつ、それを壊して進化していく姿勢がカッコいいなと思いますね。

フェンダーの好きなところの一つとして、カラーリングは外せません

──では、Reiさんが所有しているそのInternational Color Stratocaster Monaco Yellowについてもお聞かせください。

Rei 70年代から80年代にかけてのフェンダーギターって独特の音がするんですよ。その時代特有のスペックがサウンドに反映されていると思うんですけど、それがまず1本欲しくて。それからこのかわいいカラーリングですよね。フェンダーの好きなところの一つとして、カラーリングは外せません。創設した頃はアメ車のカラーからインスパイアされたという逸話も素敵ですし、しかもこのInternational Colorは色に都市の名前がついているんです。いろんな意味で魅力的に感じて一昨年、ストラトの名手であるコリー・ウォンとコラボする際に購入しました。
コリーとの楽曲「BPM」のレコーディングでも弾きましたし、東京ゲゲゲイさんとのコラボ曲「CRAZY! CRAZY!」のMVでも使用しています。私が持っているのは81年モデルですが、このInternational Colorシリーズ自体が1年半弱くらいしか生産されていない、希少かつ短命なタイプ。ローズ指板で、それも珍しいので気に入っていますね。

──色もいい感じで焼けていますよね。ものすごく深みのある黄色だと思います。

Rei はい。あとはこの激重アッシュボディ。70年代の日本では“重いギターのほうがいい”みたいな風潮もあったと先輩方から聞いたこともありましたし、実際に重いからこそ出るサウンドもあると思うんですよ。ブリッジに搭載されているX1というピックアップですが、鋭利でパワフルな音色なんです。硬くて重くて、でも明るくて、ちょっとJazzmaster®︎にも通じるようなところがありますね。一人で弾くというよりは、アンサンブルの中で引き立つギターなのかなと。

──最近、日本製でリイシューされたMade in Japan Limited International Colorと弾き比べた感想は?

Rei いい音がしますね。指板がメイプル素材なのでその違いを若干感じますが、オリジナルモデルが持っていた個性はしっかり受け継いでいます。倍音の出方というか…1時間くらい噛んだガムの音がするといいますか(笑)。
ボディがバスウッドなので、その違いがどのくらい出るかな?と思っていたんですけど、気にならないし、プレイアビリティ的にはこのくらい軽いほうが弾きやすいですよね。 3点留めのネック、ラージヘッド、マイクロティルトやブレットトラスロッドの部分はこのギターの特徴で、そこもちゃんと踏襲されていていいなと思いました。カラーリングも、もともとは7色展開が、今回のリイシューでは5色ですが、モロッコレッドにモナコイエロー、マイアミブルー、どれもすごくいい色なんですよね。トーキョーグリーンとか作ってほしいです(笑)。

› 後編に続く(近日公開予定)

左:International Color Stratocaster(Rei私物) | 右:Made in Japan Limited International Color Stratocaster


Rei
卓越したギタープレイとヴォーカルを持つシンガーソングライター/ギタリスト。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターを始め、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1stミニアルバム『BLU』をリリース。2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる「TED NYC」でライヴパフォーマンスを行った。2021年2月26日、1stアルバム『REI』のInternational Editionが、US/Verve Forecastレーベルより全世界配信。同年10月よりコラボレーションプロジェクト“QUILT(キルト)”を始動。2022年9月23日(金)LINE CUBE SHIBUYAにて主宰イベント〈Reiny Friday -Rei & Friends- Vol. 14 “with QUILT friends”〉を開催。
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