Cover Artist | WurtS -後編-

打ち込み的な要素と、感情に訴えるようなサウンドを組み合わせた新しい音楽を作っていきたい

毎月注目アーティストを紹介する「Cover Artist」にWurtSが登場。インタビュー後編では、ドラマ『恋は闇』の主題歌として書き下ろした新曲「BEAT」の制作背景から、自身の音楽観の進化、そしてライヴへの思いまでを深掘りする。また、近年愛用しているフェンダーAcoustasonicシリーズの魅力や、ギターそして音楽に対する向き合い方についても、たっぷりと話を聞いた。

Acoustasonicはパッと閃いた時にすぐギターを持ってカタチにできる

──WurtSさんはフェンダーのAcoustasonicを2本お持ちなんですよね?

WurtS はい。充電式と電池駆動の両方を持っていて、普段はレコーディングや自分のデモ制作で使っています。僕にとって曲作りはギターから始まることが多いので、“すぐに弾いて録れる”ことはとても重要。Acoustasonicはアコースティックとしても使えるし、ワンタッチでエレキサウンドにも切り替えられる。デモの段階で“ここはアコギ、ここはエレキ”って感覚的に使い分けられるのがありがたいんですよね。しかも軽いのが最高なんですよ。重いと疲れるし(笑)、ちょっと手に取るのも面倒になってしまう。そういう億劫さがないので、パッと閃いた時にすぐギターを持ってカタチにできる。そこが一番大きいですね。

──なるほど。

WurtS アコギより音を抑えられるので、夜中でも気にせず弾けるし、そういう意味でも今の生活環境にすごく合っている1本です。

──新曲「BEAT」についても聞かせてください。ドラマ『恋は闇』の主題歌として書き下ろしたこの曲は、どんなアイディアから生まれたのでしょうか。

WurtS 「BEAT」というタイトルには“鼓動”という意味を込めました。テーマにしたのは、頭と心の関係性です。頭で考えることって、どうしても嘘をついたりごまかしたり、感情が出る前にいろんな処理が入る。でも、心はもっとストレートで、素直に感情が湧き出る場所なんじゃないかと思ったんです。例えば恋愛でも、心臓はドキドキしているのに“これは本当に恋なのかな?”って頭では迷っていたり。そんなふうに、心と頭のズレや距離みたいなものって、多かれ少なかれ誰しも感じることではないかと。今回の「BEAT」では、そうした心と頭の距離感が近づいたり離れたりする感覚を、サウンドで表現したかったんです。

──ドラマの世界観とはどのようにリンクしていますか?

WurtS 今回のドラマは“好きになった相手がもしかしたら連続殺人鬼かもしれない”という設定。それでもその人を好きでい続けられるか?というストーリーを見ているうちに、“恋愛ってそもそもミステリーなのかもしれない”と思ったんですよね。相手を信じたいけど、どこか疑ってしまう。そういう迷いや葛藤って、すごく人間的でリアルだなと。そういう意味で、ドラマのテーマと僕が「BEAT」で描こうとした“好き”という感情の揺らぎ、頭と心の不一致みたいなものが、すごく重なったと思っています。

──“ビースト”と“ビート”の韻も印象的でした。

WurtS そこも、まさにドラマの世界観から影響を受けた部分です。人って、自分のありのままをわかっているようでわかっていない。“自分って一体何者なんだろう?”という曖昧さを常に抱えているし、もしかしたら自分の中に“ビースト”──つまり怖い一面や、見せたくない部分があるのかもしれない。そういう不安や葛藤から、「BEAT」という言葉や表現が自然と出てきたんだと思います。

──ギターサウンドも印象的ですが、そのあたりのこだわりについても教えてもらえますか?

WurtS 僕は今、エモーショナルなギターサウンドと打ち込みによる無機質なトラックがバランスよく融合されたサウンドスケープに惹かれていて、「BEAT」でもそこを強く意識しました。楽曲の中に異なる要素が混じり合った時の、ちょっとした違和感や緊張感が、ドラマを見た時の“この先どうなるんだろう”というワクワク感ともうまくつながった気がしていますね。

純粋な気持ちを大切にしながら安心して一歩を踏み出してほしい

──2025年もそろそろ折り返し地点ですが、今後の展望についても聞かせてもらえますか?

WurtS 音楽面では、今お話ししたような打ち込み的な要素と、感情に訴えるようなエモーショナルなサウンドの両方を組み合わせ、新しい音楽を作っていきたいという思いがあります。ライヴに関しても、最近は“初めて見に来ました”という方がすごく増えてきていて。だからこそ、“WurtSってこういうアーティストです”というのをしっかり伝えられるステージにしていきたいと思っていますね。ギターで言えば、ただ演奏するだけでなく、録音したフレーズをリバース(逆再生)したり変調をかけたりといった、より実験的な音作りにも踏み込んでいきたいです。

──では最後に、これからギターを始めたいと思っている人に、メッセージやアドバイスがあればお願いします。

WurtS 今は本当に環境が整っていて、YouTubeをはじめ教材や情報もたくさんあるし、ギター自体もすごく進化して昔よりずっと弾きやすくなっている。不可能に感じることが、どんどん減ってきていると思うんですよ。だからこそ、“この人みたいになりたい”“この曲を弾いてみたい”という純粋な気持ちを大切にしながら安心して一歩を踏み出してほしいです。 僕自身、いわゆるテクニック重視ではなくて、楽曲もシンプルなコードで成り立っているものが多い。例えば、もっとも多くの人に聴かれている「分かってないよ」という曲も、コードは三つしか使っていません。もちろんテクニックがあるに越したことはないし、それはそれで素晴らしい。でも、それ以上に“どう見せるか”とか“自分の個性をどうギターで表現するか”という部分のほうが大切だと思っています。僕もそうやってギターと付き合ってきたし、ぜひ気負わずに、自分のペースで楽しんでほしいですね。

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WurtS
2021年、本格始動。作詞・作曲・アレンジ、アートワークや映像に至るまで全てをセルフプロデュースする、21世紀生まれのソロアーティスト。その楽曲は、ダンスミュージックを軸に、ロック、ヒップホップ、ソウル等、ジャンルの垣根を超えた独自のポップミュージックとして日々変貌を遂げている。同年3月、1stデジタルEP『檸檬の日々』をリリース。2022年、日本テレビ系『バズリズム02』の恒例企画「今年コレがバズるぞ!BEST10」で第1位を獲得。2025年4月30日、新曲「BEAT」を配信リリース。
https://wurts.jp/

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