Cover Artist | tricot -後編-

バンドをずっと続けてきて良かった

日本のみならず海外からも高い評価を得ている4人組バンド“tricot”から、中嶋イッキュウ(Vo,Gt)、キダ モティフォ(Gt,Cho)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba,Cho)がCover Artistに登場。インタビュー後編では、昨年開催したヨーロッパツアーの話題から今年のバンド活動について、またAmerican Vintage IIシリーズをどんな人におすすめするかなど多岐にわたって語ってもらった。

「不出来」はヨーロッパツアーの影響を受けている

──最近の活動について聞かせてください。2022年9〜10月のヨーロッパツアー〈WALKING × WALKING TOUR 2021-2022〉はどうでしたか?

中嶋イッキュウ(以下:中嶋) 楽しかったです。海外ツアーはライヴしている時は楽しいんですけど、それに付随するロングフライト、待ち時間、乗り換え、移動が年齢的にもキツくて(笑)。だけど、海外の人たちに生の音を届けたり街並みを見るのはすごく好きで、ネガティヴな要素とポジティヴな要素がとんとんだったんです。今回は4年ぶりの海外だったのですが、その国の事情とかいろいろある中で、それでもライヴというポジティブな場所を楽しみに来てくれる人たちがいるのが嬉しかった。もう、ポジティヴが爆上がりしちゃいました。もっと行きたいなぁとか、行かなあかんなって思えるツアーでした。

キダ モティフォ(以下:キダ) すごく久しぶりに行ったのにも関わらず、たくさんの人が来てくれたことにまずは驚いたのと、久しぶりにコロナ以前と変わらないぐらい声を出せるライヴをして、純粋にめちゃくちゃ楽しかったですね。しかも、以前よりもお客さんが増えて、それがなぜなのかわからないんですけど、励みになったし単純に自信にもなりました。

ヒロミ・ヒロヒロ(以下:ヒロミ) 私も行く前は不安のほうが大きかったんですけど、お客さんが以前よりも増えている感じで、全会場がほとんどソールドアウトで。

中嶋 もともとの会場が早く売り切れたので、会場のキャパを広げたらそこもソールドアウトして。

ヒロミ ツーマンと聞かされていたんですけど、蓋を開けてみれば半分くらいワンマンだった。対バンがいてもうちらがメインなので、絶対にtricotを見に来てくれているわけで、そんな人がこんなにも遠く離れた国にいることがびっくりやし嬉しい。しかも海外の人って“もう最高!”とか“めっちゃ好き!”みたいな感情を惜しげもなく伝えてくれるのですが、それが本当に幸せで。バンドをずっと続けてきて良かったなって改めて思いました。

──プレイヤーやバンドとして、ヨーロッパツアーでどのような影響を受けましたか?

中嶋 それこそ帰ってきてすぐにレコーディングで、10月10日くらいに帰ってきて、10月中に完パケなのに未完成の曲が7曲くらい残っていたんですよ。私も帰ってきた次の日からジェニーハイのレコーディングがあったりして、3人でレコーディングをしてくれている間に私がラジオに行ったり、誰かが別の仕事をしている間に私が歌を録ったりと、寂しかったです。この間まで毎日一緒やったやんみたいな(笑)。そんな中、何とか時間を合わせて完成させたのが「不出来」という曲で。その時は記憶もないくらい忙しないレコーディング期間だったのですが、出来上がったものを聴いたらツアーの影響を受けているのかなって。特に「不出来」は、ちょっとUKっぽい感じを受けていると先輩(キダ)と吉田さん(吉田雄介)が言ってました。

キダ ヨーロッパツアーから帰ってきてゼロイチで作った曲なので、無意識にそういうモードになっていたのか。ジュクジュクしたギターを弾きたいモードでできた曲だったので、気づかないうちに影響されていたのかもしれないですね。

──影響と言えば、tricotに影響されてバンドを始めた方も多いと思います。ビギナーがカヴァーするのにおすすめの曲は?

中嶋 私は「MATSURI」です。ヴォーカルギターとしてもバンド全体としても、バンドの絆を深めるのならば「MATSURI」かな。この曲だけは、冷静にマイクスタンドの前に立って離れずに弾いていたらめちゃくちゃダサイと思うので。ヘタクソに演奏するのも魅力の一つなので、“上手く弾かなければいけない”という訳でもない。あとはギターがめちゃ簡単です。バーン!って弾くだけなのでオススメですね。

キダ 私は「アナメイン」ですね。tricotは単音で弦を一本またいで弾くようなフレーズが多いんです。「アナメイン」はわりとそれがあってtricotらしさもある。シンプルにフレーズがカッコ良いので、弾いて気持ち良くなってほしいです。あと、後半の盛り上がりをぜひバンド全体で感じてほしいなと思います。

ヒロミ ベース的には「おやすみ」がいいと思います。曲調的にはゆったり目で難しくはないのですが、ゆったりやからこそテンポ感を気にしているんです。サビはルート弾きですけど、Aメロなど細かいところを聴くと、ギターやドラムとの兼ね合いの勉強にもなる。あと、コーラスもやっているのでベースコーラスをやる人にもいいですね。

最初からいい音で弾くことは上達への一歩につながる

──さて、2023年はここから先どんな動きですか?

中嶋 とにかくライヴをいっぱいやっていこうと思います。コロナ禍もあって制作ばかりしていたので。

──そんな中、〈爆祭Vol.15~イッキュウ爆誕祭~Vol.19でやれよな〉の内容が発表されましたね。

中嶋 はい。5月27日でジェニーハイとのツーマンです。

──イッキュウさん大変じゃないですか?

中嶋 大変なのかなぁ。でもワンマンだと思えば。

キダ 中嶋のワンマン。

中嶋 ワンマンで後ろだけ変わると思えば。立ち位置は違いますけど。

──(笑)。ライヴの意気込みを。

中嶋 絶対的なファンの人たちだと、どちらも好き!と言ってくれる人はたぶん少ないと思うんですよ。“ジェニーハイはポップすぎて好きじゃない”とか、その逆も然り。そんな人たちが一箇所に集まるとどうなるのかなって。ライヴを見て“無理!”と思うか“え?めっちゃカッコいい!”と思うか気になりますし、ちょっと緊張もしますね。ホームなはずやのにアウェイな気もしますね。だから、どう見せたらどっちもよく見えるのかなと。ジェニーハイとして出る時は“tricotに負けへんように頑張ろう”と思って、tricotで出る時は“ジェニーハイ潰したろ”と思ってやろうと(笑)。

──ぜひライヴでもこのAmerican Vintage IIシリーズを弾いてほしいです。最後に、American Vintage IIシリーズはどんな人におすすめかコメントをお願いします。

中嶋 これって本当のヴィンテージを買うよりもお手頃なんですか?

──お手頃ですよ。リアルヴィンテージが出た頃の新品の状態を再現したシリーズなので。

中嶋 ヴィンテージにすごく興味があるけれど、手が届く人ってごく一部だから。音に対しての憧れがあってそこにはまだ到達できひんけど、いい音を出したいって人に使ってほしい。そういう人たちからすると、ヴィンテージを買うほどのハードルはないと思うので、すごく素敵な商品だなと思います。

ヒロミ 私みたいにヴィンテージに触れてこなかった人には、ぜひ一度鳴らしてみてほしいですね。特に若い人でいきなりヴィンテージを買う人は少ないと思うので、若い人にもどんどん鳴らしてほしいなと思います。

中嶋 自分がヴィンテージギターを初めて買った時の動機が、いいものを自分のお金で買うことで気合いを入れる。American Vintage IIシリーズはヴィンテージを買うよりも手に入りやすいとは言え、気合いを入れて買う値段だとは思うので、いい音を出してさらに自分を高めていってもらえたら嬉しいなと。

ヒロミ American Vintage IIシリーズのベースを持っていたら、とりあえず一目置かれるんじゃないかなと思いますね(笑)。

──確かに、目立つと下手できないので頑張りますもんね。

ヒロミ そうなんですよね。しかもどんどん機材愛も強くなっていきそうな気がするので、そういう愛情が湧くとモチベにつながると思います。

──締めはキダ先輩!

キダ いい音がする楽器って弾いているとめちゃ楽しいし気持ちがいいので、気づいたらずっと弾きたくなると思うんです。こういうギターを使っていると自然と上達する気がするので、最初からいい音で弾くことは上達への一歩につながる気がします。

──インタビュー前もずっと試奏なさっていましたよね。

キダ そうですね。ずっと弾きたくなる音でした。もちろんビギナーだけじゃなくて、太くて丸い音が好きな人、渋い音を出したい人にもオススメです。

ヒロミ:American Vintage II 1954 Precision Bass | 中嶋:American Vintage II 1951 Telecaster | キダ:American Vintage II 1972 Telecaster Thinline

>> 前編はこちら


tricot
2010年9月1日、中嶋イッキュウ(Vo,Gt)、キダ モティフォ(Gt,Cho)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba,Cho)とともに結成。直後に自主レーベル、BAKURETSU RECORDSを立ち上げる。展開の予測できない独特でスリリングな楽曲と、エモーショナルな力強さと心の琴線に触れる繊細さを併せ持つヴォーカルが絶妙にマッチし、唯一無二の世界観を生み出している。2014年以降は、欧米、アジアに活動の幅を広げ、現在までに109公演を成功させた。2015年に2月にはイギリスのNME.COMで特集記事が組まれ、同年4月にはアメリカのRolling Stone.comの「あなたが知るべき10組のニューアーティスト」に選出。2017年11月15日吉田雄介(Dr)が加入。 2019年、メジャーデビューの決定とavex/cutting edge内にプライベートレーベル「8902 RECORDS」設立を発表。同年9月25日のメジャーデビューシングル「あふれる」のリリースを経て、2020年にはアルバムを2枚リリースするなど精力的に活動を続け、2021年に入ってからも有観客ワンマンライブ「サイレントショー 秘密」を東京、大阪で開催。2022年には最新アルバム「不出来」をリリース。国内のみならず海外でも注目度が急上昇中のロックバンド。
https://tricot-official.jp/

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