
Cover Artist | ASIAN KUNG-FU GENERATION -後編-
Custom Shop製のPrecision Bassの音を出した瞬間に違いがわかった
結成30周年を迎える2026年も精力的に活動を続けるASIAN KUNG-FU GENERATIONが「Cover Artist」に登場。後編では、メンバーそれぞれがフェンダーを意識するようになった原体験を振り返りながら、楽器選びやサウンドの変遷を語ってもらった。さらに、滞在型音楽制作スタジオ「MUSIC inn Fujieda」で制作された最新作『フジエダ EP』、そして新曲「スキンズ」に込めた音作りの意図にも迫る。
「おかえりジョニー」のメインフレーズは自分のStratocasterで弾きました
──皆さんがフェンダーを意識したきっかけは?
喜多建介(以下:喜多) デビューして1〜2年経った頃、2005年頃だったと思うんですけど、フェンダーのStratocasterとTelecasterをほぼ同じタイミングで買いました。その後はレコーディングでもよく使っているし、今も現役です。Telecasterと言えばキース・リチャーズ、Stratocasterはジョン・フルシアンテのイメージが強いですよね。自分の普段のサウンドとは少し違う味なんですが、そういう音が欲しい時に自然と手に取るギターですね。例えば『フジエダ EP』のリード曲「おかえりジョニー」のメインフレーズは、自分のStratocasterで弾きました。
後藤正文(以下:後藤) 最初は楽器メーカーのことなんて、まったくわかっていなかったんですよ。奨学生の頃、新聞配達をしていて、お正月にボーナスのようなものをもらって。それを持って立川駅南口の質屋に行って、アンプとセットで19,800円のStratocasterタイプを買いました。ビデオで見ていたギターの形がそれだったから、“これが正統派なんだろう”と思って。形だけでずっとフェンダーだと思い込んでましたね。でも大学に入って“それ、フェンダーじゃないよ”と言われて(笑)。その後、キャリアの途中でStratocasterとTelecasterを購入して、ソロ活動やレコーディングでも使ってましたね。個人的にはStratocasterのほうが好きです。Telecasterのジャリッとした硬さも魅力ですけど、自分はもう少し甘い音のほうが好み。今もStratocasterを1本持っていて、自宅やスタジオで弾いています。
山田貴洋(以下:山田) 大学時代、先輩に“ちゃんとしたベースを買ったほうがいい”と言われて。『Bass Magazine』を見ながらお茶の水の楽器屋さんへ行って、目の前にあったオーソドックスなサンバーストのJazz Bassを選びました。その後、もう一本Jazz Bassを購入して、アジカンのデビューが決まるくらいの頃から、『ソルファ』くらいまではそのジャズベだったと思います。ただ、ギターの音圧に対して少し弱いかもしれない、という話が出てきてPrecision Bassを試しに行ったら、最初に弾いたCustom Shop製のPrecision Bassの音を出した瞬間に違いがわかって。いい楽器って、ちゃんと音がいいんだなと。その場でほぼ即決でした。
伊地知潔(以下:伊地知) フェンダーの存在をはっきり意識したのは大学1年生の頃ですね。実は、自分が最初に買ったドラムがレッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスモデルだったんですよ。そこから“ジョン・フルシアンテはどこのギターを使っているんだろう”と調べて。それでフェンダーのStratocasterを使っていることを知って、“このクリーンの音、めちゃくちゃいいな”と思いました。
──新作『フジエダ EP』についても聞かせてください。ギターやベースの音作りも含めて伺いたいのですが、今作はすべて滞在型音楽制作スタジオ「MUSIC inn Fujieda」でレコーディングされたそうですね。一つのコンセプトでもあったのでしょうか。
後藤 もともとインディーズミュージシャンを支援するためのスタジオなので、“ここでどんな音が録れるのか”を自分たちの作品で示せたらいいなと思ったんです。いわばカタログのように、“こんな音で録れますよ”“全部MUSIC inn Fujiedaで録りましたよ”と提示できる作品にできたら、と。
──実際にやってみて、音の印象はいかがでしたか?
後藤 ドラムはとにかく良かったですね。天井が高くて、音響設計もしっかりしているので、残響が本当にキレイに録れる。情報量が多いんです。デッドなスタジオとは明らかに違っていて、“こんなに違うんだ”と自分たちも驚きましたね。同時に、いいスタジオができたなという安堵もありました。
伊地知 改めて音の反射の重要さを実感するレコーディングでしたね。吸音が強い空間だとドラム本体の音しか録れないんですけど、適度に反射があると部屋鳴りまで含めて録れる。あの空間でしか出ない音があるんです。価格帯はインディーバンド向けですが、僕らの音源を聴いたら、プロのドラマーでも“ここで録りたい”と思うんじゃないかな。それくらいのクオリティだと思います。
喜多 ギターに関しては、4曲それぞれでしっかり音のバリエーションも出せたし、いい音が録れたと思います。『フジエダ EP』を聴いて、“MUSIC inn Fujiedaで録ってみたい”と思ってもらえたら嬉しいですね。
山田 ドラムの音がいいと、その上に重なる楽器の音も自然と良くなるんだと感じました。鳴りがしっかりしているから、ベースも無理なく前に出てくる。今回は特別に違う楽器を使ったわけではないんだけど、いつもよりレンジが広く、クリアに録れた印象がありますね。自然とそういうミックスに導かれたというか。MUSIC inn Fujiedaは、本当にポテンシャルのあるスタジオだと思います。
後藤 American Professional Classicのギターとベースも、将来的にはMUSIC inn Fujiedaに常設して、若い子たちが触れられるようにできたらいいなと思っていて。他メーカーしか持っていない子が初めてフェンダーを弾くとか、キャラクターの違う一本に出会うとか、そういう体験があれば面白いですよね。もちろん僕らも使いたいですけど(笑)。
毎日楽しくて、つい弾いてしまう。その状態こそが上達への一番の近道
──4月にリリースされる新曲『スキンズ』は、どのような経緯で制作された曲なのでしょうか。
後藤 TVアニメ『Dr.STONE SCIENCE FUTURE』 第3クールオープニングテーマとして話をいただいたのがきっかけです。ちょうど自分たちが作ろうとしていた方向性と重なる部分があって、いくつかあったデモの中からこの曲を選びました。社会に対する視線を含んだ少しシリアスな歌詞だけど、ビートはダンサブルにして。パーカッションにはダルブッカというアラブの打楽器を使いました。日本のダルブッカ奏者の方を紹介してもらって、一緒にレコーディングしました。
喜多 デモの段階で、ゴッチが組んでいたリズムがすでに普通のビートとは違っていて、ダンサブルになる予感がありました。メロディや歌詞も固まっていて、テーマも明確だった。今回はゴッチがギターのイメージまで具体的に伝えてくれたので、“こういう譜割りでこういうフレーズを”というところから広げていって。Aメロの裏で入っているカッティングなど、普段あまりやらないアプローチもあって、ディレクションで入ってくれたシモリョー(下村亮介)と相談しながら細かく詰めていきました。デモには80年代のニューウェーブっぽいニュアンスもあったんですけど、それをアジカンらしいサウンドに落とし込んでいった、という流れですね。
──最後に、これから楽器を始めようと思っている人にメッセージをお願いします。
後藤 楽器は“何でもいい”というわけではないと思っていて。やっぱり、ある程度ちゃんとしたものを持ったほうがいい。そう考えると、フェンダーは入り口としてすごく優秀ですよね。価格帯の幅もあるし、比較的手の届きやすいモデルでも充分いい音がする。僕みたいに質屋で買うと、結局あとで買い替えることになる。いい1本に出会って、それをずっと触り続けるほうがいい。毎日楽しくて、つい弾いてしまう。その状態こそが上達への一番の近道です。
喜多 今は本当に情報が多いですよね。YouTubeの「弾いてみた」動画なんて、僕らの頃にはなかった。正直うらやましいし、自分も見ちゃいますから(笑)。取っ掛かりはたくさんある時代なので、まずは楽しみながら始めてみるのがいいんじゃないかな。
伊地知 楽器って、続かない人のほうが多いと思うんですよ。最初は誰でも挫折するし。もしバンドをやるなら、ドラム、ベース、ギターと、とりあえずいろいろ触ってみるのもアリ。僕も実際触ってみて、“ドラムが合ってるな”と分かったし、あとは、やめられない環境を作ることですね。バイトしてスタジオ代を払うとか、僕みたいに厳しい部活に入るとか(笑)。ある程度まで行けば、本当に楽しくなる。一生続く趣味にもなります。
山田 楽器の音や、普段聴いている音楽の中で、“自分はどんな音が好きなんだろう”と意識して聴いてみるのも大事だと思います。自分にとって気持ちいい音がわかると、“その音を出したい”という気持ちが自然と練習につながる。楽器店で試奏してみる、借りて弾いてみる、とにかく“いい音”に触れること。演奏技術ももちろん大事だけど、音色も同じくらい大事だと思いますね。

American Professional Classic Telecaster | American Professional Classic Stratocaster | American Professional Classic Jaguar | American Professional Classic Precision Bass
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左から、シャツ ¥41,800、スウェット ¥29,700、アウター ¥41,800、ジャージージャケット¥35,200、テーラードジャケット ¥59,400(すべて税込)/F IS FOR FENDER(エフ イズ フォー フェンダー)
ASIAN KUNG-FU GENERATION
後藤正文(Vo,Gt)、喜多建介(Gt,Vo)、山田貴洋(Ba,Vo)、伊地知潔(Dr)からなる4ピースロックバンド。1996年に大学の音楽サークルにて結成。2003年にミニアルバム『崩壊アンプリファー』でメジャーデビューを果たし、翌年の2ndアルバム『ソルファ』でオリコンチャート1位を獲得。エモーショナルなメロディと骨太なギターサウンドで日本のロックシーンを牽引してきた。自主企画フェス〈NANO-MUGEN FES.〉の開催や、数々のアニメタイアップでも広く知られる。2025年5月に両A面シングル「MAKUAKE / Little Lennon」をリリース。2026年3月25日にEP『フジエダ EP』をリリース。結成30周年となる2026年4月4日(土)5日(日)には有明アリーナにて〈30th Anniversary Special Concert “Thirty Revolutions”〉を開催。ジャカルタ、中南米を含むワールドツアーも決定している。
https://www.asiankung-fu.com/
Text_Takanori Kuroda
Photo_Kazumasa Kawasaki

