Stratocaster 70th Anniversary Special Event “The Hitmaker” with Nile Rodgers

バーナード・エドワーズと結成したバンド“シック”で大ヒット曲を次々と世に送り出し、デヴィッド・ボウイ、ダイアナ・ロス、マドンナ、ミック・ジャガーなど、錚々たるアーティストたちの作品プロデュースも手掛けてきたナイル・ロジャース。そんな彼の貴重なトークとギタープレイを堪能できる〈Stratocaster 70th Anniversary Special Event “The Hitmaker” with Nile Rodgers〉が開催された。シグネイチャーモデル、Nile Rodgers Hitmaker Stratocasterの購入者を対象としたミート&グリートも行われた、本イベントの模様をレポートする。


どんどん練習して、自分のスタイルを見つけて、追求し続けることが大切

9月20日に大阪で開催されたナイル・ロジャース&シックの単独公演、9月22日の〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN〉への出演のために来日していたナイル・ロジャースが、Fender Flagship Tokyoにやってきた! MCの井手大介による興奮気味の紹介から、大きな拍手と歓声で迎えられたナイルは満面の笑みを浮かべて観客に挨拶。「昨日の大阪でのライヴも素晴らしかったよ。9月19日が僕の誕生日だったから、ステージ上で祝ってもらったんだけど、突然スティーヴィー・ワンダーの『Happy Birthday』が始まってびっくりした。次の曲はダフト・パンクの曲の予定だったからね(笑)」と語った。


イベントの序盤で紹介されたのは、少年時代のエピソード。フルートとクラリネットの演奏から音楽人生をスタートしたあとに、手にしたのがギターだったのだという。

「60年代後半はプロテストミュージックが盛んだったんだよ。クラリネットでそういう音楽をやるのも変だろ(笑)? それでギターを弾き始めたんだ。クラシックの教則本を見ながらベースラインを弾くところから始めて、そのあとにコードも弾き始めたら全然上手くいかなくてね。“おかしいな?”と思ったら、そもそもチューニングが間違っていた。ある日、僕がザ・ビートルズの『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』らしき何かを弾いているのを母の友人が聴いて、“おい、チューニングが違うぜ”って」


微笑ましい思い出を振り返った彼は、Stratocasterとの出会いも語った。

「バーナード・エドワーズと一緒だったバンド“ニューヨーク・シティ”で『アイム・ドゥーイン・ファイン・ナウ』とかを演奏していた頃だね。当時の僕は大きいボディのジャズギターを弾いていたんだけど、僕らと同じステージに出演した別のバンドの小僧が使っていたのがStratocasterだった。僕と同じアンプで鳴らしているのに、ものすごく良い音でびっくりしたよ」

そして、Stratocasterとの出会いは独自のプレイスタイルの確立にもつながった。

「その小僧はチャッキング(カッティング)しかしていなかったんだけど、度胆を抜かれた。当時の僕はフレディ・グリーンのようなジャズギタリストのスタイルだったんだよね。“俺もチャッキングしてみようかな”と思ってやり始めたのが、僕の世界を一気に変える決定的な出来事となった。当時の僕がやっていたバンドはポップスの他にジャズもたくさんやっていて、チャッキングを取り入れたアレンジをしてみたら、バンド全体のエネルギーが変化したんだ。楽しさが溢れ出る感覚だったよ」

話した内容を演奏で度々補足していたナイル。Nile Rodgers Hitmaker Stratocasterを奏でる姿からは、ギターが大好きでたまらない様子も伝わってきた。


「チャッキングのスタイルを確立するためには、クリーンに弾く必要があると僕は考えたんだ。だから、1本の弦を使って単音で弾き続ける練習を延々と繰り返した。そして気づいた。“単音弾きのチャッキングで曲が書けるじゃないか!”と。そういう発想でやり続けて行き着いた曲の一つが、例えばダフト・パンクの『ゲット・ラッキー』だね。僕のStratocasterのプレイの秘密も教えてあげよう。ボリュームをフル10では弾かないで、ほんのちょっと下げる。8.5くらいなのかな? それによって優しい、セクシーな音色が生まれるんだよ」

名曲に関するエピソードも観客を大いに沸かせていた。最初に紹介されたのは、シック「エヴリバディ・ダンス」の誕生秘話。

「仕事がなくて、家で曲を作っていた時に思い浮かんだのが『エヴリバディ・ダンス』だった。《Everybody dance, do-do-do Clap your hands, clap your hands》の《clap your hands》の部分のコードが気持ち良くて歌っていたら、バーナード・エドワーズが“《do-do-do》って何?”って聞いてきたんだ。“《La-La-La》と同じ意味だよ”と答えたら、バーナードは “じゃあ《La-La-La》にしようよ”と言ったけど、僕は譲らなかった。“《La-La-La》の時代はもう終わった。これからは《do-do-do》だよ”って(笑)。そんなやり取りのあとにバーナードが弾き始めたベースが、本当に素晴らしくてね。そこから僕らの曲作りのパートナーシップが始まったんだ」


続いて飛び出したのは、デヴィッド・ボウイ「レッツ・ダンス」に関するエピソード。

「誰かの曲をアレンジする時は、僕が気に入るまで徹底的に手を加えるんだ。『レッツ・ダンス』もそうだった。最初にデヴィッドが聴かせてくれたのがものすごくつまらなくて、全然踊れる気がしなくて(笑)。テンションノートを加えてみたら一気に洗練されたけど、今度は響きが暗いのが気になった。そこで半音上げてみたら明るい響きが生まれたけど、もうひと味欲しくて1オクターブ上げた。その結果、急激にファンキーになったんだ。テンションノートを活かすやり方は、シックの『My Forbidden Lover』なんかもまさにそう。緊張と開放の兼ね合いは、まるで映画や物語みたいなものだよ。テンションはエモーションを生むんだ」


イベントの終盤では、72歳の誕生日を迎えたナイルをサプライズで祝福。シグネイチャーモデルのNile Rodgers Hitmaker Stratocasterを模したケーキがステージに運ばれてきた。ボリュームノブの目盛りがフル10から少し下げられた状態も再現するなど、ディテールのこだわりがすごい。大喜びした彼は、観客へのメッセージでイベントを締めくくった。

「もしも音楽、楽器が好きならば、とにかくやる、やる、やる。その積み重ねが大事だ。音楽は心を癒してくれる。僕は自分の中で思い浮かぶ曲にも癒してもらっている。楽器を始めたばかりの人も、とにかくどんどん弾くことだ。僕もチャッキングと出会ってから猛練習した。どんどん練習して、自分のスタイルを見つけて、追求し続けることが大切。そうすれば良い音楽人生を送れると思うよ」

柔和な笑みを浮かべて、ウィットに富んだジョークも度々交えながらStratocasterや自身の軌跡について存分に語ったナイル・ロジャース。彼が世に送り出した名曲の数々が、ますます愛おしく感じられるイベントだった。

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