King Gnu Dome Tour「THE GREATEST UNKNOWN」

King Gnuが2024年1月〜3月に全国5大ドームツアー〈King Gnu Dome Tour「THE GREATEST UNKNOWN」〉を開催。2023年11月に発表したアルバム『THE GREATEST UNKNOWN』を引っ提げたこのツアーは、全9公演・約38万枚のチケットがソールドアウト。そんな偉業を成し遂げたツアーのうち、1月28日(日)東京ドーム公演の模様をフェンダー機材に注目しながらレポートする。

選曲、洗練された演出、サウンド構築に至るまで一切の妥協なし。日本中に見せつけたKing Gnuの現在地

会場が暗転すると、割れんばかりの拍手と歓声がこだまする。この日、東京ドームに集まったのは約5万5000人。その心をKing Gnuはたった4人でつかんで離さなかった。

ステージに設けられたスクリーンにオープニング映像が流れたのち、「SPECIALZ」でライヴは幕を開ける。本公演で数々の楽器を持ち替えた常田大希(Gt,Vo)だが、最初に手にしたのはカスタマイズを施した赤色のAmerican Acoustasonic Telecaster。歪ませても音が潰れず鋭さを保ったギターサウンドが、勢喜遊(Dr,Sampler)による強靭なドラムと相まって観客の気分を高揚させる。

新井和輝(Ba)は、シンセベースを用いた場面以外はLimited Deluxe Jazz Bass V Kazuki Arai Edition(2-Color Sunburst)を使用。音の立ち上がりが速く、新井のエネルギッシュなプレイを実直に表現する本機。「一途」では一音一音が明瞭に響いて、うねるようなグルーヴを生み出していた。

井口理(Vo,Kb)が“今日は盛り上がれよ!”と煽ると、「千両役者」をはじめ最新アルバムの収録曲を次々と披露。火柱が立つ中で演奏された「Stardom」では観客が合唱し、会場のボルテージはどんどん上がっていく。ここで常田はギターをDaiki Tsuneta Swingerに持ち替え、エッジが効いた抜け感のあるサウンドを鳴らした。

開始早々から圧巻のパフォーマンスを展開した彼らだが、ライヴはまだ序章。アルバム1曲目の「MIRROR」が流れる中、映像とインスタレーションを駆使した幻想的な演出でファンの目を釘付けにすると、「カメレオン」や未発売曲「Vivid Red」、代表曲の筆頭「白日」を披露し、勢いを増していく。最初のMCで井口は、本公演が映像収録されていることを明かす。

「今回は初の5大ドームツアーじゃないですか。まさかここまで来れるとは俺らも思ってなかったんだよ。みんなのおかげで来れてさ。それが収録されるわけでしょ。俺らの演奏もそうだけど、みんなの歌ってるいい顔が、デカい声が、揺れてる体が映像に残って。俺らは100年後、もう生きてないかもしれないけど、その先に見知らぬ人が今日という日を(映像で)観て、こんな最高だったんだって思うかもしれないじゃないですか。だから、今日は力貸してくれませんか? ここにいる全員が映像の中に生きてるって、夢あるでしょ。伝説を作りましょうよ!」と煽った。

「2 Μ Ο Я Ο」で常田は新たに白くカスタマイズされたAmerican Acoustasonic Telecasterを使用。シャープだが広がりのある鳴りがアンビエントなアンサンブルに溶け込む。しかし、続いて披露した初期の楽曲「Vinyl」では一転して硬質で鋭いサウンドに。ギターを持ち替えることなく両極端な音色を奏でられるのはAcoustasonicならではだが、セレクターはPosition3にセットされFishmanアンダーサドルトランスデューサーにFishman Acoustasonicエンハンサーをフルでミックスした状態になっていた。本人曰く「音に立体感が出る」という、このギターにおいて最もアコースティックなトーンをエレクトリックギターとしてアンプとペダルで歪ませて使うのが常田サウンドの秘訣。

また、新井のLimited Deluxe Jazz Bass V Kazuki Arai Editionによる粘りのあるサウンドがファンキーなノリを創出。手を上げ一体となる客席を見て、4人も満面の笑顔で演奏していた。

暗転後に再びステージが照らされると、ステージ中央に椎名林檎の姿が。サプライズゲストの登場にざわつく中、常田が主宰するプロジェクト・millennium paradeとのコラボ曲「W●RK」が披露される。艶やかで突き抜けるような椎名の歌声と4人のアグレッシブなサウンドが融合し、観客を魅了。歌い終えた椎名は颯爽と立ち去った。

2ndアルバム『Sympa』収録曲を披露したセクションでは、新井のベースが存在感を発揮。「Slumberland」では荒々しくメリハリのある音色が轟き、「Sorrows」では歌うようなベースラインとふくよかなサウンドが楽曲の疾走感を加速。勢喜のドラムソロから始まった「Flash!!!」では、タイトな低音と細やかなフレーズの相乗効果でアンサンブルを躍動させた。

常田がDaiki Tsuneta Swingerを軽やかに奏でる中、井口はライヴが後半に突入したことを告げる。そこでフロアを煽ろうと試みるが、“楽しんだもん勝ちだぞ”を噛んでしまい笑いが起こる。クールな演奏とは対照的な人懐っこさが会場を和ませた。不思議なことに、そうやって偶発的に生まれたアットホームな空気もパフォーマンスに活かされていく。「BOY」では4人が演奏するリアルタイムの映像と、この曲のMVに登場した子役たちがメンバーに扮して演奏する映像が交互に流れる粋な演出があり、会場は温かなムードに。続く「SUNNY SIDE UP」「雨燦々」ではよりハートウォーミングな空間となっていき、その中で常田によるDaiki Tsuneta Swingerの凛としたサウンドが響きわたっていた。その後、アルバムの終盤と同じく「仝」「三文小説」「ЯOЯЯIM」の流れを経てエンドロールが映し出され、本編は締めくくられた。

アンコールで常田は“今回はアルバムのツアーだから、普段と違う始まり方で普段と違う終わり方をしたけど、アンコールはKing Gnuを代表する2曲をやります”と宣言。“この2曲って、大勢でみんなで歌うことを考えて曲を作ったわけよ。だからさ、今日すごい歓声をもらったんだけど、それの十倍くらいの声でみんなで歌ってみませんか?”“5万5000人、限界まで歌って全部のエネルギーを置いて、そしてまた明日からお仕事頑張ってください”と語りかけた。

新井はアンコールで、ヴィンテージナチュラルカラーのLimited Deluxe Jazz Bass V Kazuki Arai Editionを使用。全音域バランスが取れた音色は「Teenager Forever」においてプレイのニュアンスを素直に表現していた。また、「飛行艇」では柔らかなベースサウンドが雄大なアンサンブルを支える。本人曰く「サンバーストよりこっちの方が少し腰高な音」とのことで、早いパッセージやエフェクトを駆使する曲ではヴィンテージナチュラルカラーの使用頻度が高いようだが、どちらにも共通するアクティブでありながらのパッシブのようなナチュラルなトーンがこのモデルの特徴だと感じた。アンコール2曲ではこの日一番のボリュームで観客が大合唱。ファンに後押しされるようにメンバーの演奏もヒートアップし、最後は4人で中央に集まりジャンプ。そしてバンド名が画面に映し出されるという、ドラマチックなクライマックスを迎えた。

最新アルバムの楽曲を軸に、初期の曲や代表曲を幅広く取り入れた今回のセットリスト。時にダイナミックで時に優美で、緩急を付けた展開は観客を魅了し続けた。会場の後方まで届くサウンドにもこだわりが感じられたが、そこにフェンダーのギター/ベースが貢献していたのは間違いない。選曲、洗練された演出、サウンド構築に至るまで妥協がなく、King Gnuが日本の音楽シーンを牽引する存在であることを多角的に知らしめるライヴとなった。

【SET LIST】
1. SPECIALZ
2. 一途
3. 千両役者
4. Stardom
5. MIRROR
6. カメレオン
7. DARE??
8. Vivid Red
9. 白日
10. 硝子窓
11. 泡
12. 2 Μ Ο Я Ο
13. Vinyl
14. W●RKAHOLIC
15. W●RK
16. ):阿修羅:(
17. δ
18. 逆夢
19. IKAROS
20. Slumberland
21. Sorrows
22. Flash!!!
23. BOY
24. SUNNY SIDE UP
25. 雨燦々
26. 仝
27. 三文小説
28. ЯOЯЯIM

ENCORE
1. Teenager Forever
2. 飛行艇


King Gnu:https://kinggnu.jp/

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