春畑道哉 MICHIYA HARUHATA LIVE AROUND at Billboard Live 2024 SPRING HAS COME season3

春の恒例行事となりつつある春畑道哉のビルボードライブ。3年目を迎えた今回の〈MICHIYA HARUHATA LIVE AROUND at Billboard Live 2024 SPRING HAS COME season3〉は、過去2年の編成と異なり全公演を通じて同じメンバー編成でステージに立つという新たな試みとなった。ビルボードライブでお馴染みのメンバー、宮崎裕介(Pf)、遠山哲朗(Gt)、初参加のSAYAKA(Violin)、3人のサポートプレイヤーとともに演奏を届けた公演のうち、3月16日(土)1stステージの模様をレポートする。

ダイナミックなアーミングを交えつつ、エネルギッシュなフレーズを放つMichiya Haruhata Stratocaster III


フードやドリンクをゆっくりと楽しみながら過ごしていた観客。会場の落ち着いた雰囲気が、とても心地良い。そして迎えた開演時間。客席内の通路を通ってバンドメンバーの宮崎裕介、遠山哲朗、SAYAKAがステージに向かったのに続き、春畑道哉が登場するとスタートを待ちわびていた人々の拍手がひと際高まった。

ガットギターを演奏した1曲目「Adios」のあと、春畑が手にしたのはMichiya Haruhata Stratocaster Heavy Relic by Jason Smith。日本人ギタリストとして初めてのシグネイチャーモデルを発売した彼に、Stratocasterはやはりとてもよく似合う。マスタービルダーのジェイソン・スミスが製作したこのギターは大切な愛機の一つで、1950年代のStratocasterを彷彿とさせる2カラーサンバースト、ヘヴィレリック加工が施されたアッシュボディ、リバースのラージヘッドが凄まじい存在感を放つ。

このギターを使用した2曲目「EAGLE FLY」ではクリーンとクランチをフットスイッチで的確に切り替えつつ、ピッキング、フィンガリングの多彩なニュアンスも交えて生み出した音色は、とても豊かな表情を浮かべていた。彼のギタープレイは“歌っているかのよう”と表現されることが多いが、まさしくこの言葉が相応しい。チョーキングとビブラートも多用するプレイスタイルと、このStratocasterのサステインの相性も素晴らしい。名機と名手のコンビネーションは、客席で耳を傾ける我々に至福のひと時を届けてくれた。

「ようやく春が来た感じですね。もう花粉がつらい。ずっと涙目で声も変な感じです。でも、ギターは大丈夫なので安心してください(笑)」


ウィットに富んだMCのあと、オリジナルカクテル“Sparkling Heaven”のグラスを掲げて観客と乾杯。そして演奏したのは、もちろん「Sparkling Heaven」。この曲以降も、2カラーサンバーストのStratocasterはメインギターとして大活躍した。

「Native Dance」はHighwayシリーズのDreadnoughtで演奏スタート。情熱的なカッティングプレイ後に響かせたメロディが華麗だった。このギターは、独自設計の内部構造によってボディサイズから想像される以上の有機的な箱鳴りを実現している。リードプレイにも適した音色を、春畑は最大限に引き出していた。Highwayシリーズを使用したのは序盤のみで、素早く2カラーサンバーストのStratocasterに持ち替えて放った旋律が、観客の軽快な手拍子を誘った。


「LIFE」を披露したあと、TUBEとGACKTによるコラボ曲「サヨナラのかわりに」の制作エピソードに触れつつ、「今年のTUBEは久しぶりに甲子園ライヴをやります。9年ぶりの甲子園です。横浜スタジアムは8月24日」と今後の活動について語った春畑。「Love Song」は歌心に溢れたギタープレイで彩る旋律が心地良く、続く「I feel free」はバンドメンバーたちとキメのフレーズを何度も交わしながらドラマチックに展開。4人のコンビネーションの良さを強く実感させられた。


春畑のピアノとSAYAKAのヴァイオリンで披露された「Angelic Smile」。4人編成に戻って演奏した「花鳥風月」ののち、再び迎えたMCタイムでは4月13日に開催されるJ1リーグ第8節FC町田ゼルビアvsヴィッセル神戸にて、31年ぶりに国立競技場で「J’S THEME(Jのテーマ)」を演奏する旨が語られた。ヴィッセル神戸にはテーマソング「WE ARE ONE」を提供。町田ゼルビアは彼の地元のチームと、縁の深い2チームの試合で演奏できることを大喜びしていた。

本編を締め括った「JAGUAR’13」で使用されたのはMichiya Haruhata Stratocaster III。ダイナミックなアーミングを交えつつ放ったフレーズがエネルギッシュで、照明を浴びて輝いたCaribbean Blue Transのボディも鮮烈な印象を残してくれた。

アンコールを求める拍手と歓声に応えてステージに戻ってきた春畑は、6月30日(日)までFender Flagship Tokyoで開催されるStratocaster70周年の特別展示について紹介。アーティスト実機展示の第1弾となる3月6日(水)から5月5日(日)までの期間に、ジェフ・ベック、エリック・クラプトンなどの愛機と並んで自身のStratocasterが展示される旨を語る表情が心底嬉しそうだった。

アンコールの1曲目に届けられた「Straight to My Heart」は、遠山哲朗とのアコースティックユニット、通称“テツandハル”による演奏。適度に歪ませたサウンドにも対応するHighwayシリーズのDreadnoughtの魅力が抜群に冴え渡っていた。遠山と多彩なフレーズを交わす春畑の表情が、まぶしいくらい活き活きとしている。Highwayシリーズもお気に入りである様子が伝わってきた。

「観に来てくれてありがとうございます。インストミュージックでも楽しそうに聴いてくれてありがたいです。みんながライヴに来てくださるおかげで、新しい曲を作りたくなります。活動のパワーをみんながくれるんです。何歳になってもライヴをやりたいので、これからもよろしくお願いします」


観客への感謝の言葉を伝えると、宮崎とSAYAKAもステージに再登場。4人編成で演奏した「青いコンバーチブル」がラストを飾った。Michiya Haruhata Stratocaster IIIを手にした春畑は、ステージ上を移動しながら伸び伸びとしたプレイを展開。軽やかにステップを踏み、飛び跳ねたりもする姿に刺激されて、立ち上がって手拍子を送る観客の熱量がものすごい。客席にいる人々も加わった素敵な合奏が実現していた。

演奏を終えると、手を振りながらステージをあとにした春畑。彼のギタープレイに惹かれている人には、ビルボードライヴを味わうことを強くオススメしたい。多彩なニュアンス、音色、フレージングを駆使した演奏のものすごさを、まざまざと体感できること間違いなしだ。

All photo by 江隈麗志 (C-LOVe CREATORS)


【SET LIST】
1. Adios
2. EAGLE FLY
3. Sparkling Heaven
4. Native Dance
5. LIFE
6. Love Song
7. I feel free
8. Angelic Smile
9. 花鳥風月
10. Wave Rush
11. JAGUAR’13

ENCORE
1. Straight to My Heart
2. 青いコンバーチブル


春畑道哉:https://www.sonymusic.co.jp/artist/MichiyaHaruhata/

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