SESSIONS in TOKYO | César、Luthfi(ALI)

転調した瞬間って“あっ”と宙に浮いた感じがするんです

フェンダーを愛する個性的なアーティストたちが繰り広げる、セッションにフィーチャーした「Fender SESSIONS in TOKYO」。ギター/ベースを通してさまざまなスタイルで対話するアーティストの魅力を、彼らが語る機材のインプレッションとともにお楽しみください。第3回目は、クロスオーバーな音楽性で注目を集める多国籍バンドのALIから、César(Gt)とLuthfi(Ba)が登場。

ジョン・フルシアンテは僕の理想に一番近い

― 楽器を始めたきっかけを教えてください。

César 中学1年生の時にザ・ビートルズに出会って、ベースラインがめちゃくちゃいいなと思ったんです。本当に衝撃を受けて、親にねだってベースを買ってもらったのですが、ウチはゲームが禁止で娯楽が少ないのを申し訳なく思ったのか、すんなり買ってくれたんです。それでベースを始めたのですが、ビートルズのベースラインだけなぞって弾いても参加している気がしなくて…ギターのほうがいいかなって(笑)。安い1万円くらいのギターを買ってもらって、それから毎日ビートルズを弾いていました。

― 憧れのギタリストは?

César 高校に入って、同級生と組んだバンドではフー・ファイターズやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、コールドプレイなどの洋楽ロックをコピーしていました。だから、ジョン・フルシアンテは僕の理想に一番近いかもしれないですね。すごくシンプルなフレーズで、ミスしてもカッコいい(笑)。本当にリスペクトです。ジャズも聴くのですが、全然追いつかない憧れという意味ではパット・メセニーやウェス・モンゴメリーもすごく好きで聴いています。鼻歌では完璧に歌えるんですけど、ギターでは弾けないです(笑)。

― Luthfiさんがベースを始めたきっかけは?

Luthfi 僕はインドネシア出身で、小学生の頃からダンスをやっていたのですが、高校の時に日本の文化がインドネシアに入ってきて、そこで当時流行っていたパラパラダンスのチームに入ったんです。そのチームの一人がバンドをやっていて、ベースを探していたので、初めてベースを弾くことになりました。それが18歳の時。それから洋楽や邦楽を聴くようになり、日本のバンドをコピーするようになって。ダンスをやっていた影響で独特のリズムがあるみたいで、よく“リズムが違うよ”と言われていました。

― 日本のどんなバンドをコピーしていたのですか?

Luthfi 最初はビジュアル系バンドが多かったですね。NIGHTMAREとか。あとはELLEGARDEN、X JAPAN、アニメの曲もコピーしましたね。それから少しずつ洋楽に転換するのですが、日本の曲を聴いたり弾いたりすると何だかホッとしますね。

Guitar: Player Plus Meteora®︎ HH

メテオラは絶対に自分にぴったりのセッティングが見つかる

― CésarさんはフェンダーのCoronado®を弾いてくださっていますが、その出会いは?

César もともとビザールギターがすごく好きで、いろいろと調べていくうちに赤のCoronadoに出会ったんです。フェンダーのヘッドだし、テイルピースにFって書いてあるし、“え!?フェンダーなの?”と思って。赤も良かったんですけど、木目が映えるワイルドウッドに惹かれて、ネットで買ったのが出会いですね。

― フェンダーの顔とも言えるStratocaster®やTelecaster®には興味がないんですか?

César 興味はありますけど、どうしてもオリジナリティを出したいって思うし、弾いてて楽しいギターを弾きたいのでやっぱりビザールギターに目がいくんですよね。でも、めちゃくちゃお金を貯めて買った最初のギターがフェンダーのJazzmaster®でした。3年くらい使っていましたが、僕は体が小さいのでJazzmasterの大きなボディが合わなかった。今回のPlayer Plus Meteora®︎ HHは似たようなシェイプなのにボディが小ぶりで、すごく自分にフィットするからJazzmasterのリベンジになりましたね。

― LuthfiさんはJazz Bass®もPrecision Bass®もお持ちですよね?

Luthfi はい。もともとサンバーストのJazz Bassを使っていたのですが、ALIに入ってから演奏する音楽のジャンルや楽器が増えてきたので、ジャズベだけだと限界があって。ジャズベは広くいろいろなジャンルに合うのですが、楽器が増えるほど音が聴こえなくなるのが弱点というか。一方のPrecision Bassはシンプルでゴリッ!という低音が特徴で、10〜20人が別の楽器を演奏しても音がドーンって前に聴こえてくるんです。ALIは古い音楽や新しい音楽を混ぜたりするので、最近66年製のヴィンテージのプレベを買ったのですが、めちゃくちゃ弾きづらいです(笑)。でも、Player Plus Active Meteora®︎ Bassはボトムが良い感じで出るし、ハイもしっかり出るし、ネックも弾きやすいからすごく良いですね。

César 僕のメテオラ、弾きまくったのでピックガードがキズだらけになっちゃいました。

― 動画でのインタビューで、手に入れた日に5時間くらい弾いたとおっしゃっていましたね。

César めちゃくちゃ弾きましたよ。没頭しちゃいました。テンション(張力)があまり強くないのか、全然疲れないんですよ。手が小さいから長時間弾くと疲れるのですが、夢中で弾いていました。うわぁ、曲ができそう!って感じで。まだ完成には至っていないけど、このメテオラでかなり曲作りしています。

― しかも、ビザール好きにはたまらない?

César そうですね。レトロな雰囲気で、60〜70年代のカーデザイナーが作りそうなデザインですよね。ビザールギターをいろいろと掘っているからこそ、似たような雰囲気を醸し出していてすごく良いなと思います。

― 音はどうですか?

César 僕はフロントピックアップのジャキッとした音が好きなので、Jaguar®っぽいなと思いながら弾いていました。だけど、カッティングの音も粒立ちが良いのでJaguarよりも幅広く使えます。で、トレモロが付いているし、マスターボリュームのS-1スイッチを押すとシングルコイルになるんですよね。“トーンコントロールで全部できます”みたいな雰囲気を感じています。コントール一つでストラトのように使えるし、マスターをすべて上げてジャキジャキ弾いたらJaguarのような音も出るし、リアで弾いたらテレキャスのようなカチカチとした音も出るし、すごく多彩なギターですね。欲しいトーンが手に入ると思いました。

― Césarさんはカッティングが特徴的ですが、このメテオラはあまりカッティングのイメージではないですよね?

César 確かにそうですね。だけど、これでディスコをカッティングでガッツリ弾くと、上にミラーボールが見えてくる感じがするなって(笑)。このデザインがすごいのはそこだと思うんです。新しくも古くも見えるというか。Pファンクの人たちが持っていそうなイメージ。別色でBelair Blueという青のグラデーションがありますけど、その色だとそういうジャンルでも目立てるような気がします。

― Luthfiさんは音色も含めてPlayer Plus Active Meteora Bassはいかがですか?

Luthfi ジャズベとはまた違う音で、幅広い音楽に使えるなって。特に低音域のピックアップの出力がすごいですね。僕が持っているジャズベとかプレベ、メインで使っていたカスタムのベースと比べても一番デカイです。あとは、アタックが速いから使いやすい。以前弾いたことがあるものはベースとトレブルの2バンドだったんですが、トレブルを下げるとミッドも薄れてしまうのがネックだったんです。メテオラは3バンドのプリアンプになったことで、トレブルを下げてもミッドがしっかりしているんですよ。アクティヴで使っている時も、トレブルをゼロにするとプレベよりも明るい、しかもジャズベではない良い感じの抜け感と立体感が出ますね。

― メテオラはどんな人にオススメですか?

César 歪み系サウンドの乗りがめちゃくちゃいいので、歪みを多用するバンドには絶対に良いなと思います。フーファイのコピーバンドみたいな(笑)。どんな音でも出せるので、このビジュアルに惹かれた人は“買い”ですね。音に関しては、絶対に自分にぴったりのセッティングが見つかるギターだと思います。

Bass: Player Plus Active Meteora Bass®

やる後悔よりもやらない後悔のほうが大きい

― この夏のALIの活動について教えてください。

César 今年の夏頃に新曲もリリースする予定です。あと、大阪会場のみですが〈SUMMER SONIC〉に出演することが決まっていますし、ありがたいことにいろいろな夏フェスにお声掛けいただいています。この記事が出る頃にはサウジアラビアでのフェスにも出ていますが、そこにはメテオラを持っていきます。

― ALIを見て楽器やバンドを始める人もいると思います。ビギナーにメッセージやアドバイスをお願いします。

César 僕は中学1年生の時に親に頼んで楽器を買ってもらったのですが、ちょっと勇気を出して言ったからこそ今の自分がいると思うので、迷っているなら絶対に始めたほうがいいと思います。始めてダメだったら辞めればいいし。何事もそうだと思けど、絶対に一回はやってみたほうがいい。好きなバンドの曲を一生懸命コピーして、弾けるようになるとめちゃくちゃ楽しいんですよね。最初にベースを買ってもらった時も、ポール・マッカートニーになった気分というか、“ポールが実際にこの運指で弾いていたんだな”って想像しながら弾いていました。一回スマホを置いて、何か別のものを触る機会は大事にしたほうが良いと思うので、もしALIを好きな人がいたら“自分で奏でてみない?”って。超楽しいですよ。「LOST IN PARADISE」という曲は転調がいっぱいあって、転調した瞬間って“あっ”と宙に浮いた感じがするんですよ。あの浮遊感は聴いている人もそうだと思うけど、演奏している側はより味わえると思うのでやってみてほしいですね。あとは、カッコいいギターを持っていればその人もカッコ良くなります。車と一緒ですよね。僕は免許持ってないですけど(笑)。

Luthfi Césarが言ったように、やってみることが大事です。“チャンスは二回来ない”という言葉があるけれど、やる後悔よりもやらない後悔のほうが大きい。僕もダンスをやっていなかったら、今みたいに動きながら弾けないと思うんです。だから、ダンスをやっていて良かったなって思います。もしも楽器に興味を持ったら、買ってみるのが良いと思いますね。それから向いているかどうか判断すればいいんです。若い時に始めたほうが、“やっぱり楽器は向いていないな”と思っても違うこともできるし、いろいろな道があるので。どうせやるなら、若いうちにやっておいたほうがいいですよ。


ALI
ヴォーカルでリーダーのLEOを中心とした全員ハーフの多国籍バンド。東京/渋谷発。ファンク、ソウル、ジャズ、ラテンなどのルーツミュージックをベースに、ヒップホップ、ロック、スカなどをミックスしたクロスオーバーな音楽性で注目を集めている。2022年は〈SUMMER SONIC2022 OSAKA〉をはじめとした様々なイベントやフェスに出演が決定している。
https://alienlibertyinternational.com

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