SESSIONS in TOKYO | Christone “Kingfish” Ingram

グラミー賞を受賞したギタリスト/ヴォーカリスト/ソングライター、クリストーン“キングフィッシュ”イングラムのインストアイベントが、7月29日にFender Flagship Tokyoで開催された。キングフィッシュは〈FUJI ROCK FESTIVAL ’24〉に出演。27日に同フェスのFIELD OF HEAVENのステージに立ち、ブルージーなサウンドで観客を魅了した。その余韻も冷めやらぬ中で行われたイベントの模様をレポートする。


ミシシッピの夜の闇をイメージしたのがMississippi Nightという色なんだ

待ちわびていた観客の拍手で出迎えられたクリストーン“キングフィッシュ”イングラム。笑顔を輝かせた彼は、たくさんのギターに囲まれた空間がとても気に入っていた。「アメリカ製のフェンダーは白とか黒とかクラシカルでスタンダードなボディカラーのものが多いけど、このお店にあるギターは色とりどりだから眺めているだけでも楽しいね」と語る声のトーンが明るい。

今年、70周年を迎えたStratocaster。店内には記念モデルが展示されていた。


「僕は教会でギターを弾いていたんだ。教会でいつも使われていたのがStratocasterだったんだよね。キラキラしたクリーントーンが出せるし、ブルージーなサウンドも出せるし、もちろんロックなサウンドも出せる。そういうところが好きだよ」とStratocasterの魅力を語ったあと、彼が手にしたのはシグネイチャーモデルのKingfish Telecaster Deluxe。「演奏を聴かせてもらえますか?」というMCのリクエストに応えて「That’s What You Do」と「Hard Times」が披露された。バンドではなく、たった一人でのプレイなのに迫力満点だったサウンド。美しいクリーントーンを基調としつつ、ブルースフィーリングに溢れたプレイを連発する姿を目の当たりにした観客は、興奮しながら拍手喝采を送った。


2曲のパフォーマンスを経て、音楽に目覚めたきっかけについて語ったキングフィッシュ。ブルースに触れる機会が多いミシシッピ州クラークスデールで音楽好きの家族に囲まれて育った彼にとって、楽器に興味を持つのはとても自然なことだった。初めて演奏するようになった楽器はドラム。その後にギターを弾き始めたが、すぐにベースに転向した理由は「指が太すぎて向いていないと思ったから(笑)」。しかし「ギターは要するに小さいベース」と感じるようになり、再び手にしたギターに夢中になったという。

イベントの後半では、シグネイチャーモデルのKingfish Telecaster Deluxeについて語った。「フェンダーとシグネイチャーモデルについてのやり取りを始めたのは2017年頃だったかな? ハムバッカーのサウンドが欲しいとまず考えた。憧れていたB.B.キングやゲイリー・ムーアと言えばやっぱりハムバッカーサウンドだし、そこに近づきたかったんだ。ロックの力強いサウンドが出せると同時に、教会でも使えるクリーントーンも出せるような汎用性のあるギターを作るのが、僕のシグネイチャーモデルのテーマだった」


テーマを踏まえつつ、フェンダーのさまざまなギターを試した結果、選んだのがTelecaster Deluxe。「ボディの裏側がえぐれている加工がされているでしょ? これが僕の大きなおなかに実に良くフィットするんだ(笑)。あと、70年代のフェンダーのラージヘッドも僕の好みだから取り入れてもらった。ヴィンテージスタイルのペグも気に入っているし、アジャストマチックブリッジもこのギターの特徴だね。このブリッジのおかげで、1本1本の弦の微調整もできるようになっている」とお気に入りのポイントを紹介してくれた。

このギターの特別仕様は他にもあった。搭載されているピックアップは、彼の理想のサウンドを具現化するためにフェンダーが開発したCustom Kingfish Humbucking。“V”シェイプのローステッドメイプルネックは、アルバム『662』のジャケットで持っているカスタムショップ製のStratocasterのフィーリングを踏襲。そして、照明の光を浴びると美しくきらめく紫色のボディカラーについても説明した。

「ミシシッピの夜の闇は“パープルブラック”と表現されるんだけど、そのイメージがこのMississippi Nightという色なんだ。試作の段階ではちょっと暗すぎたけど、少し明るめにしてもらったら理想的になったよ」


ヘッドストックには彼のサインがプリントされていて、ピックアップカバーとボディ裏のネックプレートには“K”をあしらったカスタムロゴが刻まれている。徹底的にこだわり抜いたギターを抱えながら貴重なエピソードをたくさん語ったキングフィッシュ。「すごく気に入っているよ。完成して以来、ずっとステージで使っているし、これからも弾き続けるだろうね」という言葉からも愛着が伝わってきた。

インスト曲を披露した後、「こんなにたくさんの皆さんに集まってもらえて嬉しいよ。また日本に来るからね。どうもありがとう!」と言い、ステージをあとにした彼は、観客の1人に使用していたピックを手渡しでプレゼント。気さくな人柄に触れながら、シグネイチャーモデルの魅力を知ることができるイベントであった。

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