Special Interview | 春畑道哉 -後編-

一生満足することがないからギターは面白い

TUBEのギタリスト春畑道哉の新たなシグネイチャーモデル「MICHIYA HARUHATA STRATOCASTER® HEAVY RELIC® by JASON SMITH」が11月15日に発売された。構想から発売まで7年越しとなる渾身の本作は、“Heavy RelicのVintage Spec”というテーマのもと、まるで歌うかのように自由で豊かな春畑の表現を思い通りにアウトプットするため、ジェイソン・スミスの技術が集約したカスタムショップが贈る最高峰のハイブリッドギターに仕上がっている。インタビュー後編では、春畑自身の今後の活動を中心に話を聞いた。

──ここ最近の活動にも触れたいのですが、今年4月にリリースされたソロデビュー35周年アルバム「SPRING HAS COME」は素晴らしいアルバムでしたね。

春畑道哉(以下:春畑) ありがとうございます。フェンダーさん関連で言えば、「I feel free(feat. Char)」という曲はCharさんに書いてもらいCharさんにも弾いてもらっています。

──アルバム「SPRING HAS COME」でもMICHIYA HARUHATA STRATOCASTER HEAVY RELIC by JASON SMITHを弾いていますか?

春畑 1曲目から弾いています。1曲目の「Spring has come」みたいなクランチサウンドは特に得意かもしれないです。

──ソロアルバム「SPRING HAS COME」を出されたあとはどのような動きでしたか?

春畑 そのアルバムタイトルのソロツアーをやったのですが、並行してTUBEの制作もやりながら、自分のツアーが終わった途端にTUBEのリハに入って。その間にレコーディングもしていました。10月にはブルーノートでのライヴ、TUBEのフェス参加、そのあとにTUBEのファンクラブツアーがあります。

──お休みがないですね。

春畑 ないですね。来年の2月にはまたソロでビルボードライブでのツアー、そして出身地町田の町田市民ホールリニューアルオープン記念としてライヴを予定しています。

──MICHIYA HARUHATA STRATOCASTER HEAVY RELIC by JASON SMITHという究極の1本を手にしたわけですが、ここから先、ギタリストとしてどんな野望をお持ちですか?

春畑 MICHIYA HARUHATA STRATOCASTER HEAVY RELIC by JASON SMITHを持っていると、“このフレーズをちゃんとレコーディングしたい”とか今も思っている自分がいるんです(笑)。これでポロポロと弾いていると、やっぱり曲を作るのも好きだから、“このフレーズいい曲になりそうだな”と思っちゃうんです。「SPRING HAS COME」を今年に出したばかりなのに、もう次のアルバムを出したい感じです。

──やっぱりギターに呼ばれるのでしょうか?

春畑 そうなのかな。ベッドの横にずっとこのMICHIYA HARUHATA STRATOCASTER HEAVY RELIC by JASON SMITHがいますから。通る時にパッと取ってしまって。

──このギターさえいれば当分は満たされていると。

春畑 はい。こいつにかまってもらいます。

──手前味噌ですが、このMICHIYA HARUHATA STRATOCASTER HEAVY RELIC by JASON SMITHは“これぞカスタムショップ”という1本だと思うんです。せっかく新品で作るんだから、ヴィンテージそのものじゃできないことをやって欲しいという想いがこの1本に詰まっています。

春畑 オールドギターの良さはもちろんあるのですが、ただそれを追い求めているばかりじゃカスタムショップの意味がないですからね。

──春畑さんは50年代のストラトをお持ちですもんね?

春畑 はい。持っています。

──それと比べてどうですか?

春畑 オールドフリークには申し訳ないけど、断然こっちのほうがいいんですよ。というか、使いたいと思えるんです。今も弾きたいし、どのステージでも持ちたいと思える。パッとすべてを表現しやすいのはこっちですね。もちろんオールドは、枯れた味わいがたまらないサウンドが出ますが、どこか我慢する部分も出てきてしまう。我慢というか、僕のプレイがオールドスタイルじゃないのもあるかもしれないけど。僕の場合はすごく歪ませちゃうし、激しいチョーキングやビブラートも、このギターだとノンストレスで弾けるように作ってもらっているので。

──進化しつつあるサウンドを鳴らしている人にも対応できるギターだと。

春畑 そうですね。プレイスタイルを問わずに使えると思います。

──購入を検討している人の背中を押すとしたら?

春畑 値段は安くはないですが、このレリックを一本一本手作業でやったら…そりゃそうですよね(笑)。僕のギターと同じビルダーが作っているので、僕のための試作品と製品のどっちがどっちだかわからなくなるレベルです。生音を弾いただけで、“同じくらい鳴っている”と思いました。このクオリティは弾いてみて本当に安心というか、素晴らしいと思いました。安くはないけれど、これを持って後悔することはないと思いますね。

──ビギナーやこれからギターを始めようと思っている方へメッセージをお願いします。

春畑 コロナ禍もあって、楽器の売り上げは伸びているという話は聞いたのですが、ギターはバンドを組んで仲間と音を出すという楽しさもあるし、部屋にこもって弾く楽しさもあります。僕も雨の日に特にギターを弾くのですが(笑)、外に出られなくても、もう一人の友達がいる感覚です。コードをいくつか覚えてポローンと弾けば、もうその瞬間に自分の世界に入っていけるんです。うまく言えないけれど、楽器をやってみれば“楽しいな”って思えるはずです。始めたいと迷っている方は、一本ギターを手に取ってみて、深い深いギターの世界へ第一歩を踏み込んでみてはいかがでしょうか。

──深い深いギターの世界、春畑さん的に山登りに例えたら何号目ですか?

春畑 3〜4合目です。

──えっ!?

春畑 でもね、今から始めても本当に面白い楽器だと思う。“これで達成した”なんて満足することが一生ないから面白いんですよね。どれほどの天才プレイヤーであっても、ギターは一生弾けるものです。おじいちゃんになってもずっと続けられる。こんなに面白いものはないので、ぜひ始めてみてほしいです。

>> 前編はこちら


春畑道哉
85年、TUBEのギタリストとして「ベストセラー・サマー」でメジャーデビュー。86年、3rdシングル「シーズン・イン・ザ・サン」の大ヒットでバンドとしての地位を確立。87年、TUBEと並行してソロ活動を始め、現在までにシングル3枚とアルバム13枚をリリース。92年、シングル「J’S THEME(Jのテーマ)」が日本初のプロサッカーリーグであるJリーグのオフィシャルテーマソングとなる。93年のJリーグオープニングセレモニーでは国立競技場の約6万人の観衆を前にライブを行った。2002年5月9日、フェンダーと正式にアーティストエンドース契約を締結。日本人のギタリストとしては初めてのシグネイチャーモデルを発売。これまで、Michiya Haruhata Stratocaster 、Michiya Haruhata BWL Stratocaster、Michiya Haruhata Stratocaster IIIという3本のシグネイチャーモデル、そしてマスタービルダー、ジェイソン・スミスの師匠であるジョン・イングリッシュが生前製作したMichiya Haruhata Stratocaster IIIプロトタイプの復刻モデルを発表している。 2019年3月リリースのソロアルバム「Continue」は、第34回 日本ゴールドディスク大賞 “インストゥルメンタル・アルバム・オブ・ザ・イヤー“を受賞。2022年4月、ソロデビュー35周年アルバム「SPRING HAS COME」をリリース。2023年2月には今年初開催し好評を博したbillboard LIVEツアーや出身地町田の町田市民ホールリニューアルオープン記念ライブの開催を予定している。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/MichiyaHaruhata

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