Turning Point of Performer Vol.6 | 石原慎也(Saucy Dog)

TURNING POINT OF PERFORMER

自分や仲間だけで演奏している“プレイヤー”から、オーディエンスを相手にして演奏する“パフォーマー”。同じ演奏だが、何かが違うはずだ。日本のロックシーンを熱くしているパフォーマーたちは、どうやって“プレイヤー”から“パフォーマー”へとステップアップし、また、パフォーマーであることにどんな魅力を感じているのか。TURNING POINT OF PERFORMERと題したシリーズ6回目は、Saucy Dogの石原慎也(Vo,Gt)に話を聞いた。

ギターを持って無敵だと思えたら、何だってできると思うんです
 

― まずは楽器を始めたきっかけから教えてください。

石原慎也(以下:石原)  中2か中3ぐらいの時に、友達からギターを教えてもらったのがきっかけです。初めて弾いた曲は「大きな古時計」。そこからザ・ビートルズの「ブラックバード」などルーツ的なものをアコギで遡って遊んでいました。でも、中3の受験期間に入ると弾かなくなって、アコギも押入れに入っている状態だったんです。  高校に進学したら吹奏楽部に入りました。担当楽器はチューバ。で、高2の時に吹奏楽部の女の子にバンドを組もうと誘われて、“ギター弾ける?”って聞かれたので“弾けるよ”って背伸びして言いました(笑)。でもその女の子もギターで、ギター2人じゃバンドはできないので、ドラム、ベースを弾ける後輩が入ってくるまで待って最初のバンドを組みました。4人組のバンドで、オリジナル曲ではなく東京事変さんやDustboxさん、BUMP OF CHICKENさんのカヴァーをやっていました。そこにヴォーカルとキーボードが加わって、最終的に6人編成になりましたね。バンド名は“マイノリティ”(笑)。

― (笑)。文化祭でライヴをしたり?

石原  はい。1年に1回、文化祭で視聴覚室でライヴができたので、その文化祭でのライヴがライヴデビューだったと思います。それ以外は街スタで練習に入ったり。でも6人編成って多いから、放課後に音楽室を借りて部活終わりの2時間くらい練習をしていました。そうそう、文化祭ライヴの音響をやってくれたのが地元・松江の楽器屋さんで、その楽器屋さん系列でライヴハウスがあったので、文化祭ライヴに一緒に出ていた先輩に誘われてそのライヴハウスにも出るようになりました。

― 文化祭とライヴハウスはやはり違うと思うんです。ライヴハウスで知らない人の前で演奏するのには勇気も必要だと思いますが、ライヴハウスに出たいと思った理由は何だったと思いますか?

石原  僕が目立ちたがり屋だったので(笑)。絶対にライヴハウスに出たかったんです。

― 文化祭ライヴだけでは物足りなかった?

石原  そうですね。ステージの上ってヒーローになれるじゃないですか。バンドマンが唯一ヒーローになれるところがステージです。僕は目立ちたがり屋だったんですけど、あまり目立つほうじゃなかったんですよ(笑)。だから、バンドをやってステージを観てもらうことで自分に自信がついたり、“ギターできるんだ! すごいね!!”って言われて嬉しくなって、もっと頑張ってみようと思えたんです。その頃の映像もありますよ。みんなで100円ずつ出し合ってDVDにしてもらおうって。めちゃくちゃ下手で“こんなの弾いてたんだ!”って感じです。東京事変さんをカヴァーするってことは、ギターの僕は浮雲さんの立ち位置じゃないですか? 正直今でも難しいですもん。すごいことをしていたなと思いますね(笑)。

― 高校卒業後は?

石原  高校3年生になった時、みんな将来のことをすごく悩んじゃったんです。ただ僕は音楽の学校に行きたいと思っていたので、“音楽の学校に行きたいから一緒に体験入学に行かないか?”って誘ったら、6人中2人だけが“行きたいです”って言ってくれて。それがあとに入ったベースとドラムの子でした。大阪の専門学校で体験入学を3回くらい受けて、“めちゃくちゃ楽しかったです! やりたいです!”って言って、3人で大阪に行こうと話していたんですけど、2人とも将来のことを考え出すようになって。その時2人は2年生だったんですけど、“やりたいことがなかったらお前らの未来を俺にかけてくれ!!”みたいなことを言ったんですよ、高校3年生ながら。それでも響かなかったですね(笑)。

― 青春ですね。

石原  まあ現実性がなかったんだと思います。それで俺1人だけ音楽の専門学校に行きました。

― 仲間がバンドをやめていく中で、なぜ石原さんはやめなかったんですか?

石原  根拠のない自信じゃないけど、なぜかできると思ったんですよね。高校の頃からずっと言ってるんですけど、できないのはやめちゃうからだって。“できない”って自分の中で思い込んでいるだけで、やっていればできるかもしれない。10年かかるか20年かかるかわからないけど、やり続けないでできないって言うのはおかしいと思っていて。“無理”“できない”っていう言葉がすごい嫌いなんですよ。難しいってことはありますが、どれだけ下手でも、できないことはないんじゃないかと思っていたんです。

― 意志が強いですね。

石原  というより、もったいないじゃないですか(笑)!

― 大阪の専門学校に行ったあとは?

石原  2年制の専門学校にギターコースで入ったんですけど、ついていけなくて、ヴォーカルコースに変更しました。1年目はヴォーカルコースで、シンガーソングライターみたいなことをやって、その時のライヴで、男の子2人が声を掛けてくれたんです。“バンド入らない?”って言われました。彼らはギターとベースで、2人ともすごく上手だったので“バンドやりたいです”って答えました。それがSaucy Dogの原型です。でも、ギターが引き抜かれたりして…結局、俺1人になってしまって。それでメンバーを探して、決まったのが今のSaucy Dogのメンバーです。

― なるほど。

TURNING POINT OF PERFORMER

TURNING POINT OF PERFORMER

名古屋クラブクアトロでのライブ写真(Photo: 白石達也)

 

石原  それで、オーディションを受けようってことになったんです。初ライヴが2016年4月、オーディションが2016年12月。曲も作らないとヤバイと思って、それで曲を作って初めてツアーに出たのがその年の6月です。

― いきなりツアーに?

石原  はい。僕が片っ端から電話をして30本くらいライヴを決めて、6月からツアーに行くと言って練習しまくりました。でも、当たり前なのですが、ライヴハウスに行ったらお客さんが1人もいないんですよ。他の出演バンドは楽屋にいるままだし、PAさん、照明さんはいますが僕は無人のフロアに向かって歌っていて。“何しにこんなところまで来たんだろう”って不思議に思ったこともありました。でもそういう時、自分が変わらないといけないんだなと思いましたね。ライヴ前にちゃんと他のバンドと話をしたら、ライヴを観てくれるかもしれないし、観てくれたら打ち上げでしゃべられるよなって自分の中で思えてきて。それからは打ち上げで仲良くなって、地方地方で仲の良いバンドマンができていきました。誰もいないライヴハウスでさえも、意味のあるものになって良かったと思えるようになりましたね。

― すごいポジティヴですね。

石原  精神的にはポジティヴでしたが、最初のツアーはめちゃくちゃ演奏は下手くそでした(笑)。6月から8月までが最初のツアーで、またすぐ9月から11月まで2本目のツアーを廻りました。結局、6月から11月までの間に50本ぐらいライヴをしたんです。前々からいろんなところのオーディションに応募をしていたのですが、ライヴを50回くらいやって少し自信もついてきていたから、“受かんなくても楽しくやろう”というモチベーションで12月のオーディションライヴ(MASH FIGT vol.5)に臨んだらグランプリを獲りました。それからは自信を持ってライヴができるようになりましたね。

― つまりそれってプレイヤーからパフォーマーへの変化だと思うのですが、何が変わったと思いますか?

石原  明確に変わった時があったんです。自分のためにライヴをすることがダサいと思って、人のためにライヴをしようと思った時期がありました。でも、“人のためにするライヴって何なの? 言い訳にしてない?”と思って、また自分のためにライヴをしようと思ったんです。それを何度か繰り返しているうちに見えてきたものがあって。人のためでも自分のためでもどちらでもないし、どちらでもあると。どちらと決めつけることもないけど、パフォーマンスをみんなに楽しんでもらったほうが自分も楽しいと思えるようになってきたんです。そう思えるようになったのは最初のツアーの終わり頃です。

― 無謀な(笑)全国ツアーの成果ですね。全国ツアーまでもいかないにしても、学祭ではなく、ライヴハウスで演奏する第一歩を踏み出さないとチャンスの扉は開かないと思うのですが、その一歩を踏み出すのには何が必要だと思いますか?

石原  “自分はスーパーヒーローだ”と信じ込むことじゃないですかね。ギターを持って無敵だと思えたら、何だってできると思うんですよ。今だったら歌も歌えるし、緊張はするけどステージに立ちたいと思えるし。でも、本当にやりたいことじゃなかったらやめたほうがいいと思う。バンドをやっていて、そのあとに何をしたいのかが見えてこないんだったら。でも、結局は感覚だと思います。潜在意識で、バンドをやっていていいと思っているのか、やっちゃダメだと思っているのかで変わると思いますね。“やっていい”と思っているのなら、バンドを続けたほうがいいですよ。


AMERICAN PERFORMER MUSTANG®

TURNING POINT OF PERFORMER

カリフォルニア州のコロナ工場で製造される24インチショートスケールのAmerican Performer Mustangは、USA製フェンダーならではのオーセンティックなトーンとフィーリングを提供し、パフォーマンスにインスピレーションを与えるモダンスペックを随所にフィーチャーしています。

 

PROFILE


Saucy Dog
2013年11月16日、Saucy Dog結成。メンバーは、石原慎也(Vo,Gt)、秋澤和貴(Ba)、せと ゆいか(Dr,Cho)。2016年8月2日、自主制作最後の音源である1st E.P.「あしあと」を会場限定で発売。リリースツアー「たどる」では全国約30カ所でライヴを行う。同年12月に「MASH FIGT vol.5」でグランプリを受賞。2017年5月24日、初全国流通作品1st ミニアルバム「カントリーロード」を発売。「カントリーロード RELEASE TOUR FINAL SERIES “ずっと 〜東名阪対バンツアー〜”」を東名阪で開催し全箇所ソールドアウト。2018年3月7日、配信シングル「真昼の月」をリリース。発売初日、iTunesロックランキング8位にランクイン。5月23日に2ndミニアルバム「サラダデイズ」をリリース。6月に初のワンマンツアー「one-one tour2018」を開催。追加公演を含む全国11カ所が即日ソールドアウト。10〜12月に開催された「ワンダフルツアー2018」も対バン篇とワンマン篇ともに全箇所即日ソールドアウト。2019年4月13日、大阪城野外音楽堂にてワンマンライヴ「YAON de WAOOON in Osaka」を開催、即日SOLD OUT。さらに7月にはTwo-Man Tour「One-Step Tour」も開催が決定している。
› Website:http://saucydog.jp

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