The Strat Night 2024 Presented by Fender×Billboard Live TOKYO

Stratocasterの70周年を記念したスペシャルライヴ〈~Stratocaster 70th Anniversary~ The Strat Night 2024 Presented by Fender x Billboard Live TOKYO〉が11月23日にBillboard Live TOKYOで開催された。この日のために結成されたスペシャルなバンドに加え、Stratocasterを愛する春畑道哉(TUBE)、Ken(L’Arc-en-Ciel)、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN、XIIX)が出演したこのライヴの模様をレポートする。

これからの道を明るく照らすようなStratocasterの華やかで輝くサウンド

司会のジョー横溝によるトークからスタートした〈The Strat Night〉。「ギターをやっている人?」「やってみたいと思っている人?」と問いかけたあと、「まだ手が挙がらない皆さんのために今日のライヴはあるのかなと思っています(笑)」と言い観客を和ませていた。そしてスペシャルバンドの4人──TOKIE(Ba)、SATOKO(Dr)、池尻喜子(Key)、バンドマスターの弓木英梨乃(Gt)がステージに登場。オープニングを飾ったのは4人の演奏によるジェフ・ベックの「レッド・ブーツ」だ。キメのフレーズを随所で交わし、アイコンタクトと笑顔も共有しながらサウンドを鳴り響かせる姿が実に楽しそう。TOKIEが演奏しているAmerican Ultra II Jazz Bass(Noble Blue)のサウンドは骨太でグルーヴィで、弓木はAmerican Ultra II Stratocaster(Solar Flare)の華やかなボディカラーを輝かせ、チョーキングやアーミングも交えながら名曲にフレッシュなエネルギーを注いでいた。


スペシャルバンドによる熱い演奏を経て、いよいよ最初のゲストが登場。斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN、XIIX)がCustom Shop製のLady Killer Stratocasterを手にしながら客席内の階段を下りてステージへと向かった。このギターはフェンダーのマスタービルダー、カイル・マクミリンが製作。斎藤の求める仕様が目一杯に反映された特別なギターだ。「身体の一部みたいにしたいなと思っていて」とStratocasterへの愛着を語った彼は、先輩ミュージシャンたちとの共演に大喜び。「初めて買ったスコアがL’Arc-en-Ciel。楽器屋のお兄さんに“難しいぞお”と言われて(笑)。“絶対に見返す!”と思って一生懸命練習したんです」と、少年時代を振り返ってから「スカースデイル」(UNISON SQUARE GARDEN)を披露。歌いながら奏でるクリーントーンのアルペジオが美しい。力強いギターソロも繰り出されると、観客は喝采をステージに送った。そして「もう一つやっているバンドの曲を」と言い、2曲目に届けられたのはXIIXの「like the rain」。歌声と刻むコードにスペシャルバンドの演奏が合流し、心地よいアンサンブルが構築されていた。歌に寄り添いつつ、時折スリリングなフレーズも繰り出す斎藤のプレイが素晴らしい。歌声はもちろん、ギターでも観客を激しく魅了することができる彼にとって、Stratocasterは最高の相棒となっていた。


2人目のゲストであるKen(L’Arc-en-Ciel)は、最近のライヴでプレイする機会が増えているプロトタイプのStratocasterを持って登場。伝統工芸品の漆塗りを彷彿とさせるネックヘッドとボディの黒色が美しい。このギターは彼のシグネイチャーモデルであるKen Stratocaster Experiment #1を土台としつつも、ピックアップレイアウトはボディに直付けされたハムバッキング2基で、ブリッジはアームレスのハードテイルという個性的な仕様となっている。

「練習で弾いて“気持ちいい!”で終わろうとしたら、“あかんよ。もうちょっと弾けるんちゃうの?”って言われる感じがあるんだよね」とStratocasterの魅力について語った彼が最初に演奏したのは、ゲイリー・ムーアのカヴァー「ザ・ローナー」。Stratocasterで生み出せる多彩な響きを知り尽くしているKenが6本の弦、フレットの隅々までを最大限に活かしながら、哀愁に満ちたメロディをドラマチックに躍動させていた。天を仰ぎながら響かせたハイフレットでのチョーキングを、息を呑みながら体感していた観客。血の通った音色が耳を傾けている人々の心を震わせているのを感じた。続いて披露された「虹」(L’Arc-en-Ciel)も、各プレイヤーの見せ場を盛り込んだインスト曲。メロディを鮮やかに浮き彫りにするアルペジオとカッティングを経てKenがギターソロを奏でると、スペシャルバンドのメンバーたちも華麗なフレーズを連発しながら熱量を添えた。


「初めて弾いたギターが父のStratocasterだったんです。手が小さくても弾きやすいStratocasterって多くて。今日弾いているこれもそうなんですよね。Ultraの前シリーズのStratocasterもとても気に入っているんですけど、リアピックアップがハムバッキングで、スイッチングでシングルコイルに切り替えられるんです。このUltra IIは3シングル。スイッチを入れるとリアとフロントを同時に鳴らすことができます。そういうギターは初めてで音が気に入っています」

American Ultra II Stratocasterの魅力を弓木が語った直後にスペシャルバンドが披露したスティーヴィー・レイ・ヴォーンの「Testify」も大いに盛り上げてくれた。ブルージーなサウンドを響かせた弓木、American Ultra II Jazz Bassをフィンガーピッキングでプレイしながら温かな音色を奏でたTOKIE。4人各々のソロでも魅了してくれた。

多数の応募があったキャンペーンを勝ち抜き、〈The Strat Night〉で演奏できる権利と賞品のAmerican Ultra II Stratocaster(Solar Flare)を得たNaoさんも、このライヴを爽やかに盛り上げた。「ギターを始めて14〜15年くらいになるんですけど、まさかこんなことになるとは。影響を受けたギタリストは、今日も出演していらっしゃる春畑道哉さんです。感無量です」


憧れの人と同じステージに立つ喜びを語った彼が演奏したのは、春畑道哉(TUBE)が2012年にリリースしたアルバム『FIND MY PLACE』に収録されている「The ONE」。丁寧に奏でたフレーズの数々は、憧れのギタリストに少しでも近づくために練習を重ねた日々の情熱を自ずと物語っていた。そんな彼の横に突然あの人が…。演奏に予想外のフレーズが加わって、ふと隣を見たNaoさんは目を丸くしていた。一緒に演奏していたのは、何と春畑道哉! バッキングやユニゾンを交えながら、Naoさんの演奏をひと際活き活きと躍動させるプレイが鮮烈であると同時に温かい。

「形が好きだし、見ながらお酒を飲めます(笑)。これ、僕のシグネイチャーモデル。ヘヴィレリックだけどヴィンテージではないんですよ」

Stratocasterの魅力とMICHIYA HARUHATA STRATOCASTER HEAVY RELIC by JASON SMITHについて語った春畑。マスタービルダーのジェイソン・スミスが手掛けた彼のギターは、リバースヘッドと風格に満ちた2カラーサンバーストのアッシュボディが目を引く。「中学、高校の時にコピーしていました。Stratocasterと言えばこの人」と言い、最初に披露したのはリッチー・ブラックモアが生んだレインボーの名曲「メイビー・ネクスト・タイム」。ボトルネック奏法を交えながら響かせた音色は、情感豊かな歌声のようだった。

エフェクトを切り替える足元が非常にすっきりしていたが、使用していた機材はフェンダーのデジタルサウンドプロセッサーTone Master Pro。幅広いニュアンスで彩られた旋律を存分に堪能させてくれた。2曲目に届けられたのは春畑のオリジナル曲「EXPERIENCE #9」。軽快なビートに合わせてステップを踏み、ステージ上をアクティヴに動きながら演奏していた彼を観客の手拍子が包んだ。スペシャルバンドとのフレーズの掛け合いを経てエンディングを迎えた時、爽やかな余韻が会場全体を満たしていた。


観客の歓声と手拍子に応えて行われたアンコールでは、斎藤、Ken、春畑、スペシャルバンドの4人が勢揃い。ジミ・ヘンドリックス「ヴ―ドゥー・チャイルド」が披露された。春畑、Ken、斎藤、弓木が順番に各々のスタイルでプレイする様は、Stratocasterを使った素敵なコミュニケーション。ジミヘンへのリスペクトを感じる春畑による前歯奏法が観客を沸かせていた。エンディングトークの際、ジョー横溝が「ギターをやってみたいと思う人は?」とオープニングと同じ問いかけをすると、たくさんの人々が一斉に挙手。70周年を迎えたStratocasterが、これからもたくさんの人々に愛されていく未来を確信できた〈The Strat Night〉だった。

Photo by Masanori Naruse

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