Cover Artist | Char -前編-
ストラトキャスターほど幅広く音が作れるギターはない
日本を代表するロックギタリスト、Char。10代からスタジオミュージシャンとして、またSmoky Medicineなどのメンバーとして活躍し、天才ギタリストの名をほしいままにした。1976年にソロデビュー、アイドルとしての活動を経たのち、1978年に結成したJohnny, Louis & Char(1982年にPink Cloudと改名)で日本のロックシーンの頂点に立つ。1994年に同バンドにピリオドを打ったのちも、PsychedelixやBAHOなどでシーンを賑わしつつ、ソロアーティスト/ギタリストとして不動の地位を築いてきた。来年には古希(70歳)を迎えるが、そのカリスマ性も、最高のテクニックに裏打ちされた色気に満ちたギタープレイも、衰えるどころか、ますます磨きがかかっている。 そのCharのシグネイチャーモデル、Char Stratocaster Burgundyがついに完成。Made in Japanならではのこだわりと、精緻さと、技と工夫を詰め込んだ、至高のモデルとなっている。まず前編では、今年70周年を迎えたストラトキャスターについて、その魅力やCharの思いなどについて語ってもらった。
ジミ・ヘンドリックスが可能性を広げ、ジェフ・ベックがさらにその幅を広げた
──ストラトキャスターは今年(2024年)、誕生70周年を迎えました。ムスタングと並行して、長年ストラトキャスターを愛用してきたCharさんにとって、ストラトキャスターの一番の良さというのはどういうところでしょうか?
Char まず、作れる音の幅が広い。どんなギターにもそれぞれにしか出せない音があって、このギターだったらこうすればいい、こうすればこういう音が出るっていうのを俺は知ってるつもりなんだけど。その中で、ストラトほど幅広く音が作れるギターはないんだ。フェンダーの他のギターにも、ストラトほど音の選択肢はないよね。テレキャスターだって良い音がするけど、良い音は一つしかないというか。ストラトの場合、ピックアップが3つあるからかもしれないけど、リアの音、センターの音、フロントの音、 その間の音(ハーフトーン)だとか、いろんな音が出せる。それは、絵を描いてそれに色を塗るときに、幅広いカラーバリエーションを使えるのと同じでさ。それは、他のギターにはないんだよね。
──確かに、これほど多彩な音の出るギターは他にないと思います。その多彩な音が、ロックの歴史を作ってきたとも言えますね。
Char それはやっぱり、ジミ・ヘンドリックスがストラトの可能性を広げたことが一つと、その先でジェフ・ベックが、音色も含めて、さらにその幅を広げたというか。この2人の存在がすごく大きいんじゃないかな。そういう人たちがいたから、俺もストラトで、俺の個性のある音を出したいなと思ったしね。ただ、ストラトって簡単には良い音が出せないんだよ。誰も彼も良い音を出せるわけじゃない。例えばムスタングって、本当にダメな子だから(笑)、最初からそういうふうに付き合ってる。ダメな子をどうやって良い子にするかっていう。俺はそういうのに慣れてるから、どんなギターでも大丈夫だけどね(笑)。やっぱり、クリーンが基本だと思う。クリーンで良い音が出せる人は、エフェクターを使っても良い音を出せる。ヘンドリックスだって、ファズを使っているけど、やっぱりクリーンが魅力だと俺は思うしね。
──アームがあるのもストラトキャスターの大きな魅力の一つですよね。
Char こいつの面白いところはやっぱりそこだよ、なんつっても。俺も初めてストラト使ったときは、“あー、アームだ!”って嬉しくなった。中3のときに映画『ウッドストック』を観ちゃって、ヘンドリックスみたいにギュイーンってやったみたかったから(笑)。でも、あんな使い方しちゃいけなかったはずなんだよ。フェンダーも怒るよね、しかも、投げやがって、燃やしやがって、みたいな(笑)。
俺たちが朽ち果てても、ストラトキャスターは永遠
──ストラトキャスターは1954年に登場して、そのままの形で今も存在しているというのはすごいことですよね。
Char 俺は構造とか詳しくないけど、詳しい知り合いに聞くと、ストラトって70年も経ってるのに何も変わってないって感心してた。見えない部分もそうだし、デザインも含めてね。それって変える必要がないんだよな。デザインが機能になってるから。でも、1950年代、1960年代には、まさかそのギターが60年後、70年後に使われていて、しかも良い音出してるなんて、さすがにそこまでは考えてなかったと思うよね。ほっといても壊れないんだから。他のものは、ほっといたら大変なことになるけど(笑)。
──ストラトキャスター70周年に対するメッセージをいただけますか?
Char 俺より1年早く古希(70歳)になったということで、おめでとうございます。
──ストラトキャスターがCharさんより1歳年上ですね。
Char ストラトは午年なんだね(笑)。 まあ70年前に俺はもうお腹にいたわけだから、俺もストラトと同い年と言ってもいいかもしれないけど。この先もストラトキャスターはこのまま、この形で続くんだろうなと思う。そして、こいつがある限り、エレキギターは残る。どんなにAIだ、デジタルだって時代になっても、この発明は変えようがないわけだからさ。これから70年後も、ストラトは残るわけだよ。俺たちが朽ち果てても、ストラトキャスターは永遠です(笑)。
──そんなストラトキャスター70周年の年に、Charさんのシグネイチャーストラトが登場します。ここからは、このChar Stratocaster Burgundyについてお話を伺っていきたいと思います。
Char ホントのこと言っていいの?(笑)
──はい、もちろんです(笑)。
>> 後編に続く(近日公開)
Char
1955年6月16日東京生まれ。本名・竹中尚人 (たけなか ひさと)。ZICCA REDORDS 主宰。8歳でギターをはじめ、10代からバックギタリストのキャリアを重ねる。1976年『Navy Blue』でデビュー以降、『Smoky』『気絶するほど悩ましい』『闘牛士』等を発表。Johnny, Louis & Char 結成翌年、1979年に日比谷大野外音楽堂にてフリーコンサート「Free Spirit」を行う。1988年 江戸屋設立以降、ソロと並行して、Psychedelix、BAHO での活動を行う。2009年にはWEB通販主体レーベル「ZICCA RECORDS」を設立し、TRADROCK シリーズを発表。2015年5月、還暦アニヴァーサリーアルバム『ROCK 十』を発表。2016年、ギターマガジン誌による、プロギタリストを中心とした音楽関係者へのアンケート投票「ニッポンの偉大なギタリスト100」にて1位に選ばれる。2018年、Fender Custom Shop にて日本人初のプロファイルドモデルを発表、オリジナル楽器ブランドZICCA AX にて、様々なオリジナル楽器アイテムを展開中。2020年、ギターマガジン誌投票「ニッポンの偉大なギター名盤」にて、1stアルバム「Char」が一位に選ばれる。2021年9月、16年ぶりのオリジナルアルバム「Fret to Fret」を発表。12月にはデビュー45周年武道館公演を開催。2022年4月、同公演の映像作品を発売。2023年7月、最新アルバム『SOLILOQUY』を発売。2024年11月25日より自身の69(ROCK)イヤーを記念した全国ツアー”69 SPIRITS” Tour 2024を全国8箇所で開催予定。2025年2月11日(火・祝)に有明アリーナでCharがホストとなり、ジェフ・ベック・バンドのメンバーに加え、布袋寅泰さんと松本孝弘さんも参加される一夜限りのコンサート、「A Tribute to Jeff Beck by Char with HOTEI and Tak Matsumoto featuring The Jeff Beck Band -Rhonda Smith, Anika Nilles, Jimmy Hall & Gary Husband-」が開催予定。
https://www.zicca.net/
Photo direction by Taichiro Yoshimoto
Photograph by Tsutomu Yabuuchi
Styling by Yohei Shibayama
Hair&make-up by SUGO
Costume(HEUGN、5351 POUR LES HOMMES、GOD SUNS、MAYSER)