L’Arc~en~Ciel ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND

2月10日、11日の国立代々木競技場第一体育館2 days公演を皮切りにスタートした〈ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND〉。約2年ぶりの開催となったこの全国ツアーでは、ライヴで披露される機会の少ない曲にスポットが当てられていた。前回のレポートはツアー中盤だったため数曲に絞ってのレポートとなったが、今回は4月6日(土)さいたまスーパーアリーナ公演を完全版としてお届け。今回もフェンダーならでは、ken(Gt)のギタープレイに焦点を絞っている。

骨太なサウンドを冴え渡らせていた新たなStratocasterプロトタイプ

この日のライヴは「All Dead」からスタート。紗幕で覆われたセンターステージの360°を取り囲む客席に向かって、熱いサウンドが一気に広がっていった。2曲目「EXISTENCE」に突入すると紗幕は落下して、まぶしいライトで照らされたステージ。kenが手にしていたのは、2基のハムバッカーを搭載した現在開発中のフェンダーのプロトタイプのStratocasterだ。ボディにダイレクトマウントされたフロントピックアップとリアピックアップは、フィッシュマンのFluence。そしてブリッジはアームレスのハードテイルで、3基のシングルコイル、シンクロナイズドトレモロを搭載したブリッジというストラトの基本仕様を踏襲していないのが興味深い。ブラックを基調に仕上げられた精悍なこのギターは、3曲目「THE NEPENTHES」でもハムバッカーならではの骨太なサウンドを冴え渡らせていた。


オープニングの3曲でプロトタイプが使用されたあとはKen Stratocaster Experiment #1をメインに使用。オリジナルホワイトのボディとマッチングヘッド、エルボーコンターのゴールド塗装、ゴールドのハードウェア、ken本人の手によってボディトップに彫刻されたSHINING HEART。金継ぎが施された陶器を彷彿とさせる姿は、ステージ上でライトを浴びると一際美しい。クリーントーンのアルペジオ、空間系のエフェクト、サステインを利かせたロングトーン、情感豊かなアーミングが映えるこのギターは、「砂時計」「a silent letter」「Taste of love」「Voice」「Vivid Colors」「flower」「It’s the end」など、さまざまな曲を輝かせていた。

Stratocasterの普遍的な魅力を土台としているギターだが、低音域から中音域にかけてのバランスの良い響きを引き出すアルダーボディ&メイプルネック、太目に仕上げられたネックグリップ、バックコンターをあえてなくした剛性の高いボディに直付けにされたピックアップ・V-Mod II & Fat 50’s、リアとフロントをミックスできるピックアップバランサーなど、こだわりの仕様も盛り込まれている。ドラマチックなソロ、美しく響かせるコード、瑞々しいアルペジオなど、多彩なニュアンスを使い分けるkenにとって、かけがえのない存在となっていることを再確認させられた。


そして、「Blame」での表現力豊かなプレイにもぜひ触れておきたい。スタンドにセッティングされたナチュラルカラーのAmerican Acoustasonic Stratocasterは、デジタルサウンドプロセッサーのTone Master Proに接続され、アンプヘッドは「Tube Preamp」をセレクト。EQやコンプレッサーなど、複数のペダルを組み合わせた専用のプリセットを切り替えつつ、オーガニックなサウンドを響かせていた。そして、Ken Stratocaster Experiment #1に素早く持ち替えてからは流麗なフレーズを連発。圧倒的な華があるのは言うまでもないが、多彩な音色、フレージング、ニュアンスで裏打ちされているのがkenのギタープレイだ。アコースティック色の強いこの曲では、豊かな表情のサウンドにじっくりと向き合うことができた。

L’Arc~en~Cielに関するマニアックなクイズが大型スクリーンを通じて出題された“THE L’ArQuiz”を挟んで、ライヴは終盤へと突入。「GOOD LUCK MY WAY」を皮切りに、2ハムバッカー仕様のプロトタイプが再び存在感を示した。飛び跳ねながらプレイする場面もあった「Killing Me」。東西南北に向かって張り巡らされた花道の先端にも躍り出ながら観客の歓声を浴びた「自由への招待」など、kenの活き活きとした姿が印象的だった。音を奏でるピュアな喜びを、全身に溢れ返らせることができるのも彼のギタリストとしての大きな魅力なのだと思う。

「Bye Bye」以降はKen Stratocaster Experiment #1が使用された。ミラーボールが放つ光と温かなギターサウンドが美しく融け合った「ミライ」。銀テープが発射された直後、客席に数個のバルーンが投入され、観客を明るく盛り上げた「Link」。そしてラストを飾ったのは「MY HEART DRAWS A DREAM」。クリーンのロングトーンを活かしたkenの演奏から始まり、爽やかなサウンドが広大なさいたまスーパーアリーナを満たしていった。“夢を描くよ”と大合唱する観客の声が心地よい。客席に降り注いだ紙吹雪が星々のように輝く様も、この曲を一際感動的なものにしていた。

全曲を終えて、ステージをあとにしたメンバーを見送る大きな拍手と歓声。観客たちは、とても満ち足りた表情を浮かべていた。L’Arc〜en〜Cielには、ライヴで披露する機会がなかなか巡ってこない名曲がたくさんある。kenのギタープレイがレアな曲を活き活きと躍動させる様に、えも言われぬ幸福を感じることができたツアーであった。


【SET LIST】
1. All Dead
2. EXISTENCE
3. THE NEPENTHES
4. 砂時計
5. a silent letter
6. Ophelia
7. Taste of love
8. Voice
9. Vivid Colors
10. flower
11. It’s the end
12. shade of season
13. Blame
14. 叙情詩
15. GOOD LUCK MY WAY
16. Killing Me
17. 自由への招待
18. Bye Bye
19. ミライ
20. Link
21. MY HEART DRAWS A DREAM


L’Arc~en~Ciel : www.LArc-en-Ciel.com/

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