Cover Artist | Mrs. GREEN APPLE -前編-
「青と夏」は “THE ミセス”と言える 曲を作ろうと思ったんです
メジャーデビュー以降の躍進が著しい5人組ロックバンドMrs. GREEN APPLE(以下:ミセス)が、映画「青夏 きみに恋した30日」の主題歌として書き下ろした表題曲を含む7thシングル「青と夏」を8月1日にリリースした。原点回帰をテーマに、ミセスらしいアンセミックかつポップなロックナンバーになった表題曲とカップリング「点描の唄(feat.井上苑子)」「ア・プリオリ」について、大森元貴(Vo,Gt)、若井滉斗(Gt)、髙野清宗(Ba)の3人にインタビュー。オリコン初登場3位を記録した3rdアルバム「ENSEMBLE」をひっさげ、5月からバンドにとって最大規模となるホールツアーを全国各地で開催してきた彼らは、9月8日と9日、幕張メッセ国際展示場でワンマンライヴを行う。
― 「青と夏」はライヴでみんなで歌える曲になりましたが、久しぶりに難産だったそうですね?
大森元貴(以下:大森) 3rdアルバム「ENSEMBLE」はミセスの第1章の集大成と言えるものになったんですけど、エンターテイメント性に加え、ジャンルもボーダーレスに作ろうというテーマもあって、ある意味、作家気質になって作ったところもあったんです。ミセスだからこういう曲じゃなくて、純粋に歌っていて、演奏していて、聴いていて、楽しい音楽を作ろうと考えたんですけど、「青と夏」はほんとに“THE ミセス”と言える曲を作ろうと思ったんです。ただ、スタンス的に作家気質になっていたところから自分の等身大に戻って、曲を作るっていう感覚になかなか戻れなくて。だから、原点に回帰しようと思って、デビューしたばかりの頃、どうだったかなってことをたくさん考えたりしました。そういう意味では、メロディーが浮かばない苦しみとは違って、自分が納得できるかどうかってところでの産みの苦しみでしたね。
― 納得できる、できないのポイントはどこだったんですか?
大森 「ENSEMBLE」からの第2章というか、2周目を始めるにあたって、自分で掲げている原点回帰に相応しい曲ってどういうものなんだろうって。
― 2周目を始めるにあたっては、原点に戻りたかったんですね?
大森 そうですね。やっぱりバンドなので。「青と夏」もストリングスは入っているんですけど、極力5人で完結できるアレンジを心がけました。
― 産みの苦しみの中で、突破口を見つけるキッカケって何かあったんでしょうか?
大森 みんなで聴いたんだよね。
若井滉斗(以下:若井) そうそう。
大森 今だったら、もっと理屈で考えちゃうようなことが、当時はファーストタッチでできたんで、今とは違う熱量があるんですよ。荒い部分は荒いんですけど、そこがバンドっぽかったりして。
若井 そうだね。
― 今回の原点回帰には、その頃の熱量を取り戻すことも含まれているわけですか?
大森 そうですね。だから、みんなで“せーの録り”もしているんです。そういう意味では、バンドらしいレコーディングができました。
― 「青と夏」のデモを聴いたとき、お2人はどんな印象を?
若井 久しぶりにギターリフが前面に出た曲が来た!と思いました。
髙野清宗(以下:髙野) バンドサウンドが前面に出ているんですけど、憂いを帯びた部分をもっと表現できるようになっているんだから、原点回帰とは言いながら、以前とは違うものにできるだろうって。
大森 そ以前は勢いに頼っていたところもあるので、歌詞が憂いを帯びているのに演奏が伴っていなかったところもあったんです。それが今回、歌に寄り添ってくれるようになったのかな。
― おっしゃったようにギターが前面に出た曲になっていますが、ギターおよびベースのアレンジのポイントは?
若井 リードギターは終始、細かいフレーズを弾いているんです。それが曲が持っている疾走感や爽やかさを担っていると思います。
大森 そのフレーズが難しい上に、曲そのもののBPMの倍の速さで弾いているところもあるので、かなり難易度が高い。
― そこは単純に原点に戻ったわけではない、と?
大森 ギターリフを聴かせる曲を久々にやるんだから、とことん聴かせようって作ってたら、結果的にそうなっちゃったんです(笑)。
若井 しかも9カポなんですよ。それで開放弦も使いながらハイフレットでずっと動いているという。
― その一方で、ベースは演奏を支えるところでは支えることに徹したり、疾走感を生み出したり、テンポが落ちるところではメロディーを奏でたり、1曲の中で緩急をつけたプレイをしていますね。
高野 疾走感が必要なところでは、あまりお行儀良くならないように、BPMにしっかり合わせてと言うよりは、ちょっと突っ込んでもいいから疾走感を大事にしました。
― “せーの録り”はいかがでしたか?
若井 1回1回の緊張感はありましたね。
大森 いい意味での荒さが味になればいいと思いながら、みんなけっこう突っ込んで演奏してたよね。
若井 ライヴみたいに頭を振りながらね(笑)。
― カップリングの「点描の唄」は同じ映画の劇中歌ですが、「青と夏」とは打って変わって井上苑子さんとのデュエットによるバラードです。
大森 台本をいただいて、“ここからここまでのシーンでかかる”と事前に教えてもらっていたので、そこに合うように。けっこうセリフがあったんですけど、“そのセリフを歌で代弁してもらえるならセリフは消すよ”って言ってもらえて。でも、それってプレッシャーじゃないですか(笑)。だから、「青と夏」はバンドの等身大というテーマがありましたけど、「点描の唄」は映画に寄り添って作っていきました。なおかつ井上苑子ちゃんとのデュエットでもあったので、バンドサウンドで攻めた「青と夏」とは逆にヴォーカルが立つようなアレンジを意識しました。
― ピアノとストリングスがメインに聴こえるアレンジの中で、ギターはどういう役割を担っているんでしょうか?
若井 リヴァービーなサウンドで背景に徹してます。
大森 この曲はストリングスがメインなんですよ。髙野も実はコントラバスを弾いているんです。だから、ベースと言うよりは…。
高野 ストリングスのひとつとして。
大森 ストリングスとギターの役割が入れ替わっているという発想なんです。映画の劇中歌で、いかにもいい曲ってアレンジはたくさんあると思うんですけど、そうじゃないアプローチを意識しました。ピアノがアコースティックで、ストリングスも全部生で録っているんですけど、ドラムだけ打ち込みを重ねて、そういういい意味でのアンバランスさがあったら面白いだろうなと思いながら作っていったんです。
― コントラバスは以前から弾いていたんですか?
高野 最近ですね。
大森 僕がムチャ振りしてからです(笑)。ミセスの楽曲は、けっこう僕が打ち込みでいろいろな楽器を入れるので、若井がレコーディングの1週間前に急にバンジョーを弾かなきゃいけなくなったりっていうのがあるんですよね。
高野 でも、それがきっかけでコントラバスだったり、シンセベースだったりが段々できるようになってきて、そういう意味ではプレイヤーとして幅が広がったと思います。
大森 ギタリスト、ベーシストとしてはもちろんなんですけど、演奏家として作品に向き合ってもらえたら面白いんじゃないかと思っているので、そういう試みをたまにするんですよ。僕も曲を作る時は全部の楽器を演奏しながらアレンジしますし、そういうところで、それぞれの音楽心をわかっていてもいいのかなって。普段の自分のパートだけじゃない価値観で曲と向き合えたら、バンドとして広がるものがあると思って、そういう提案をしているんです。
― そして3曲目の「ア・プリオリ」」は、「青と夏」以上にロックギターの醍醐味が全編で味わえる1曲になっています。
大森 楽器がぶつかってそうでぶつかっていない奇妙な歌なんですけど、それぞれの楽器が別の動きをしているのに合わさった時、ひとつのものになっている。そういうものを目指して作っていきました。
高野 正直、最初に聴いた時は気持ち悪い曲だと思いました(笑)。
大森 ハハハハ。こういう曲が「青と夏」「点描の唄」と同じ盤に入っているところが面白い。映画の主題歌と劇中歌でゴリゴリにタイアップで攻めているところに、こういうヒネくれた曲がいるっていうのが。
― まさにミセスの面白さですよね。
大森 昔からそうなんですよ。だから、ライヴハウスで30分5曲みたいなライヴをやっていた頃は、自分らの幅広さを表現し切れないことがストレスでした(笑)。そういう経験をしているから、こういうふうに1枚のシングルで、全然違う3タイプの曲を入れて、世の中に届けられるっていうのは嬉しいですね。
› 後編に続く
大森元貴:Telecaster
「試しに弾いた時、音の立ち上がりが太かったんです。それが気持ち良くて、一発鳴らして買いますって決めました。いろいろなプレイにちゃんと寄り添ってくれるオールマイティなギターです」(大森)
若井滉斗:Stratocaster
「赤べっこうのピックガードに一目惚れしました。ミセスの楽曲っていろいろなタイプがあるから、それに対応するならストラトだと思って。右手のタッチでけっこう音色が変わるんです。ストラトを使うことで、ギタリストとしてのスキルも上がるんじゃないかって思いました」(若井)
髙野清宗:Precision Bass
「プレシジョンベースって鳴らそうって意識で弾かないと、音がちゃんと出てくれないことに気づいて。そこがいいな。自分も一緒に成長できたらいいなという思いを込めて買いました。1年弾いてみて、買った当初の鳴らしていた感覚と比べると、今はもっと気楽に弾けるようになったんじゃないかな」(高野)
PROFILE
Mrs. GREEN APPLE
2013年結成。メンバーは、大森元貴(Vo,Gt)、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Kb)、髙野清宗(Ba)、山中綾華(Dr)。2015年、ミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。2018年4月 3rdフルアルバム「ENSEMBLE」。9/8(土)&9/9(日) 幕張メッセにて開催される「ENSEMBLE TOUR」は即日完売。
› Website:https://mrsgreenapple.com
New Single
青と夏
【初回限定盤(CD+DVD)】¥1,700(tax in)
【通常盤】¥1,200(tax in)
ユニバーサル
2018/08/01 Release