Unlimited Expression | Char x 山内総一郎(フジファブリック)-前編-

UNLIMITED EXPRESSION

フェンダーが提案する新機軸のギター「American Acoustasonic」シリーズを使って、アーティストが自由に、そして無限の表現を繰り広げる「UNLIMITED EXPRESSION」。 記念すべき第1回目は、Stratocasterの名手であるCharと、フジファブリックの山内総一郎による、世代を超えたクロストークを前編、後編にわたってお届けする。前編では、フェンダーStratocasterとの出会いやその魅力、憧れのStratocasterプレイヤーについて熱く語ってもらった。


Stratocasterはカスタマイズしながら “自分のもの”にしていく過程が楽しい(Char)
こちらのやりたいことを自在に表現してくれる、 常に表現者に一番近い距離にいてくれる楽器(山内)
 

―  お2人がフェンダーのStratocasterと最初に出会ったのはいつですか?

Char  俺は小学生の頃、銀座の山野楽器でショーケースに入ったStratocasterを見たのが最初かな。当時の値段で確か28万円とかだった気がする。お年玉を全部かき集めたって1000円いかないんだから、こんなの一生買えないなと思ったな(笑)。初めて手にしたのは高校を卒業する頃。仕事をして金を貯めて、ようやく友人から買うことができた。それが生まれて初めて手に入れた、本物のStratocasterだったんだよね。それまでは中古で買った、オンボロのギターとか使っていたから(笑)。

山内総一郎(以下:山内)  僕は中学2年生くらいの頃ですね。それまではずっと家のアコギを弾いていたんですけど、だんだんエレキギターが欲しくなってきて。父親は趣味でバンドをやっていて、ザ・ビートルズが大好きだったんですよ。なので、酔っ払っているタイミングを見計らって、“エレキギターが欲しいんだけど”ってねだりました(笑)。

Char  あははは! それは名案だったね。

山内  それで近所の楽器屋さんへ行って、ひと目惚れしたのが店頭に飾られていたメタリックブルーのStratocasterだったんです。Stratocasterって独特のフォルムというか、グネッとしているじゃないですか。無機質なデザインとは真逆なのがカッコいいと思ったんです。その頃はまだギターの知識もまったくなかったので、とにかく好きなデザインのギターで練習したいなと。そういうわけで、僕にとって“初めて弾いたエレキギター”がStratocasterでした。

 
 

―  では、Stratocasterの名手というと誰を思い浮かべますか?

Char  やっぱりジミ・ヘンドリクスだよね。ウッドストックの映像を最初に見た時は“こんなことをやっていいんだ!”と思った。それまでアームと言えばトレモロ奏法くらいしかなかったんだけど、あんなにトリッキーな音も出せるのかと衝撃を受けましたね。そういう意味ではStratocasterって、自分の個性を出しやすいのかも知れない。まぁ、ジミヘンの場合はその個性がずば抜けているけどね。子供の頃からクリームやレッド・ツェッペリンを繰り返しレコードで聴いて、ギターのフレーズをコピーしまくっていたけど、ジミヘンだけはいくら聴いても何だかよくわからなかった。ひたすらアンプをぶっ壊しているだけの曲もあるしね。

山内  あははは、確かに。

Char  若い頃は、そういうトリッキーなサウンドに惹かれたけど、だんだん彼の作るバラードに興味が移っていって。そうすると、ギターがメチャメチャいい音だということに気づくんですよ。ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスはトリオ編成だから、ギターのタッチやニュアンスもよく聴こえるし、そこでまたStratocasterの魅力を再発見したというか。アームも付いているしピックアップも3つ搭載されているから、いろいろな表情を出しやすいんだなと。

山内  ジミヘンは1曲の中でコントロールノブをやたら切り替えていますもんね。僕らの世代になってくると、ストラト使いのギタリストもたくさんいたんですよ。日本人だとやっぱり筆頭はCharさん。よく行く楽器屋さんでも、“Charさんがギターを買い替えると、同じものを買いに来るギタリストがたくさんいる”と教えてもらいました。そのくらいCharさんフリークの人がいたわけですよね。だから、僕にとって“ストラトの名手”と言えばCharさんですね。海外だと、ジョン・メイヤーや僕の世代じゃないけどスティーヴィー・レイ・ヴォーンあたりは大きかったと思います。

Char  ああ、確かに。“ジミヘンに続くギタリストなんて当分現れないだろうな”と思っていたらレイ・ヴォーンが出てきた。そのインパクトはデカかったね。

山内  あとはジェフ・ベックも大きいですね。今、Charさんがジミヘンの偉大さを話してくださいましたけど、影響力という意味では同じくらいあったと思います。ビートルズのプロデューサー、ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンのコンピレーションアルバム『IN MY LIFE』でビートルズの「A Day in the Life」をカバーしているんですけど、これがストラトの音なのか!とびっくりした記憶があります。

Char  インストでこんなことやる奴、今までいなかったよね。まぁ、(エリック・)クラプトンも忘れちゃいけないんだけど。

山内  確かに(笑)! でも、僕らの世代にとってクラプトンは「ティアーズ・イン・ヘヴン」の印象がでかいんですよね。ギタリストというより、ヴォーカリストというイメージを持っている人も多いんじゃないかな。

―  ギタリストであるお2人にとって、Stratocasterの魅力というと?

Char  まずは壊れないこと(笑)。Stratocasterに限らず、フェンダーは本当に丈夫なんだよ。ツアーに出ると過酷な状況で扱うことも多いのだけど、全然トラブルが起きない。

山内  壊れないというのは僕も同感です(笑)。それと、とにかく弾きやすいのがStratocasterの魅力ですね。フェンダーの他の機種ももちろん弾きやすいんですけど、Stratocasterは体にフィットするというか。サイズ感が絶妙なんですよ。なので、歌いながらでもボリュームを簡単に操作できるんです。

Char  完成され過ぎていないところも魅力だよね。カスタマイズしながら“自分のもの”にしていく過程が楽しい。

山内  確かにStratocasterは、自分の色に染めやすいところがありますよね。今までいろいろなギターを手にしてきましたが、曲作りでもセッションでも最初にパッと手に取るのはStratocasterの場合が多いんです。こちらのやりたいことを自在に表現してくれる、常に表現者に一番近い距離にいてくれる楽器というか。今後、AIが発達して自動演奏が増えても、シンプルだからこそ人にしか出せない音を追求してくれるのがStratocasterなのかなと。

Char  これだけ世の中が変わって、テクノロジーもどんどん発展していっているのに、デザインも機能も70年近くずっと変わらないってすごいことだよね。だからこそ、弾き手の“個性”に委ねられているというか、弾く人のタッチで音色も表現もまったく変わる。裏を返せば、弾き手がしっかりしていないとコードすら押さえられない。そういう楽器だからこそ、未だに打ち込みでも再現できないんだよね。


› 後編に続く



AMERICAN ACOUSTASONIC® STRATOCASTER®

American Acoustasonic™ Stratocaster®は、フェンダーの進化し続けるイノベーションスピリットを体現した製品です。Fishman®と共同開発されたアコースティックエンジンはアコースティックギターとエレクトリックギターのトーンを縦横無尽に行き来できる無限の可能性と柔軟性を提供します。

 

PROFILE


Char
1955 年6 月16 日東京生まれ。本名・竹中尚人(たけなか ひさと)。ZICCA RECORDS 主宰。8 歳でギターをはじめ、10 代からバックギタリストのキャリアを重ねる。1976 年『Navy Blue』でデビュー以降、『Smoky』『気絶するほど悩ましい』『闘牛士』等を発表。 Johnny, Louis & Char 結成翌年、1979 年に日比谷大野外音楽堂にてフリーコンサート「Free Spirit」を行う。1988 年 江戸屋設立以降、ソロと並行して、Psychedelix、BAHO での活動を行う。2009年にはWEB を主体としたインディペンデントレーベル「ZICCA RECORDS」を設立し、自身が影響を受けたギタリスト( エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ベンチャーズ、ジミ・ヘンドリックス等) のカバーであるTRADROCK シリーズ(DVD/CD) 全7タイトルを発表。2015 年5 月、十二支のアーティストによる書き下ろしアニヴァーサリーアルバム『ROCK十』( ロック・プラス) を発表 6 月15 日、 生れ還る暦を迎える前夜に、13 組のアルバム参加アーティストをシークレットゲストに迎え、武道館公演を開催。7 月、日比谷野外大音楽堂にて、フリーコンサート「RockFree」を開催。2016 年、デビュー40 年を記念した全国28 箇所のツアー「1976+40」を敢行。また、ギターマガジン誌による、プロギタリストを中心とした音楽関係者へのアンケート投票「ニッポンの偉大なギタリスト100」にて、1 位に選ばれる。2018 年、Fender Custom Shop にて日本人初のプロファイルドモデルを発表。 オリジナル楽器ラインZICCA AX も展開し、2020年にはギターマガジン誌による「日本の偉大なギター名盤」に1stアルバム「Char」が一位に選ばれる。 7月には初の弾き語りアルバム「STAYING ZICCA」を発表。現在、ZICCA AXにてCharプロデュースによる新しいMustang、”Char Mustang 2020 -Limited Model-” (全6色)もZICCA.NETにて絶賛販売中。

› Website:https://www.zicca.net


山内総一郎(フジファブリック)
1981年大阪市茨木市生まれ。15歳から音楽を始める。大学在学中からプロミュージシャンとして活動、その後は東京に拠点を移す。2004年1月フジファブリックにリードギタリストとして正式加入。現在の体制となってから、フロントマンとしてボーカル&ギター、作詞作曲を手掛ける。愛器はフィエスタレッドのストラトキャスター。2016年フェンダー社とエンドースメント契約を締結、アンバサダーとして活動。また自身のギターをモデルとしたシグネチャーモデルも販売した。

› Website:https://www.fujifabric.com

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