Cody・Lee(李) ONE MAN LIVE TOUR “愛してますっ!を伝えにいきますTOUR”
ロックバンド、Cody・Lee(李)が全国ツアー〈Cody・Lee(李) ONE MAN LIVE TOUR “愛してますっ!を伝えにいきますTOUR”〉を開催。そのファイナル、渋谷Spotify O-EAST公演の模様をレポート。
フリーキーなアンサンブルの要素を担うAcoustasonic Player Telecaster
2018年に大学の友人たちによって結成されたロックバンド、Cody・Lee(李)。インディーズでの活動を経て、今年5月25日にアルバム『心拍数とラヴレター、それと優しさ』でメジャーデビューした彼らが、6月24日の仙台公演を皮切りに〈Cody・Lee(李) ONE MAN LIVE TOUR “愛してますっ!を伝えにいきますTOUR”〉を開催した。全国7都市を廻るツアーは、今年、ブレイクを期待されている若手の1組に数えられているCody・Lee(李)にとって大きなステップアップにつながったようだ。そんなことを確信させたツアーから、ツアーファイナルとなった渋谷Spotify O-EAST公演の熱演をレポートする。
観客の手拍子がバンドを歓迎する中、高橋響(Vo,Gt)がメンバー1人1人と握手を交わしてから、Cody・Lee(李)のライヴはスタートした。
「ツアーファイナル! 自由に楽しんでいってください!」
高橋が声を上げながら、バンドはファンキーなポップロックナンバー「愛してますっ!」、ミラーボールが眩い光を放つ中、リラックスしたラップを披露したダンサブルな「トゥートルズ」、そして牧歌的なポップナンバー「I’m sweet on you (BABY I LOVE YOU)」と軽やかな3曲をつなげ、スタンディングのフロアを揺らしていった。
そんな序盤から5人の演奏は早くもユニークさをアピール。ニシマケイ(Ba,Cho)と原汰輝(Dr,Cho)がどしっとリズムを支える上で、高橋と尾崎リノ(Vo,Ag)が軽やかに刻むカッティングに、曲ごとに音色を変えながら力毅(Gt,Cho)が奏でる印象的なフレーズが絡むバンドアンサンブルからは、楽曲のポップな魅力とは裏腹にポップという言葉には収まりきらない、このバンドならではと言える個性が感じられ、筆者は思わずぐっと身を乗り出した。
1曲目の「愛してますっ!」から尾崎が演奏していたフェンダーのAcoustasonic® Player Telecaster®(Butterscotch Blonde)(以下:アコスタ)の、ルックスも含めまさにソリッドボディとホロウボディの中間と言える特徴的な音色も、曲を重ねるごとにどんどん立っていき、「I’m sweet on you (BABY I LOVE YOU)」で鳴った、空間を押し広げるようなコードの響きは、序盤における聴きどころの一つだったと言ってもいい。そして、そこに高橋が鳴らした乾いたトーンのコードと力毅によるリードフレーズ、音符の数が増えたニシマのベースが重ねられ、5人の演奏は一気にヒートアップ。ポップな曲を演奏してもしっかりと熱を込めるところは、このバンドならではだ。高橋が手にしているのは、フェンダーのMade in Japan Traditional 60s Telecaster(Vintage White)(以下:テレキャスター)。クリーム色のボディの中に白いピックガードが鮮やかに映える、個性的なルックスを選ぶところに高橋ならではのセンスが感じられる。
「全国7都市をワンマンで廻るツアーは今回が初めて。基本、家から出たくない人なので、1ミリもファイナルに辿りつけるとは思っていませんでした(笑)。見に来てくれる人に感謝しながらステージに立っています」(高橋)
今年5月にメジャーデビューしたCody・Lee(李)にとって、今回のツアーは新たな挑戦だったようだ。その挑戦の成果をアピールするため、この日、バンドが披露したのはアルバム『心拍数とラヴレター、それと優しさ』からの10 曲に、インディーズ時代からライヴで演奏してきた曲の数々を加えた全18曲。
“ここからはCody・Lee(李)、珠玉のサマーソングゾーンです”という高橋の言葉とともに突入したブロックでは、「キャスパー」「異星人と熱帯夜」「冷やしネギ蕎麦」「江ノ島電鉄」といったシティポップにも通じる魅力を持った4曲を、力毅のエキセントリックなギタープレイとともに披露。テレキャスターの乾いたトーンと、力毅が鳴らすウェットな音色の対比を際立たせた「異星人と熱帯夜」では、高橋に促され、お立ち台の上に立った尾崎がソロをキメるという見どころも! そんな尾崎が奏でるアコスタは、バウンシーな演奏に観客が手拍子で応えた「江ノ島電鉄」でも、アンサンブルの中に埋もれないそのユニークな音色が存在感をアピール。歯切れの良いカッティングを奏でる尾崎を見ながら、音色のユニークさもさることながら、薄いボディに由来する弾きやすさ、持ちやすさも尾崎がアコスタを愛用している大きな理由なのかもと思ったりも。
「東京が揺るぎないホームだと思いました!」
観客の盛り上がりを目の当たりにした高橋が快哉を叫ぶ。
「札幌公演からの帰りのフェリーの中で人生ゲームをやろうと思って、MEGAドンキで買ったんだけど、海が大荒れで、開けることすらできなかった(笑)」(力毅)
そんなエピソードを交えながらツアーを振り返るメンバーの言葉からは、様々な経験を共にしながら、バンドの結びつきがさらに強いものになったことが窺えた。「WKWK」では、そんなバンドの一体感を物語るように原、力毅、ニシマが歌をリレー。ラスサビはメンバー全員で歌声を重ねる。
「なぜ今回〈“愛してますっ!を伝えにいきますTOUR”〉というツアータイトルにしたのか。みんながライヴに来てくれたり、CDを買ってくれたり、サブスクで聴いたりしてくれるから、僕たちは今日も元気でいられて、楽しくバンドができるし曲が作れる。僕らなんかでいいのかな?と思うこともあるけど、そのぶん、頑張ろうと思っているんです。若輩者ですけど、その感謝の気持ちを返すつもりでツアーを廻ってきました。今日はビッグラブを返せると思います。愛の歌をやります!」(高橋)
その愛の歌「LOVE SONG」と次の「honest」では、それまでの曲調から一転、存分に歪ませたギターの音色とともに60~70年代を思わせるロックサウンドを大音量で鳴らして、バンドが持つバックラウンドの幅広さと、そこに由来する曲の振り幅をアピールしていった。力毅は泣きをたっぷりと含んだ「LOVE SONG」のギタリスト然としたソロを聴き、彼がただエキセントリックなプレイだけを得意としているギタリストではないことを知る。また、その2曲でニシマはメイン器である白いフェンダーのPrecision Bassを、最近購入したらしい71年製のPrecision Bassに持ち替えていたが、そこに音作りに対するこだわりを感じたりも。
そこからさらに一転、ダンスロックの「悶々」をつなげると、高橋は“イヤなことがいっぱいあるじゃないですか。でも、そういう気持ちに寄り添えるのがCody・Lee(李)。みんなが疲れた時、頼れる存在や帰って来られる場所でありたい!”と宣言。それは今回のツアーの中で芽生えた気持ちなのか、以前から思っていたものなのかはわからないが、こうしてライヴ中に宣言したところに大きな意味があると思うし、そんなふうに堂々と言えるようになったところに今回のツアーの成果があるんじゃないか。
『心拍数とラヴレター、それと優しさ』にも収録されている、インディーズ時代のラスト配信シングル「世田谷代田」から、ラストスパートをかけるようにつなげた「drizzle」では、尾崎が弦を指ではじく音も含め、アコスタが持つアコースティックサウンドがフリーキーなアンサンブルの要素の一つとして、しっかりと際立っていた。そして、尾崎の伸びやかなハイトーンヴォイスが観客を魅了したバラードの「桜町」で本編を締め括ったバンドは、アンコールに応え「我愛你」「初恋・愛情・好き・ラヴ・ゾッコン・ダイバー・ロマンス・君に夢中!!」「When I was cityboy」の3曲を披露。
MVが台湾やアメリカでバズったというアップテンポのファンクナンバー「我愛你」では、弦の震えまで聴こえるような高橋のテレキャスターのソリッドな音色と、ディレイを掛けたと思しき力毅のギターの艶っぽい音色の違いも聴きどころだったが、曲の終盤では、それぞれにお立ち台に立った高橋と力毅がソロを掛け合い、リードフレーズを重ね、観客を歓ばせるという見どころも飛び出した。そして、高橋、尾崎、力毅がギターをかき鳴らしながら、「初恋・愛情・好き・ラヴ・ゾッコン・ダイバー・ロマンス・君に夢中!!」と「When I was cityboy」、アップテンポのロックナンバーをたたみかけ、2時間の熱演は幕を下ろした。
「初めてのツアー、楽しかったです。また、いろいろなところに行きたい。ゆるっとみなさんの日々の生活に少しでも寄り添えたらと思います」
アンコールの前に高橋が語った言葉どおり、バンドは10月から自主企画スリーマンツアー〈Cody・Lee(李) SPECIAL LIVE TOUR ようこそ!すももハイツへ -3LDK- 2022〉を開催することを発表した。今回のツアーの手応えは、そこでさらに大きなものになるに違いない。
【SET LIST】
1. 愛してますっ!
2. トゥートルズ
3. I’m sweet on you(BABY I LOVE YOU)
4. キャスパー
5. 異星人と熱帯夜
6. 冷やしネギ蕎麦
7. 江ノ島電鉄
8. WKWK
9. W.A.N.
10. LOVE SONG
11. honest
12. 悶々
13. 世田谷代田
14. drizzle
15. 桜町
ENCORE
1. 我愛你
2. 初恋・愛情・好き・ラヴ・ゾッコン・ダイバー・ロマンス・君に夢中!!
3. When I was cityboy
Cody・Lee(李):https://codyleeofficial.com/