Cover Artist | SILENT SIREN -後編-

今の自分たちができることでお客さんをハッピーにさせたい

前編では、ギターとベースを始めたきっかけや当時購入した楽器の話など、自身のルーツについて語ってくれたSILENT SIRENのすぅ(Vo,Gt)と山内あいな(あいにゃん/Ba)。後編ではSILENT SIREN活動休止中に考えていた葛藤やバンドに対する思い、そして活動再開後初となる楽曲「Sus4」などについてじっくり語ってくれた。

サイサイじゃなかったら私は音楽をやらない

──SILENT SIREN(以下:サイサイ)の再始動にあたっては、相当な思いや覚悟があったんだろうな、と想像できます。

あいにゃん 活動休止中の二年間っていう時間が長かったのか短かったのかはまだ客観的に見ることはできないんですけど、自分たちで会社を立ち上げていたので、メンバーと接する機会は常にあったんですよね。

すぅ そうそう。ただ、全員が同じ場所にいるんだけど、バンドを再始動させるのかどうかは誰にもわからなかったし、それこそドラマーがいないわけで、再始動する時のメンバーの人数すら想像できなかったんです。加えて、やらなきゃいけない仕事がたくさんあって、再始動については話せない空気が一瞬あったし、でも話したら絶対に進んでいくっていうことも感じていて。私たちは“四人”っていうことにこだわりがあったけど、メンバーが脱退した時にそれが崩れて。そこで新しいメンバーを入れるという決断はできなかったから、一旦ストップして体制を整えようと。その中で、今の自分たちができることでお客さんをハッピーにさせたいということで会社を立ち上げたんです。

──なるほど。

すぅ これまでにやったことのないような作業を自分たちでやって、新たな経験値やスキルは手に入れたものの、10数年もやっていたバンド活動がなくなったことで“自分たちは何者なんだろうね”みたいな会話はけっこうしていて。あと、あいにゃんは絵もすごく頑張っていて、絵の世界でどんどんすごいところまで行ってしまったから、お互いに何を考えて、今どうしたいんだろうっていうことを聞けなくて。でも、あいにゃんはずっと“すぅが(バンドを)やりたいって思った時が来ればついて行く”とはずっと言ってくれていましたね。

──メンバー間で話はしているけど核心に触れないという。

すぅ そもそも音楽を続けるとか続けないとか、そういう話題すらタブーな気がしていて。で、2022年に私が入院して手術をすることになったんです。手術は無事に終わったんですけど、そういった時も音楽に支えられたし、ダメかもしれないってところまで本当に行った時に、このまま死んだら悔いが残るなって思って。やっぱり音楽をやっていないと死にきれないっていう気持ちになったんです。で、2023年の夏くらいに〈COUNTDOWN JAPAN 23/24〉のお話があって、何はともあれ、そこからスタートしよう!って。みんなでジワジワっていう感じではなく、突然動き始めた感じでしたね。

あいにゃん すぅの中ではサイサイに対するビジョンが明確にあって、再始動後のことを一番思い描いていて、ただどういう編成になるかっていうところだけがフワッとしてしまって。

すぅ そう。この二年の中で四人ではなくなっちゃったけど、絶対にバンドっていう形は壊したくない、でもそれができないかもしれないっていう葛藤もあったんです。でも、サイサイじゃなかったら私は音楽をやらない、とも思ったんですよね。あとは、別の形で曲を発表してみようって考えたこともあったけど、それも“何かそうじゃないよな”って思う時もあって、とにかく自分だけではなかなか進めないでいたかも。だから本当にバンドとして活動できることに対して、私はどのファンの方よりも喜んだと思うし、それはメンバーもみんな一緒だと思います。

あいにゃん 自分たちのことなんだけど、本当に自分のことのように喜んだよね(笑)。一番いい形で復活できたなって。

すぅ もっとあとだったら実現できなかったかもしれないし、早くてもタイミングじゃなかったかもしれない。今だからできたのかなってすごく思います。

──実際に〈COUNTDOWN JAPAN 23/24〉のステージに立っていかがでしたか?

すぅ 二年ぶりのライヴで、いきなり数千人の前に立つことってなかなかないじゃないですか。お客さんの歓声を聞いて、どうなっちゃうんだろうとか、客席がスカスカだったらどうしようとか。本番で緊張して頭が真っ白になったらどうしようとか思っていたけど、すごく楽しくて“自分たちの仕事ってこれじゃん!”って思いました。この二年間にやってきたことも大事だったけど、この日のために頑張れたし、この日のためにいろいろなことに挑戦できたんだなって。

サイサイらしいポップな感じって、サイサイにしか出せない

──再結成後初となる楽曲「Sus4」には、どんな思いを込めましたか?

すぅ ギターコードの「Sus4」の響きって浮遊感があるけど次に進みたくなるコードで、構成音の四度の音を三度に移動させると安定する感じがあって。私たちも四人から三人になることで、もっといい音楽をやりたいな、もっと強くなっていくんじゃないかなっていう意味を込めたんです。ちょっとクールにイメージチェンジしてみたいなとか考えたんですけど、二年間も待っていてくれていた人が見たいのって“サイサイっぽさ”だよなと思って。サイサイらしいポップな感じって、サイサイにしか出せないというか。まず最初にそれをやるのが、お客さんに対する表現なのかなと思いました。

あいにゃん 最初に撮影したメンバー写真はピンクを取り入れて、衣装もポップで華やかな感じにしてみたり。その中で私たちの意志も込めたんですよね。

すぅ 「stella☆」という曲があるのですが、当時、周りのスタッフに“私たちはこれがやりたい!”ってメンバーが初めて強く意思表示した曲なんです。今ではすごく大切な曲で、夢に向かって頑張って走っている中で、自分たちがボロボロになっても壊れて動かなくなるまで走るよっていう内容で。実際、大丈夫かな?って後ろを振り向いたら応援してくれる人がこんなにもいて。だから私たちは前に進んでいこうという気持ちを思い出したし、そういう経緯もあって「Sus4」は「stella☆」の続編である、とテーマは決めていて。三人だからこそ強くなったという曲なんですよね。

──サイサイに限らず、ブランクを経て楽器を改めて始めたいという方も多くいらっしゃると思います。そういった方々に伝えたいことは?

あいにゃん 私の場合、ブランクを超えるためにやったのは、フェスに向けて繰り返しスタジオでリハーサルするという千本ノックですね(笑)。曲の演奏はできても、テンションが上がっている中での煽りやステージ上のパフォーマンスって、やはり本番でしか感じられないと思っていたんです。でも、実際にステージに立った時、練習は裏切らないなと痛感しましたね。

すぅ 過去にやっていたことって、意外と体や指が覚えていたりするよね。一日練習しなかったら一週間後退するっていう説も事実だと思うんですけど、逆にあの時できなかったことが二年間を経てなぜかできるようになったこともあって。それが人間の体とか楽器の面白いところだと思うし、絶対に進化し続けると思うから、大変だと思っていたことを楽しさに変えていけたらいいんじゃないかなって思います。

あいにゃん ブランク期間があることで、いい意味で力が抜けて良くなったねって言ってくれる人もいましたね。逆に以前は力みすぎていたのかも。あと、例えば「stella☆」は“体が覚えている”みたいな感覚があったんですけど、昔によくやっていた曲は身体に入ってるはずだから、まずは楽器を抱えて弾いてみるといろいろと蘇ってくると思いますね。

すぅ:SILENT SIREN Telecaster | あいにゃん:SILENT SIREN Jazz Bass

>> 前編はこちら


SILENT SIREN
すぅ(Vo,Gt)、山内あいな(Ba)、黒坂優香子(Kb)の3名からなるガールズバンド。2012年11月、シングル『Sweet Pop!』でメジャーデビュー。2015年には、ガールズバンド史上最短で日本武道館単独公演を行い、2016年には横浜アリーナ公演を開催、そして、アジア・アメリカを周るワールドツアーも開催している。2017年にはデビュー5周年記念日にツアーファイナルとしてバンド初となる武道館2days公演を成功させ、2018年に自身最多公演となる全国ツアーも大盛況の中終了した。そして、2019年5月に行われたメットライフドームでの対バンライヴも大成功。2020年にバンド結成10周年を迎え、2021年9月、1年越しにバンド結成10周年ライヴ〈SILENT SIREN きららリベンジ〜サイサイ10歳祭〜〉を日比谷野外大音楽堂にて開催した。2021年12月からは4都市5公演を巡る活動休止前ラストライヴツアー〈年末スペシャルLIVE TOUR 2021「FAMILIA」〉を開催。2024年1月31日、オリジナルとしては2年ぶりとなる新曲『Sus4』を配信リリースする。
https://silent-siren.com

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