Char For Another 100 Years
今年6月16日に69歳の誕生日を迎えたCharが、自身の「ROCK(69)イヤー」を記念し9月28日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)にてワンマンライヴ〈For another 100 years〉を開催。その模様をレポートする。
ワイルドなサウンドを響かせたピカピカのStratocasterが、オーディエンスを興奮の坩堝へと誘う
サポートメンバーには、昨年からZAXに代わってタリー・ライアン(Dr)が加入。もちろん澤田浩史(Ba)と小島良喜(Key)はお馴染みの顔ぶれだ。まずは、昨年リリースされたアルバム『SOLILOQUY』から「I FEEL FREE」と、ジェフ・ベックに捧げた「JEFF 〜Soliloquy〜」を披露した。『SOLILOQUY』は作曲・楽器演奏・トラックメイクからアレンジやプロデュースまでをCharが一人で手がけた意欲作だが、それを日比谷の空の下、生の演奏で浴びるのは格別だ。
Charは自身のトレードマークとも言える、1959年製のバーガンディミストのStratocasterをメインで使用。音数を絞りこんだシンプルなアンサンブルの上で、チョーキングやグリッサンド、アーミングなどを駆使しながらまるで歌っているかのようなソロを響かせる。音の立ち上がりから弦の粒立ち、ふくよかでありながらエッジの効いたその音色は、さすが彼が“相棒”として長年使い込んだだけあり、情感のこもったそのプレイと一体になって観客を魅了した。
「こんばんは。残念ながら雨は降りませんでしたね」と、“雨男”としても知られるCharが皮肉まじりに挨拶すると、会場は笑いに包まれた。「この間までめちゃくちゃ暑かったけど、今日は芸術の秋にふさわしい素晴らしいコンサートになるよう努力します」と言って一礼したあと、「Livin’ In Tokyo」のイントロが奏でられると客席から自然発生的にハンドクラップが鳴り響く。切れ味鋭いカッティングギターを繰り出しながら、Charがそのスモーキーな歌声でオーディエンスを魅了した。さらに、ドラムソロからスタートしたヘヴィかつ疾走感あふれるファンクチューン「Merry-Go-Round」では早くも客席が総立ちに。曲のエンディングではタリーが機関銃のようにドラムを打ち鳴らすと、フロアの熱気は早くも最初のピークを迎えた。
タイトなリズム隊に支えられながら、転調を繰り返すプログレッシヴなミドルチューン「夢の中の夢」、Charの真骨頂とも言えるジャズファンク曲「GOJIMADE MATENAI」を演奏したあと、一人目のゲストであるミッキー吉野を呼び込むChar。ゴダイゴの「Monkey Magic」を一瞬奏で、会場を歓喜させてから「かげろう」へ。CharはギターをStratocasterからMustangに持ち替え、切れ味のあるギターサウンドでミッキーのファンキーなオルガンソロに応戦した。
「よく考えたら、もうミッキーとは50年の付き合いになるよね」とChar。子供の頃に野音で見た10円コンサートの思い出などを二人でひとしきり話したあと、「The Leading of The Leaving」を演奏する頃にはすっかりあたりも暗くなっている。二人にとって思い出深いこの曲の、哀愁漂うスロウな演奏に乗せ、Charがワウを駆使しながらむせび泣くようなソロを弾くと大きな拍手が沸き起こった。
MustangからStratocasterに持ち替え、「Future Child」のイントロを奏でるとフロアのあちこちから歓声が上がる。まるで語りかけるようなCharの歌声が胸を打つ極上のサザンソウルだ。後半はミッキーと、まるで会話のようなソロの掛け合いを繰り広げ野音は温かい空気で満たされた。
「Wondering Again」を演奏したあと、再びStratocasterを抱えてニューオリンズビートをザクザクとかき鳴らす。「50年前の俺は、まさか50年後に野音のステージに立っているなんて絶対に思ってないよな。50年も経つと、知り合いもミュージシャンに関わらず減る一方で…」としみじみ呟き、かまやつひろしに捧げるかのようにザ・スパイダースの「バン・バン・バン」をカヴァーした。
そして、ここで二人目のゲストである“CHABO”こと仲井戸麗市が登場。客席からどよめくような歓声が上がる中、ローリング・ストーンズの「Rain Fall Down」を一緒に歌う。さらに仲井戸が日本語の歌詞をつけた、やはりストーンズの「Don’t Stop」を演奏するとフロアはお祭り状態だ。
「今日はきっと、清志郎も見に来てくれているね」とCHABOが言い、RCサクセションの「いい事ばかりはありゃしない」を演奏したあとは、東京の地名を歌詞に散りばめたロックンロール「TOKYO NIGHT」を披露。サビの歌詞〈It’s Tokyo Night〉を〈It’s Hibiya Night〉と歌ってオーディエンスを沸かせ、白いMustangに持ち替えて「Shinin’ You, Shinin’ Day」をシンガロング。間髪入れず「Smoky」と、1976年リリースの記念すべきデビューアルバム『Char』からの楽曲を続けて初心に立ち返った。
アンコールではミッキー吉野を呼び込み、「今日は絶対に雨が降ると思ったからこの曲を持ってきたのに…」と冗談っぽくぼやいたあと、「空模様のかげんが悪くなる前に」を演奏し、さらに仲井戸も加わりRCサクセションの「雨上がりの夜空に」を披露。ダブルアンコールの「Apple Juice」では、ライヴであまり見ることのないピカピカのバーガンディミストのStratocasterに持ち替えていた。PINK CLOUD時代にCharが使い始めた当時の外見を想起させるそのストラトは、オリジナルよりワイルドなサウンドを響かせ、オーディエンスを興奮の坩堝へと誘い、この日のライヴに幕を下ろした。
All photo by 三浦まり子
【SET LIST】
1. I FEEL FREE
2. JEFF 〜Soliloquy〜
3. Livin’ In Tokyo
4. Merry-Go-Round
5. 夢の中の夢
6. GOJIMADE MATENAI
7. かげろう
8. The Leading of The Leaving
9. Future Child
10. Wondering Again
11. Uncle Jack
12. バン・バン・バン
13. Rain Fall Down
14. Don’t Stop
15. いい事ばかりはありゃしない
16. TOKYO NIGHT
17. Shinin’ You, Shinin’ Day
18. Smoky
ENCORE
1. ALL AROUND ME
2. 闘⽜⼠
3. Rainbow Shoes
4. Apple Juice
5. 空模様のかげんが悪くなる前に
6. 雨あがりの夜空に