Cover Artist | 小林壱誓&穴見真吾(緑黄色社会) -前編-

American Ultra IIは“仕事してくれそう”

昨年末NHK『紅白歌合戦』に3年連続3回目の出場を果たし、勢いそのまま来たる2月19日にはニューアルバム『Channel U』をリリースする4人組バンド、緑黄色社会の小林壱誓(Gt)と穴見真吾(Ba)がFenderNewsのCover Artistに登場。インタビューの前編では、初心者時代に遡りながらプレイヤーとしての個性に迫る。それとともに、それぞれに試奏してもらったAmerican Ultra IIシリーズのインプレッションを聞いた。

リョクシャカじゃなかったらギターはやっていない

──前回のインタビューで、楽器との出会いについて、小林さんは中学2年の時、ボウリング場でYUIさんが赤いTelecasterを弾いている「again」という曲のMVをたまたま見たことだとおっしゃっていました。一方、穴見さんは中学1年の時、教室の掲示板に貼ってあった“ベーシスト、ドラマー募集中”という軽音楽部の張り紙をたまたま見たことだとおっしゃっていました。その後、どうギターとベースに夢中になっていったのでしょうか?

小林壱誓(以下:小林) いや、僕はいまだにギターにハマってないかも知れないですね(笑)。もともとはヴォーカルがやりたかったんです。でも、このバンドに入ったら歌が上手い人がいたもんだから、ギターをやることになって。

穴見真吾(以下:穴見) 歌が上手い人っていうのは、もちろん長屋(晴子)のことです(笑)。

──なおさら、なぜここまで続けてこられたのかが気になります。

小林 たぶん、音楽を作ることも好きだし、今のバンドも好きだからだと思います。

穴見 壱誓は歌に厳しいから、歌がずば抜けていない人とは一緒にできなかっただろうね。“それなら俺が歌う”って絶対になっていたと思う。リョクシャカじゃなかったら絶対にギターはやっていない。

小林 そうかもしれない。

──穴見さんはどうして続けてこられたんだと思いますか?

穴見 ベースを始める時点で壱誓がギターを買った話を聞いていたし、4つ上の従兄弟がドラムをやっていたから、何となく楽器って面白そうだなみたいな気持ちがあったんですけど、一番のきっかけは文化祭でTHE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」を弾いて、人生で初めて他人に褒められたことかな。それが嬉しくて続けていったらレッチリのフリーに出会って、そこから“じゃあフリーのヒーローは誰なんだ?”と思い、ジョージ・ポーターJr.とか、ジャコ・パストリアスとか、フランシス・“ロッコ”・プレスティアとか、掘り下げていくうちにどんどんハマっていったんです。

──小林さんはギタリストとして10年以上活動されてきたわけじゃないですか。活動を続けてきた中で、影響を受けたとか、参考になったギタリストはいなかったんでしょうか?

小林 ギタープレイに関しては、本当に誰がっていうのはまったくないんです。

穴見 長岡亮介さんは?

小林 あぁ、長岡さんはめちゃくちゃ聴いてました。ただ、長岡さんのようなプレイができるかといったらそれはまた別の話なので。そういうことではなくて、フレーズの入れ方とか、アイディアの持っていき方とか、そういうところで影響を受けたのかなとは思います。

──穴見さんはフリーのヒーローを掘り下げていったとおっしゃっていましたが。

穴見 そういうラインもありつつ、やっぱり亀田誠治さんが先生というか師匠。同じように作曲もする人間として、亀田さんって本当にクリティカルなフレーズというか、ただ動いているだけじゃない、それがないと曲が成り立たないぐらいの黄金のフレーズを作っている方だと思っていて。そういう意味で、日本人で一番影響を受けているのは亀田さんとか、山下達郎さんのバックで弾いている伊藤広規さんですね。

──お2人は現在はどんな練習をしているのでしょうか?

小林 とにかく曲を何回も聴き込むことを一つの練習にしています。自分たちの曲なんですけど、ギターではなく他の楽器を聴き込むんです。そうすると、自然にどこの隙間を縫っていけばいいのかがわかるので、あとはもう弾くだけっていう。技術的なことよりも、どうグルーヴ感を出すかってところが大事なのかな。もともとダンスをやっていたことが大きいと思うんですけど、周りの音というか動きを見て、自分はどうするかって選んでいくんです。

穴見 僕は小林のリズム感が羨ましくて。ダンスで培ったからなのか、2拍4拍のアプローチが意識せずに深いところまで行けるんですよ。僕もずっと勉強してますけど、全然先に行っている。カッティングのリズム感は、上手いとか下手のレベルを超えたものがあるって思います。

──穴見さんは現在、どんな練習を?

穴見 一番大事なのは、録音を聴くことだなって思います。

小林 リハとかライヴとかのね。

穴見 それもあるし、家で練習しながらそれを録音して、聴き返した時に満足できるのかとか、どういう気分で弾いた時が一番カッコ良く聴こえるのかとか。自分的にガシガシ弾いてイケたと思っても、聴き返してみると意外とごちゃついてるなとか。逆に、練習に飽きてきた時に適当に弾いたもののほうが良かったり。そういうのを参考にライヴのメンタルを作っています。もちろん、右手と左手の動きもあるんですけど、むしろ意識のほうが大事で。それに気づくためには、やっぱり録音して聴き返さないとダメなんだなって思います。

ベースを弾いている時が一番リラックスしている

──本日、試奏していただいたAmerican Ultra IIシリーズのインプレッションを聞かせてください。小林さんには同シリーズのAmerican Ultra II Telecaster(Avalanche)を弾いていただきました。

小林 フェンダーのギターは個性が強いというか、個体差がけっこうあると思っていたんですけど、このギターは誰が弾いてもいい音が鳴ると感じました。いい意味で弾き手を選ばない。どこを弾いてもちゃんと鳴ってくれる、ちゃんと会話ができている感じがしました。

──ミドルポジション選択時に、ボリュームノブ上面のS-1スイッチをプッシュするだけで音を変えられるところはいかがですか?

小林 押すだけだからめっちゃ楽だし、誤作動も起きなさそう。ブースター的にハムバッカーに変えるって使い方ができそうですね。

穴見 パフォーマー向けですね。

──ルックスはいかがですか?

小林 最高です。めっちゃかわいい。このピックガード、おしゃれですけど何て言うんですか?

穴見 壱誓、わりと見た目にうるさいからね(笑)。

──1プライアノダイズドピックガードです。ちょっと近未来感がありますよね。今後どんな場面で使えそうですか?

小林 ライヴでめっちゃ使えると思います。

穴見 使ってほしい。これで弾いてほしい曲がすでに何曲か思い浮かびました。やっぱり、お得意のリズム系の曲で使ってほしい。単音が目立つ曲もいいんですけど、2〜3音でコードの分離をよく聴かせつつ、リズムをギターで担保したい曲で使ったらいいんじゃないかなって思いました。

小林 そうだね。4弦以下を使うコードワークとかね。

穴見 そうそう。めちゃくちゃ合いそう。

──ニューアルバム『Channel U』でもそういう曲はありますね。

小林 「コーヒーとましゅまろ」はそうかな。

穴見 「Party!!」もいいかもしれないね。でも一番使ってほしいのは「サマータイムシンデレラ」かもしれない。

小林 マジでこれ、けっこう使っちゃう気がします。

──穴見さんにはAmerican Ultra II Jazz Bass(Noble Blue)を弾いていただきました。Telecasterと同様、ワンプッシュでアクティヴとパッシヴを切り替えられるんです。

穴見 へぇ、なるほど。ジャズベなのに不思議なほどまとまっていて面白いですね。僕、プレベもジャズベも同じぐらいの比率で使うんですけど、ジャズベの良さと難しさって両方あって、その難しい部分を平らにしてくれた印象で即戦力になりえるというか、早くバンドと一緒に鳴らしてみたいと思いました。全部の音域が出る感じもあって、一番の印象は“仕事してくれそう”でした。

──弾いてみたい曲はありますか?

穴見 新しいアルバムで言ったら、「恥ずかしいか青春は」が一番合いそうですね。これならスラップもイケる。スラップすると大体、ジャズベってローがある部分でなくなることがあるんですけど、そういうことがあまりなさそうだなって思います。「馬鹿の一つ覚え」も良さそうですね。スラップする時の指のバランスもすごくいいし、出過ぎないし、へこむ部分もない。

──お2人にとって、ギターやベースはどんな存在でしょうか?

小林 相棒、仕事仲間。

穴見 僕はここ最近、また新しい感情が芽生えてきたんですよ。癒しっていう。最近、作曲とかアレンジの作業がめっちゃ多くて、ベースを入れるのは最後なんです。アレンジをする時も、ピアノとか打ち込み系をやって、ギターを入れて、最後にベースを入れるんですけど、その時に“やっぱりベースっていいわ~”って(笑)。たぶん、ベースを弾いている時が一番、人生で何も考えてなくてリラックスしているんだなって思いましたね。

American Ultra II Telecaster(Avalanche) | American Ultra II Jazz Bass(Noble Blue)

>> 後編に続く(近日公開)


緑黄色社会
愛知県出身4人組バンド。愛称は“リョクシャカ”。メンバーは、長屋晴子(Vo,Gt)、小林壱誓(Gt)、peppe(Kb)、穴見真吾(Ba)。2012年に結成。「Mela!」がストリーミング再生数4億回、「花になって」が同2億回、「キャラクター」「サマータイムシンデレラ」が同1億回を突破するなど話題曲をコンスタントに発表。2022年には初の日本武道館公演、2023年~2024年にかけてアリーナツアーを成功させるなど躍進を続けている。「NHK紅白歌合戦」3年連続出場(2022~2024年)、第65回日本レコード大賞優秀作品賞受賞(2023年/サマータイムシンデレラ)。2025年は2月19日にアルバム『Channel U』をリリースし全国ツアーを回る。
https://www.ryokushaka.com

Related posts