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Cover Artist | PORIN、atagi、モリシー(Awesome City Club)-後編-

自分の解釈で楽しむのが、一番幸せな楽器との付き合い方

映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソング「勿忘」が、3カ月足らずでストリーミング1億回再生を突破。多彩な音楽ジャンルを、魔法のように混ぜ合わせた抜群のセンスで人気急上昇中のAwesome City Clubが、FenderNewsのCOVER ARTISTに登場。インタビュー後編では、「勿忘」のヒットで確かなものにしたバンドとしての自信、そしてバンドとしての夢を聞いた。

どう裏切れるか、どう寄り添うか。そういう基準ができたことは僕らにとって良かった

― 配信シングル「color」を6月に、「夏の午後はコバルト」を7月にリリースしました。曲作りはどのように行っているんですか?

atagi 曲作りは、いわゆる“メロディ先行”です。自分がメロディとコードの土台を作り、そこからアレンジャーさんと共同作業でPORINの歌を乗せて、最後にモリシーのギターを入れて完成というパターンが多いですね。

― 「勿忘」(アルバム『Grower』収録)のヒットは、バンドにどのような変化をもたらしましたか?

atagi ひとつ基準ができたというか。周りから“勿忘のバンドの人だよね”って見え方があるぶん、どう裏切れるか、どう寄り添うか。そういう基準ができたことは僕らにとって良かったと思っています。

PORIN すごくオーサムらしさを出せた楽曲だったので、自分たちもすごく愛しているし、それがヒットしたのは本当に良かったなと思っていて。二人が歌っていたり、モリシーのギターソロがガツンとあったり、ちゃんと三人の顔が見えるし、Awesome City Clubを体現できているので大事な曲です。今回作った新曲2曲は、それとは逆というかもっとポップで。「勿忘」がヒットする前の、本来の“Awesome City Club像”みたいなものを求められることが多かったので、それをまた作れたことがすごく嬉しかったし、そういうオーサムを求められていることが嬉しかったですね。「勿忘」だけじゃないんだよってことを、こうやって表現できたことはすごく大きかったです。

― モリシーさんは「勿忘」のヒットと新曲2曲をどう捉えていますか?

モリシー まず、ヒットにびっくりしました(笑)。聴かれるってこんな感じなんだなって。atagiも言ってましたけど、イメージがついたのはバンドとしてもすごく大きくて。良い曲でイメージがついたので、単純に嬉しいと思いつつも、我々の音楽性はそれだけじゃないので。今回の2曲は季節も相まって爽やかだし。あと、デモとか完パケ前のものを聴いていたんですけど、atagiのソングライティングがちょっと昔に戻っている気もしています。「勿忘」のヒットのあとでいろいろな変化はあるだろうし、落ち着いたところもあるだろうし。そういうのも垣間見れて、また我々にとって新しい一面が出せていると思っています。

PORIN 結果を出すと、割とワガママも聞いてもらえるようになるんです(笑)。だからアタさんには、ここから思いきり自分の好きなようにやってほしいなと思います。自信にもつながっただろうし、楽しく制作してほしいなと思っています。

atagi そうですね。やっぱりバンドってチーム戦やから、こういう曲ができました、今度はこういう曲をレコーディングしましょうって会議をするんですけど、「勿忘」が聴かれるようになるまでは、みんな今よりもっと良くなりたいという気持ちがあって。確かに、真剣すぎる空気だったかもしれない。今は“あんなこともこんなこともやれるね”って、音楽が楽しみに通じそうな予感というか、そういう気持ち良さはありますね。

ひとつの共同体になれるという意味で、Awesome City Clubの輪を広げたい

― バンドの目標や夢をどのように描いていますか?

atagi まずは、このメンバーが楽しくバンドを続けられる居場所をちゃんと作ること、第一の目標はそれです。それと、ミュージシャンの性ですけど、いろいろな人に僕たちの音楽を聴いてもらいたい。つまり、バンドとしての存在を発展させていきたいんですよね。Awesome City Clubって、“バンド”ではなく“クラブ”と名乗っているのは、いろいろな人に入ってきてもらえるような存在、集合体になりたいという気持ちがありました。だから、クリエイターだったりリスナーの方だったり、ライヴに参加するっていうところで、ひとつの共同体になれるという意味でどんどんAwesome City Clubの輪を広げたいのが目標です。

― PORINさんの目標は?

PORIN アタさんが言ったように、仲間を増やすのは引き続きやっていきたいのと、あとは紅白歌合戦への出場ですかね。私たち、今までほぼテレビに出たことなかったんですけど、今年に入ってからたくさん呼んでいただけるようになって、FUJI ROCK FESTIVALに呼んでもらえたりTik Tokのライヴにも呼んでもらえて、立ち位置が謎すぎるんです。今までは“形容し難いよね”って言われることが多かったんです。“Awesome City Clubって何がやりたいの?”みたいな。でも、自分たちがやりたいことをずっとやってきたし、形容されるのがそんなに好きじゃなかったからそういう立ち位置でいたんだけど、それが全部いい風に跳ね返ってきているなと思っていて。全方位に活躍できるのはAwesome City Clubの特権だと思っているので、このスタンスをずっと続けて、今年は紅白に出たいなと思っています。

― モリシーさんは?

モリシー この中では一番ゆるりとしているタイプなので(笑)、健康に気をつけながら、ひたすらみんなと仲良くやっていきたいです。我々はミュージシャンでもあり、PORINは服のブランドをやっているし、僕はコーヒースタンドをやっていたり、いろいろあるんですよね。そういうのを広げつつ。ただ、身体はひとつしかないので健康には気をつける。よく休息を取り、美味しいお酒を飲み、ご飯も食べて、そういうのをずっと続けたいなって。

― 最後に、楽器初心者へアドバイスをお願いしたいのですが、「勿忘」のギターは難しいですか?

atagi 一生懸命頑張れば、そんなに難しくはないと思います。ギターのフレーズ的にもすごく面白いと思うので。

PORIN あのギターソロを弾きたい子はたくさんいそう。カッコいいもん。

モリシー コピーはたぶんできると思いますよ。CDやら音源を聴きまくって、ひたすら音源に合わせてギターを弾いていれば。

― では、ビギナーでも簡単にコピーできるオーサムの曲は?

モリシー 「GOLD」はすごく簡単だと思います。ローコードで弾けるので。キーDで、Dをジャンジャンって弾いてちょっと歪ませれば、いろいろな人が弾けるフレーズになっているので入門編は「GOLD」ですね。それで“ギターって気持ちいいな”と思ってもらえたら、楽器を弾いている身としては本望ですよね。

― そうですね。難しいことをやりすぎて挫折したら意味がないですからね。

モリシー 弾いてて楽しいなと思うことが大事です。もっと腕を上げたいなと思ったら、もっと難しい曲もたくさん準備してあるので(笑)。

― PORINさんからビギナーにアドバイスを送るとしたら?

PORIN 私もビギナーなんですけど、ファッションの一部として楽器に触れられるのもアリだと思っていて。特にフェンダーのギターは、トレンドを取り入れたカラーリングとか塗装とか、ビジュアルもすごくかわいかったりするし。今って、Instagramのリールを見ててもブリーチヘアにストリートファッションに、ギターを持って発信しているかわいい女の子たちがたくさんいますよね。弾き語り女子も、変わらずTik Tokとかで流行っているし、ビジュアルから入ってもいいんじゃないかなって。柔軟に楽器と触れ合ってもいいと私は思っています。

― atagiさんからのアドバイスは?

atagi 楽器をやってて経験した一番大きなことは、すべて自分流でいいんだよっていうことなんです。例えば、僕は速いギターソロは弾けないし、ソロよりもカッティングとかバッキングのほうが好きだし。難しいコードは勝手に省略していたし。だけど、全部が自分の味になって、今こうやってバンドで音楽を奏でることができています。だから、自分の解釈で楽しむのが一番幸せな楽器との付き合い方だと思うし、自分なりに愛してあげればもっと音楽が楽しくなるし、楽器が楽しくなると思います。

› 前編はこちら



Awesome City Club

「眠れない街オーサムシティ。
夢を求め集うこの街に、今日もオーサムミュージックが溢れ出す。
Awesome City Club 、僕らが聴かせたい人達はこの街のどこかにいる。」

2013年、東京にて結成。ポップス/ロック/ソウル/R&B/ダンスミュージック等、メンバー自身の幅広いルーツをMIXした音楽性を持つ、男女ツインヴォーカルの3人グループ。2015年4月に1stミニアルバム『Awesome City Tracks』をリリースし、iTunesロックチャートで1位を獲得するなど話題を呼んだ。デビューから2年間で4枚のミニアルバムをリリース後、ベストアルバム・EP・フルアルバムをリリース。毎年コンスタントに全国ツアーも行いながら、国内外の大型フェスティバルにも多数出演。

Awesome City Club以外での個々の活動も盛んで、数々のアーティストへの楽曲提供やライヴツアーへの参加、また自身のアパレルブランドを立ち上げるなど、音楽のみにとらわれずさまざまなカルチャーシーンで注目を集める存在となっている。2020年には3作連続シングル配信、春にはフルアルバムをリリース。2021年には、映画『花束みたいな恋をした』にPORINとメンバーが本人役で出演し、さらに映画のインスパイアソング「勿忘」をリリース。各配信サイトで上位にランクインし続け、3カ月足らずでストリーミングは1億回再生を突破。2月には「勿忘」を含む10曲を収録したフルアルバム『Grower』、続けて4月には「またたき」、6月には「color」、7月には「夏の午後はコバルト」を配信リリースするなど、精力的に活動している。
› Website:https://www.awesomecityclub.com

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