Cover Artist | 山中拓也(THE ORAL CIGARETTES) -後編-

お客さん、メンバー、スタッフの幸せを優先することで、俺たちが進むべき道が明確に見えてきた

ロックシーンを牽引し続け、圧倒的な熱量でオーディエンスを熱狂させ続けているTHE ORAL CIGARETTESから、ヴォーカル&ギターの山中拓也がFenderNewsのCover Artistに登場。インタビュー後編では、THE ORAL CIGARETTESの現在地、そしてロックシーン全体について語ってもらい、バンドを始めたばかりの人へエールをもらった。

衰退しないのはロックバンドだけ

──前編で音楽を始めたきっかけはお兄さんだと話していましたが、音楽を始めた時からバンド志向だったんですか?

山中拓也(以下:山中) 兄貴とは歳が6つ離れていて、俺が音楽を聴き始めたのは小学生の頃で。しかも兄貴はめっちゃ音楽をディグる癖があって、当時はまだ売れていない初期のRADWIMPSを見つけてきて、“このバンド絶対に売れるから聴きな”って。兄貴が一番好きだったのがL’Arc〜en〜Cielで、ライヴに連れて行ってもらったり、家でずっとDVDを流していて、やっぱりバンドだよなって。ロックバンドは大きい会場でやるイメージが小さい頃に植え付けられて、いまだにそういうところ(会場)に対してこだわりがあるのは兄貴からの影響もあるんやろうなと思います。今でも兄貴は“俺のおかげで今のお前があるんやで!”と言ってます(笑)。

──(笑)。バンドはある程度大きな会場でやるというビジョンが小さい頃からあったと。

山中 はい。逆にライヴハウスでやる良さはここ4〜5年でようやくわかってきた感じですね。デビュー当時はライヴハウスにこだわるバンドのことがわからなくて、いや、(大きな会場で)できへんだけでしょ!と思っていたんですよね(笑)。だから俺らは、アリーナツアーでやるのがデビュー当初の目標やったんです。でも最初のアリーナツアーを終えた時に、ライヴハウスにこだわる人たちの理由がわかった気がして。コロナ禍が明けてからの4年ぐらいは、ライヴハウスでやりながら“これを先輩方は言っていたのか!”とわかりつつ、後輩とか次の世代のロックバンドに夢を見てほしい気持ちも強いので、大きな会場を続けながらライブハウスにも出続けるという選択をしました。

──ライヴハウスでやる面白さを言語化すると?

山中 ライヴハウスの空気感は、アリーナでは絶対に出ないんですよ。簡単に言うと距離感やと思うんですけど、アリーナはどうしてもショーになるんですよね。だから緻密にステージを作り上げていかなきゃいけない。お客さんから見て、俺らなんて豆粒みたいな大きさじゃないですか。音がまず耳に入る状況で、自分がハイになってぐちゃぐちゃな音を聴かされたら、“もっとちゃんと演奏してよ”って思ってしまう。でも、ライヴハウスだとそれがめちゃくちゃカッコよく聴こえる瞬間があったりする。場所がどこでも正確にやるべきと言われたらそれは正論ですけど、自分のテンション感をより素直にプレイや歌に乗せられるのは、ライヴハウスでしか作れへん空気の一つやろうなって思います。

──今ではアリーナツアーができる日本のバンドは限られていて、世界的に見てもバンドよりもヒップホップやR&Bシンガーのほうが勢いが感じられる時代なんですけど、それは仕方がないことなのでしょうか。

山中 仕方がないことですよね。音楽って時代がずっと回っていると思うので。でも最近、DJがロックサウンドをかけ始めている。ヒップホップをやっているアーティストの友達も、今は全員がバンドに転向しているんです。彼らが言うには、もっと衝動的になれるのはロックサウンドでしかなく、その強みとカッコ良さを求めてみんなが戻ってくる。だから衰退しないのはロックバンドだけだと思っていて。ニルヴァーナやストロークスを聴いてもいまだにカッコいいし、どれだけ音がへたっていてもセックス・ピストルズのようにカッコいいのは衝動が乗っているからで、そういうサウンドを次の世代に残せるように頑張っていこうという気持ちでやっている部分はあります。

──1月に6枚目のアルバム『AlterGeist0000』が出ましたが、今のオーラルにとってアルバムを作るというのはどういう意味合いを持っているんですか?

山中 今が一番、音源を作っているのが楽しくて。というのも、お客さんをどんどん増やしていくためには、需要と自分のやりたいことのバランスを保ちながら楽曲を作る必要があったんです。俺らって、特にフェスが盛り上がってきたシーンから出てきた世代なので、フェスでどうお客さんの心をつかむかをすごく考えさせられた時代でもあったと思うんです。だから20代の頃は100パーセント純粋に自分の音楽と向き合った記憶がなくて、自分のやりたいことを30〜40パーセント入れて、残りの60〜70パーセントはお客さんが喜ぶものを混ぜながら楽曲制作をしていました。ピュアに音楽と向き合う機会がなかったんですよね。
今はライヴハウスでやる良さがわかったタイミングだったり、30代から自分たちの幸せが見えてきて、今はそこにあまり会場の規模感が入っていないんです。ライヴを見に来てくれるお客さん、メンバー、スタッフの幸せを優先することで、俺たちが進むべき道が明確に見えてきた。だから今回のアルバムは好き勝手やりました。120パーセントピュアに音楽を作れたからめちゃくちゃ楽しくて、ありがたいことに4年間、シーンの真ん中で活動してきた自負もある中で、感じたことをそのままアルバムに入れました。その4年間がなければ、絶対に今回のアルバムは書けへんかったと思うくらい、超等身大に楽曲を作れた感覚があるので、めっちゃリアルになっていると思います。

俺にとって人生を豊かにしてくれる人たちはバンドやと思った

──ビギナー向けにいくつか質問をしたいのですが、オススメの練習法はありますか?

山中 自分の好きなバンドをコピーするのが一番いいんちゃうかなって思うんですよね。練習ってしんどいし嫌じゃないですか。ギターを始めたてで運指練習をやっても、“つまらん!”って音楽をやめちゃう可能性のほうが高いと思う。好きなバンドの好きな曲を弾けるようになりたいっていうモチベーションとかゴールが最終的にある上で、やっぱりワンフレーズが弾けるだけでもめっちゃ嬉しいんですよね。結局、楽曲制作をする時にも、コピーの時に弾いたコード進行が生きる瞬間が絶対にあるので、コピーはかなり役に立つし、次の段階で耳コピをやるのがすごくいいと思います。

──これからギターを始めようと思っている人、もしくは始めたばかりのビギナーにアドバイスを。

山中 言うことが矛盾しそうやけど、最初は楽しんでやることが大事やけど、絶対に途中で壁にぶつかる瞬間が来るので、ある程度弾けるようになったら基礎もちゃんとやろうって今自分が痛感しています(笑)。

──リアルですね(笑)。では最後にバンドを始めたばかりの人たちにメッセージを。

山中 今はどうかわからないけど、バンドマンっていろんな経験をしている人が多いと思っていて。俺らの先輩もそうやし、そもそも車で全国を廻って車で寝泊まりしちゃうような人種じゃないですか。その時点で普通の人生にはないことをやっているというか。俺がバンドをやるか銀行員になるか二択を迫られた時に、俺にとって人生を豊かにしてくれる人たちはバンドやと思ったんですよ。バンドマンってちゃんとバンドに向き合っている人だし、いろいろな経験をしていろいろなことを考えてきた人で人間としてのレベルがすごく高いから、そういう人たちと出会って一緒にバンドをやるだけでも宝物やと思う。
その先にフェスに出られるとか、そういうドリームがこの界隈には残っていると思うので、人生を豊かにしたいという気持ちがある人はバンドマンと絡んだらいいと思う。一緒にイベントを動かすとか、そういうことができるだけで自分自身もどんどんレベルアップできる感覚があると思うので。演奏する楽しみにプラスアルファで人としてもカッコよくなれる。そこが最終的にステージに出ると思うので、言い方は悪いですけど、別に演奏が全然できなくても、めっちゃカッコよかったらバンドマンとして正解やなって思っている節もある。シド・ヴィシャスがいたんで(笑)。だから、演奏がめっちゃうまくないと絶対にできないっていうハードルは設けてほしくないと思います。

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THE ORAL CIGARETTES
2010年、奈良にて結成。メンバーは、メンバーは、山中拓也(Vo,Gt)、鈴木重伸(Gt)、あきらかにあきら(Ba,Cho)、中西雅哉(Dr)。音楽性やシーンの垣根を飛び越え、独自の世界観を持つ唯一無二のロックバンド。メンバーのキャラクターが映えるライヴパフォーマンスを武器に全国の野外フェスに軒並み出演。2025年1月22日に約4年半ぶりとなるフルアルバム「AlterGeist0000」をリリース。また、7月から放送開始となるアニメ「桃源暗鬼」の主題歌に新曲「OVERNIGHT」が決定している。4月12日からは「AlterGeist0000 ARENA TOUR 2025」を横浜アリーナ・大阪城ホールにて2days開催する。BKW!!(番狂わせ)の精神でロックシーンに旋風を巻き起こしている。
http://theoralcigarettes.com

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