Special Column | American Vintage II 1966 Jazzmaster®︎

オリジナルスペックを追求し、50〜70年代を鮮やかに彩った名機たちを可能な限り忠実に再現したAmerican Vintage IIシリーズ。楽器業界のみならず、音楽シーンにも多大な影響を与えた名機たちの実像に迫りながら、American Vintage IIシリーズの魅力を紐解いていく。第4回は、American Vintage II 1966 Jazzmasterをフィーチャー。

ヴィンテージファンから若手ギタリストまで、幅広いユーザーが満足できる魅力的なJazzmaster

多くのギターファンが待ち望んだAmerican Vintage IIシリーズは、マニアックな仕様を備えた年式を新たにピックアップしてリイシューされたことでも話題となっている。新たに登場したAmerican Vintage II 1966 Jazzmasterは、65年にフェンダー社がCBS(CBS Broadcasting, Inc.)に売却されたことで、仕様変更が施されたあとのモデルを再現。同年の途中から、より高級感を高めるため指板にバインディングが施されるようになり、66年の中〜後半頃にはブロックポジションマークへと変更されたため、ルックスと音色が大きく変化した。そんな66年製のJazzmasterをベースにリイシューされている。

ご存知の通りJazzmasterは、58年にフェンダーのフラッグシップモデルとして誕生。その名の通りジャズギタリストに向け、Stratocaster®︎をさらにバージョンアップしたような仕様で登場した。まず特徴となる点は、ボディのくびれが左右非対称になっているオフセットコンターボディ。これは当時、座って演奏することが多かったジャズギタリストを意識したデザインで、レオ・フェンダーとフレディ・タバレスによって生み出された。さらに、プロトタイプ時に作成の1ピースメイプルネックからローズウッド指板に変更することで高級感を高めている。それに伴い、トラスロッドは指板とネックの間に仕込まれるようになったため、ネック裏に設けられたウォルナット材の通称“スカンクストライプ”とヘッドの“プラグ”がなくなった。

ピックアップは独自開発された専用のシングルコイルが二つマウントされ、StratocasterやTelecaster®︎よりも中音域が豊かでウォームなサウンドが特徴となる。また、パラレル接続されるミックスポジションでは、ハムキャンセリングと同じような効果が得られる配線となっていた。

さらにJazzmasterに搭載されたのが、プリセットコントロールだ。これはボディ上部に付けられたホイール型のボリューム/トーンをあらかじめセッティングしておくことで、スイッチをオンにすればフロントピックアップの音色を瞬時に変更することができた。ちなみにプリセットトーンを使うと、通常のコントロールはキャンセルされる仕組みとなる。

そして最大の特徴と言えるのが、シンクロナイズドトレモロよりも可変範囲が狭いが、緩やかに動くフローティングトレモロ&ブリッジの実装だ。ブリッジとアームが取り付けられたテイルピース部が分離したデザインとなっており、アームを動かすことでブリッジが揺れるシステムになっている点も特徴と言える。

上記のようにフラッグシップモデルに相応しい仕様で登場したJazzmasterは、当初の意図とは異なり、ジャズギタリストではなくザ・ベンチャーズが手にしたことでサーフミュージックのシーンで大ヒットする。その後は、ソニック・ユースのサーストン・ムーア、ダイナソーJr.のJ.マスシス、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズらが愛用したこともあり、オルタナやグランジ系のギタリストに愛用された。

しかし今日、Jazzmasterはさまざまなアーティストが手にするようになり、より幅広いミュージシャンから支持されるモデルとなった。日本ではLUNA SEAのINORANがシグネイチャーモデルを愛用し、さらにNUMBER GIRLのギタリストとしても知られる田渕ひさ子なども手にしていたことから人気が再燃。近年は若手ギタリストからの支持も厚い。

基本的な説明が長くなってしまったが、今回American Vintage IIシリーズから発売されたAmerican Vintage II 1966 Jazzmasterは前述の通り指板にバインディングが施され、ブロックポジションマークとなっているため、ノンバインディングのJazzmasterよりもややタイトで引き締まったサウンドが特徴だ。またピックアップには、オリジナルのグレーボビンピックアップを再現した“Pure Vintage ’66 Jazzmaster”を搭載し、クリアで抜けの良いトーンを生み出している。倍音感もまとまりがあり、激しく歪ませる音作りでも使いやすい。

ボディのフィニッシュは3種類ラインナップし、ポピュラーな3-Color Sunburstに加え、マッチングヘッド仕様の当時のカスタムフィニッシュ、Lake Placid Blue(※オンラインストア限定)とDakota Redから選ぶことが可能だ。ちなみにDakota Redは、ヴィンテージフェンダーでは同じ赤系のCandy Apple Redよりも珍しいフィニッシュだ。また、ヘッドに輝くトランジションロゴは64年途中から採用された。

ネックシェイプも当時を再現した握りやすいCシェイプで、指板には7.25インチのアールも付けられ弾きやすい。フローティングブリッジ&テイルピースも忠実に復刻されていてJazzmaster特有のテンション感がしっかりと再現されている。ボリューム&トーンに使われている白いソンブレロノブは65年途中から使われたものだが、そういった細かな点までリイシューされ、ヴィンテージファンも納得の仕上がりと言えそうだ。 ヴィンテージファンから若手ギタリストまで、幅広いユーザーが満足できる魅力的なJazzmasterをぜひ体験してみよう。きっと、幅広いジャンルのミュージシャンが長く愛用できる1本になるはずだ。

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第1回:American Vintage II 1951 Telecaster
第2回:American Vintage II 1954 Precision Bass
第3回:American Vintage II 1957 Stratocaster
第4回:American Vintage II 1966 Jazzmaster
第5回:American Vintage II 1966 Jazz Bass
第6回:American Vintage II 1972 Telecaster Thinline

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