American Vintage II Pop-up in Tokyo | INORAN(LUNA SEA)×加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)公開取材

American Vintage IIシリーズの発売を記念し、表参道BA-TSU ART GALLERYにて2日間にわたり開催された体験型イベント〈Fender Presents : American Vintage II Pop-up in Tokyo〉。フェンダーにゆかりのあるアーティストによるトークショー&スペシャルステージの模様をお届け。第3回は、一般のお客様50名を対象に実施された、INORAN(LUNA SEA)と加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)のFenderNews公開取材の様子をレポートする。

フェンダーが縁をつないでくれました

──お二人のツーショットはレアなような気がします。

INORAN そう言われればそうですね。

加藤隆志(以下:加藤) フェンダーのショールームやいろいろな場所でお会いしていて、ゆっくりお話したいなと思っていたんです。

INORAN うん。会うことは会うけど、短い時間しか話したことはなくて。今日はゆっくり話せるのがとても嬉しいですね。

──まずはお二人のギターを始めたきっかけを教えてください。

INORAN 僕は洋楽を聴くようになって、楽器が欲しくなったんです。家に親父が使っていたクラシックギターがあったので弾いたのがきっかけです。で、やっぱりでかい音を鳴らしたいじゃないですか。それで(エレキ)ギターを買ってバンドを始めました。

加藤 僕も近いですね。同居していた従兄弟のお兄さんがアコースティックギターを買って弾き始めたんです。で、そのアコギを彼がいない時にこっそり弾いたのがきっかけです。エレキギターは高校でバンドを始めてから。洋楽で言うと、ジャパンとかニューロマンティックとかニューウェイヴを聴くようになって。土屋昌巳さんが大好物です。


──INORANさんとルーツが被っている可能性がありますね?

加藤 そうですね。昨日もINORANさんのソロ作品を聴かせていただいたのですが、たぶんINORANさんとは合うと思うんです。

INORAN スタイルが近いですね。

加藤 僕ももともとはスカじゃなかったので。田舎から上京する時にバンドを組んでいたんですけど、90年代のブリティッシュロックが大好物で。INORANさんのソロアルバムのサウンドを聴いて、そんな印象を受けました。

INORAN 最初に買ったのはストラトですか?

加藤 ストラトに行き着くまで時間がかかったんです。ちょうど音楽にハマっていた時期が、ザ・スミス、ザ・キュアー、ザ・ジャムが盛り上がっていた時期だったので、最初に買ったのは実は別ブランドのギターでした。それからTelecaster®︎を使うようになって、リフィニッシュされた61年のTelecasterを購入したんです。“これは一生物になるだろうな”と思っていたけど、さらに突き詰めたくなって、今日持ってきた65年のストラトに辿り着いた感じですね。

イベントに展示されたINORANの57年製Stratocaster

──INORANさんの最初のフェンダーは?

INORAN 96年ぐらいですね。LUNA SEAのアルバムを作る時に、ヴィンテージに凝っていた時期があって。今ほど高価ではなかったし、その頃はよくSUGIZOとヴィンテージギターを買いに行っていました。それで購入したのが、今回のポップアップで展示してもらった57年後期のストラトです。

加藤 聞くところによると、SUGIZOさんだけではなく河村隆一さんもヴィンテージが大好きだとか。

INORAN そうですね。RYUはヴィンテージのストラトをいっぱい持っていますけど、マイクは日本一持っているような気がします。RYUは日本一が大好きだから(笑)。

──お二人ともフェンダーのギターを愛用していただいているばかりか、“フェンダーアーティスト”契約もしてくださっています。皆さんにわかりやすくフェンダーの特徴を挙げるとすると?

加藤 僕にはその答えが明確にあって、フェンダーのギターって分解できるんですよ。ネジでネックとボディが接合されていたり、そういうギターってフェンダーが発明したものだと思うんです。分解できるということは、サウンドを作る上で、ネックとボディの組み合わせを考え始めると宇宙なんですね。僕はずっと65年のストラトしか弾いてこなかったので、これでなきゃ自分の音を出せないと思っていたのですが、そんなことはなくて、ちょっとした調整を重ねていくことでどんどん自分好みのサウンドに近づけるんですよ。ネジの緩め具合だったり、裏側のパネル一つとっても、これだけでかなり音は変わってくる。レオ・フェンダーさんは手軽さを求めて開発したのかもしれないけど、それが結果、無限の宇宙になっています。“どれがストラトのベストの音なんだろう?”と未だに試行錯誤して日々更新されています。

──加藤さんほどのギタリストでもまだ宇宙の中を遊泳されていると?

加藤 それが楽しい! それがフェンダー!みたいな感じはありますね。

INORAN 加藤くんが言った通りですね。それに、まずはロゴがカッコいい。でも、ロゴ負けしないスタッフのフェンダー愛がすごいんです。カリフォルニアにフェンダーの工場があって二回ほど行ったことがあるのですが、みんな本当にフェンダーが大好きで愛している。ものづくりのファクトリーであったり、スタッフであったり、そういう愛情があるカンパニーが作るものは本当に素晴らしい。それをまざまざと見せつけられて、さらに好きなりました。完璧な愛の結晶というか。

加藤 同じモデルでも一本一本音が違うんですよね。ミュージシャンの方でも、ギターを買う時に同じモデルでも何本も弾き比べて自分に合うものをチョイスする方がいらっしゃるので、それくらい一本一本違う個性がありますよね。

INORAN そうですね。あとはヴィンテージって歴史を重ねてきているけど、現行品のニューギターもすごく良い音なんです。それはびっくりしましたね。

加藤 僕もフェンダーの現行品を何本も弾いてきましたが、最初からフェンダーの音色が出るし、なおかつ(音が)育っていくのがすごいです。

INORAN 衝撃だよね。


──ヴィンテージのメリット、デメリットについて教えてください。

加藤 メリットは計り知れないです。デメリットは何だろうな…。ヴィンテージのほうが木材が乾ききっているので、ネックの順反りや逆反りは少なかったりしますね。ただ、電気系統のパーツは消耗して弱ってくるのはありますね。実は僕もオリジナルのピックアップは休ませて、新しいものに交換しています。それくらいかな。消耗品は同じものはなかなか手に入らないので、それ以外で気になるところはないです。

INORAN 今の“休ませている”という表現が素敵ですよね。愛に溢れている。メリットは無数にあるけど、デメリットはそんなにないですね。すべては運命というか。例えば壊れたとしても、運命でしかないと思うし、それは車も電化製品も人間も一緒です。完璧を求めたらきりがない。でも、何かかわいいじゃないですか。手を掛けてあげられるものって。手が掛からない便利なものより、愛情を注げる喜びがあるので。

加藤 ずっとそういうことを考えているんですよね。“あそこのネジはどうしたらいいかな?”とか。

──すごいなぁ(笑)。さて、今回発売になったAmerican Vintage IIシリーズですが、お二人には事前に気になる1本を選んでもらっています。加藤さんはAmerican Vintage II 1957 Stratocaster®、INORANさんはAmerican Vintage II 1966 Jazzmaster®をセレクト。軽く音を出していただけますか?

(試奏)

加藤 最初に何のコードを弾くのか、僕はすごく気になるんですよ。INORANさんはCm7を弾かれましたね。ロマンだなぁ。

INORAN そうなんですか? 昔はAmでした。

加藤 暗かったんだ(笑)。僕がサウンドチェックの時に最初に弾くコードはDですね。


──それぞれ楽器の印象はどうですか?

加藤 やっぱりフェンダーって感じです。ストラトタイプはいろいろなブランドから発売されていますが、特にピックアップをフロントにして弾くと、同じ素材であってもフェンダーにしか出せない音色があります。もう少し分析すると、ミッドハイあたりに詰まっているキラッとした響きは他のブランドにはないですね。フェンダーの音がするんです。


──INORANさんはAmerican Vintage II 1966 Jazzmasterですね。

INORAN まずはルックスがカッコいいですね。ギターは“気に入った”とか“惚れた”っていうのが大事で、あとは僕が合わせにいくところがあるので。

加藤 僕もそうです。その子に合わせるみたいな。

INORAN 恋愛の話じゃないでしょ(笑)?

──ギターの話です(笑)。

加藤 でも似ていますよ(笑)! だから自分なりに近づけていくんですけど、最初はその人(ギター)を尊重するんですよね。

INORAN そうね。弾かせてくれないギターとかない?

加藤 ありますよね。“高いポジションのほうに来るな”とかあります。

INORAN 僕が持っているヴィンテージでも、何回弾いても全然合わないものもあるので。

──せっかくなので、もう少し二人の音が聴きたいですね。

(二人でセッション)


──二人で音を合わせるのは初めてですよね?

加藤 もちろん初です。すごくロマンチックですよね。というのも、僕が95〜96年の頃はCD屋さんでアルバイトをしていて、LUNA SEAさんのCDを発注して販売していましたから。本当に光栄です。

INORAN 僕もまた加藤くんと一緒にやりたいですね。

加藤 嬉しい。

──INORANさんからのラブコール!?

INORAN フェンダーが縁をつないでくれましたよね。フェンダーファミリーで何かできることをしたい。

加藤 僕も今年からフェンダーファミリーなのでよろしくお願いします。INORANさんを“お兄ちゃん”と呼ばせていただきます。

INORAN (笑)。

──さて、American Vintage IIシリーズはどんなプレイヤーにオススメですか?

加藤 ちょっと気合いを入れて“ギターを弾きたい!”という方の値段だと思うんです。“このギターと一生付き合っていくぞ”と思って手にする一本だと思うので、そういう方に届くといいなと思います。

INORAN ラインナップが豊かで迷ってしまう人もいると思うけど、どれか一つは自分に似ているモデルが絶対にあると思うから、手に取ってハッピーな時間を過ごしてもらえたらなと思います。

──では最後に、この記事を読んでくださる方たちに向けてメッセージをお願いします。

加藤 楽器を持っていることでつながれるんですよね。僕も鳥取県の田舎から上京して、人間関係がつながって世界が広がったのはギターがあったからだと思っています。ギターは人と人とをつないでくれるもの。楽器を始めることでマイナスになることは何もないので、いろいろな人に手に取ってみてほしいです。コード一つだけでも気持ちが豊かになると思うので。

INORAN こうやって僕らが話すことで、楽器を手に取る人が少しでも増えるといいなと思います。例え弾けなくても家に飾るだけでもいいですし、友達が遊びに来た時にそれを弾くかもしれない。それをつなげてくれる重要な相棒になり得るものだと思うので、ぜひ皆さん手に取って、一緒に寝るだけでもいいので、ギターをよろしくお願いします。


INORAN(LUNA SEA)
ロックバンドLUNA SEAのギタリストとして1992年にメジャーデビュー。1997年よりソロ活動をスタートさせ、Muddy Apes、Tourbillonなどでも精力的な活動を展開。2010年にはフェンダーとエンドースメント契約を締結し、翌年に日本人アーティスト初のシグネイチャーモデル「INORAN JAZZMASTER® #1 LTD」を発売。その後も2013年に「INORAN JAZZMASTER® #2LTD, Masterbuilt by Dennis Galuszka」、2015年に「INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER®」、2017年にはソロ活動20周年を記念した「INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER® 20th anniv. Edition」、2019年には「INORAN JAZZMASTER® #1 LTD」をMADE IN JAPANラインで再現した「INORAN JAZZMASTER」など、多くのシグネイチャーモデルが発売されている。
http://inoran.org

加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)
1971年鳥取県生まれ。日本だけでなく世界各国で活動する、大所帯スカバンド、東京スカパラダイスオーケストラのギターリスト。2000年に同バンドへ正式加入。メインギターはFender 1965 Stratocaster (Lake Placid Blue)を愛用。スカパラは、国内に留まることなく世界31ヵ国での公演を果たし、最大級の音楽フェスにも多数出演。なかでも、2013年のコーチェラ(アメリカ)では日本人アーティストとして初のメインステージに立つ快挙を成し遂げている。2019年10月にはメキシコ最大の音楽アワード『ラス・ルナス・デル・アウディトリオ』にてオルタナティブ部門でベストパフォーマンス賞を受賞。新たなフェーズへと進んだ今も尚、バンドのテーマである“NO BORDER”を掲げ、音楽シーンの最前線を走り続けながらトーキョースカの楽園を広げ続けている。
https://www.tokyoska.net

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