American Vintage II Pop-up in Tokyo | BREIMEN(高木祥太、サトウカツシロ、So Kanno)公開取材
American Vintage IIシリーズの発売を記念し、表参道BA-TSU ART GALLERYにて2日間にわたり開催された体験型イベント〈Fender Presents : American Vintage II Pop-up in Tokyo〉。フェンダーにゆかりのあるアーティストによるトークショー&スペシャルステージの模様をお届け。第4回は、一般のお客様50名を対象に実施された、実力派ミクスチャーファンクバンドBREIMENのFenderNews公開取材の様子をレポートする。このセクションでは、高木祥太(Vo,Ba)、サトウカツシロ(Gt)、So Kanno(Dr)の3名が、イベントのラストを締めくくるスペシャルライブも披露してくれた。
フェンダーは良し悪し以前に音楽の中心にいるし、それは歴史が証明している
──まずは楽器を始めたきっかけを教えてください。
高木祥太(以下:高木) 両親がミュージシャンなんです。フラメンコギターの父とフルートの母。なので、家にずっと楽器があったんだけど、俺はサッカーしかしていなかったんですよ。実家がおばあちゃんがバブルの時に買った家で、地下にスタジオがあって、お父さんがバー兼演奏できる場所を作って、そこに赤いベースと黒いギターが雷神風神みたいに飾ってあったんです。サッカーに飽きたというか、何か違うことを始めようかなというタイミングで、たまたまベースが赤かったので手に取ったんです。赤が好きなんです。
──では、ギターが赤だったらギターを弾いていたかもしれない?
高木 そしたら俺は今カツシロ側に座って、カツシロが俺側に座っていたかもしれないですね。
サトウカツシロ(以下:サトウ) 俺がそっちにいるかはわからない(笑)。二人ともこっちかもよ。
高木 そうだね。そうしたら知らない人がベース弾いてる(笑)。
──カツシロさんは?
サトウ 何の取り柄もない小学6年生ぐらいの時、RIP SLYMEが大好きで。当時、RIP SLYMEが出ていた音楽番組をすべてチェックしていたら、ある日、布袋寅泰さんとフィーチャリングした曲「BATTLE FUNKASTIC」をテレビで披露していて。その時、布袋さんのことは存じ上げなかったんですけど、当たり前ですけどギターを弾いている姿がすごくカッコ良かった。もちろん布袋さんもカッコいいけど、ギターそのものに“あ、俺はこれだな”と思って。それまで、ギターをやりたいなんて思ったことはないけど、その時に“俺はギタリストとして一生を終えるんだな”って確信したんです。
──すごいですね。
サトウ でも、当時は賃貸マンションだったので“今はギターは買えない”って言われて。だけど、ばあちゃん家の近くに引っ越すタイミングで、“頼む! ギター買ってくれ!”とお願いして買ってもらったのが始めたきっかけです。
高木 「アンパンマンのマーチ」を弾いてたんだっけ?
サトウ 最初はどうやったら音が出るのかもわからないわけですよ。アンプにつなぐことも知らないし。ずっとアンプなしで強く弾いていたら弦が切れちゃって、弦の張り替え方もわからないから教則本で調べて見よう見まねで張り替えるんですけど、やっぱり難しいんですよね。で、弦の張り替え時に弦が指に刺さっちゃって。張り替え方もわからないわ指から血は出るわ、“何だこの教則本は!”と思ってそのまま血文字で教則本に“死ね”って書いて(笑)。一度ギターを辞めるんですけど、その年の文化祭で仲良い友達が“バンドやろうぜ”ってなって。当時はめちゃくちゃ強がりだったから“いいよ、ギター弾けるから”って。やっていないのに始めざるをえなくなり、気づいたら今、フェンダーでしゃべっているわけですよ。
高木 スタートはすげぇカッコいいのに一回落ちるんだね。血文字で死ねって(笑)。
サトウ 最初はコードもわからないから、聴こえてくるメロディを弾こうと思って。その時にたまたま聴こえたのが「アンパンマンのマーチ」だったので、一週間ぐらいずっと「アンパンマンのマーチ」を練習していたんです。うちは高架線のすぐ横だったんですけど、「アンパンマンのマーチ」が高架線に響き渡っていたらしいです。いまだにママに…。
──ママって言うんですか(笑)?
サトウ 普段は言わないんですけど、人前ではママって言うようにしてるんです(笑)。いまだにママに、“あんた「アンパンマンのマーチ」しか弾けなかったのにね”って言われます。
──Soさんは?
So Kanno(以下:So) 中学生の頃に吹奏楽部でパーカッションをやっていたんです。
高木 何でパーカッションだったの?
So めっちゃ仲いい奴がいて、吹奏楽部に誘ってくれたのもそいつで。たぶんそいつが“ドラムを習い始めようかな”って言って、ライバル心を燃やして何も言わずに先に始めてやろうと。それが最初だった気がします。
──お二人のフェンダーとの出会いは?
サトウ 俺は人生で2本目にゲットしたエレキギターがフェンダーでした。それはパパに買ってもらったんですけど。
──本当は家で何て呼んでいるんですか?
サトウ おとん(笑)。で、パパに買ってもらったのが日本製のフェンダーのStratocaster®︎でしたね。
高木 それ今も持ってる?
サトウ 持ってない。
高木 だよね。ストラトを弾いてるの見たことない。
──祥太さんは?
高木 俺はずっと誰かからの借り物で弾いてて、そんな中で初めて自分で買ったのがフェンダーのヴィンテージの66年製のPrecision Bass®︎。ヴィンテージを買おうと思って買ったわけじゃなくて、時間が空いていたので何か弾いてみようと思ってたまたま入った新大久保の楽器屋で、高くてカッコいい赤いベースがあったので“とりあえずこれ弾いてみます”と。で、買おうと思って。スッゲー高かったっす。
──ちなみにおいくらぐらい?
高木 ローンを組んだので手数料含めて100万円ぐらいですね。それが初めて買ったベースだし、フェンダーとの出会いです。それを今もメインとして使っています。
──フェンダーの特徴を言葉にすると?
高木 昔の古き良き音楽の竿って大体フェンダーなんですよね。良し悪し以前に音楽の中心にいるし、それは歴史が証明している。そういう印象ですね。
サトウ フェンダーはエレキギターの歴史そのものであり、エレキギターというものが世に現れてからさまざまな音楽を作ってきたそのものでもありますよね。(お客さんに向けて)皆さんがイメージするギターの形って、ほとんどフェンダーが作っているんです。世の中にギターブランドは星の数ほどあるんですけど、すべての始まりですよね。ギターとギターを用いた音楽の歴史そのものなので、マジですごいっすね。
──さて、今日は発売になったばかりのAmerican Vintage IIシリーズを先ほどから弾いてもらっていますが…。カツシロさんにはAmerican Vintage II 1966 Jazzmaster®を弾いてもらっています。シリーズの中からこれを選んだ理由を教えてください。
サトウ 当時の楽器を可能な限り忠実に再現されているということなので、正直、すべてのモデルが良くて。ここ最近のフェンダーって、今までになかったフェンダーの表情を見せてくれていたと思うんです。ハイスペックで、フェンダーの良さも残しつつ新たな提示が多かった中で、最初のAmerican Vintageシリーズは2018年に生産が終了していますよね。それがAmerican Vintage IIシリーズという形で復活したわけですが、その中から何で俺がこれを選んだかというと、僕が普段家で使っているのがフェンダーのJazzmasterであるからですね。
──普段使っているJazzmasterと比べてはどうですか?
サトウ マニアックな話をしていいのかな? 指板のブロックインレイは特定の年代にしかなくて。65〜66年のJazzmasterに採用されたインレイなんですけど、これがまずカッコいい。(ギターを眺めて)ロゴもカッコいい。まあ、とにかくいいっすね。発売された当時、どういう音をしていたのかはわからないですけど、こういう音だったのかなって連想するというか。リイシューモデルとして、みんなが聴いたことがあるJazzmasterの音や、時代を創ってきたJazzmasterの音って“こういうことだよね”みたいなものをすごく感じますね。
──祥太さんがAmerican Vintage II 1966 Jazz Bass®を選んだ理由は?
高木 昔に66年製のジャズベを試奏したことがあって。だいぶ前の記憶なのでおぼろげですけど。“ヴィンテージたる所以は何なのか?”っていろいろな論争が起きていると思うけど、俺としてはヴィンテージの楽器って弦にタッチしてから音が出るまでのスピードが速いと思っていて、このAmerican Vintage II 1966 Jazz Bassにもそれを感じます。音のキャラクターというよりも、弾いている時のスピード感がヴィンテージのそれだなって。
──どんな人にオススメですか?
サトウ 本家本元がこれだけヴィンテージリイシューに力を入れるって、本当に一大イベントですよね。フェンダーのギターを元にいろいろなブランドがヴィンテージリイシューを出している中、フェンダー自身が“こうやで!”ってお手本を見せるすごい機会だと思います。だから、とにかくいろいろな人に弾いてほしいですね。当時のルーツミュージックだったりトラッドな音楽を聴いている人、プレイしている人が触ってみたら“うわ! これだ!”ってなると思うし。まだあまり弾けていないですけど、持った瞬間にわかりますね。もうビビッときてる。早く弾きたいですね。
──祥太さんはどうですか?
高木 今、本物のヴィンテージ楽器ってハンパなく高いですよね。もともとヴィンテージベースは興味なかったんですけど、ベーシストもギタリストも“ヴィンテージを買うか否か”みたいなタイミングが一度は来ると思うんですよ。実際に買うかは置いといて、それだけ良いとされているので。俺はその時まだ100万円くらいだったから買ったけど、今はそのノリで買えそうにない。楽器をやっていくうちにそのタイミングが来ると思うので、その時にはこのAmerican Vintage IIシリーズを買えばいい。リアルヴィンテージと遜色ないと思いますね。あと思ったのは、例えば横浜に吉村家という家系ラーメンの元祖があるんですけど、そこからいろいろな店が吉村家の味を追求しているんですよ。仮に吉村家が閉店したとしても、模倣店がいっぱいあってどこもまあまあ美味しいしだいたい合ってるみたいな。そう思っていたら、吉村家が復活して元の良さを残したまま新たな味を始めるみたいな感じ?
サトウ 俺がAmerican Vintage IIシリーズにおいてすごく大事だなと思うのは、今この世に現存しているヴィンテージギターそのものを再現しているわけじゃなくて、当時の楽器を再現しているわけですよ。当時発売していたものと、同じスペックで新品を出しているわけです。だから、56年経てばこれがヴィンテージになる。
高木 そう考えたら俺の吉村家の例えは全然違うね。
──あははは。
サトウ でも吉村家は美味いよね。
高木 吉村家の話はもういいわ(笑)。
──後ろでSoさんが所在をなくしているので、ここで演奏タイムに行きたいと思います。
サトウ ここでずっとしゃべっていたいな。夢のような空間ですよね。
高木 終わりたくなーい!
サトウ わかってくれ。この気持ちの高ぶりを。
So わかるよ。
サトウ あとで吉村家おごるからさ。
高木 そのオチうまいね。
──最後に、FenderNewsの読者にメッセージをお願いします。
So ドラムをやっていたので、今日もこんな素敵なイベントに参加できました。なので、一つのことを極めるのは面白いと思います。
サトウ フェンダーが本当に大好きで、いつか自分のシグネイチャーモデルを出したいと思っていて。それぐらい好きなフェンダーを通して、みんなとこうして出会えたことに感謝だし、みんなにもそのチャンスがあると思います。フェンダー最高!
高木 音楽の歴史の中で今がその最先端なわけで、そこにこうしてみんなでいるわけです。歴史もあり新しいAmerican Vintage IIで音楽の先端を更新していきたいですよね。
【SET LIST】
1. セッション〜棒人間
2. Lie on the night
3. エンドロール(アンコール)
BREIMEN
高木祥太(Vo,Ba)、サトウカツシロ(Gt)、So Kanno(Dr)、いけだゆうた(Kb)、ジョージ林(Sax)からなるミクスチャーファンクバンド。メンバー各々が数多くのアーティストのサポートアクトを務めており、独特な歌詞の世界観と、セッションを軸としたサウンドセンスのギャップに熱烈なファンを獲得している。2020 年 2 月に1st アルバム『TITY』、2021年5月に2ndアルバム『Play time isn’t over』をリリースし、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文氏の私設賞「Apple Vinegar Award」で特別賞を受賞するなど多くの著名人やライヴシーンからの熱い支持を得ている。2021年11月にデジタルシングル「CATWALK」、2022年1月に「あんたがたどこさ」、2022年4月には「D・T・F」をリリース。2022年5月、ポルノグラフィティ岡野昭仁とKing Gnu井口理氏のコラボナンバー「MELODY(prod. by BREIMEN)」では高木祥太が作詞作曲提供、BREIMENメンバーが演奏・編曲を担当。2022年7月20日には3rdアルバム『FICTION』をリリース。2023年1月9日(月・祝)Spotify O-EASTにてワンマンライヴを行う。
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