DISH// ARENA LIVE 2022 “オトハラク”

結成11周年を迎えた4人組ロックバンド、DISH//が2022年12月24日と25日の2日間、大阪城ホールと国立代々木競技場 第一体育館で〈DISH// ARENA LIVE 2022 “オトハラク”〉を開催した。このレポートでは、この10年の間に発表してきた代表曲の数々を、2時間たっぷりと観客とともに分かちあった25日の東京公演のお伝えする。ちなみに、DISH//の結成日である12月25日はクリスマスでもあるが、メンバーたちの衣装はサンタクロースを意識したわけではなく、たまたま赤色になったのだそうだ。

American Vintage II 1966 Jazzmaster®でかき鳴らした轟音のコードストロークがバンドの演奏に熱を加える

ステージに漂う大量のスモークが幻想的な光景を作り出す中、DISH//の4人が観客の手拍子に迎えられ、演奏はフォーキーなバラード「僕らが強く。」で始まった。《笑ってたいんじゃなくてね、笑い合ってたいのだ》という歌詞がバンドの所信を物語る。アリーナに響きわたる北村匠海(Vo,Gt)の伸びやかな歌声が観客の気持ちを鷲掴みにしたところで、北村が声を上げる。

「アリーナライヴ! やってきたぜ!」

その言葉を合図にバンドの演奏はいきなりヒートアップ。ダンサブルな「ルーザー」からアンセミックな「No.1」とロックナンバーを2曲立て続けに繋げてもなお、バンドの演奏は止まらない。泉大智(Dr)がキックのビートでつなげる中、「DISH//は10周年イヤーが終わって、11年目に突入しました!」と改めて挨拶した北村が、「声は出せないけど」と観客に呼びかけ、ハンドクラップによるコール&レスポンスをリクエスト。アリーナを埋め尽くした観客がそれに見事応え、今一度、気持ちを一つにしたところで、バンドが披露したのが8ビートの歌謡ロックナンバー「I’m FISH//」だ。

リズムがダンサブルになるサビと、橘柊生(DJ,Kb)のラップに観客が手を叩きながら飛び跳ねる中、北村が赤いボディが目に鮮やかなAmerican Vintage II 1966 Jazzmasterでかき鳴らした轟音のコードストロークがバンドの演奏に熱を加える。北村は以前、FenderNewsのインタビューで同ギターのことを“暴走機関車”“暴れ馬”と例えていたが、ぐっと出た低音とともに炸裂するように、いきなり轟音が鳴ったところはまさに言い得て妙。暴走機関車、暴れ馬という表現がぴったりだった。

4曲目にして、早くも大きな一体感が生まれた客席を目の当たりした北村と矢部昌暉(Cho,Gt)は、「すごいことが起きてる!」「言葉にできない!」とそれぞれに快哉を叫んだ。

「ここは(あの)代々木競技場 第一体育館です。やばいね。もう夢のような光景が広がってます。裏でもしゃべってたんだけど、DISH//を好きな人がこんなにたくさんいるなんて信じられないねって。それくらいすごいことが起きてます!」(北村)

「何て言い表していいのかわからない。すごすぎるんだよね。ここからの景色が!」(矢部)

しかし、ライヴはまだ始まったばかり。感極まるにはまだ早い。「今日はクリスマス! この時間を、1曲1曲を、1秒1秒を、みんなで味わって、最後まで楽しかったって終われるように2時間過ごしましょう!」と北村が改めてライヴに臨む気持ちを語ってから、「Brand new day」「へんてこ」とつなげたバンドは、そこからさらに演奏の熱を上げるようにアンセミックな「This Wonderful World」から「BEAT MONSTER」「NOT FLUNKY」と畳みかける。

ファンキーな前者では、アリーナ席に伸びた花道の先端にあるセンターステージで北村、矢部、橘の3人が華麗なダンスを披露。ギターを弾きながら、ステップを踏む北村と矢部はまるで往年のプリンスをちょっと思い出させるほどカッコいい。楽器を演奏しながら歌って踊るダンスロックバンドの面目躍如。一方、ダンスロックナンバーの後者では、矢部がステージをエネルギッシュに駆け回りながら、観客を大いに沸かせ、早くもライヴはクライマックスかと思える盛り上がりだ。

「今年1年、苦労もしたし、苦悩もしたし、立ち止まることがテーマの1年でした。いっぱいDISH//の未来のことを考えて、僕たちが歩んできた道も1日1日確認しながら、今日に辿り着きました。でも、今日という日も過ぎてしまえば、その時間は帰ってこない。だからこそ明るい未来がある。とにかく今を楽しく生きましょう、楽しく笑いましょう、楽しく歌いましょう。そういう時間を最後までみんなと過ごせたらいいと思っています」(北村)

そんなふうに11周年のお祝いだけに終始しなかった2022年を振り返ってからの中盤は、ピアノバラードの「Replay」をはじめ、DISH//のもう一つの魅力であるじっくり聴かせる曲の数々を披露していく。「Replay」では矢部が重心の低い演奏に、さざ波を立てるようにMade in Japan Hybrid 60s Telecaster® P-90(Vintage White)でトレブリーなソロをキメる。自分たちの曲が歌ものであることを踏まえた上で、主にバッキングに徹しながら、イントロや間奏で印象的なリードフレーズを加える矢部は「猫」でもTelecasterに持ち替え、アコースティックな質感のバンドアンサンブルに寄り添うようにナチュラルな音色でソロをプレイ。ちなみに「Brand new day」では同じTelecasterを使って、リバービーな音色でアトモスフェリックなフレーズを奏でていたが、どんな音色でもしっかりとフレーズが立つところが、このTelecasterの使い勝手の良さなのかもと想像したりも。

長い時間をかけて作ったという最新アルバム『TRIANGLE』から、2月1日のリリースに先駆け披露したギターリフで聴かせるロックナンバー「ブラックコーヒー」からの後半戦は、ドラム台が頭上高く持ち上がるという演出も楽しませたファンキーなラップロックナンバーの「B-BOY」をはじめ、アンセミックでダンサブルなロックナンバーの数々を、花道を含め、広いステージを縦横無尽に使いながら披露。真のクライマックスに向け、ぐいぐいと盛り上げていった。

ラストを飾ったのは、自分を支えてくれる人に感謝を伝える「沈丁花」。

「10年前の自分にこんな景色が待っていると言ってあげたい。それくらい本当にすごいことが起きています。だったらこの先の10年、20年、もっともっと楽しみですね、DISH//は。もちろん、みんなも含めてDISH//です。このDISH//という大きな塊が10年後どうなっているか本当に楽しみです」(北村)

マーチ風のスネアロールをはじめ、ホーンも鳴るオーケストラルポップなアレンジとメンバーたちが“ラララ”と声を重ねるシンガロングが単にDISH//の11周年だけにとどまらず、DISH//と“スラッシャー”(=DISH//のファン)のこれからも祝福していたことが重要だ。

そして、アンコールではさらに「五明後日」「It’s alright」「乾杯」の3曲を披露。

「いつまでもいつまでもDISH//として走り続けることを約束させてください!」と北村が声を上げ、矢部が鳴らしたフィードバックから演奏になだれこんだロックナンバーの「It’s alright」は2012年6月にリリースしたDISH//のインディーズデビューシングル。 初のZepp Tokyo公演、初の日本武道館公演で1曲目に演奏した大事な曲だという。アリーナライヴの最後を締め括るのは、《これからも宜しくと言わせてください》と歌うハートウォーミングなアンセムの「乾杯」だとして、その「It’s alright」をここに持ってきたのは、12年目のスタートダッシュを決めるならこの曲しかなかったからだろう。ハイを強調しているせいか、北村がCustom Shop製Vintage Custom 1950 Double Esquire®でコードを刻む尖ったストロークの音は、まるで結成から11年経ってもこれっぽっちも失われていないDISH//の向こう意気を物語っているように聴こえ、あまりにも痛快だった。

【SET LIST】
1. 僕らが強く。
2. ルーザー
3. No.1
4. I’m FISH//
5. Brand new day
6. へんてこ
7. This Wonderful World
8. BEAT MONSTER
9. NOT FLUNKY
10. Replay
11. しわくちゃな雲を抱いて
12. DAWN
13. 猫
14. ブラックコーヒー
15. B-BOY
16. 皿に走れ!!!!
17. 東京VIBRATION
18. JUMPer
19. 沈丁花

ENCORE
1. 五明後日
2. It’s alright
3. 乾杯


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