Awesome City Club Awesome Talks -One Man Show 2022-

Awesome City Clubが、全国6都市を廻る全国ツアー〈Awesome Talks -One Man Show 2022-〉を開催。4月10日(日)Zepp DiverCityにて行われた東京公演の模様をレポート。

atagiとPORINとモリシーで作る正三角形のアンサンブル

今年3月9日にリリースした4thフルアルバム『Get Set』が、Awesome City Clubの2022年のスタートダッシュを印象づけたのだとしたら、4月2日の名古屋公演から全国6カ所を廻った約2年ぶりのツアー〈Awesome Talks -One Man Show 2022-〉がアピールしたのは、さらなる加速の予感だった。

「(観客と)面と向かって、体温を感じながら、改めてライヴは特別だと思った」とatagi(Vo,Gt)はライヴの最後に語ったが、新たな気づきとなったライヴの模様を、モリシー(Gt)のギタープレイを中心にレポートする。

SE代わりの街の喧騒が流れる中、サポートメンバーとともにAwesome City Club(以下:オーサム)の3人が登場。ツアー3本目となる東京公演は曲のタイトルがメンバーたちの気分を代弁していたのだろう、『Get Set』からR&B調のポップソング「Life still goes on」で始まった。

モリシーが手にしているのは、現在の彼のメインギターと言えるフェンダーのAmerican Professional II Telecaster®︎(カラー:Olympic White)。歌の裏で軽やかに鳴らすカッティングの音色が思いの外、こういうタイプの楽曲にしては高音を尖らせているのは、atagiとPORINと作る正三角形のアンサブルを意識しているからなのだろう。

そこから、この日、バンドが演奏したのは『Get Set』の10曲を軸にした全20曲。ハーモニーワーク、掛け合い、歌のリレーと曲ごとに趣向を凝らしたヴォーカルコンビネーションをatagiとPORINが使い分けながら、時にロマンチックな、時にエモーショナルな、時にメランコリックな、時にダンサブルな空間を作る中、2人の間に立つモリシーのギターが演奏に加えるのは、ライヴならではの熱とロックのダイナミズムだ。

キャリアを重ね、R&Bのエッセンスがグッと濃くなってきたオーサムのポップソングの数々が、いわゆるシティポップと重なる部分を持ちながら、彼らならではと言えるものになっている理由は、男女ヴォーカルのユニークさもさることながら、モリシーのギタープレイによるところも大きいことをこの日、改めて実感させられた。

例えば3曲目の「夏の午後はコバルト」で、歯切れの良いカッティングから一転、歪みをキツめにかけた音色で大暴れするギターソロがまさにそうだと思うのだが、歪みの残響の中、モリシーが奏でるメロディがちゃんと聴き取れる音の粒立ちの良さは、この日のライヴの大きな聴きどころだったと言ってもいいかもしれない。

「約2年ぶりのツアーです。名古屋と大阪と廻って東京に帰ってきました。ただいま、東京! 2階席、元気ですか? 1階席も元気ですか? 声を出せないことも含め、窮屈な思いをさせるかもしれないけど、全力で楽しませるので、安心して私たちに身を任せてください」

PORINが観客に語りかけ、「color」からメランコリックな曲を多めにつなげていった前半戦。モリシーは主にカッティングに徹しながら、音色の変化もプレイに織り交ぜていく。「color」の歪み、「Heart of Gold」の荒々しいクランチだけにとどまらず、「Fractal」「楽園」「最後の口づけの続きの口づけを」では、音色に揺れが加わった。あえてギターを持ち替えず、白いTelecasterだけで音色に変化を付けているところに愛機に対する信頼がうかがえる。

「(ツアーの)延期や中止が続く中、ようやくツアーができました。2年待たせたけど、いろいろな場所を訪れたら、みんながオーサムのことを待ってくれていたことが伝わってきて、胸がいっぱいになりました。ワンマンでしっかり曲を聴いてもらう機会はなかなかなかったので、こんなにたくさんの人に来てもらえて、ありがとうございます」(atagi)

和メロのR&Bナンバー「ランブル」からの後半戦では、その「ランブル」と「僕らはこの街と生きていく」でモリシーは、フェンダーのAmerican Acoustasonic®︎ Jazzmaster®︎(カラー:Ocean Turquoise)をプレイ。柔らかいコードの鳴りをふくよかに聴かせながら、ギターソロではリバーヴを効かせたサウンドの中で鋭いトーンを鳴らした前者。3人だけの演奏にバンドが途中から加わるドラマチックかつダンサブルなアレンジの中で、アコースティックギターの音色とエレクトリックギターの歪みを奏でた後者。1曲の中で大胆に変化する音色に加え、見た目の変化も観客に楽しんでもらうという意味では、鮮やかな青色のボディを持ったAcoustasonicはうってつけだ。

そんなところにも前述した正三角形のアンサブルを意識していることがうかがえたが、再び白いTelecasterに持ち替えたモリシーがピアノバラードの「勿忘」に、ちょっと不釣り合いなくらい歪ませた音色で激しいプレイを加え、ライヴはいよいよクライマックスに。atagiとPORINのデュエットに観客が手拍子で応えた「息させて」では“まだまだ行けますか? もっともっと一つになろう!”とPORINが声を上げ、なだれこんだファンキーな「STREAM」、そして跳ねるピアノの音色が印象的だった「Sing out loud, Bring it on down」。ラストスパートをかけるようにつなげたダンサブルな3曲でモリシーは、踊る観客の気持ちをさらに煽るようにギターを爆音で鳴らした。ジミヘンを連想させた「息させて」のギターソロ、音の壁を作るように鳴った「STREAM」のハイトーンのコードストローク、弦をかき鳴らす音まで聴こえた「Sing out loud, Bring it on down」のギターソロ、どれも聴き応えは満点だった。

「たくさんパワーをあげるつもりが、たくさんもらっちゃいました。幸せな時間を過ごさせてもらってありがとう。オーサムは変わらずに音楽を鳴らしつづけるので、期待してついてきてください!」(PORIN)

そんな宣言とともに本編の最後を飾ったのは、“ここじゃ終われない”と歌うアンセミックなロックナンバーの「On Your Mark」。白いTelecasterからClassic Player Jazzmaster Specialに持ち替えたモリシーは、イントロのヘヴィなリフに加え、乾いたトーンのカッティング、歪みに揺れを混ぜたギターソロと、この曲でもさまざまな音色を楽しませてくれた。

そして、“ここじゃ終われない”という歌詞の通り、アンコールで爽やかな新曲「Good Morning」(テレビ朝日『グッド!モーニング』の新テーマソング)を披露して、バンドが早くも新たな一歩を踏み出したことをアピールした3人はさらに2曲、「you」「またたき」を演奏して、2時間におよぶ熱演を締めくくった。atagiとPORINが、それぞれに万感の思いを込めながら歌ったバラードの「またたき」のサビにモリシーがクランチサウンドで加えた激しいカッティングは、まるで2人の歌にハーモニーを重ねているように聴こえたのだった。そんなところにも、オーサムにおけるギタリストとしてのモリシーの立ち位置を改めて感じた。

このレポートが公開される頃には、ツアーは無事終了しているはずだが、ツアーをステップにオーサムがこれからどんな活動を展開していくのか多くの人が期待していることだろう。

ところで、「you」ではこの日、ずっとヴォーカリストに徹していたatagiが、愛機であるフェンダーの American Standard Telecasterを持ち、ミュートカッティングを太い音で鳴らすモリシーとともに演奏に力強いリズムを加えたことを最後に付け加えておきたい。

Photo by masato yokoyama

【SET LIST】

1.Life still goes on
2.今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる
3.夏の午後はコバルト
4.color
5.Heart of Gold
6.Fractal
7.楽園
8.最後の口づけの続きの口づけを
9.雪どけ
10.ランブル
11.ブルージー
12.僕らはこの街と生きていく
13.勿忘
14.息させて
15.STREAM
16.Sing out loud, Bring it on down
17.On Your Mark

ENCORE

1.Good Morning
2.you
3.またたき


Awesome City Club:https://www.awesomecityclub.com/

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