Code "F" Vol.6 | 沖聡次郎(Novelbright)

Code-f

ビギナーにとって最初の難関と言えるテクニックが“Fコード”。このコードを上手く押さえられずにギターを辞めてしまう人が多いが、ミュージシャンやプレイヤー人生においても、難関を超えられずに無限大の可能性を前に挫折してしまう人が多くいる。そんな中、困難を乗り越え、音楽業界の大海原に漕ぎ出した可能性に満ちたミュージシャン/プレイヤーにスポットを当てる『Code “F”』。彼らはどうやって最初の難関を乗り越え、そして今どのような景色を見ているのだろうか。第6回目はNovelbrightのギタリスト、沖聡次郎が登場。


どうやったらファンの方にステージを楽しんで帰ってもらうか。今も昔も目指すものは変わらない

―  ギターを始めたきっかけは?

沖聡次郎(以下:沖)  僕は引っ込み思案でゲームをずっとするようなタイプだったので、もともと音楽には興味がなかったのですが、ゲームミュージックから音楽に興味を持つようになって。ちょうどYouTubeが学生時代に出はじめた頃で、YouTubeでギターを調べて最初に見たのがスティーヴ・ヴァイでした。“え!? カッコいい!”と思ってそれからギターを始めました。

―  練習はどのように? まさか、スティーヴ・ヴァイのコピーを?

沖  まさか(笑)! 最初は1万円を握りしめてギターとアンプのビギナーセットを買い、それから教則本を買って練習しました。コードを見て“Cコードってのがあるんや”って。音楽理論はわからないけど、とりあえずこれが弾けたらキレイな音が鳴る!と思って練習していましたね。

―  Fコードの壁にぶつかりましたか?

沖  ぶつかりましたね。特にFの壁には。指で押さえるポジションが点で記してあって、その通りに指を置いていくと“あれ?指が足りへん”と(笑)。動画とギター雑誌を見て、ちょっとずつ弾いていったのですが、それでも弾けなくて(苦笑)。

―  どうやって克服しましたか?

沖  1週間くらい集中して練習しました。1週間でできたかどうかは覚えていないけど、徐々に“あ、鳴るようになってきた”と。その間もいろいろなコードを弾き続けたけど、Fコードだけ1〜2弦が鳴らなかった。曲を弾くようになって、コードチェンジを繰り返し練習するうちに徐々に鳴るようになりましたね。

―  バンド活動はいつから?

沖  ギターを始めたのは高校2年生くらい。当時は1人でギターを練習しているだけでテンションが上がらず、軽音楽部に入ればバンドを組めると思って入部しました。

Code-f

―  バンド活動での最初の挫折は?

沖  自分1人で弾いている時って、“自分めっちゃ上手い!弾けてる!”って思いながら演奏しているのですが、いざメンバーとアンサンブルすると“あれ?合わへん”と。その原因が自分だと気づいたんです。グルーヴとかビート感を初めて体験して、“人と合わせるのってこんなに難しいんや”と感じた時は挫折でしたね。だから、とにかくたくさん演奏しました。“繰り返しやれば絶対にできるようになる”と思うタイプの人間やったんで、メンバーに集まってもらって同じ曲をずっと一緒に演奏してもらって。それをボイスレコーダーで録って、“ここが違うんじゃないか?”と自分で研究しました。

―  真面目ですね。なぜそこまでギターに夢中になったのですか?

沖  ギターに出会う前までは、夢中になれるものがなかったんです。運動をしたり芸事をしたり、いろいろなことをしたけど全然続かなくて。そんな中、ギターを初めて持って、アンプの触り方もわからない時にとりあえず全部フルテン(最大)で、近所迷惑なくらい開放弦を鳴らした時の気持ち良さが忘れられへんくて。何も弾かれへんのに、“俺はこれでご飯を食べていくんや!”と思って。それからずっと夢中です。

―  プロへの道も順調に?

沖  いえいえ。僕はお兄ちゃんがバンドをしていたとか、親が音楽好きで家にギターが置いてあったとか、そういう家系ではないんです。音楽からかけ離れた家庭やったんで。音楽の道に進みたいと親に話した時も、“そんなこと言い出す子やったっけ?”と母親も落ち込んでいました(笑)。当然、専門学校に行くのも大反対されたけど、最終的には行かせてくれて。だけど、専門学校ではずっとバンドを組んでいなかったんです。スティーヴ・ヴァイに憧れていたので、DTMでインストのトラックを作って、自分でCDを焼いて、手売りでチケットを売っていたからほぼバンド活動はしていませんでした。卒業後、もちろん音楽だけでは食べていけなくて、どうせアルバイトをするなら音楽に携われるものをと思って音楽スタジオのスタッフとして働くようになって。そこのお客さんやったんですよ、現体制前のNovelbrightが。

―  すごい運命ですね。Novelbrightは勢いのあるバンドですが、どうやって可能性を切り開いてきたのでしょうか。

沖  今も昔も、目指しているものはずっと変わっていないんです。メジャーデビューしてからも、する前も、このメンバーになった時も、どうやったらファンの方にステージを楽しんで帰ってもらうか。そういうことばかり考えています。セールスではない。音楽を届けることにずっと力を入れてきて、それは今も昔も変わっていません。SNSを使って、多くの人にこの信念を届けられたのが大きかったと思います。

―  では、フェンダーとの出会いは?

沖  今愛用しているTelecasterが初めて買ったフェンダーです。僕は音楽のルーツがメタルなんですけど、AORやファンクも好きで、そうするとフェンダーのTelecasterをカッティングするイメージが僕の中でずっとあったんです。で、今使っているTelecasterと出会って弾いてみたら理想の音がしたので、“これください!”と即購入しました。

―  フェンダーというブランドに対するイメージは?

沖  最初にフェンダーのギターを見たのがイングヴェイ(・マルムスティーン)だったので、イングヴェイのイメージがあったり。でも、オールラウンドに使われているギターで、出したい音を具現化するのに必須のギターだと思いますね。StratocasterやJazzmasterをレコーディングで何回か使わせてもらったことがありますが、素晴らしいギターだと思います。

―  Novelbrightとしての夢、目標は?

沖  おじいさんになってもこのバンドを続けていくのが、絶対に揺るがない夢なんです。70〜80歳になっても、生きている限り“ずっとロックをし続けよう”とメンバーと話しています。

―  最後に、ビギナーたちへアドバイスを。

沖  最初は弾けないのが当たり前なんです。僕もギターを弾けなかった頃は、小学校や中学校からギターをやっている人たちのほうが上手くて“俺大丈夫かな?”と思っていました。でも、練習したらそのぶん自分に返ってきます。何よりギターを楽しむ気持ちは絶対に忘れてほしくないので、楽しみながら弾いてください。

PROFILE


Novelbright
竹中雄大(Vo)の心を震わす圧倒的な歌声、一度聴いたら忘れられない確かなメロディワーク、細部まで練りこまれた楽曲アレンジに定評がある、大阪出身5人組ロックバンド。2013年にオリジナルメンバーで結成。2019年1月に現体制となり、同年7月に開催した〈どチクショー路上ライブTOUR〉がSNS・口コミで大拡散、瞬く間にその名を全国へと広める。路上ライヴ卒業後も各種ストリーミングチャートでロングヒットを続け、インディーズアーティスト史上初のレコード協会ストリーミング認定(ゴールド)されるなど大躍進を続ける。“2020年ブレイク必至”とあらゆるメディアでピックアップされる2020年期待のニューカマー。8月17日にDigital Song「Sunny drop 」でユニバーサルミュージック / ユニバーサルシグマよりメジャーデビューを果たす。
› Website:https://novelbright.jp

Related posts