Cover Artist | 北村匠海 & 矢部昌暉(DISH//)-後編-
DISH//でやっていることを、みんなが心から楽しめるようになってきている
演奏しながら歌って踊る4人組ダンスロックバンドのDISH//が、今年結成10周年を迎える。シングル「I Can Hear」でメジャーデビューを果たして以降、さまざまな音楽的スタイルを貪欲に取り入れながら飛躍的な進化を遂げてきた彼らは今、何を思うのか。インタビュー後編では、ヴォーカル&ギターの北村匠海とギター&コーラスの矢部昌暉に、バンドとしての歩みや来たるニューアルバム『X』について、じっくりと話を聞いた。
今年になってようやく多くの人にバンドとして認められた感覚がある
― 今年、DISH//は結成10年を迎えるわけですが、振り返ってみてどんな心境ですか?
北村匠海(以下:北村) 結成当初と比べたら、今はまったく違うカタチになりましたね。僕らはオーディションで集められ、しばらくの間は“演奏なしでギターを持って踊る”というスタイルだったし、初の日本武道館公演(『DISH//日本武道館単独公演 ’15元日〜尖った夢の先へ〜』)もそれで行ったんです。でも、どこかで自分たちは“バンドになりたい”という憧れの気持ちがあったんですよね。音楽的ルーツもまったくバラバラで、今となっては強みでもあるんですけど、当時はそれがコンプレックスでもありました。
― なるほど、複雑な思いを抱えていたのですね。
北村 そんな中、ドラムの(泉)大智が3年前に加入して、ようやく“自分たちはバンドなんだ”という気持ちが芽生えたというか。それでもすぐには結果が出ないし。本当に紆余曲折の10年ですけど、今年になってようやく多くの人にバンドとして認められた感覚がありましたね。
― それは具体的に、どのタイミングだったのでしょうか。
北村 やっぱり「猫〜THE FIRST TAKE ver.」をリリースした時です。あの曲のおかげでDISH//の名前が広く知れ渡ったと思いますね。それに、今年はDTMを使ってみんなで曲を作ったり、スタジオに入ってジャムったりする機会も多くて。“自分たちはゼロからイチを作り出すバンドなんだ”という自覚が芽生えた1年だったと思います。
― バンドとして一丸となるまでは、いろいろと大変なこともありましたか?
北村 ありました。結成当時はモンパチ(MONGOL800)を課題曲にしていたんですけど、全然上手く演奏できずにディレクターにめちゃくちゃ叱られることも多くて。その後、リハーサルスタジオの近くにあるファミレスで、毎日のように反省会をしていました(笑)。今思えば“青春していたなぁ”と思いますけど。
― ある意味DISH//は、学校のクラスみたいなものかもしれませんよね。まったくバラバラの個性を持った人たちが半ば強制的に集められ、そこから一致団結していくところとか。
北村 ああ、言われてみれば確かにクラスですね。本当、メンバーって不思議な関係だなと思います。日本のカルチャーを止めないよう努力しなければならない
― 矢部さんは、DISH//の10年を振り返ってみてどうでしょうか。
矢部昌暉(以下:矢部) DISH//の音楽性って、本当に幅広いんですよ。結成当時は自分たちで曲が作れなかったから、いろいろなアーティストに楽曲提供をしてもらって、それを再現できるまでひたすら練習するという。そのおかげで、自分たちだけではまったく思いつかなかったジャンルの音楽を、とにかく演奏しまくったんです。おかげで“DISH//は何でも演奏できるグループ”と紹介してもらうことも多くなっていったのですが、正直、それが足かせに感じていた時期もありました。何でも演奏できるけど、じゃあDISH//のカラーって何色なんだろう?みたいな。
でも、今はその葛藤からも抜け出して、さまざまなジャンルの楽曲を演奏してきたからこその強みというか。まだまだ何にでも挑戦できるのがDISH//なのかなと思えるようになってきました。
― バンドとしてイレギュラーなスタートだったからこそ、他のバンドが持ち得ない武器をたくさん持つことができたわけですよね。
矢部 おっしゃる通りです。
― 今年は新型コロナウイルスの感染拡大によって、DISH//も思うように活動ができなかったのではないかと。
矢部 予定されていたツアーもライヴもすべて中止になってしまい、最初のうちは落ち込んでギターも触れずにいました。でも、そのうちに自分がDISH//にいる意味とか、DISH//の今後の進む道とかいろいろ考えるようになって。さらに、自分のギタースタイルを見直す時期に入っていきましたね。音作りの方法を調べたり、ギターの教則本を買ったりもしました。
北村 そういう意味では、自分たちはDISH//として何が表現したいのかを再確認する有意義な時間がたくさんあったと思います。自粛期間中、僕はドラムの泉大智やキーボードの橘柊生ともよくやりとりを交わしていました。“この曲に歌詞を書いてよ”“これ、メロディつけてくれない?”みたいな感じで。
矢部 メンバーの発信したいという意力がどんどん上がってきて。DISH//でやっていることを、みんなが心から楽しんでいるのが分かります。
― 今年2月には、通算4枚目となるアルバム『X』がリリース予定です。こちらはどんな内容になりそうですか?
北村 今回は、僕の家にメンバー全員が集まって作った曲なども収録されているし、これまで以上に僕らの血が通ったアルバムになっていると思います。楽曲提供をしてくださったアーティストの方々とも、メンバーがそれぞれ“1対1”でやり取りしながら進めていったので、“自分たちのアルバム”という意識がさらに強くなっています。
実は、2016年にリリースした僕らのセカンドアルバム『召し上がれのガトリング』でも、メンバーが作詞作曲を担当している曲があったんですよ。今聴くと恥ずかしいくらい若いけど(笑)、それを経て今作で僕らはどのくらい成長したか見てほしいです。今までずっと僕らを応援してきてくれたファンがホッとする曲も、ハッとする曲も入っていますし、初めてこのアルバムでDISH//を知った人たちを、“このバンド面白えじゃん!”と言わせる自信もありますよ。
― とても楽しみです。では最後に、2021年の目標を聞かせてください。
北村 コロナ禍の世の中が今後どんな状況になっていくのか、正直なところまったくわからないし、どうしても今はエンターテインメントが後回しにされがちだと思います。そんな中で僕らは、日本のカルチャーを止めないよう努力しなければならない。自分たちの音楽活動が、少しでも役に立てればいいなと思っています。
矢部 昨年はいろんな人に注目してもらい、DISH//という名前をたくさんの人に知ってもらえたので、2021年はチャンスを逃さず飛躍の年にしていきたいです。何よりみんなの前でライヴがしたくて仕方ないので、1日も早くコロナが終息することを祈るばかりですね。
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DISH// 愛用機材
北村(左):AMERICAN ACOUSTASONIC® TELECASTER®
矢部(右):AMERICAN PROFESSIONAL II STRATOCASTER®
DISH//
北村匠海(Vo,Gt)、矢部昌暉(Cho,Gt)、橘柊生(DJ,Kb)泉大智(Dr)の4人で構成された、演奏しながら歌って踊るダンスロックバンド。 2011年12月に結成。2013年6月にソニー・ミュージックレコーズよりシングル「I Can Hear」でメジャーデビュー。これまでに12枚のシングルと3枚のアルバムを発表。エンターテインメント性の溢れたライヴは大人気で、4年連続で元日に日本武道館での単独公演を通算5回開催した。2019年4月にリリースしたアルバム『Junkfood Junction』はオリコンウィークリーチャート2位を獲得。8月にバンド史上最大規模となる野外公演〈DISH// SUMMER AMUSEMENT ’19 [Junkfood Attraction] 〉を富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催し1万人を動員した。 2020年3月に公開されたYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」の「猫」が話題となり、音楽配信サービスで「猫」が累計2億回再生を突破、日本レコード大賞優秀作品賞を受賞するなど大ヒットを記録している。 4人は個々でも活動も行い、中でも北村匠海は映画『君の膵臓をたべたい』(2017年)で第41回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、映画やドラマの話題作に数多く出演している。
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