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Cover Artist | Kroi -後編-

上手くなりたい気持ちが強ければ、楽器はそれに応えてくれる

R&B、ファンク、ソウル、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルを主軸にしつつ、衝動的なロックを織り交ぜるなど鮮烈なミクスチャーサウンドを構築する5人組バンド“Kroi”から、内田怜央(Vo,Gt)、長谷部悠生(Gt)、関将典(Ba)がCover Artistに登場。インタビュー後編では、7月27日にリリースされたニューアルバム『telegraph』、そしてすべての楽器ユーザーにメッセージをもらった。

Acoustasonicは少し触っただけでどんどんアイディアが出てくる

― 今回、弾いていただいた楽器の印象を教えてください。内田さんはPlayer Plus Stratocaster® HSSですね。

内田怜央(以下:内田) 最高ですね。ハイラム・ブロックがめっちゃ好きで、このピックアップ(レイアウト)にすごく憧れていたんですよ。で、カタログを見せていただいて“あるじゃん”と思って(笑)。

― かなりピンポイントでこの楽器を選んでくれたんですね。

内田 そうなんですよ! しかもこのシリーズはモダンに作られているということで、実はモダンなギターが欲しくて。そういうタイミングで、モダンかつ使い勝手のいいストラトが手に入るのは嬉しいですね。

― 弾きやすさはどうですか?

内田 ネックがすごく握りやすくてしっくりきます。どれだけ弾きやすいギターでも、最初は慣れるまでちょっと時間がかかる場合があるんですけど、これは今すぐにライヴで弾けると思います。

― 具体的にはどんなシーンで使いたいですか?

内田 最近、ゴスペルのギタリストが気になっていて。彼らってわりとモダンなギターを使うんですよ。Player Plus Stratocaster HSSにも共通するんですけど、モダンなギターってタイトなカッティングっぽいフレーズを弾いた時に“コリコリ”っていうんです。ヴィンテージにはないサウンドなので、デモとかレック(レコーディング)で弾いてみたいなと。

― ニューアルバムが出たばかりですが、早速新しい曲ができますね。

内田 もう2〜3曲できちゃいます(笑)。楽器が手に入ると楽器が上手くなりますし、“このギターで弾きたい曲”という想像力が生まれるので。本当に何も出てこない時は楽器を変えますね(笑)。

― (笑)。握りやすいのならビギナーにもオススメですか?

内田 はい。というか全人類にオススメですね。ストラトユーザーの悩みとしては、リアの音が細くてライヴの時に“うっ…”って思う時があるんですよ。でもPlayer Plus Stratocaster HSSは、すごく芯があるブライトなリアピックアップなのですごくいいですね。めちゃ使えると思います。

― そして長谷部さんはAcoustasonic® Player Telecaster®をチョイスしてくれました。

長谷部悠生(以下:長谷部) 常日頃、フェンダーのSNSをチェックしているんですけど、2年くらい前にアコスタが発売された時から見た目も含めて衝撃的で、ずっと弾いてみたいと思っていたんです。今日やっと弾けて思ったのは、アコースティックとエレキのトーンが選べる上で、アコースティックはちゃんとアコースティックの鳴りがするし、エレキにした時は“ライヴはこれ1本でいける”という話をさっき怜央としていたほどで。一番気に入ったのがミックスのポジション。箱鳴り感がある、この楽器にしかない面白い音が出せたのでめちゃいいなって思いました。

― 1本でアコギとエレキのトーンが使える便利さと、もう一つはアコスタにしかない音にハマる方がいるようです。

長谷部 まさに! 例えばレコーディングで、アンプから出した音と生鳴りの音を合わせても面白いと思うし、直感的なアイディアですが、アコギとエレキのブレンド具合を選んで音を太くしたり細くしたりできるので、ライヴでもモニター環境に合わせて自在に出したい音を出せそうですよね。あとは歪ませた音でも弾いてみたい。少し触っただけでどんどんアイディアが出てきますね。ツアーでも使えそう。今までライヴではアコースティックな曲は演奏してこなかったんですけど、Acoustasonic Player Telecasterがあれば曲の幅が広がりそうです。

― 関さんがPlayer Plus Jazz Bass®を選んだ理由を。

関将典(以下:関) 何本もベースを持っているのに、メイプル指板のジャズベを持っていなかったんです。というのも、ローズウッド指板が好きなのが理由ですけど、“持っていたらいろいろと使えそう”くらいの軽い気持ちで弾かせてもらったんです。フェンダーが出しているアクティブのモデルにはこれまで触れてこなかったのですが、こんなにもしっかりアクティブなんだって驚いています。あと、HiMass™ブリッジがかなり好印象でボディ鳴りがいいなぁと。サイズ感と見た目もカッコいいです。ライヴでは基本的にジャズベをメインに使うんです。プレベが好きとは言いつつも、やっぱりジャズベのほうが汎用性は高いので。だけど、楽曲によってはフロントだけに振り切って、プレベライクなサウンドを出したい時もあります。このPlayer Plus Jazz Bassは、アクティブの状態でもパッシブの状態でもフロントにするとちゃんとプレベっぽい、ちょっとブリッとした感じのサウンドが出たのでかなり使える印象を受けました。

最新技術とルーツを掛け合わせていくことが、今の音楽というか芸術なんじゃないかな

― リリースされたばかりのニューアルバム『telegraph』は、Kroiらしいファンクからシティポップに寄せた曲もあったりと、その“ごった煮感”も含めて素晴らしいです。聴きどころ、プレイでこだわった点を教えてください。

関 個人的には「Not Forever」という楽曲のサウンドメイクがめちゃめちゃ上手にできたなと思っていて。フレーズもしかりですが、アルバム全体を通しても一番ベースを美味しく聴かせられる楽曲にできたと思っているので、注目してもらえたらすげぇ嬉しいですね。ベースはフェンダーのプレベを弾いています。

長谷部 2曲目の「Funky GUNSLINGER」はHot Rod Devilleを使って、フェンダーのスプリングリバーブをどうしても使いたくて、今までにないぐらい強めにかけています。アンプ側でハイを落として、ギター側でリアにしてハイを突いたんですけど、音作りやフレージングを含め、かなり面白い音ができたと思っています。自分はブルースとか昔の音楽がルーツで、ジミ・ヘンドリックスやジョン・フルシアンテの流れで聴いていったのですが、今自分の好きな熱い音楽と曲としての親和性がすごく上手く表現できたなと。あとはソロが自信作(笑)。“西部劇ファンク”がテーマだと怜央から聞いていたので、めっちゃ西部っぽいフレージングでソロを弾こうと思って、かなり上手にできたなと思っています。

内田 「Funky GUNSLINGER」は、新たな音楽の混ぜ合わせをずっと考えていて。西部劇の映画を観ていて、“これを絶対にやろう”って。それで西部劇とファンクを掛け合わせたんです。

― 何の映画ですか?

内田 最初は『ジャンゴ 繋がれざる者』を観て、そこから西部劇にハマった最中に書いたファンクです(笑)。西部劇ってどの映画にも独特なメロディがあって、そのイメージを利用したいなと。基本的にそんなことばかり考えています。

― 発明というよりも、今までにあるものを掛け合わせる面白さがKroiの中でのテーマなんですか?

内田 そうですね。高校の美術の先生が授業中にボソッと“現代の表現で完全にオリジナルなものは存在しない”という話をしていて。過去にある作品が組み合わさった時に、現代のオリジナルはできるんだよって。今のKroiのクリエーションは、そこで得た自分の考えが反映されていると思います。それこそ、こうやってフェンダーさんがAcoustasonicのような新しい楽器を出してくれるので、最新技術とルーツを掛け合わせていくことが、今の音楽というか芸術なんじゃないかなと思いますね。

― 今後が楽しみです! そんなKroiを聴いて楽器を始めたいと思う人も多いと思うので、最後にビギナーにメッセージをお願いします。

関 リスナーの子たちから“憧れてベースを買いました”とか“同じ機材を買いました”みたいなメッセージをもらうんです。そうやって自分を見て楽器を始めてくれるって、ベーシスト冥利に尽きますよね。音楽の楽しさや良さを広げたいがゆえにアーティスト活動をしているので、自分をきっかけに楽器を始める人が一人でも多くなるのはすごく嬉しいです。まずは好きなアーティストを見て、ベースで何を表現したいのかを考えて、あとはもう楽しく弾けばいいと思います。自分たちも楽器を始めたての頃は、同じように誰かに憧れたりただひたすら真似をして、練習という感覚ではなかったから。楽しく楽器に触れる時間を多く取れば、長く続けられるんじゃないかな。

長谷部 Kroiのカヴァー動画をアップしてくれる子がちらほら出てきてくれて。今、YouTubeといういいメディアがあるので、目コピや耳コピをたくさんしてください!って思います。真髄までコピーできると思うので。動画を見ていても“まだまだだな”って(笑)。

関 厳しいですね(笑)。

内田 楽器は本当に人生を豊かにしてくれるので。“最悪だ!もうダメだ!下手くそだ!”と思っても、楽器を持っていたらカッコいいじゃないですか。コレクター心をくすぐるものでもありますし、もちろん音楽を聴くってところにも関連するわけで。例えば、スケールのことを知るだけでも“これ最高!”みたいな音楽の聴き方もできるようになる。上手くなりたい気持ちが強ければ、楽器はそれに伴って応えてくれる。俺から言えることは、マジで楽器最高!ってことです。

› 前編はこちら

内田怜央:Player Plus Stratocaster HSS|長谷部悠生:Acoustasonic Player Telecaster|関将典:Player Plus Jazz Bass


Kroi

R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーな音楽性を提示する5人組バンド。メンバーは、内田怜央(Vo,Gt)、長谷部悠生(Gt)、千葉大樹(Kb)、関将典(Ba)、益田英知(Dr)。2018年2月に結成。同年10月、1stシングル『Suck a Lemmon』でデビュー。2021年6月には1stアルバム『LENS』でメジャーデビューを果たす。音楽活動だけでなく、ファッションモデルやデザイン、楽曲プロデュースなど、メンバーそれぞれが多様な活動を展開し、カルチャーシーンへの発信を行なっている。ニューアルバム『telegraph』を2022年7月27日にリリース。
https://kroi.net

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