Cover Artist | フレデリック -前編-

自分たちの伝えたいことは、間違っていなかったんだなと確信を持てる曲になりました

Frederic

2018年に神戸ワールド記念ホール、2020年に横浜アリーナ単独公演を開催。2021年2月には日本武道館公演を控えている4人組バンドの“フレデリック”。変幻自在のリズム、中毒性の高い歌詞で特異な存在感を放っている彼らがCOVER ARTISTに登場。前編では、2月に開催された横浜アリーナライヴの振り返り、そのライヴを収めた映像作品『FREDERHYTHM ARENA 2020〜終わらないMUSIC〜at YOKOHAMA ARENA』について、そして7月8日に急遽リリースされたデジタルSINGLE「されどBGM」の話を中心に聞いた。

音楽って単純にめちゃくちゃ楽しくない?ということを伝えたかったんです
 

― 去る2月24日に横浜アリーナでのライヴの模様が収録されたDVD&Blu-ray『FREDERHYTHM ARENA 2020〜終わらないMUSIC〜at YOKOHAMA ARENA』が発売されましたが、あらためて横浜アリーナでのライヴの感想を聞かせてください。

三原康司(以下:康司) フレデリックって音楽もそうですけど、ライヴでも意味を持つことを大事にしているので、場所もすごく選んでいるんです。今回、初めてのアリーナ公演だったのですが、メンバー3人の地元の神戸でやるのもそうですけど、関東でやるなら全国的にも一番有名な日本武道館でやるのが常套です。でも、日本武道館をあえて選ばない選択ができるバンドで良かったなとまずは思っていて。キャパシティで言っても、横浜アリーナと日本武道館では日本武道館のほうが狭いんです。目指すべき場所とすれば、日本武道館をやってから横浜アリーナです。どんどん上に行くならそうだと思うんですけど、自分たちのやりたい方向で横浜アリーナを選べたのはすごく良かったと思っています。そのあとにちゃんと日本武道館も決めることができたので、自分たちの道筋も出来上がりましたし。横浜は高橋武(Dr)の地元なんですけど、そこで鳴らすべき音も明確に鳴らせました。あと、いま思うと現状ライヴができない中、最新のライヴなので思い出に深く残っていますね。

― 横浜アリーナで鳴らすべき音というのは?

三原健司(以下:健司) アリーナとなると、自分たちだけではなくお客さんも、何を言うのだろうか、どんな演奏をしてくれるんだろうと期待してくれていると思うんです。お客さんに何を伝えたら面白いんだろう?と考えた時に、自分たちはこうしていきたいとか、いま話すべきことはこの話題だとかではなくて、音楽って単純にめちゃくちゃ楽しくない?ということを伝えたかったんです。高校生の時に軽音楽部で初めて音楽を鳴らした時って、何も考えずにただただ自分たちが楽しかっただけだと思うんですよ。人前で演奏することに意味があったかと言われたら、そうでもないと思うし。コードを弾いたら自分が鳴らしたい音にどんどん近づいていくとか、ただ声を発しているだけでみんなが喜んでくれるとか、そういうことがシンプルにそのままバンドになって今があるんだってことを、ただ伝えたいと思っていました。そして、それをライヴに落とし込みましたね。

― なるほど。映像を観る方に、プレイヤーとしてこだわりのポイントを挙げるとすると?

康司 「イマジネーション」という曲では、バンドのあるべき姿を見てもらえると思います。ラストのアウトロをめちゃくちゃ延ばして、セッションっぽく自由奔放に演奏していて、俺たちだけが遊んでいる感じなので、微笑ましい目で観てほしいです(笑)。

赤頭隆児(以下:赤頭) 「峠の幽霊」です。あの照明の暗さで演奏したことある人って、サカナクションぐらいしかいないと思います(笑)。暗くてステージが見えないし、お客さんも音に集中するのでミスしたら目立つんですよね。で、緊張してちょっと手が震えていたんです。それが逆に幽霊っぽくなって、いいビブラートが出ました(笑)。でも、本当はビビって震えていました。ミスったらどうしようって(笑)。

― (笑)。手元が全然見えなかったんですか?

赤頭 はい。会場の非常灯はついていたんですけど、ステージまでは光が届かないので、エフェクターの光に当てて見ていましたね。


挑戦とその自由奔放さが僕たちらしいなと思います
 

― その直後にコロナ禍がやってきました。どのように過ごしていましたか?

康司 予期せぬ状況の中で、自分たちができることを探していました。先も見えない中、試行錯誤しながら自分たちができる形を考えた中で、新しい曲が生まれましたね。

― それが新曲「されどBGM」?

康司 はい。僕が曲を作ったのですが、このコロナ禍で、身近な音楽業界の人たちが根っこの部分からぐらつくところを見てきたんです。でも、みんなポジティヴに、前向きにこれからを考えていて、その生き方自体が素晴らしいなと思って。果たして自分たちには何ができるのかをすごく考えたんです。で、歌詞を書いているうちに、やっぱり自分たちが一番近い音楽のことで行動をすべきだと思い至りました。その想いが言葉と音になって出来上がったのが、この「されどBGM」でした。

― 制作はどのように?

康司 コロナ禍で直接会えなかったので、それも新しい試みだったのですが、Zoomでやり取りしながら音源を制作していきました。直接会うことなく完成した音源です。

― メンバー全員でスタジオに入って録るのとは違う、何かが録れた感じですか?

康司 今だからこそ録れた楽曲だと思っています。

健司 康司が作った曲の中には、「されどBGM」のように音楽に焦点を当てた曲は今までもけっこうあるんです。DVDのタイトルにもなっている「終わらないMUSIC」って曲もそうですし、音楽に愛を持っているバンドだという意識で生まれた曲はいくつもあります。なので、コロナ禍の影響があって音楽をテーマにしたわけではなく、もともと持っていたテーマの中から生まれてきた曲なので、自分たちにとって伝えたいことがより時代に向いてきたなと思ったりもしています。ただ、この楽曲を去年に出していたら、フレデリックらしいとは思うけど、フレデリックの中でしか完結しないことだなと思っていました。でも今、曲と時代がすごくマッチしているような気がします。自分たちの伝えたいことは、そういう意味でも間違っていなかったんだなと確信を持てる曲になりましたね。

― なるほど。

健司 あと、今回は宅録で録ったのが本当に大きくて、自分の中で判断ができることの良さっていっぱいあるんだなと気付きました。レコーディングって、何時間かスタジオを借りて、その中で自分がいいなと思ったことを100%出し切るわけです。でも正直、時間に左右されて100%出し切れない時もあるじゃないですか? その制限がいい意味でなくなって、プレイや音と向き合うことができた。それだけではなく、その音、プレイの判断もメンバーができたのも良かったなと思っていて。“今回この音でいこうと思うけど、どうやろうな?”というのを何回もやり取りできたんですよね。言いやすい環境も含めて、一人一人の意見を大切にして、ちゃんと作っている感じがすごく良くて。フレデリックはこの状況を活かせているなと感じましたね。活かしたいなとも思っているし。ライヴもオンラインになってきていますが、コロナで時代が変わりつつある中で、そこに対応していけるバンドになりそうだなっていうのは今回のレコーディングで確信に変わりましたね。

― アリーナのような大きなスペースでも表現できるし、宅録でも表現できるハイブリッドさを持ち合わせたバンドだと。

健司 それにちょっと近づいた気はしますね。

康司 もともと曲作りの時でも、いろいろな方向を考えようとするバンドなんです。アレンジにしても、常にいくつかの選択肢を用意します。今回もいろいろな方向がある中で、ベストな選択肢を取れたと思っています。

― “仕方なく”ではなく、ベストな選択肢が取れたのは素晴らしいですね。

健司 劣化版には絶対になりたくないと常に思っています。

赤頭 この状況でも環境を活かせたよね。

康司 そうだね。難しい状況の中で選択してきちんと完成させたのは、バンドとして一つの成長でもあります。そして、すごく良い曲ができたなと感じました。

― レコーディングでフェンダーの楽器は?

赤頭 Stratocasterと健司くんのTelecaster Thinlineを借りて弾きました。

健司 そうそう!

赤頭 いつもは健司くんがバッキングを弾くんですけど、今回はストラトと健司君のシンラインでバッキングも僕が弾いたんです。

康司 バンドとしてまたいい選択肢が増えました。

― 新しい収穫ですね。フレデリックは、新しい局面で挑戦したことが必ずベストになる。

康司 そうですね。挑戦とその自由奔放さが僕たちらしいなと思います。


› 後編に続く

 
Frederic

フレデリック 使用機材

三原康司(左):Made In Japan Heritage 70S Jazz Bass
三原健司(中央):American Performer Jazz Master
赤頭隆児(右):American Original 60’s Stratocaster

PROFILE


フレデリック
神戸にて結成された三原健司(Vo,Gt)、三原康司(Ba)の双子の兄弟と、赤頭隆児(Gt)、高橋武(Dr)で編成される4人組バンド。初年度MASH A&Rオーディションにて特別賞を受賞。独特なユーモア性、幅広い音楽的背景から生みだされる繰り返されるリズムと歌詞は中毒性が高く、一筋縄ではいかないスタンスを持ったバンドとしてシーンを席巻。印象的なMVやアートワーク等楽曲以外のクリエイティヴも関心を集めている。ライヴならではの楽曲アレンジや、多彩な演出でライヴバンドとしても定評があり、2018年に神戸ワールド記念ホール、2020年に横浜アリーナ単独公演を開催。2021年2月には日本武道館公演を控える。どのシーンにも属さない「オンリーワン」の楽曲とそのスタンスに注目が高まっている。

› Website:https://frederic-official.com

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