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My Fav Chord | 山内総一郎(フジファブリック)

Gコードが弾けただけで人生が変わった

アーティストの“好きなコード”に注目し、なぜそのコードが好きなのか、そのコードが使われている自身の楽曲や好きな楽曲について話を伺う「My Fav Chord」。第3回目はフジファブリックの山内総一郎が登場。

アコースティックギターが原点だと感じています

― 好きなコードを教えてください。

山内総一郎(以下:山内) 僕の好きなコードはGです。スタンダードなコードですし。(コードを鳴らす)音はGなのですが僕は3度を抜くというか、B(シ)の音を抜く感じで5弦をミュートするんです。小指と薬指で1、2弦の3フレットを押さえています。いわゆる“ジョン・レノンコード”と言われるのですが、このコードが弾けた時に“あ、ギタリストでやっていきたいな”と衝撃を受けたんです。

― このコードが入ると、曲にどのような趣きが生まれますか?

山内 ギターが持っている、弦楽器としての美しい響きがしますよね。ギターらしい広がりを持たせたい時は、こういうコードを使っているような気がします。

― 今日はフェンダーのアコースティックギター、Malibu Player(Arctic Gold)で良い音を出してくれていますが、印象を教えてください。

山内 小柄なギターだなというのと、色がかわいいですね。アコギでこういう色ってあまりないですよね。白にメタリックが入っているんですよ。何て言うカラーですか?

― Arctic Goldです。

山内 この色と小ぶりなギターが好きで。小ぶりなギターを集めているわけではないんですけど、ついつい買ってしまうんです。なぜかと言うと抱えやすいから。小柄な女性の方でも抱えやすいのも、このマリブの良さだなと思います。なぜ抱えやすいものがいいかと言うと、僕の好みとしては肩が上がりたくないんですよ。肩が上がるとすごく歌いづらいので。なので、エレキギターのように肩を下げられて、小脇に抱えてこのまま持ち歩くのにも便利なので、このギターを選びました。

― 最近は、アコースティックでのライヴも積極的ですよね?

山内 そうですね。普段はフジファブリックでエレキギターを弾いているのですが、アコースティックでワンマンをやるし、フジファブリックでもアコースティック編成はあります。アコースティックギターは僕らのバンドにとってもなくてはならないものなので、こだわりがあるんです。曲もまずはアコースティックギターで作るので、アコースティックギターが原点だと感じています。

― アコースティックライヴの魅力、アコースティックライヴならではの世界観を言葉にすると?

山内 アコースティックはタッチやタイミングなども、一番シンプルにプレイヤーの体が鳴らしている音楽に直結するものなので、その人のアイデンティティがダイレクトに出るものだと思います。そこが醍醐味なんじゃないかな。自分でやっていてもそうですし、人のライヴを観に行っても、アコースティック1本で出られたりすると、“この人はやっぱりこういう世界を持っているんだなぁ”というのが一発でわかるというか。ある意味、バレちゃうという側面もあるんですけどね。

その先に広がる音楽というものを、まだまだ追い求めています

― ビギナーにオススメのギターの練習方法はありますか?

山内 鼻歌を歌いながら弾くのが、アコースティックギターではいいんじゃないかなと個人的には思います。例えば(一音一音ギターを鳴らす)こういうのをゆっくり弾くことも大事ですけど、好きな曲を歌いながら弾くのが一番上達するし楽しいと思う。その中には、リズムだったりコードチェンジだったり音色だったり、鼻歌で弾き語るだけでもたくさんのいい練習の要素が詰まっているので。

― フジファブリックの曲の中で、ビギナーがコピーするのにオススメの曲を挙げるとしたら?

山内 何がいいだろうなぁ。鼻歌で歌うなら「Walk On The Way」という曲があって、それこそGコードが登場するのですごくいいと思います。アコースティックギターでバンド感やアンサンブルを出すんだったら「Water Lily Flower」がオススメです。クラシック的なメロディを弾くのであれば「STAR」がオススメですね。ギター1本だけで弾いても曲っぽくなるものが多いので、いろいろな曲をチェックしてもらえたら嬉しいですね。

― 今後、アコースティックギターを使って挑戦したいことはありますか?

山内 展望で言うと、コロナ禍でなかなか海外に行けなかったので、アコースティックギターを1本持って海外に行きたいなと思っています。音楽って共通言語だと思うので、世界にパッと行ける状況になったらいいなという期待も込めて。あとは、年を重ねるごとにルーツミュージックが体に染みついてきているんです。スライドギターが好きだったり。リゾネーターギターじゃないですけど、そういうギター黎明期の音楽を追求していきたいという展望は持っていますね。

― アメリカを旅したら絶対に楽しいですよね。

山内 旅してみたいです。デルタブルース。あの地域を旅した話を永積くん(ハナレグミ)から聞いたのですが、すごく楽しそうだったんです。昔、中学生の頃にロスとミネアポリスにホームステイしていたことがあって、その時は“人と関わるのが嫌だな”とすごく塞ぎ込んでいて。その時の冒険心みたいなものを、大人になってもう一度持って旅をしてみたい。今はギターという相棒がいるので、一緒に連れていけたらいいなと思いますね。

― ぜひマリブを。

山内 これなら飛行機にすぐに乗せられますね。初めてギターでGコードを弾いて、“これで生きていくんだ!”と思ったんです。それからは“もう何も恥ずかしくない”、“誰に文句を言われても関係ない!”と思って、ストラップをつけてギターを弾きながら街中を歩いていたんですよ。ある日、家で座って練習したほうが練習になると気づくんですけど(笑)。でも、ギターを弾いて生きていくと決意した頃を思い出させてくれる、原点に近いようなギターですね。だから、これからギターを始められる方にはちょうどいいんじゃないかなと。サイズ的にも音量的にもちょうどいい気がしますね。

― ギターを始めようと思っているけど、その一歩が踏み出せない方へメッセージを。

山内 みんながみんなそうじゃないと思うのですが、僕の経験からすると、ギターも音楽も自分にはできないと勝手に決めてつけていたところがあったんです。すごく幸運なことに家に親父のギターがあって、弾けるわけがないと思っていたのですが、Gコードが弾けただけで人生が変わった経験をしたので、ある意味、出会い頭の事故だと思って“1コード弾いてみませんか?”って。その先に広がる音楽というものをまだまだ追い求めていますけど、すごく広がっていくものがあるので。それが僕の思う一歩だと思います。

Malibu Player (Arctic Gold)


山内総一郎

81年、大阪府茨木市生まれ。15歳より音楽を始める。 2004年、フジファブリックのギタリストとしてメジャーデビュー。現体制となってから、ヴォーカル&ギター、作詞作曲を手掛ける。2014年にはデビュー10周年を迎え、初の単独日本武道館公演を開催。 2016年、フェンダー社とエンドースメント契約を締結、アンバサダーとして活動。2022年3月にはソロアルバム『歌者 -utamono-』をリリース
http://fujifabric.com

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