Cover Artist | 北村匠海(DISH//) -前編-
DISH//の曲にはフェンダーのような懐の深さが絶対に必要
楽曲「猫」の全バージョンを合算したSNS・ストリーミング含む累計再生回数が10億回を突破。2021年に結成10周年を迎え、映画やドラマ、舞台など幅広いフィールドで躍動する4人組バンド、DISH//からヴォーカル&ギターの北村匠海がCover Artistに登場。インタビュー前編では、フェンダーの魅力、愛機であるJazzmasterとの出会いなど、彼のアイデンティティの主翼を担う「ギター」を中心に話を聞いた。
僕の中でギターは憧れを許してくれるもの
──DISH//にとって2022年は怒涛の10周年イヤーでしたね。
北村匠海(以下:北村) 10周年とは言え、ふとこのままではダメだという不安に駆られていました。だから、2022年はバンドとして一度立ち止まって、いろいろなことに目を向けてみようというのが裏テーマとしてあったんです。周年に乗り過ぎないというか、お祭り騒ぎにならずしっかりと地に足をつけて活動しました。例年以上にMVやジャケ写、楽曲に対してメンバーやスタッフと話し合いを重ねましたし、一人ひとりがストイックな1年を過ごしたと思います。
──あらためて、ギターに目覚めたきっかけを教えてください。
北村 ギターを初めて触ったのはDISH//を結成してからで、“お前たちはバンドだ!”と言われてギターを渡されたのがギターとの出会いです。それが中学校2年生の時で、パワーコードを教わってMONGOL800の「小さな恋のうた」から練習を始めました。高校生の時は周りでK-POPが流行っていたけれど、僕はナンバガ(NUMBER GIRL)やザゼン(ZAZEN BOYS)といった音楽に惹かれていったんです。だからギタリストに憧れていたし、かっこいいバンドの先輩方が自分の進むべき道を作ってくれました。
──ギターの練習はどうされていましたか?
北村 好きな曲のコードを調べて、とにかく弾いていました。あとは、テレビを見ながらドレミファソラシドを弾いたり、自分が弾きたい曲を練習していたから今につながっています。僕の中で、ギターは憧れを許してくれるものなんです。“この人に憧れている”とか“こういうステージに立ちたい”と言うと夢見がちに思われるかもしれないけど、ギターはそれを具現化してくれる。憧れって気持ちがいいじゃないですか。憧れが乗るものがギターで、それは音にもプレイにも出ると思います。
──フェンダーとの出会いは?
北村 高校生の時からフェンダーというブランドにすごく歴史を感じていて、恐れ多くて手に取るのが怖かったんですよ。そんな中、フェンダーのショールームにお邪魔する機会があって、ピンクゴールドのJazzmaster(American Performer Jazzmaster / Color:Penny)を手に入れたのが初めてのフェンダーです。それから何度も来させてもらって、出会ったのが今メインで使っているFender Custom ShopのバタースコッチのEsquire(Vintage Custom 1950 Double Esquire)。感動しましたね!
その時代の空気を感じさせるものが、僕の好きなギターの特徴
──実際にフェンダーを使ってみていかがですか?
北村 懐が深いというか、誰でも許してくれるというか、実はものすごくウェルカムなギターだったことに気づいたんです。だからちょっと悔しかったですね。早々に触れておけば良かったなって(笑)。懐が深くて、アットホームなブランドで、どんなエフェクターやアンプを使っても存在感が消えない印象ですね。
──ド真ん中だけど個性もある。
北村 そうなんですよ。絶妙なバランスなのにギターとしての個性が強くて、自分が持っているさまざまな要素を上乗せできるんです。フェンダーのギターが土台として活きていることを、今はライヴやレコーディングを通じて感じています。
──最初のフェンダーがJazzmasterというのもなかなかですね。
北村 Jazzmasterが好きなんです。NUMBER GIRLの田渕(ひさ子)さんを見て、ジャズマスってカッコいい!とずっと思っていました。骨太なギターというか、“枯れ”を感じさせるものが好きなんでしょうね。今回も、手に取ってみたかったAmerican Vintage IIシリーズが僕の前に並んでいてテンションが上がっています。それこそ憧れというか、“あの人になれる”とか“あの音を出せる”とか、その時代の空気を感じさせるものが僕の好きなギターの特徴です。
──今回のAmerican Vintage IIシリーズは50〜70年代の特定の年の復刻なので、それを今どう鳴らすのか?という面白さもありますよね。
北村 特にDISH//の曲はかなりジャンルも広いし、ヘヴィな曲もあれば「猫」のようなバラード曲もある。だからこそ、フェンダーのような懐の深さが絶対に必要なんです。どんな表情にもなるしどんな色も出せるけれど、ちゃんと核に“その人自身”がいないと音楽は成り立たないと思っているので。
──芯がなくなるとブレますからね。
北村 そうなんですよね。それはギターだけではなくて、バンドとしての生き方もそうだしほかの仕事もそう。だから人間としての“北村匠海”がブレないように、自分が好きと思ったことにしか目を向けなかったりと、そういう感覚を大事にしています。曲もメンバーそれぞれが作るので、やっぱり全然違うんですよね。あえて足並みを揃えないのが面白くて、それぞれに核を持つメンバーがDISH//には集まっている。“始まり”を与えられたバンドだからこそ、違う自分を持っていていいと思うんです。
>> 後編に続く(近日公開)
北村匠海
2011年に結成された4人組バンド、DISH//のヴォーカル&ギター。楽曲「猫」の全バージョンを合算したSNS・ストリーミング含む累計再生回数が10億回を突破。2022年12月に大阪・東京で初の単独アリーナ公演〈DISH// ARENA LIVE 2022 “オトハラク”〉を開催。
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