Cover Artist | 粗品 -後編-

フェンダーの弾きやすさは競馬における最強馬に匹敵する

お笑いコンビ“霜降り明星”として数々の受賞歴を誇る傍ら、2020年に発表したボカロ楽曲「#みどりの唄」がXのトレンド入り。さらに2021年にはレーベル“soshina”を設立するなど、その型破りなキャラクターも相まって音楽活動でも存在感を強めている粗品が、FenderNewsのCover Artistに登場。インタビュー後編では、1stアルバム『星彩と大義のアリア』の構想にも大きな影響を与えたというFender Custom Shop製のゴールドに輝くストラトキャスター、そしてストラトキャスター70周年記念コレクションについて語ってくれた。

なお、粗品は4月27日から無料配布を開始しているFenderNewspaper Vol.13の表紙巻頭にも登場しており、そちらではウェブでは見ることのできない写真も多数掲載しているのでぜひお近くの店舗に足を運んで手に取ってもらいたい。

お笑いで救えなかった人たちも、音楽でなら救える

──今回の撮影で持っていただいたのが70th Anniversary American Professional II Stratocasterですが、印象を教えてください。

粗品 エグい弾きやすいっすね! ほんま初心者が出会ってはいけないぐらい弾きやすいです。これに慣れてしまったら危険かも(笑)。アンプにつないでいないのにタッピングがめちゃきれいに鳴る。これはギターの弾きやすさを測る僕の一つの物差しなんですけど、めっちゃくちゃ弾きやすいです。

──どんな人にオススメしたいですか?

粗品 一度、ギターを挫折した人。これやったら“あれ? 俺こんなに弾けたっけ?”って感じにマジでなると思います。そういう意味では初心者にもオススメです。

──フェンダーの魅力は何だと思いますか?

粗品 キャッチーなところと、ずっと王道を行っている渋さ。フェンダーはトップクラスのメーカーですし、音の粒立ちは随一じゃないですか。あと、かなり弾きやすいですね。フェンダーを使っているアーティスト、そりゃ上手いわって。ほんまに競馬における馬ですね。馬が強すぎる時、ジョッキーは最後の直線では何もしていないんですよ。指示せんとそのまま一着。フェンダーの弾きやすさは最強馬に匹敵すると思います。

──4月17日に発売された1stアルバム『星彩と大義のアリア』では全曲作詞・作曲を手掛けていますが、作曲はギターですか? ピアノですか?

粗品 どちらもですが、ピアノで作ることが多いです。

──聴きどころを教えてください。

粗品 お笑いをやっている時に“音楽の力に負けたな”と思うことがめっちゃあったんですよ。お笑いで救えなかった人たちも、音楽でなら救えると。だから、すごく音楽を尊敬しているんです。自分もそういうつもりで12曲書いたので、一曲でも“今しんどい”と思っている人にハマれば嬉しいです。

──とてもピュアな“音楽をする動機”だと思うのですが、それは昔から思っていたことですか?

粗品 いや、芸人として売れてからですね。M-1グランプリで優勝して売れてから、インスタのDMに“いじめられています”とファンの子から相談があって、丁寧に返事してあげるとすごく喜んでいただけて。返事をしてあげるだけで一人が救われるし、有名人にはその力があるから。でもそれって一人ずつしか救えないし、お笑いも頓服みたいなもので、一時は笑って嫌なことも忘れられるけど、心の中のバイブル的なもので言うとやっぱ音楽やなって。音楽ならライヴや音源で感動させられるけど、お笑いは感動させるのが難しい。そういう想いで一曲ヒットさせられれば、いろいろな人をコスパ良く救える。そういう構造に憧れがあって音楽で頑張りたいなと思いました。

ギターは楽しいですよ。何よりも楽しい

──今回のアルバムでゴールドのストラト(Andy Hicks Masterbuilt 1962 Ancho Poblano Stratocaster Heavy Relic)が活躍している曲は?

粗品 全曲そのストラトで録ったんですけど、「宙ぶらりん」「七赤シジジー」「サルバドルサーガ」でのギターソロはゴールドのストラトの音を感じてもらえると思います。

──昨今、ギターソロを飛ばして聴く人も多いそうですが、どう思いますか?

粗品 気持ちはわかるんです。僕も曲にそぐわない、それこそテクニックを自慢したいだけのギターソロは嫌いなんですよ。なので曲の邪魔にならんように、“ギターソロという作品があるよ”という感じで入れたので、僕のは聴いていただければ。

──ツアー情報も発表になっています。6月の大阪公演と7月の福岡公演は対バンで、7月11日の東京公演はワンマンですがどんなライヴにしたいですか?

粗品 各々楽しんでくれよって感じにしたくて。それはもうほんまTHE BLUE HEARTSなんですけど、一方通行で演奏して歌って帰ろうと思っています。

──MCもせず? でも求められるのでは?

粗品 そうなんですよね。あと僕、面白いこと言ってしまうんですよね。だから楽しんで帰ってもらいたいなと。あと、それは僕にしかできへんかなって。面白い系のアーティストもライバルになるわけだけど間違いなく勝てるので(笑)。

──(笑)。ライヴはレコーディングのメンバー(藤本ひかり/Ba、岸波藍/Dr)とともにステージに立つんですか?

粗品 はい。3人で立ちます。

──ギターソロも含めてかなり負担じゃないですか?

粗品 そうですね。不安は不安です。三人やからちゃんと鳴らさないとばれるし、ごまかされへんので。でも満足してもらえると思います。

──ギターは毎日触っていますか?

粗品 今はちょっと触っていないですけど、ライヴのために身体を作っています。もともと体力がなくて、一度お風呂で自分のアルバム曲を歌ってみたんですよ。12曲連続で。ほな三曲目ぐらいで歌えなくなって、体力つけなあかんなってことでトレーニングしています。あとは基礎体力をつけるために食事を変えたりしていますね。

──今後の音楽活動の展望や夢を教えてください。本業は芸人ということで…。

粗品 正直、本業が芸人っていう感覚でもないですね。どちらも本業というか。音楽ができる芸人であり、面白いアーティストであると思っているので、シンプルに一人でも多くの人の生活の足しになって、より多くの人に周知してもらうのが目標ですね。

──紅白出場とか武道館ライヴとか、皆さんそういう夢を語るわけですが。

粗品 まったく気にしていないわけじゃないけど、そこを目標にしているとは名言しないようにしているんです。今は自分の音楽をしっかり鳴らす。まだアーティストレベル1だし、何なら“芸人がなに音楽やってんだよ”ってマイナスからのスタートなので、そこを払拭するのが当面の目標です。

──最後に、これからギターを始めるビギナーに向けてメッセージをお願いします。

粗品 ギターって簡単なんで。始めるのが億劫やったり、Fコードが難しくて挫折することもあると思うんですけど、いくらでもFを避ける方法はあるので大丈夫だと思います。ギターは楽しいですよ。何よりも楽しいんで。あと、ほんま壁にぶつかったらフェンダーのストラトを買ってください。世界変わるんで。

>> 前編はこちら


粗品
1993年、大阪府生まれ。2歳からピアノを始め、13歳からはギター、高校からはDTMに目覚める。芸人として数々の受賞歴を誇る傍ら、2020年にボカロ楽曲「#みどりの唄」を発表。2021年、自身のレーベル“soshina”を設立。同年3月にレーベル第1弾楽曲「乱数調整のリバースシンデレラ feat. 彩宮すう (CV:竹達彩奈)」をリリース。同年11月には太鼓の達人20周年アンバサダーに就任。記念ソング「大好きな太鼓の音 feat. どんちゃん」を書き下ろした。2023年4月、NHK Eテレ放送のアニメ『青のオーケストラ』のエンディングテーマ「夕さりのカノンfeat『. ユイカ』」をリリース。そして2024年4月17日に満を持して1stアルバム『星彩と大義のアリア』をリリース。それに伴い6月から対バンを含む1stツアーも決定している。
https://www.universal-music.co.jp/soshina/

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