Cover Artist | w.o.d. -後編-
好きなものをただ好きなように、好きなだけやるのがいいと思う
圧倒的な音楽センスとライヴパフォーマンス、ビジュアルワークで人気を博し、10月23日にメジャー1stアルバム『あい』をリリースする神戸発の3ピースバンド、w.o.d.がFenderNewsのCover Artistに登場。インタビュー後編では、世界中のアーティストの育成と新たな音楽表現の発展を目的としたアーティスト開発プログラム「Fender Next」の2024年度のアーティストに選ばれた想い、10月リリースの『あい』について、そして全楽器ビギナーへメッセージをもらった。
アルバム『感情』の延長線上のもう一本向こうにいる作品が『あい』
──w.o.d.は「Fender Next 2024」に選出されました。感想と抱負を聞かせてください。
Ken Mackay（以下：Ken） いずれ〈グラストンベリー・フェスティバル〉に出たいとずっと言っていたので、海外に発信できるのは嬉しいですね。３年ぐらい前に「Fender Next」のことを知ったんです。以前、King Gnuが選ばれていましたよね？ “日本のアーティストも選ばれるんや”と思って羨ましかったんです。
サイトウタクヤ（以下：サイトウ） 素晴らしい世界のアーティストたちと横並びでいられるのは嬉しいですね。頑張ろうぜ！楽しいことやろうぜ！って気持ちになります。
──今年の「Fender Next」は 25組いるんです。
サイトウ 一緒に何かやりたいですね。めちゃ楽しそう。
──元良さん、抱負はいかがですか？
中島元良（以下：元良） バンドってアンサンブルなので、ギターがカッコ良くあるためにはベースもドラムもカッコ良くなきゃいけない。「Fender Next」の名に恥じぬよう、これからもいい演奏ができるように頑張ります。
──そして、メジャーデビューおめでとうございます！ メジャー1stアルバム『あい』が10月23日にリリースされますが、どんなアルバムになりそうですか？
サイトウ 前のアルバム『感情』はセルフプロデュースで、パソコン、プロツールスを使わずにアナログテープを使って超アナログっぽいことをやったんです。まだレコーディングしている曲もあるけど、『あい』は『感情』の延長線上のもう一本向こうにある作品です。『感情』の時点でやり切ったと思ったんですけど、どんどん上手くなってるしグルーヴも良くなってるわと、基本的には一発録り。何ならタンバリンも1テイクでね。あれ、めっちゃきついんですよ（笑）。
──（笑）。
サイトウ メジャー1stアルバムにしてはチャレンジしていると思う。今回のアルバムにも収録される「My Generation」は、BOOM BOOM SATELLITES、THE SPELLBOUNDの中野（雅之）さんをプロデューサーに迎えていますが、中野さんと録っている曲も基本的には一発録りです。w.o.d.っぽさが残りつつチャレンジもできたし、めっちゃオルタナティヴな作品になりました。
Ken 同期が入っている曲もあるし、ごちゃまぜで面白いアルバムやと思います。
サイトウ アルバム全体のイメージで言うと、タイトルを決める時に話したのは“サイケデリック”。
Ken 俺らなりの“サイケデリックアルバム”って気がして面白いと思います。
元良 今までの経験が昇華されて、録ってても楽しいんですよね。前回は苦しみながら録っていた気がするんだけど。
正しいか正しくないかは常に自分の中にある
──アルバムタイトル『あい』の意味は？
サイトウ えーと…いろいろです（笑）。作品全体に流れる雰囲気として、まずは“ラブ”があります。そして自分の“Ⅰ”でもある。あとは、ジャパニーズサイケデリックロックバンドとしてのアルバムになればいいと思ったし、メジャー1stアルバムというタイミング的にもスタートの意味を込めて、五十音の最初の２文字である“あい”にしました。
──アルバムをリリースしてツアーを廻る流れでしょうか？
Ken 11月から〈I SEE LOVE Tour〉があります。対バンで8ヶ所、ワンマンで来年3月ぐらいまで廻ります。
──ツアーも楽しみです。では最後にビギナーへのアドバイスを。
サイトウ 今でも思うのは、好きこそものの上手なれ。どんなギターを選ぶのか、どんな音楽を聴くのか、どういう練習をするかもそう。無理してカッコつけたことをやるよりも、心から好きなことをやったほうが絶対に続くし上手くなる。どんどん面白くなって、深く広がって、最終的には好きじゃないけど気になっていたジャンルとか楽器とか違う世界ともつながる。好きなものをただ好きなように、好きなだけやるのがいいと思います。
──学生時代、制服に器具を隠して練習するほど、何でそんなにギターを好きになったんでしょうね？
サイトウ なんやろな。曲を作っていたんですけど、自分の世界を作れたり自分の世界に浸れるからかな。家で一人でギターを弾いていても、すごく狭い世界のはずだけど無限なんですよね。本を読む感覚に近いんかな。本もイメージが無限に湧くじゃないですか。弾いていて偶然見つけたコードとか、“この音の出し方は俺しか知らんのじゃない？”みたいなあの感動。もちろん、世の中にはあらゆるコードや音楽理論が解明されているから既存のものに決まっているんだけど、自分の世界が広がっていくと思うんです。それが表に出て人に評価されたら面白いと言ってもらえるし、表に出なくても自分を癒してくれるものだったりする。自分しか知らない特別な世界だから、それが気持ち良かったんだと思います。
──そういうものに早い時期に出会えたことが幸せですよね。
サイトウ そうですね。いまだにずっと最高やなと思う。
Ken 衝動的に行動するのがいいような気がする。楽器を始めた時、ベースの見た目だけで“これだ！”みたいな。それをひたすら突き詰めていけば自分が出来上がると思います。
元良 勝手に個性になるよね。
Ken そうそう。別にヘンでもいいんですよ。
──人と同じである必要もないですし。
Ken そのほうが面白い。
サイトウ 逆に人と同じでもいいですもんね。いろいろな知識を集めた結果、誰も知らんとこに行けたりする。
──元良さんは？
元良 完全に全部言われました（笑）。でも、現代はインターネットが発達して、これが正しいとか、こうやると上手くなるとか、これがカッコいいってものが断定されている。そういう情報と照らし合わせると“自分ってダメだな”と思いがちだけど、本当は関係ないはずです。僕も劣等感が常に心のどこかにある人間なので、対バンだったり年下のプレイヤーが自分にできないことをできたりすると、今までの努力とか好きなものまで否定された気持ちになることもあるんです。でも不思議なんですけど、つまらない時間がなくなるんですよね。没頭しているというか、楽器を通じて劣等感がなくなり、想いに賛同する人たちが集まって楽しくなっていく。それこそが楽器を持つ本質なんじゃないかな。劣等感は力に変わることもあります。自分のため、そしてそんな自分をいいと思ってくれる人のために、楽器を演奏することに楽しみを見出すことができるような気がします。ん？ ビギナー関係ないか（笑）。音楽や楽器は人生を豊かにするものだし、正しいか正しくないかは常に自分の中にある。それはビギナーに限らずですね。
サイトウタクヤ：Player II Jaguar | Ken Mackay：Player II Precision Bass
>> 前編はこちら
w.o.d.
サイトウタクヤ（Vo,Gt）、Ken Mackay（Ba）、中島元良（Dr）からなる神戸発の3ピースバンド。圧倒的な音楽センス、ライヴパフォーマンス・、ビジュアルワークで、類い稀なオリジナリティを見せつけるネオグランジバンド。音楽番組『バズリズム』の「これがバズるぞ2023」で 4位にランクインし、タワーレコードの「タワレコメンアワード 2022」に入賞。2023年4月には中野雅之 (BOOM BOOM SATELLITES / THE SPELLBOUND)によるプロデュース楽曲「My Generation」を配信リリース。9月にはTVアニメ『BLEACH 千年血戦篇 -訣別譚-』オープニングテーマに起用されたシングル「STARS」を、11月にシングル「陽炎」をリリース。2024年10月23日にメジャー1stアルバム『あい』をリリース。それに伴い、全国24ヶ所を廻るリリースツアー〈I SEE LOVE Tour〉を11月より開催する。https://www.wodband.com/
