Cover Artist | MIYAVI -前編-

いかにソフトなトーンでシグネチャートーンを作れるか、そこがギタリストとしての一番大きな挑戦でした

MIYAVI

国内外のアーティストとライヴ、セッションを行っている世界的ギタリストのMIYAVI。そんな彼が対戦型コラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.3 – Worlds Collide -」をリリースした。前作よりも明らかな深化を遂げた本作について、そしてギターへの想いを聞いたインタビュー。前編は、ニューアルバムに関してのパートをお届けする。

ギタリストという視点から語るならば いかに刀を鞘から抜かずに相手を切るか
 

― ニューアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.3 – Worlds Collide -」を聴かせていただきました。ギターという視点から言えば、圧倒的なスキルを誇る“ギターヒーロー”から、楽曲のクオリティを上げるためのプロデューサー的な“音楽ヒーロー”に変わったような印象を受けました。ご本人としてはどんな狙いがあったのですか?

MIYAVI このアルバムをギタリストという視点から語るならば、いかに刀を鞘から抜かずに相手を切れるか。つまり“戦わない”という選択肢をとれるかの挑戦でした。もちろん、これからも世界中を回って、バシバシとスラップはしていくし、これから先刀を抜かないって言っているわけじゃないんです。飛んでくる球を斬るために“自分の刀=ギター”を研いで、どんな球が来ても斬れるようにしてたんですけど、斬っても斬っても球は飛んでくる(笑)球を斬っても、今度は戦車がやってきて、戦車を斬っても、海外に目を向けると今度は無数の戦車がいるわけです。もちろん死ぬまで斬り続けようとは思っていたし、斬り続けられるけども、果たしてそれで海の向こうに辿り着けるのかと。それは自分がギターを弾く使命、意義ともつながります。別にギターを弾くためだけに音楽をやっているんじゃないなって。メッセージを伝えたくて音楽をやっていて、その音楽をやるためのツールがギターなんだっていう。

― なるほど。

MIYAVI そう思えたら、斬るというより抱きしめる、包み込むという選択肢ができたんです。スラップに関しては、世界的に見ても奏法も地位も自分なりのスタイルとサウンドは確立できたと思っています。あとはそれが広まるか、広まらないのかの話なだけです。どこに行っても勝負できる自信があります。でも、もっと先に行きたいと思った時に、逆、つまりいかに刀を抜かずして戦うか。それが僕にとってはギターでメロディーを奏でるということで、少し前からずっとスラップ以外の奏法で弾いています。このアルバムでは、いかにソフトなトーンで、かつギターを聴いて“MIYAVIだ!”ってわかるシグネイチャートーンを作れるか。そこを、前作よりも特に意識しました。そこがギタリストとしての一番大きな挑戦でしたね。その音を出すために、Telecasterをフェンダーのスタッフの方に無理を言って改造してもらいました。

― 確かに、MIIYAVIさんのテレキャスはかなり改造されていますね。

MIYAVI ギタリストからしてみたら、僕が使っているギターははっきり言って邪道中の邪道だと思うんですね。もはやサイボーグみたいだし(笑)。ぶっちゃけ、“MIYAVIはギタリストなのか?”と思っているギタリストもいると思います。今まで王道のギタープレイをしてきた人にとって僕はギタリストじゃないでしょう。でも僕はそれでいいと思っています。決められた枠にとらわれるくらいなら、ギタリストでなくてもいい。僕が一番大切にしているのは、どういう音を鳴らしたいのか、そして、その音で何を表現したいのか?です。そのためなら、TelecasterでもStratocasterでも何でもいい。鳴らしたい音をまっすぐ追求するだけです。で、気づいたらここに辿り着いた。その過程ではフェンダーのスタッフの方にもいろんな無茶をお願いしたけど、その結果、新しいシグネイチャートーンを掴みつつあると、このアルバムを作っていて感じています。


邦楽と洋楽を同じ土俵に乗せて“どうですか?”って ある種の問いかけでもあるし実験でもある
 

― 常識にとらわれないサウンドの追求は、フェンダーとしても挑戦的なことです。

MIYAVI そう言ってもらえて嬉しいです。もうひとつ、アーティスト視点としては、3作目のサムライセッションを作りましたけど、今までよりもさらに大きな視野で広い地図を描こうと思っていて。だからMIYAVIの作品として、例えばコマーシャルやコラボレーションはやると思いますが、日本のマーケットだけを狙った作品は作らない。作りたくないし、もともと作っているつもりはないので。今作も、僕が住むロサンゼルスで現地の海外アーティストたちとジャムやセッションをして、それを全部収めています。音楽に国境はないと言われていますけど、やっぱりめちゃくちゃある。邦楽と洋楽の壁って。それを全部同じ土俵に乗せてみて“どうですか?”って、ある種の問いかけでもあるし、いろんな実験を今回の「SAMURAI SESSIONS vol.3 – Worlds Collide -」ではしています。

― それは強く感じました。参加している海外アーティストも、正直日本では知名度の低い方が多いですし。

MIYAVI だから日本のマーケットに刺さりづらいのはわかっているし、逆に海外のマーケットに刺さりづらいのもわかっている。だけど、ここは日本人アーティストとして挑戦してみたいと思ってレコード会社にも無理を言いました。レコード会社的には、日本のアーティストや日本でも有名な海外アーティストのほうが売りやすいし、メディアも扱いやすい。今回の作品でも、日本で有名なのは、サミュエル・L・ジャクソンぐらいです。だけど、すべてをごっちゃにして“どうなの? どう感じるの?”っていう問いかけ自体も自分の役目であるのかなって。音のクオリティに関してはLAのチームがすごく頑張ってくれました。あくまでも基準はそこに置いているので、別に偉そうな意味じゃなくて、日本人アーティストにとっても、日本のマーケットにとっても海外のアーティストとのギャップや色の違いを含め、いい機会になったと思っています。

― ギタリスト視点に戻るのですが、包み込むようなソフトな音を演奏するにあたっては、プレイそのものも変えたのですか?

MIYAVI プレイ自体はそんなに変えていないです。今はギタリストというか人としての胆力(恐れたり、尻ごみしたりしない精神力)とコントロールを大切にしています。今までは120%の熱量をどうコンプレッションして放出するかだったのですが、今回はどう抑えて緩急をつけるかに焦点を当てています。アコギではやっていたけど、それをエレキのトーンでもやるようになった。そういう意味では、ジェフ・ベックやサンタナに近いですね。サンタナもフラットなのにいつも何か残る。それはハートから鳴っているんだろうなと思うし、そういった表現力の部分は意識しました。かつ自分は東京から来ているし、MADE IN JAPAN、MADE IN TOKYOのグルーヴをどう出せるかを、いつも考えながらプレイしています。

› 後編に続く


【MIYAVIの所有ギター】

MIYAVI

Fender Custom Shop Telecaster
大胆なカスタマイズが施された現在のメインギター。センターピックアップをマウントし、もはや彼の代名詞とも言えるサステイナーを搭載している。ブリッジは、テレキャスターサドルのままアーミングプレイを可能にするMaverickスーパービートレモロシステムへと変更。

PROFILE


MIYAVI
エレクトリックギターをピックを使わずにすべて指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに約30カ国300公演以上のライヴとともに、6度のワールドツアーを成功させている。2015年にグラミー受賞チーム“ドリュー&シャノン”をプロデューサーに迎え、全編ナッシュビルとL.A.でレコーディングされたアルバム「The Others」をリリース。また、アンジェリーナ・ジョリー監督映画「Unbroken」では俳優としてハリウッドデビューも果たした他、映画「Mission: Impossible -Rogue Nation」日本版テーマソングのアレンジ制作、SMAPへの楽曲提供をはじめさまざまなアーティスト作品へ参加するなど、国内外のアーティスト/クリエイターから高い評価を受けている。常に世界に向けて挑戦を続ける“サムライギタリスト”であり、ワールドワイドに活躍する今後もっとも期待のおける日本人アーティストの一人である。
› Website:http://myv382tokyo.com

New Album
SAMURAI SESSIONS vol.3 – Worlds Collide –
【初回限定盤(CD+DVD)】¥5,400(tax in)
【通常盤】¥3,240(tax in)
ユニバーサルJ
2018/12/05 Release

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