
Cover Artist | 新藤晴一(ポルノグラフィティ) -前編-
American Ultra Luxe Vintage ’60s Stratocaster HSSがあれば1本で完結する
FenderNewsが毎月一組のアーティストにフォーカスする「Cover Artist」。今回登場するのは、先月メジャーデビュー26周年を迎え、今なお精力的に活動を続けるポルノグラフィティのギタリスト・新藤晴一だ。前編となる今回は、ソプラノサックスから音楽を始め、因島での青春時代にギターと出会ったヒストリーを辿る。そして、音楽の核として歩んできたギター観を振り返りつつ、最新モデルであるAmerican Ultra Luxeシリーズを試奏した率直な感想を語ってもらった。
僕にとってギターは単体の存在じゃなく表現の一部
──最初はギターじゃなくて、BARBEE BOYSの影響でソプラノサックスから始めたそうですね。
新藤晴一(以下:新藤) そうなんです。僕は広島県の因島という小さな島の出身で、触れられるエンターテインメントは限られていました。だからこそ、都会的で華やかなものに強く憧れていた。冴えない中学生の自分と、キラキラした音楽や小説の世界はとても対照的で、そこに惹かれていったのかもしれない。村上春樹の小説の世界観にも憧れましたし、BARBEE BOYSの歌詞の男女の駆け引きのような都会的な雰囲気がとにかくカッコ良く見えたんです。
──ちょうどその頃はバンドブームでしたよね。
新藤 僕は少しあとの世代になりますが、中3くらいになるとクラスメイトの誰かしらがギターを持っていて。うちにも友人が置いていったストラトタイプの安価なエレキギターがあって、気づいたら僕が触るようになっていました。そのうち自然とバンドを組むようになり、最初はJUN SKY WALKER(S)やユニコーンの初期曲、THE BLUE HEARTSなどをコピーして。僕は文化祭バンドでヴォーカルを担当していました。
そのうち“別のクラスに歌の上手いやつがいる”と聞いてコーラスで入ってもらったら、それが岡野(昭仁)だったんですけど、当たり前のように彼の方が歌がうまくて(笑)。その時、ドラム担当だった従兄弟に“お前ギターやれよ”と言われ、本格的にギターを弾くようになったんです。やっていくうちに面白さがわかってきて、そこからのめり込みました。
──当時はどんな練習をしていたんですか?
新藤 ひたすら好きな曲をコピーするだけでしたね。高校の頃はとにかくX JAPANに夢中で、あの過剰なまでのエンターテインメント性というか、サウンドも衣装も世界観もすべてきらびやかで、それが最高にカッコよく思えたんです。だから夜な夜な「紅」のイントロを弾きながら、東京ドームのステージに立っている自分をイメージして酔いしれていました(笑)。
──やはり“好きな曲を弾く”ことがモチベーションでしたか?
新藤 そうですね。スケール練習やコードフォームを押さえるというより、とにかくコピーして楽しむのが練習でした。上京してからは、高校生からでもセミプロみたいにジャズバーを回っていたり、サポートミュージシャンをしていた人が周りにたくさんいましたが、因島にはそんな環境も情報もなかった。僕らはエフェクターの存在すら知らなかったし、最初に通販で買った小さなフェンダーのアンプにはクリーンチャンネルしかなくて。“歪むのは上手くなったら歪むんだ”と本気で思っていたくらいだった(笑)。
──そんな新藤さんが、ギターを続ける上でこれだけは大事にしてきたという習慣や意識はありますか?
新藤 僕にとってギターは単体の存在じゃなく、表現の一部なんです。歌詞を書くことも、バンド活動そのものも全部つながっている。ギターだけを極めるというよりは、“自分の表現をどう広げられるか”という視点で向き合ってきました。バンドをやるなら一番フィットするのがギターで、ギターがあれば曲も書けるし、レコーディングで形にして人に聴いてもらえるし、ライヴではカッコ良く見せられる。ギターはその流れの中の“核”なんです。だからギター1本というより、全部をひっくるめて表現していくことを大事にしてきました。
American Ultra Luxe Vintage ’50s Telecasterを手にした時、“まさにこれだな”と思いました
──さて、今回お持ちいただいた2本のうち、まずはAmerican Ultra Luxe Vintage ’60s Stratocaster HSS(Fiesta Red)について伺いたいです。
新藤 どちらも最近手に入れました。僕らの世代は“ヴィンテージこそが偉い”と教えられてきたんです(笑)。実際、その魅力を理解して追いかけていた時期もありました。でも、最新仕様の楽器を弾いてみたら“これはこれで弾きやすい”と気づいた。家で練習用に使っていたものもそうでしたが、モダンな楽器ならではの快適さがある。それならフェンダーの新しいモデルも試してみようと思って探していた時に、たまたまこのモデルに出会ったんです。
──最初に手にした時の印象は?
新藤 まずはカラーリングですよね。うっすらエイジド加工がされていて雰囲気も絶妙。実はSea Foam Greenとも最後まで迷ったんですが、最終的にこの赤を選びました。見た目はヴィンテージっぽいのに、音を出すと間違いなく現行モデルのストラトサウンドなのも、そのコントラストがユニークだなと。僕はギターをたくさん持っているので、新しく迎える時はすでに持っているものと被らないことを重視しています。似たキャラクターだと結局出番がなくなってしまいますから。
──ステンレスフレットやネックの加工など、おっしゃるようにかなり現代的な仕様ですよね。
新藤 ステンレスフレットの耐久性や滑らかさ、コンター加工やヒールカットの弾きやすさ、ロッキングチューナー、さらにはハムバッカーのタップ機能(S-1スイッチ)までとにかく実用的。実際、リハですぐに使ったんですが、特にハイポジションまでいっても音の太さが変わらないのが印象的でした。ヴィンテージだと高音域にいくほど鳴らなくなったり、細くなったりする個体も多いじゃないですか。それはそれで味なのですが、このモデルはそういう“アバウトさ”がなくて、ずっと同じクオリティで鳴り続ける。音に芯があってデッドポイントも少ないし、ハムバッカーのトーンも含めて使いどころがはっきりしているギターだと思います。
──American Ultra Luxe Vintage ’50s Telecaster(Butterscotch Blonde)についてはいかがでしょう?
新藤 実は、これぞ“ザ・ストラト”、“ザ・テレキャス”と言えるような王道のモデルは意外と持っていなかったんです。だから、このテレキャスを手にした時は“まさにこれだな”と思いました。色合いも絶妙で、衣装との相性も良くて(笑)。ステージで映えるのは間違いないですね。
──この2本を、ポルノグラフィティの音楽活動の中でどのように活かしていきたいですか?
新藤 フェスではリハーサルがない場合も多いので、できるだけ心配事を減らしたいんです。そういう場面では、例えば1本で幅広くカバーできるギターがとても重宝される。クリーントーンが欲しい時はフロントやセンターのピックアップを、激しい曲ではリアのハムバッカーを使う。これまではシングル系とハムバッカー系でギターを持ち替えていましたが、このStratocasterなら1本で完結する。アルペジオ主体の曲も、クランチ中心の曲も対応できるんです。タップ機能(S-1スイッチ)が実用レベルで仕上がっているのも嬉しいですね。以前は“おまけ機能”みたいなイメージがあったのですが、このモデルのタップはライヴでも安心して使える。フェスのような大舞台でも、この1本があれば安心できるのは大きな強みです。 StratocasterもTelecasterも、もちろんレコーディング現場でも活躍してくれると思いますが、ライヴではより存在感を発揮してくれそうですね。ヴィンテージのように気を遣う必要がなく、現代的な安定感があるのも魅力。そしてプロとしては“再現性”、つまり“また買える”という点も重要なんです。ヴィンテージには“二度と同じものが手に入らない”ロマンがありますが、現場では“同じものをもう一度手にできる安心感”が必要になる。そういう意味でも、このモデルは強い味方になってくれると思います。

American Ultra Luxe Vintage ’60s Stratocaster HSS(Fiesta Red)
>> 後編に続く(近日公開)
シャツ ¥41,800(税込)、パンツ ¥36,300(税込)/F IS FOR FENDER(エフ イズ フォー フェンダー)
新藤晴一
広島県因島出身。ロックバンド、ポルノグラフィティのギタリスト。
1999年、1stシングル「アポロ」でメジャーデビュー。翌年2000年7月には3rdシングル「ミュージック・アワー」をリリースし、この夏の話題曲となる。以降「アゲハ蝶」「メリッサ」「ハネウマライダー」「オー!リバル」「THE DAY」などヒット曲を連発する。
ポルノグラフィティの楽曲の作詞・作曲はもちろん、多くのアーティストへ詞の提供も行う。
また、小説『時の尾』(2010年)、『ルールズ』(2017年)を出版するなど、言葉を使ったクリエイティブな才能が高く評価されている。
2023年自身初となるプロデュース・原案・作詞・作曲を手がけたミュージカル作品「ヴァグラント」が、東京・明治座、大阪・新歌舞伎座で上映されるなど幅広い活動をしている。
デビュー25周年を迎えた2024年9月、アニバーサリーライヴ『因島・横浜ロマンスポルノ’24 ~解放区~』を広島・因島運動公園と神奈川・横浜スタジアムにて開催。
2025年4月にはNHK広島放送局『被爆80年プロジェクト わたしが、つなぐ。』のテーマソング「言伝 ―ことづて―」をリリース。
11月19日にアニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』のOPテーマ曲「THE REVO」のリリースを控える。
12月28日(日)29日(月)31日(水)に、ぴあアリーナMMにてカウントダウンライヴ『みなとみらいロマンスポルノ’25 ~THE OVEЯ~』の開催、さらに2026年には13枚目のアルバムリリースと全国ツアーの開催を予定している。
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