Cover Artist | 石原慎也&秋澤和貴(Saucy Dog) -前編-

溶け込むギターと突拍子もないギター、どっちも好きです

3ピースギターロックバンド、Saucy Dogが3年ぶりにFenderNewsのCover Artistに登場。その3年の間にNHK紅白歌合戦出演やアリーナツアーの成功を経て、大きな飛躍を遂げた彼らは現在も進化を求め続けている真っ最中だ。インタビューの前編では石原慎也(Vo,Gt)と秋澤和貴(Ba)の2人にAmerican Ultra IIシリーズを試奏してもらいながら、音楽との出会いを振り返ってもらった。


また作ってみようよ、そういう曲

──楽器を始める以前に、音楽を好きになるきっかけがあったんじゃないかと思うのですが。

秋澤和貴(以下:秋澤) うちは元々、両親が音楽好きだったんですよ。最初は“いつも何か流れてるな”ぐらいに思っていたんですけど、車でしょっちゅう聴いていたこともあって、気づいたらそれが当たり前になっていました。改めて興味を持つようになったのは中学生になってからでしたね。周りの友達はGReeeeN(現:GRe4N BOYZ)とかをよく聴いていましたけど、僕は両親から借りたMDプレイヤーを聴きながら学校に行っていました。最初は正直よくわからなかったですけど、聴いてるうちにめっちゃいいなみたいな。洋楽だと英語だから何を歌っているかまではわからないですけど、自然に入ってくる感じがあって、気づいたら家に楽器もあったのでそのまま始めた感じでした。

──MDプレイヤーにはどんな曲が入っていたんですか?

秋澤 ローリング・ストーンズとか、日本のバンドだったらTHE YELLOW MONKEYとかTHE COLLECTORSとか。

石原慎也(以下:石原) お父さんとお母さん、めちゃめちゃセンスいい。

秋澤 ありがたいことに(笑)。僕はそこからですね、音楽にハマったのは。

石原 うちも父親がちょっとだけドラムをかじっていたり、母親がクラリネットをやっていました。姉がトロンボーンで、その下の姉もトランペットをやっていて。俺が小学校に入ったら、姉たちと同じ音楽の先生だったんで、お姉ちゃんたちもやってるから入るよねって半ば強制的に金管バンドクラブに入れられたんですけど(笑)、俺もトランペットができるのかなと思ったら、男子は全員チューバって言われて、チューバをやり始めたのが音楽との出会いなのかな。最初に音楽って楽しいなって思い始めたのは中学の吹奏楽部なんですけど、中学2年の時になぜか副部長になっちゃって、副部長になったからには金賞を目指したいなってやっているうちに音楽を奏でたり、部員を引っ張っていくことの面白さを知って、それから音楽が好きになっていきました。

──吹奏楽部ではどんな曲を演奏していたんですか?

石原 クラシックももちろんですけど、町の人たちに聴いてもらう定期演奏会ではJ-POP、たとえばEXILEとかピンク・レディーとか、けっこういろいろなジャンルの曲をやっていましたね。

──その中でお2人が最初に好きになったアーティストと言うと?

石原 楽器を始めるきっかけじゃなくて、最初に“この人の歌好きだな”って思ったのは尾崎豊かな。

秋澤 僕はグリーン・デイかな。聴きやすくて。

石原 あー、確かにポップだった。

──その後、石原さんはザ・ビートルズの「ブラックバード」がきっかけでアコースティックギターを始め、秋澤さんはベースを弾き始めてからレッチリのフリーを見てカッコいいと思い、ベースにどんどんハマっていった。そんなお2人が出会いSaucy Dogとして音楽を続けてきたわけですが、活動を続ける中で影響を受けたとかインスピレーションになったとか、そういうプレイヤーはいますか?

秋澤 東京事変の浮雲さんが好きだよね?

石原 好きですね、浮雲さんのギター。“あ、それ(曲に)ハマってたんだ”みたいな変なことをするじゃないですか。星野源さんのギターも好きですね。SAKEROCKの時の。そこで鳴ってる感というか、自分の生活に溶け込んで鳴りそうっていうか。自分の中では浮雲さんとは真逆の感じなんですよね。溶け込むギターと突拍子もないギター、どっちも好きですね。マキシマム ザ ホルモンの亮君のギターも好きですね。

秋澤 上手いよね。

石原 歌いながら上手いんかいっていう(笑)。

──秋澤さんはいかがですか?

秋澤 元々はフレーズが動くベーシストが好きだったんですよ。それこそフリーとか、eastern youthの前のベースだった二宮友和さんとか、ジョン・メイヤー・トリオのピノ・パラディーノとか、ポール・マッカートニーとか、ジェームス・ジェマーソンとか。でも最近はフレーズがそこまで動かないプレイもいいなと思えてきて、その意味ではアメリカのバンドなんですけどパイングローヴのベースが面白い。ヴォーカル以外、全員がサポートみたいなバンドなんですよ。だから、ベーシストもめっちゃ変わるんです。でも、みんな似たようなプレイをするんです。フレーズもめっちゃ動くと言うよりは…。

石原 音と音の間を縫う感じだよね。

秋澤 曲も意外に難しいことをやっているので、そこに沿ってるのかなっていう。

石原 今の話を聞きながら思い出したんだけど、昔、クリープハイプのコピーをする時にリードギターがいないから、俺が下を弾いて和貴が上を弾いてたじゃん。俺たちの良さってそういうところなんじゃないのかな。ベースも動くみたいな。また作ってみようよ、そういう曲。

秋澤 そうだね。最近ちょっとそういうの忘れてたね。ベース、何であまり動かなくなったんだろう。たぶん使うコードが難しくなってきて、ベースが動きすぎるとコード感が出ないから、まずはルートを押さえないとってなったんだと思うけど。

──その一方で、石原さんはバッキングのみならずリフやソロも含め、リードギターもプレイするようになってきました。

石原 Saucy Dogの前身では、リードギターがいたからバッキングだけ練習していたんですけど、3人になってからやりたいことが増えてきたんですよ。

──なるほど。ギターとベースのアンサンブルに関しては、バンドの成長とともに今は過渡期にあると?

石原 そうですね。もうちょっと頑張りたいね。

秋澤 そうだね。


欲しいと思っていた機能が全部ついています

──さて、ここからは本日試奏していただいたAmerican Ultra IIシリーズのインプレッションを聞かせていただきたいと思います。石原さんはAmerican Ultra II Telecasterですね。

石原 まずは普通に“良いものを出してきたな”って思いました。痒いところに手が届くというか、音もいいしボディもネックも薄くて細いから本当に弾きやすい。しかも、このスイッチ(ボリュームノブ上面のS-1スイッチ)を押すと、ハムバッカーっぽい音になるじゃないですか。あと、そんなことができるんだってびっくりしたのが、トーンのツマミを10にしても、普通だったら音にちょっとエフェクトがかかって“こもる”こともあるんですけど、全然こもらない。スルーパスみたいになっていて、そういう機能ってつけられるんだって知らなかったからびっくりしました。これは本当に使いやすい。

秋澤 慎也がギターに関してそこまで言うことってあまりないんですよ。珍しいな。

石原 だから3ウェイとハムバッカーの4音も出るし、マスタートーンで音も変えられるし、ネックのサイドドットが蓄光式だからステージでも見やすいし、俺が欲しいと思っていた機能が全部ついてます。

──ルックスはいかがですか?

石原 めっちゃカッコいいです。ボディもオフホワイトというかグレーというか、俺の好みの色ですね。何かごま豆腐っぽい(笑)。

──この色はAvalancheと言うそうです。秋澤さんにはJazz Bassを弾いていただきました。

秋澤 まずは音がめっちゃいい。アクティヴとパッシヴの切り替えも音痩せがなくて、しかも手元で調整できるから、足元にエフェクターがなくてもいけるぐらい音の範囲が広いのに、変な癖があるわけでもない。

石原 エフェクターの乗りが良さそうじゃない?

秋澤 いや、もはやエフェクターが入っている感じ。だからって機械っぽいわけでもなくて、3〜4弦のミドルの鳴りもいいし初心者の人も使いやすいんじゃないかな。

──ネックはコンパウンドラジアスという加工がされていて、ナット付近では丸みを帯びているんですけど、ハイポジションに近づくとフラットになるから押さえやすいんです。

秋澤 確かにめっちゃ弾きやすい。初見でこんなに弾きやすいと思うことはあまりないんですよ。

──ルックスはいかがですか?

秋澤 あるようでなかったというか。

石原 色味が深いですよね。

秋澤 前に一度見たことがあったんですけど、色の印象が強くて記憶に残ってました。

石原 さっき撮影してもらったじゃない? 照明が当たったらまた印象が変わって、めっちゃ良かったよ。けっこう厚く塗ってそうなのに透明感があるよ。

秋澤 そうだね。そのわりに音の鳴りがすごい。弾いた時、自分の出てほしいと思っている音との誤差が少ない。だから弾きやすいのもあると思います。

──今後、どんな場面で使えそうですか?

石原 ハムバッカーの音にもなるし、ボリュームを下げても音痩せしない。極論、エフェクターが要らないっていう。普通、ボリュームを下げると音がすごく痩せるんですけど、これならクリーンのまま全然いけるし、逆にボリュームを上げると歪んでくる。ボリューム奏法というか、昔の上手いギタリストもそうやっていたじゃないですか。俺もライヴ中、そうやって演奏することが多いので、オールマイティに使えると思います。今、ハムバッカーとシングルコイルでギターもアンプも使い分けているんですよ。でも、これがあれば全曲1本でいけそうですね。

──ベースはいかがですか?

秋澤 どの曲でもいけるかな。普段、プレベを使っているのでジャズベはあまり使う機会がないんですけど、音痩せしないことも含め、基本的に音が安定しているから曲によって持ち替えてもいいかもしれないですね。レコーディングでも活躍するんじゃないかな。フェンダーさんで何回か取材させてもらってますけど、年々、ベースがすごい進化しているイメージがありますよね。

American Ultra II Telecaster(Avalanche) | American Ultra II Jazz Bass(Noble Blue)

>> 後編に続く(近日公開)


Saucy Dog
2013年結成。メンバーは、石原慎也(Vo,Gt)、秋澤和貴(Ba)、せとゆいか(Dr,Cho)。メンバーチェンジを経て2016年度 MASH A&RのオーディションでGP受賞。2017年5月、初の全国流通作品である1stミニアルバム『カントリーロード』をリリース。代表曲「シンデレラボーイ」「いつか」の MVは再生回数それぞれ1億回を突破、さらに楽曲ストリーミング総回数は16億回を突破。大規模アリーナツアーの成功や大型ロックフェスへの出演などライブ活動も勢力的におこなっており、2022年には、NHK紅白歌合戦に出演。2024年12月18日、8thミニアルバム『ニューゲート』をリリース。2025年4月より〈Saucy Dog HALL TOUR 2025〉を開催する。
https://saucydog.jp

Related posts