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Cover Artist | 片岡健太(sumika)-後編-

Jazzmasterは、自分の心にいつも衝撃を与えてくれる

2ndアルバム『Chime』以来、約2年ぶりとなるニューアルバム『AMUSIC』を3月3日にリリースしたsumika。“さまざまな人にとってのsumika(住処)のような場所になってほしい”をコンセプトに、音楽と真摯に向き合いながら、聴き手にそっと寄り添うような良質な楽曲群で、世代を超えたリスナーから絶大な支持を得ている。そんなsumikaから、ヴォーカル&ギターの片岡健太がFenderNewsのCOVER ARTISTに登場。インタビュー後編では、彼の愛機であるJazzmasterの魅力、ニューアルバム『AMUSIC』と5月から開催予定の〈sumika Live Tour 2021『花鳥風月』〉について話してくれた。


American Acoustasonic Jazzmasterを使いこなせば、今の音楽シーンに合った音を作れる

― 片岡さんはJazzmasterをメインで使っていますが、なぜJazzmasterを?

片岡健太(以下:片岡)ちょっとよこしまかもしれないけど、シェイプが好きなんです。ギターを弾きながら歌うので、弾きながら歌っている時の気持ち良さってすごく大事だと思っていて。肩から下げてギターを鳴らした時に、どういう声が出るのか。自分の体の波長と合うギターが第一なんです。ボディの厚みも含めて、Jazzmasterはそれがピッタリなんですよ。ボディの厚みもそんなにないけれど、音を太く出したい時は太く出せるし、ロックな音が欲しい時にピックアップ(ポジション)を替えるだけでいきなりキャラクターが変わる。ずっとフロントピックアップで弾いていたけど、ライヴ中でも制作の場でも、リアピックアップで弾いた時に良い意味で想像していない方向へと心を変化させてくれるから好きなんです。

― アーティストとしての衝動に応えてくれる振り幅があると。

片岡  そうですね。Jazzmasterと対バンしている感じです(笑)。もちろん、使っているアンプやエフェクターによって音も変わりますし、それが想像できない方向に転がってくれるから楽しいんです。“お前がそっちに行くなら俺もそっちに行くよ”って、逆の方向に行くこともできる。そういった意味でJazzmasterは、自分の心にいつも衝撃を与えてくれるギターですね。あと、名前の通りもともとはジャズギターとして作られたと聞いたのですが、ロック系のアーティストがこぞって使っている。意図していない方向に転がっているのが、名前からも感じられるのがいいなって。

― 今日はAmerican Acoustasonic Jazzmasterを弾いていただきましたが、いかがでしたか?

片岡  やっぱりシェイプが体に馴染みますね。まずは、持った感触がすごくしっくりくる。今って、エレキとアコギを共存させる楽曲が多い気がしていて。僕自身もそうなんですけど、曲によって“この曲はアコギでいく?エレキでいく?”と聞かれることがすごく多いんです。“どうしようかな。アコギを歪ませるか”とか、エレキをクリーンにしてもう少しアコギっぽい音に近づけて、歪みと共存させるかって悩むことが多いんです。だけど、American Acoustasonic Jazzmasterならどちらもいけるなと思っています。
 Acoustasonicに関しては、StratocasterもTelecasterも弾いているのですが、その2つに比べてAmerican Acoustasonic Jazzmasterはエレキの要素が強いですね。ピックアップもハムバッカーなので、よりエレキらしい音がします。いわゆるJazzmasterのエレキギターとしてのパンチ力もありながら、ちゃんとアコギとしても成立している。上手に使いこなせば、今の音楽シーンに合った音を作れますね。

― ライヴなどの実戦でも使えそうですか?

片岡  これをアリーナとかホール会場で鳴らしたら、どんな音がするんだろうとすごく楽しみです。

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“僕たちは音楽家です”とあらためて言うことで、今一度自分たちの存在意義を証明したかった

― さて、ニューアルバム『AMUSIC』を3月3日にリリースしましたが、タイトルにはどのような想いが込められていますか?

片岡  『AMUSIC』は造語なんです。“amusia(アミュージア)”は“失音楽”という意味なのですが、去年1年間は音楽を失っちゃったなとか、音楽から得られる感情がなくなったなと思ったところから始まったんです。だったら音楽を続けていこうよって。僕たちにとって“それは何だろう?”と思った時、人を楽しませるためのエンターテイメントを作っているのではなくて、まずは自分たちにとって音楽は楽しいもの、音楽に遊んでもらっている感覚があったんです。自分たちの娯楽であるという意味で“amusement(アミューズメント)”という言葉が出てきて。それは誰かと比較する必要はなく、唯一無二のものであることを認めようと思って、“ひとつの音楽”という意味で“a music”。その3つの意味を掛け合わせて『AMUSIC』というタイトルにしました。

― 素晴らしい!

片岡  今までは“音楽家です”と掲げた活動はそこまでしていなかったんです。ただ、2020年みたいなことがあったら、“自分は何者なのか?”って誰しもがよくわからなくなったと思うし、疑うようなこともあったと思うんです。だから、2020年を経て“僕たちは音楽家です”とあらためて言うことで、今一度ちゃんと自分たちの存在意義を証明したかった。

― インタビュー前編に出てきた、お別れ会のステージと重なりますね。

片岡  確かに!

― そこも意識なさったのかなと思っていました。

片岡  音楽をやり始めた時の話を聞いてくれなかったら、そこまで思い返すことはなかったですね。実はsumikaは2015年に一度、活動が止まったんです。声が出なくなっちゃって。大事なものが見つかるタイミングって、きっと限りなくゼロに近づいた時なんでしょうね。ゼロになりそうな時、絶望の中から急に光が見えてくると思うんです。失敗と成功、雨と晴れみたいに。それを意識できたという点で言ったら、2020年の出来事は悪かったことだけじゃないなって今は思います。

― 『AMUSIC』のレコーディングでも、フェンダーのギターは使いましたか?

片岡  めちゃくちゃ使いましたね。例えば「Late Show」のギターはゴリゴリに歪んでいて、最後はフィードバックで終わるのですが、あれはJazzmasterのリアピックアップです(笑)。エンジニアさんと話していて、“歪んでいるギターを使いたいけどこれくらいかな”という感じで音を作っていたら、エンジニアさんが“足りない!上げて!”ってずっとコントロールルームで言ってて、扱えないくらいまで歪ませました。手がちょっとでも離れたらハウる(ハウリング)んですけど、弾いててめちゃくちゃ気持ち良かったです。ライヴでもやりたいですね。

― 5月から〈sumika Live Tour 2021『花鳥風月』〉が始まりますが、有観客でのライブヴは久しぶりですか?

片岡  久しぶりです。1曲目から心が満たされすぎて、1曲目でライヴが終わるんじゃないかな(笑)。想像つかないんですよ。でも、予想外のことが起こりそうな時はワクワクにつながるし、ワクワクできるステージがあると思うだけで今はいくらでも頑張れます。

― sumikaは映像作家などを招いてライヴを制作してきましたが、〈sumika Live Tour 2021『花鳥風月』〉はいかがですか?

片岡  オーディエンスの顔を見て、僕たちの顔も見てもらって、ちゃんと目の前に人がいる体温のようなものを伝えられたらいいなと思っているんです。だから、過剰な演出は入れないつもりです。自分たちの体で戦うものをやりたいし、それを求められていると思うので、その間に挟むフィルターはあまり多くはしたくないなと。ギターで例えるなら、エフェクターをずらりと並べる感じではなく、アンプ直のフルテン!のような勝負の仕方だと思います。

― まさに“ひとつの音楽”という感じですね。

片岡  はい。音楽そのもので勝負したいですね。

― sumikaに出会って楽器を始める人もたくさんいると思いますが、最後にビギナーへメッセージをお願いします。

片岡  楽しんで弾くことです。誰かにやらされているわけではないし、楽器って楽しいものだから、楽しんで弾くことが一番だと思います。“1週間以内にFコードが弾けなかったらギターをやめる”みたいな宣言は絶対にしないほうがいいです。楽しんでいる人が一番強い。他のアーティストと対バンした時や、フェスで他のアーティストのステージを観ても楽しんでいるし、大志を抱いていようがいまいが、どちらにしても楽しんで弾くことが大事です。sumikaは難しい曲が多いですが…「ソーダ」はカポをつけると簡単に弾けると思います。バレーコードも少ないので、ぜひ楽しんでコピーしてみてください。

› 前編はこちら


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American Acoustasonic™ Jazzmaster® はフェンダーアコースティックギターの進化を加速させ、音楽をさらなる高みへと導きます。フェンダーとフィッシュマン®により共同開発されたアコースティックエンジンは、きっと素晴らしいインスピレーションを与えてくれるはずです。アコースティックのフォーキーなサウンドからエレクトリックギターのリズムトーンまでをこなすこのギターは、無限の可能性を秘め、新しい扉を開く革新的なモデルです。


sumika
神奈川県川崎市出身の4人組バンド。メンバーは、片岡健太(Vo,Gt)、荒井智之(Dr,Cho)、黒田隼之介(Gt,Cho)、小川貴之(Kb,Cho)。2013年5月に結成。アコースティック編成の“sumika[camp session]”としても活動を展開。2014年11月、初の全国流通音源ミニアルバム『I co Y』をリリース。2017年7月にリリースした1stフルアルバム『Familia』はオリコン週間チャート5位を記録。2018年4月には2nd e.p『Fiction e.p』をリリースし、オリコン週間チャート3位を記録。同年6月、日本武道館3daysをソールドアウトさせて大成功を収める。9月に公開された劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』では、オープニングテーマ・劇中歌・主題歌を担当。2020年9月、自身初のオンラインライブ〈Little Crown 2020〉を木下サーカス立川会場から開催。2021年6月2日には両A面シングル「Shake & Shake / ナイトウォーカー」のリリースが決定している。
› Website:https://www.sumika-official.com

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