Evolving Dreams Vol.1

Evolving Dreams | 中嶋イッキュウ、キダ モティフォ、ヒロミ・ヒロヒロ(tricot)

新たな時代を切り開く若きアーティストたち。進化し続ける彼らは、これまでどのような道を辿り、今どのような夢を抱き、そしてこれから何をクリエイトしていくのか。今後の音楽シーンを彩っていくであろう、等身大の表現者たちからのメッセージを、セッションを交えながらお届けする新コンテンツ“Evolving Dreams”。第1回目は、圧倒的なライヴパフォーマンスとスリリングな楽曲で、日本のみならず海外からも高い評価を得ている4人組バンド“tricot”が登場。


一人でも多くの人の人生に、楽しい時間を与えられる存在になりたい

―  コロナ禍での活動はいかがでしたか?

中嶋イッキュウ(以下:中嶋)  1年ほど前、3月14日のZepp DiverCity TOKYOでのライヴができなくなってしまったんです。それで急遽、配信に切り替えました。ツアーファイナルとそのひとつ前の2本だけできなくて。それが私たちの“ウィズコロナ”を駆使しながらバンドをすることのスタートだったのですが、それから何もできない期間があって。スタジオにも入れへんし、スーパーにしか行ったらダメっていう状況で、その間はリモートで曲作りしかしてなかったですよね?

キダ モティフォ(以下:キダ)  うん。今まではスタジオでセッションして曲を作っていたのを、リモートでデータのやり取りで作るようになりましたね。それが去年の…。

中嶋  3〜5月くらいやな。

ヒロミ・ヒロヒロ(以下:ヒロミ)  会えへんし、でも仕方ないし。やってみようかと思ったらそれはそれで新しい発見もあって、良かったこともあったかなと思います。

―  レコーディングも?

中嶋  6月の緊急事態宣言が明けてすぐに、プリプロみたいなものに1日だけ入って、翌日にレコーディングするのを繰り返して、昨年10月にアルバム『10』をリリースしました。

―  ステイホーム中、それぞれプレイヤーとしてどんな時間を過ごしましたか?

中嶋  プレイヤーとしてはメタルを弾いていました。システム・オブ・ア・ダウンがめっちゃ好きで。弾けるようになりたいと思って練習したんですけど、まだ一回もちゃんと弾けてないです(笑)。

―  キダさんは?

キダ  緊急事態宣言中の4月は何もやる気が出なくて、閉じこもっていたんです。新しい音楽を聴くでもなく、家でゲームをしたりホームベーカリーを買ってパンを焼いたり。秋ぐらいから勉強しようと思って、コード理論を勉強し始めて現在に至ります。バンドの活動ができるようになって、勉強はちょっと止まっています(笑)。

―  ヒロミさんは?

ヒロミ  時間があったから基礎的な練習をし直そうと思って、クリック練習を一人で地味にやっていました。あとは、YouTuberになりました(笑)。ゲームをしたり料理の動画を上げたり。カレーがすごく好きなので、カレーを作る動画を世に晒しています。

―  ところで、それぞれ楽器を始めたきっかけは何ですか?

中嶋  高校の時に軽音楽部に入ってバンドを始めたんですけど、軽音楽部は基本的にひとつのパートしかやったらあかんかったのでヴォーカルしかやっていなくて。高校卒業後に音楽の専門学校に入って、ギターの授業も取っていたんですけど、ギターは披露していませんでした。組んでいたバンドが解散した時に、つなぎでソロをやっていたんです。ほんまはバンドをやりたかったけど、メンバーがすぐには見つからなかったので、活動だけは止めんとこうと思ってソロ活動をしていた時、ギターで曲作りをしていたのでそのままライヴでも弾くようになったのがスタートです。tricotを始める直前なので、20歳ぐらいですかね。

キダ  私は父親が趣味でギターをやっていたので、家にアコギとエレキがあったんです。ある日、突然弾きたくなったので、CとEのコードだけ教えてもらって。あとは自力でギターを弾くようになりました。それが中学生ぐらいの時。高校は絶対に軽音楽部に入りたいから、軽音楽部がある学校を探して。それからどっぷりですね。

ヒロミ  私も軽音楽部に入りたくてその高校に行ったんです。で、軽音楽部に入部したんですけどまだ楽器を決めていなくて。ベースかギターがいいなとは思っていたんですけど、やっぱりギターはすごく人気やったんで…。ベースなら空いているし、バンドを組みやすいなとか、練習でいっぱい使えそうやなと思ってベースを選びました。それでバンドを組んで始めたのがきっかけですね。


―  フェンダーというメーカーに対してどんなイメージを持っていましたか?

中嶋  シンプルに、一番有名!

ヒロミ  フェンダーを買えば間違いない感じですね。初めて買ったベースも、フェンダーのJazz Bassでした。音の良し悪しが最初はまったくわかっていなかったので、軽音楽部のベースを弾いていた先輩に楽器屋について来てもらって、どれがいいと思いますか?って。お金もそんなになかったのでなるべく安いモデルをリクエストしたら、“フェンダーのこのベース、めっちゃいい音じゃない?”って。5万円くらいのジャズベを選んでくれて、それを買いました。

キダ  私も父親が持っていたギターがフェンダーだったので、最初に弾いたギターがフェンダーでした。それからずっとフェンダーなんです。ギターを弾き始めるにしても入りやすいし、ギターって感じの音がするんですよね。

ヒロミ  バランスがいいんですよね。初めて買った5万円のジャズベも、めちゃバランスがいい音やなって思いました。どれを買っても失敗はせんやろっていうイメージがあります。

キダ  クセがすごいギターって他のメーカーにもありますけど、フェンダーはシンプルにいい音がするギターというイメージです。

中嶋  エフェクターとかで、あとでどれだけでも好きにクセが出せますもんね。最初はわからへんから、弾いた時に強烈な個性がある音のほうがいいと思っちゃうんですけど、振り返ってみると土台がしっかりしていて、それだけでいい音が鳴るのが一番いいんやろうなって。

―  今日はMade in Japan Hybrid IIシリーズを弾いていただきましたが、いかがでしたか?

キダ  “ハイブリッド”という名前だけあって、フェンダーの歴史、昔からある伝統的なサウンドをさらに進化させているギターですね。いい部分は踏襲しつつ、ピックアップ、ネック、ペグだったりといろいろなパーツを刷新して、さらにいいものを作っている印象です。

ヒロミ  ベースもパワーがすごくあるなって思いました。音はモダンな感覚があってギラッとした感じもありつつ、ぶっ飛びすぎていないから扱いやすい。色付けも好きにできそうやなと思ったし、これから始める人にもすごくいいと思います。

―  中嶋さんはどれが気になりましたか?

中嶋  私はMade in Japan Hybrid II Telecasterがいいなと思いました。テンションが上がる音で、“ギャン!”ってくるキラキラした音がいいなと思ったのと、ドラえもんみたいな色がヤバイですね(笑)。私、ドラえもんが大好きなので、それも相まってテレキャスです。音はほんまにシンプルに一番好きでした。


evolving-dreams

ヒロミ・ヒロヒロ: Made in Japan Hybrid II Jazz Bass®、中嶋イッキュウ: Made in Japan Hybrid II Telecaster®、キダ モティフォ: Made in Japan Hybrid II Jazzmaster®


―  そして、このインタビューのテーマが“Evolving Dreams”ということで、皆さんの夢を教えてください。

キダ  私は10年以上ギターを弾いているんですけど、まだ自分が出したことのない音を楽しんで探していきたいと思っています。まだ鳴らせてない音への探求、あくまでもギターで、ギターっぽくない音でもギターで出していきたいなと。

中嶋  安易にキーボードに移行していたりして。

キダ  あははは! あくまでもギターで!

ヒロミ  10年間バンドをやってきていろいろと弾いてきたと思うんですけど、まだ自分には伸び代があると思っているので、そこを伸ばしていけたらなと思っています。あと、強い夢というよりは、ベースをこの先も弾き続けていきたいです。こういう状況ではライヴは難しいけど、それでも辞めはしない。音を鳴らし続けていきたいと思っています。

中嶋  夢というか、音楽をやる上でいつも思っていることなんですけど…私は未だにギターも下手やし、歌も下手なんですよ。生まれ持って与えられた才能が小さくても、それをできるだけ大きくして、一人でも多くの人の人生に楽しい時間を与えられる存在になりたいなと思っています。

―  では、最後にビギナーのみなさんにアドバイスを。

ヒロミ  最初は好きな曲をコピーするとか、好きなプレイヤーとかバンドマンとかアーティストの真似をすればいいんです。下手くそでもいいので。それをやっているうちに、あとから追いついてくるんですよね。自分もそうだったんですけど、頑張って技術を上げようと思っても難しかったりするんです。もちろん基礎練習も大事やと思うんですけど、最初はやりたいように、弾きたいものを弾くのが一番気持ちを保てるというか、楽しくいられるんじゃないかなと思います。

キダ  ギターを始めたばかりの人は、Fコードで挫折する人も多いと思うんです。でも、ギターっていかようにも音が作れるので、Fの押さえ方もひとつだけじゃないし、どの音も一箇所でしか鳴らないわけではないので、それっぽい音が鳴るところを見つけて弾けばいいんです。ひとつの方法だけに捉われすぎずに、自分なりに簡単な道を見つけてもいいんじゃないかなって思います。

中嶋  私はtricotを始めたのとほぼ同時にギターを弾くようになったので、もう10年くらい弾いているけど未だにFがちゃんと弾けなくて。それでもめっちゃカッコいいバンドをやっているので、ギターを持っておけば大丈夫(笑)。ギターを持って信念を持っていれば、いい感じの仲間が集まって来てくれて、カッコいいバンドができるので、いったんギターを買おう!って感じですね。たぶん私、世界一下手なギターを弾いていると思うんですけど、ありがたいことにいろいろな場所へ行かせてもらったりライヴをさせてもらっているので、ギターはドリームです!


tricot
2010年9月1日、中嶋イッキュウ(Vo,Gt)、キダ モティフォ(Gt,Cho)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba,Cho)とともに結成。2011年8月にライヴ会場および通販限定で1stミニアルバム『爆裂トリコさん』をリリースし、11月には自主企画イベント〈爆祭-BAKUSAI-〉を初開催。2012年5月には、初の全国流通作品となる2ndミニアルバム『小学生と宇宙』を発売。継続的なリリースや、大型フェスなどへの出演、海外ツアーの開催など精力的に活動を行う。2015年2月、イギリスのNME.COMで特集記事が組まれ、同年4月にはアメリカのRolling Stone.comの「あなたが知るべき10組のニューアーティスト」に選出。2017年5月、3rdフルアルバム『3』を日英米同時リリースし、国内47カ所とヨーロッパ14カ所のリリースツアーを敢行。同年11月15日、Zepp DiverCity TOKYOにて行われたワンマンライヴで吉田雄介(Dr)が加入。2019年、メジャーデビューの決定と、avex/cutting edge内にプライベートレーベル“8902 RECORDS”を設立。
› Website:https://tricot.tv

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