
Chilli Beans. | Fender Experience 2025
ジャンルや世代を超えた注目アーティストによるライヴ、名器たちとの出会い、音楽と触れ合うワークショップ。音楽、クリエイティビティ、そして人とのつながりが交錯する体験型イベント〈FENDER EXPERIENCE 2025〉が、10月11日(土)〜13日(月・祝)の3日間にわたり原宿・表参道エリアの3会場にて開催された。ここでは、11日に表参道ヒルズ スペースオーで行われたChilli Beans.によるライヴ&トークセッションの模様をお届けする。
3本のシグネイチャーモデルが描く新たな旅の始まり
表参道ヒルズ スペースオーの1日目のトリを飾ったのは、2024年2月に日本武道館公演を成功させ、勢いに乗るチリビことChilli Beans.のライヴ&トークセッション。観客の大歓声に迎えられた3人がこの日、フェンダーから3人それぞれのシグネイチャーモデルを発売したことをMCが改めて観客に知らせると、客席から再び大きな拍手が起こった。MCがシグネイチャーモデルを発売した感想を尋ねると──。
「最初にお話をいただいた時は、そんなことある!?と思いました。シグネイチャーモデルを出せるってこともすごいことなのに、こんなに早くお声がけいただけるなんてところでまずびっくりしました」(Maika/Ba,Vo)
「嬉しかったです!」(Moto/Vo)
「バンド全員でっていうのが一番嬉しいです」(Lily/Gt,Vo)

順々にその嬉しさを言葉にしていく。それぞれの特徴も気になるところ。彼女たち自身はどんなふうに考えているのだろうか? 最初に答えたのは、ビビッドなブルーのボディが映えるChilli Beans. Lily Cycloneを手に取ったLilyだ。
「ボディが小さくて体にフィットするから、楽器を弾いたことがない方でも手に取りやすいと思います。こだわったのは、プッシュ/プルのコイルタップ機能でハム(バッカー)とシングル(コイル)を使い分けられるところ。この1本でハムもシングルも体験できる。最初、ギターを買う時、ハムなのかシングルなのか迷いがちだけど、これなら手に取りやすいし、研究しがいがあると思います。(実際に音を鳴らして)ハムはちゃんとパワーもあるし、シングルはキレイな音が出るからぜひ試してみてください」(Lily)

Chilli Beans. Maika Mustang Bassの特徴は、やはりMustang BassにJazz Bassのピックアップを組み合わせたところだろう。一つの発明なんじゃないかなとMCがMaikaの発想を称えると、「今までなかったそうです。面白いねと言ってもらえました」とMaikaは顔をほころばせ、なぜ今現在メインで使っているJazz BassではなくMustang Bassにしたのかその理由を語る。
「フェンダーさんから声を掛けてもらい、初心者でも手に取りやすいものを作りたいというお話をいただいた時、もともとギターを弾いていた私にとって、最初はベースのフレット間の広さがしんどかったことや、ボディが大きくて重くて大変だったことを思い出したんです。それで、ボディが小さいほうが手に取りやすいだろうと考えて、見た目がかわいいMustangにしました。ただ、ボディが小さくなるぶん、音の重さや聴き応えがどうなるのかちょっと気になっていたんですけど、思っていた以上に太くてしっかりした音が鳴るので、すでにライヴでもたくさん使っています。お気に入りです」(Maika)

Lily Cyclone、Maika Mustang Bassと来て、Motoが手にしたChilli Beans. Moto Mustangを見て、「誰もストラトとかテレキャスとかじゃないんだね」と指摘したMCに「テレキャスは持ってるからこれにしました」と答えたMotoのシグネイチャーモデルはひと際ユニークなものになっている。
「こだわったのは、ネックのフレットに入れた音名(アルファベット表記したポジションのノート)です。自分が弾く時にわかりやすいから入れたいですと言いました。(初心者の)みんなと一緒に頑張ります。(ボディとヘッドが)真っ黒なところも魅力です。音は透き通っていて、ハイがキレイに聴こえます。安心したい人にオススメです」(Moto)

シグネイチャーモデルの発売に加え、この日、新たにフェンダーアーティストパートナーシップを結んだことも発表。今後、フェンダーはチリビの音楽活動をあらゆる側面からサポートしていく。
「信じられないことが起きています。すでに力強いサポートを感じています。これからもより一層励んでいきたいと思っています。とんでもなく光栄です」(Maika)
「頑張ります。君たちの音楽が好きだと言ってもらえて嬉しいし、私たちの音楽がちゃんと届いていると思えたので、さらに頑張ります」(Moto)
「バンドとして、こんなふうになれるなんて思ってなかったから、音楽の力ってすごいって実感しました。楽しみながら成長したいです。いい音楽を作れるように頑張ります」(Lily)
感謝とさらなる前進を宣言すると、お待ちかねのライヴがスタート。早速、それぞれにシグネイチャーモデルも使いながら、ファンキーなグルーヴとインディーロックの感性が入り混じる代表曲の数々を披露して、満員の会場を盛り上げていく。
1曲目の「See C Love」から歪みの心地良さを印象づけたLily Cycloneのエフェクターのノリの良さは、この日のライヴの新たな発見だったかもしれない。同じことを後半戦の「シェキララ」のディレイを掛けたリフからも感じたが、カッティングをはじめ、さまざまな奏法を駆使しながらLilyが奏でてみせる閃きに満ちたフレーズがより一層際立ち始めたのは、それによって音像がくっきりしたからなんじゃないかと思ったりも。



その一方で、Maikaが2曲目の「rose feat. Vaundy」で持ち替え、低音を鳴らしたMaika Mustang Bassはいきなり、さっきトークの中でMaikaが言っていた“太くてしっかりした音”の迫力をアピール。そこにつなげた、ともに8ビートのギターロックナンバー「tragedy」と「just try it」でMotoもクールなルックスがステージでより映えるMoto Mustangをプレイ。「just try it」のLilyのギターソロの裏でMotoがトレブリーに鳴らしたソリッドなコードストロークを聴き、キレイな音色だけがMoto Mustangの魅力ではないことを知る。
ムーディーな「pain」で音色を歪ませながら、Lily Cycloneで披露した弦の振動まで感じられる生々しいプレイと、ノスタルジックかつメランコリックな「Raise」のサステインを使いながらMaika Mustang Bassで鳴らした一音一音の迫力も聴きどころだった。
そして、ライヴはいよいよ大詰めに。飛び跳ねるように歌うエネルギッシュなMotoのパフォーマンスに応える観客のタオル回しが壮観だった「シェキララ」をはじめ、多くの曲でスタンディングのフロアを揺らしながら、最後はノスタルジックなメロディが胸に染みるインディーロックナンバー「ひまわり」をじっくりと聴かせ、締めくくったところからも今現在のチリビの自信が伝わってくるように感じられた。


全10曲、40分ほどのライヴで見応えは満点。ステージの3人も完全燃焼といった様子だ。エンディングを飾ったのはもちろん、3人からのメッセージだった。
「ここまで来られたのは、皆さんが私たちの音楽を聴いてくれるからこそ。なので、直接感謝を伝えたい。本当にありがとうございます」(Lily)
「この間のライヴからみんなの表情を見ると、優しい気持ちになるし、たまにうるっとします。ライヴを見に来てくれたりとか、応援しているよという言葉をくれたりとか、本当に届いているし、チリビもみんなと同じ気持ちでここにいます」(Moto)
「2人が全部言ってくれましたけど、こうして3人でバンドを続けられているのはみなさんのおかげです。本当にありがとうございます。これからも精進していきます。末永くお付き合いください」(Maika)
チリビのさらなる飛躍に期待せずにいられない。


