L’Arc~en~Ciel ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND

約2年ぶりの開催となったL’Arc~en~Cielの全国ツアー〈ARENA TOUR 2024 UNDERGROUND〉が、2月10日、11日の国立代々木競技場第一体育館2Days公演を皮切りにスタート(2月8日の公演はファンクラブ会員限定)。今回のツアーは、ライヴで披露する機会の少ない曲にスポットを当てることをテーマとしており、レアな曲の数々が観客を度々どよめかせていた。ギタリストのkenに焦点を絞り、2月11日の公演の模様をお届けする。

名曲を鮮やかに輝かせるKen Stratocaster Experiment #1

会場内に足を踏み入れて、まず目に飛び込んできたのはアリーナのど真ん中に設営されていたセンターステージ。東西南北に花道が伸び、360度が客席で囲まれているレイアウトとなっていた。ステージの真上にあるLEDスクリーンにはヨーロッパを思わせる森林、古城などの映像が流れ、雨音や雷鳴が時折響き渡る。異世界で過ごしているかのような気持ちになりながら過ごしているうちに迎えた開演。オープニング映像を経て演奏が始まると、客席からものすごい歓声が沸き上がった。今回のツアーは、久しぶりに観客の声出しが解禁されている。バンドと観客のエネルギーの交わし合いが生み出すかけがえのない空間を、開演直後からまざまざと体感することができた。

ツアーは今後も続くため、披露された曲に関する言及は最小限にとどめておくが、L’Arc~en~Cielが生み出した名曲が数限りないことを強く実感できる内容だった。そして、各曲を鮮やかに輝かせていたのはkenが奏でたギターの音色と多彩なフレーズだ。メインで使用していたのは、お馴染みのKen Stratocaster Experiment #1。オリジナルホワイトのボディとマッチングヘッドで全体の色調が統一されている中、エルボーコンターのゴールド塗装、ゴールドのハードウェアの数々がライトを浴びてきらめく様は、まさしくこのギターのデザインコンセプトである“金継ぎされた日本の陶器”を彷彿とさせる。ボディートップにはken本人の手によってSHINING HEARTの彫刻が施されていたのが印象的であった。

Ken Stratocaster Experiment #1が使用された曲を少しだけ紹介するならば、まずは2000年にリリースされたアルバム『REAL』の収録曲「a silent letter」。ライヴで披露されるのは実に24年ぶり。長尺でじっくりと展開させながら透明感に溢れた世界を描き上げるこの曲にとって、kenのギタープレイは欠かせない要素となっている。クリーントーンを基調としつつ、空間系のエフェクトで奥行きを醸し出し、繊細なピッキングのタッチで音色に添えた無数の表情。流麗なアルペジオ、抑制されたアーミングによる穏やかなヴィブラート、豊かな音の輪郭が映えるロングトーンなども効果的に連なり合う演奏だ。太いネック、バックコンターをあえてなくした剛性の高いボディに直付けされたピックアップ“V-Mod II”と“Fat 50s”、リアとフロントをミックスできるピックアップバランサーなど、こだわりの仕様を盛り込みつつも、このギターの土台にあるのはStratocasterならではの普遍的な魅力だ。低音域から中音域にかけてのバランスの良さを兼ね備えたアルダーボディー、メイプルネックの響きがとても心地良かった。

「ミライ」も今回のツアー各地で素晴らしいひと時となっていくだろう。この曲がリリースされたのはコロナ禍が続いていた2021年。観客と大合唱することをイメージしていたそうだが、理想的な形で鳴り響く時がついにやって来たのだ。観客の歌声が高まり続ける中、Ken Stratocaster Experiment #1の温かな音色が会場全体に広がっていく様は、多くの人々が音楽を共有するライヴならではの幸福を噛み締めさせてくれた。

エレキギター以外でもkenの名演が光っていた。19年ぶりにライヴで演奏された「Ophelia」のジャジーなサウンドを効果的に躍動させたのはエレガット。パーカッシヴさを随所に交えたプレイが、サックスのスタイリッシュなサウンドと絶妙に融合していた。アコースティックギターに関しては、別の曲でナチュラルカラーのAmerican Acoustasonic Stratocasterが使用された点にも触れておきたい。スタンドにセッティングしたこのギターでエッジの効いたストロークを奏でる序盤を経て、Ken Stratocaster Experiment #1でさらにシャープなサウンドを躍動させていた。

これらのギターはデジタルサウンドプロセッサーTone Master Proに接続して出力されており、Amp Headは「Tube Preamp」がセレクトされ、前後にディレイやコンプレッサーなど複数のペダルを組み合わせた専用のプリセットを切り替えることにより非常にオーガニックなサウンドを響かせていた。

kenが最近のライヴで手にするようになっているプロトタイプのオリジナルギターが数曲で使用されたのも興味深かった。Ken Stratocaster Experiment #1を土台としつつも、ボディにダイレクトマウントされているピックアップは2基のハムバッカー。ブリッジもシンクロナイズドトレモロを搭載したものではなく、アームレスのハードテイル。大胆な仕様を盛り込んだこのギターは、ハムバッカーの骨太なサウンドが活きるタイプの曲で活躍していた。Ken Stratocaster Experiment #1と対照的なブラックのボディーにブラックとゴールドのメッキが組み合わされたハードウェア、さらにはネックとボディコンターの部分が漆塗りのような光沢を放っていたのも思い出される。このギターは、今後どのように進化を重ねながら完成に至るのだろうか? 注目させられるところだ。

無線制御によって光が変化するオフィシャルグッズ“L’ライト”が広大な客席全体で明滅しながら描き上げた風景が、とても美しかった。幕間ではドラマチックな映像が観客を魅了。L’ライトの光の色を切り替えて回答するクイズコーナー“THE L’ArQuiz”でも大いに楽しませてくれた。胸躍る演出が満載されていると同時に、最高のサウンドが全編で鳴り響き続けるこのツアーは、各地の人々に夢のような時間を届けていくはずだ。

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