Stratocaster 70th Anniversary Special Event with Gyoshi × Kazuki Washiyama
Klang RulerのGyoshi(Gt)とSuspended 4thの鷲山和希(Vo,Gt)が、去る6月12日に行われた〈Stratocaster 70th Anniversary Special Event with Gyoshi × Kazuki Washiyama〉に登場。今年70周年を迎えたStratocasterを祝う、公開トークイベントの模様をレポートする。
ストラトは自分の音楽を表現するのに欠かせない楽器
今年70周年を迎えたStratocasterをセレブレートするイベントが、アメリカだけでなく日本でも開催。その第五弾〈Stratocaster 70th Anniversary Special Event with Gyoshi × Kazuki Washiyama〉が開催された。
今回は注目の若手ギタリストでありストラトプレイヤーによる対談だ。定刻の19時。Gyoshiと鷲山和希が登場すると会場から大きな声援と拍手が湧き上がった。同世代のギタリストとは言え、それぞれバンドが奏でる音は違うので異色の組み合わせだが、鷲山が開口一番「(お酒を)飲んでるGyoshiちゃんしか見たことがないので、一緒にトークするのも演奏するのも今日が初めてです」と語り、改めてレアな組み合わせにオーディエンスもワクワクしている様子。
まずはストラトとの出会いについて。Gyoshiは上京後にちゃんとしたギターを買おうと思い、渋谷の楽器屋で一目惚れしたのがこの日持参したOlympic WhiteのStratocasterだという。「もちろんローンで買いました」とGyoshiが付け加えると、会場からはどっと笑いが起きた。最初の出会いからストラトを使い続ける理由を聞かれると「ストラトって、個人的にはいろんな音が出せる一番のオールラウンダーだと感じていて。トーンを絞るとセミアコみたいな音も出せるし、クリアな音も温かい音も出せるのですごく使いやすくて、やっぱりストラトを使っちゃいますね」と答え、実際にトーンをいじりながらストラトの魅力を語ってくれた。トーンを絞った温かい音色からファンキーなハーフトーンまで聴かせ、イベント冒頭からオーディエンスをストラトの世界に引き込んだ。
一方の鷲山は、高校生の時に中古楽器店で黒いストラトを購入したのがその出会い。そのストラトは、父親が愛聴していたディープ・パープルのギタリスト、リッチー・ブラックモアへの憧憬があるという。そんな鷲山にとって、ストラトとはどんな存在なのか?
鷲山「ストラトでほとんどの曲を作っているので、自分の音楽を表現するのに欠かせない楽器ですね。リフものだったりギターを使う曲は、やっぱりストラトからのインスピレーションが好きです。つまり、自分の音ですね。あとはストラトの世界観が好き。ストラトを使ってきたアーティストの歴史も含めて」
Gyoshiと同様、鷲山がこの日持参したストラトも大切な一本。何と、東京スカパラダイスオーケストラの加藤隆志から譲り受けた一本だそうだ。2022年に発売された加藤の日本製シグネイチャーモデル「Takashi Kato Stratocaster」の一本目の試作品を譲り受けたとのこと。早速、そのストラトを弾きながら魅力を解説。いくつかのフレーズを弾いたあと、鷲山が強調したのがネックの握りやすさ。鷲山自身、ヴィンテージギターも愛用しているし実際に65年製のヴィンテージも使っているが、加藤から譲り受けた一本はリアルヴィンテージとほぼ同じらしい。
鷲山「ヴィンテージを持っている人はわかると思うけど、ネックの角が丸くアールになっていて、持った時のフィット感が自分にとって最適なんです。そこがまずは重要なポイントですね。ギターを持ち替えた時に、“他のギター来た!”って感じになりたくなかったから、そのフィット感が一番気に入っているところですね」
そこにGyoshiも反応する。「ギターを選ぶ時に最初にくるのが見た目で、そのあとは握りやすさ、弾きやすさが大事ですね。良い音でも弾きづらかったら扱えないので、そこがやっぱり大事だと思います。私のストラトも体にフィットします。そこも長く使い続けられる理由です」
二人がギターを鳴らしたことで、会場のオーディエンスも色めき立っている。そのタイミングでセッションライヴへと突入。まずは持参したストラトを使い、ミドルテンポのアーバンな曲を即興でセッションしてくれた。Gyoshiは大きな拍手の中、「緊張しました。でも皆さん盛り上げてくれてありがとうございます」と最初のセッションが無事に終わり、ホッとした様子だ。エンジンがかかった二人はギターを持ち替える。Stratocasterの70周年記念コレクションモデルだ。
Gyoshiは70th Anniversary American Professional II Stratocaster、鷲山は70th Anniversary Player Stratocasterを持って再びセッションへ。とは言え、この日二人は初めて70周年記念コレクションモデルを弾く。セッション前の試奏でGyoshiはGyoshiらしい、鷲山は鷲山らしい音を出す。さすがはストラトプレイヤーだ。あっという間に自分のものにしてしまう。しかもかなり弾きやすいらしく、Gyoshiが思わず「このギター欲しいです」と言うと鷲山が「またローンを組めば?」と突っ込んで笑いを誘い、リラックスしたムードの中、70周年記念コレクションモデルのストラトでセッションがスタート。先ほどのセッションとは違い、深みのある音でスロウテンポなブルースセッションを披露し、オーディエンスを引き込んでいった。MCが70周年記念コレクションモデルのインプレッションを二人に聞く。
Gyoshi「まずは見た目がどストライクです。色も最高ですし、ロックペグなのも安心ですね。弾きやすさという点だとネックの行き来がしやすくて、スベスベしてて滑りがすごく良かったです。音で言うと鳴りがすごく良くて、今日持ってきたストラトよりもパワーを感じました。触ったばかりですが、ライヴでもレコーディングでも使えそうです」
鷲山が「似合ってますよ。ローン決定ですね」と合いの手を入れると、Gyoshiも「真剣に考えてます」と返し、再びオーディエンスから笑いが起こる。セッションを通じて、二人のトークの呼吸もさらに合っている気がした。セッションは人と人の距離を一瞬で近づける、不思議で魅力的な行為だとつくづく感じた。
鷲山は70th Anniversary Player Stratocasterのインプレッションをこう語った。
鷲山「Gyoshiちゃんの70th Anniversary American Professional II Stratocasterと比べると、まずはペグがこのオールドタイプなのに意思を感じますね。2点支持タイプのブリッジのストラトを持っていないんですけど、これは2点支持のストラトで、アーミングがすごくスムーズ。見た目もラメが入っているのが気に入りました。あと、ふくよかなローが出ますが、ちょっとハードヒットするといい意味で止まるというか、暴れすぎない感じがいいですね」
MCが“どんなシーンや曲で使ってみたいですか?”と質問を続けると「パッセージの速い曲で救ってくれるイメージですね。速い曲、16分(音符)でバーッと弾く時、自分のダイナミクスが追いつかない時に、こいつの発音に助けてもらえる気がします」と、短い時間でも具体的な手応えがあったようで、その使用方法まで明確に答えてくれた。
二人の才能ある若きギタリストのセッション&対談で、勢いとエネルギーを感じた時間になったが、ギタリストとしてどんな夢、目標を持っているのだろうか?
Gyoshi「“実力派のギタリストと言えばGyoshi”となるように、これからシバかれたいと思います」
鷲山は「シグネイチャーのストラトをフェンダーで作るところまで、音楽的に説得力のある男になるのがいったんの夢です。“フェンダーから鷲山モデルのストラトが発売されるのはわかるわ”みたいな、みんなが納得してくれるミュージシャンになれたらと思っています」と自信に満ちた表情で語ってくれた。そして、最後に二人はすべてのビギナーへメッセージを送る。
Gyoshi「最初は全部が初めてのことだから挫折もあると思うけど、いつか弾けるようになった時はすごく楽しいので、地道に努力することも楽しんで、ギターを楽しんでほしいなと思います」
鷲山「同じギターって存在しないと思うので、ギターを一本持ったら自分の世界観が手元にあるようなイメージを持っているので、その世界観を大事にしてもらいたいですね。で、俺らよりも若い人たちとフェンダーに対する愛を語り合いたい。そんな席が空いているので。フェンダーに興味がある人は、ぜひフェンダーで自分の世界観を作り上げて、ここに来てほしいなと思っています」