Fender Flagship Tokyo Special Event with Chris Shiflett

7月28日、東京・原宿にあるFender Flagship Tokyoで〈FUJI ROCK FESTIVAL ’23〉に出演するため来日中のフー・ファイターズから、同バンドのギタリストであるクリス・シフレットを迎え、インストアイベント〈Fender Flagship Tokyo Special Event with Chris Shiflett〉が開催された。抽選に当たったラッキーな50人の観客を前に、来日エピソードやフェンダーから発売されている自分のシグネイチャーモデルについて語ったクリスはライヴパフォーマンスも披露。ちなみに、Fender Flagship Tokyoで行われる有観客イベントはこれが初。この記事ではそんな記念すべきイベントの模様をお届けする。

トークあり、ライヴあり、ミート&グリートあり。フー・ファイターズのギタリスト、クリス・シフレットによる豪華インストアイベント

「日本にはもう何度も来ているんだ。今回、10回目か11回目なんじゃないかな。初来日はフー・ファイターズのメンバーとして、〈FUJI ROCK FESTIVAL〉に出演した2000年。その時、東京・西新宿のブート盤屋に行ったんだ。噂に聞いていた通りだったよ。昔、大好きだったストレイ・キャッツやハノイ・ロックスのブート盤を探していたら、俺に気づいた店の人がフー・ファイターズのブート盤を束でくれたんだけど、おいおいって思ったね(笑)」

時差ボケがまだちょっと残っていると言いながら、Fender Flagship Tokyoのビルの壁面にあるLEDビジョンを見ている人に「ハーイ! ハラジュク!」と呼びかけ、さっそくクリスは来日時のエピソードを披露してくれた。そんな彼のプロフィールを今一度、振り返っておこう。


ギターを始めたのは11才の時だという。1995年、カリフォルニア州サンホセのメロディックパンクバンド、ノー・ユース・フォー・ア・ネームのギタリストとして、プロのミュージシャンとしてキャリアをスタートさせたのち、1999年にオーディションを経て、3代目のギタリストとしてフー・ファイターズに加入。

以来、デイヴ・グロール、2006年にバンドに戻ってきたパット・スメアとともにフー・ファイターズのギターサウンドを担い続けているが、同時にNOFXのファット・マイクらが組んだコスプレカヴァーバンド、ミー・ファースト・アンド・ザ・ギミー・ギミーズに参加したり、自らがフロントに立つジャクソン・ユナイテッドやデッド・ペザンツといったバンドを始めたりと、フー・ファイターズ以外の活動にも精力的に取り組んできた。

2012年にはフェンダーから彼のシグネイチャーモデル、Chris Shiflett Telecaster® Deluxeも発売された。それまで愛用していた’72 Tele® Deluxeのスペックを踏襲し、ハムバッキングピックアップを搭載した同シグネイチャーモデルは、まさに彼の実力と人気の証と言えると思うのだが、実はフー・ファイターズ加入後、コーチを雇ってギタープレイをいちから学び直した努力家でもある。

「初心者に使ってほしいんだ」

自分のシグネイチャーモデルを作った時のこだわりを尋ねられると、クリスはそう即答した。

「初心者にはいい音が出るギターを使ってほしいと思って、アンプにプラグインすればすぐにロックサウンドが鳴るように高出力のピックアップを載せたこのギターを作ったんだ」

そう言いながら、実際、クリスはアンプの電源を入れ、ゴールドのボディとミントグリーンのピックガードの組み合わせが映えるChris Shiflett Telecaster® Deluxeを鳴らしてみせる。アンプとThe Pelt Fuzzによって加えられた歪みの音が心地いい。クリスの音作りによるところもあるとは思うが、パワーは感じられるものの、それほどファットになり過ぎず、むしろカラッとした抜けのいい音色という印象もある。そして、見事なスウィーピングで速弾きをキメると、「楽器店で働いている友人が言ってたんだ。試奏している客が自分よりも上手い速弾きをしているのをずっと聴かされるのはたまらないって。でも、ここ(Fender Flagship Tokyo)なら(Mustang Microと)ヘッドフォンをつけて試奏できるから、どれだけ速弾きしても大丈夫だね!」とトークにジョークを交えることも忘れない。

シグネイチャーモデルの指板をフラットにした理由を尋ねられると、「チョーキングや(カントリーサウンドに欠かせない)スクリームベンディングがしやすいから」とギターを泣かせ、伸びやかなハイトーンを際立たせる。この日はイベント終了後、参加者向けに10本限定でシグネイチャーモデルの販売も行われ、購入者にはクリスとのミート&グリートに参加できるという特典も。購入を考えている人にクリスがメッセージを送る。

「まっさらな状態から、好みに応じて、どんどんカスタマイズしてほしい。自分も8本くらい持っているんだけど、それぞれに違う音にカスタマイズしているんだ」

つまり、ロックサウンドの基本中の基本と言える音が鳴るギターということだろう。MCとのトークセッションが終わると、弾き語りでライヴパフォーマンスも披露した。全曲、アコースティックギターの予定だったが、自分のシグネイチャーモデルを弾いているうちに気分が乗ったのか、10月にリリースする新しいソロアルバム『Lost At Sea』から演奏したブルージーともカントリーっぽいとも言える「Dead And Gone」は、チョーキングやスウィーピングを交えながらシグネイチャーギターをダイナミックに鳴らす。


さらに、店から提供されたアコースティックギターPO-220E Orchestra(3-color vintage sunburst)に持ち替え、19年発表のソロアルバム『Hard Lessons』からカントリータッチの「Liar’s Word」、『Lost At Sea』から切ない曲調の「Damage Control」を披露。力強いピッキングでコードを鳴らしても、アルペジオを奏でてもちゃんと聴こえる1本1本の弦の鳴りが耳に心地いい。

観客の熱心な手拍子と歓声に気を良くしたクリスは「このライヴは『Lost At Sea』のジャパンツアーの初日だ!」と快哉を叫ぶと、予定していなかったカントリーナンバー「West Coast Town」を追加で演奏して、会場をさらに沸かせたのだった。その「West Coast Town」は、17年発表のソロアルバムのタイトルナンバー。ロカビリーっぽいイントロのリフは、ストレイ・キャッツを愛するクリスならではだろう。


「ドラムもディストーションの壁もあるフー・ファイターズのライヴよりも、こういう少人数の弾き語りライヴのほうがよっぽど難しい。でも楽しかったよ!」

最後にギターを始めたいと思っている人にアドバイスを求められ、「ギターを始めるなら今がベストタイミングだ。YouTubeを見てごらん、たくさんの人がギターの教則動画をアップしているだろ」と答えたクリスは続けて、「ただし、間違ったことを言ってる人も中にはいるから、本当に上手くなりたい人はPremium GuitarのYouTubeチャンネルで俺が新たに始めたShred With Shiftyというポッドキャストを聴いてほしい。第2話はゲストにウィーザーのリバース・クオモを迎えているんだ」とちゃっかり自分のポッドキャストの宣伝も忘れない。

「なぜ、Shred With Shiftyを始めたのかいうと、ギターのことはギタリストに聞いたらいいと思ったからなんだけど、いろいろなギタリストと話してわかったのは、誰もレコーディングでどのギターを使ったのか憶えていないってこと(笑)。実際、俺も自分のシグネイチャーモデルをフー・ファイターズのレコーディングで使っているはずなんだけど、どの曲なのか憶えてないんだ(笑)」

当日購入者とのミート&グリートの様子

当日購入者とのミート&グリートの様子

Related posts