フジファブリック LIVE TOUR 2022 ~From here~

フジファブリックが、約2年ぶりのライヴハウスツアー〈LIVE TOUR 2022 ~From here~〉を開催。最終公演は、2022年7月30日(土)日比谷野外大音楽堂にて行われた。彼らは過去、2006年と2015年に野音公演を実施しており、今回は約7年ぶり3回目の野音ワンマンとなる。フェンダーのギター/ベースが全編にわたって活躍したライヴの模様をレポート。

フィエスタレッドのStratocasterで鳴らす太い音色が、ホール中に鳴り響く

定刻になるとSEとして「LOVE YOU」が流れ始め、メンバーが登場。山内総一郎(Vo,Gt)が愛用の62年製フィエスタレッドのStratocaster®をかき鳴らし、「SUPER!!」でスタートする。

続く「楽園」「東京」では、加藤慎一(Ba)の演奏がグルーヴを牽引。のちに登場する半音下げチューニングの2曲以外では、加藤は59年製のPrecision Bass®︎を使用。フジファブリックにおける彼のプレイは一聴するとシンプルだが、独特のうねりでバンドサウンドを躍動させている。この日も、力強さとふくよかさを兼ね備えたPrecision Bassの音色がアンサンブルの基盤を担っていた。また「スワン」では、金澤ダイスケ(Kb)のダイナミックなキーボードのサウンドとともに、山内のStratocasterによる美しい音色が響く。

会場の熱と気温の暑さをかけて、“今日はアツいぞ!”と声を上げた金澤。山内は今年デビュー18周年を迎えたことについて触れ“18年、20年、25年、30年、その先無限大に、ここからみんなと一緒に始めていきたいと思って付けたツアータイトルです”と、〈From here〉というツアータイトルに込めた思いを述べた。

そして、18年前にリリースしたメジャーデビュー曲「桜の季節」を披露。54年製Telecaster®︎による温かく歯切れの良いサウンドが山内の歌を後押しし、楽曲に花を添える。「徒然モノクローム」では、エネルギッシュなベースサウンドがノリを創出。音が響きにくい野外でも、加藤のPrecision Bassの豊かな音色は会場後方までしっかりと届いていた。

さらに、2006年と2015年にも野音を盛り上げた「モノノケハカランダ」を演奏。タイトなベースや、サポートドラマーの玉田豊夢による性急なビート、Stratocasterの鋭いサウンド、緊迫感のある鍵盤の音色でフロアを沸かす。ギターソロでは、サスティンを活かした粘りのあるサウンドが会場の熱気を煽り、さらに山内が背面弾きを行う場面も。4人のキレのあるパフォーマンスが生み出すヒリついた空気に、観客は大いに熱狂していた。

次のセクションになると、穏やかな楽曲によって会場はしっとりとしたムードに。「Water Lily Flower」では、Telecasterのきらびやかな音色に山内のヴォーカルと、加藤・金澤によるコーラスが融和。美しいアンサンブルが夕暮れの日比谷に響いていく。演奏と環境音との融合も野外ライヴの魅力の一つと言えるが、「透明」では蝉の声にパーカッシブなベースと柔らかなギターの音色が呼応し、優しく切ない空気を生み出す。山内も“今日はセミとセッションしているみたいですね(笑)”と笑顔を見せた。

日が暮れ始め、外気の暑さがピークを去った頃、「若者のすべて」を披露。演奏が始まると、歌詞の情景とリンクするように涼しい風が会場を吹き抜けていく。この曲では、山内はメイン機の62年製を元にマスタービルダーのジェイソン・スミスによって製作されたフィエスタレッドのStratocasterを、加藤はもう一本の70年代製Precision Bassを使用。ノイジーなギターや芯のあるベースの音色がノスタルジックな空気感を演出していた。

その後はメンバー紹介を経て、金澤が“20周年に僕たちフジファブリックが一体どんなステージに立っているのかまだわからないけれども、今のこの瞬間を僕たちみんなで大切にして、20周年の新たなところにつなげていきたいなと思います”と、意気込みを語る。

あたりが暗くなり、まばゆい光がステージを包む中で演奏されたのは「STAR」。2011年に発表されたこのナンバーは、3人体制となった彼らの決意と覚悟が込められていて、バンドの軌跡を語る際に欠かせない曲だ。山内はStratocasterを力強くかき鳴らしながら高らかに歌い、金澤による流麗な鍵盤の調べがアンサンブルを彩り、加藤のベースサウンドが疾走感をもたらす。その雄大なパフォーマンスは、本公演のハイライトと言っても過言ではない。

後半では「LET’S GET IT ON」を皮切りに、アッパーチューンの連続で畳みかける。コード弾きのメリハリが効いた音色や、ソロでの輪郭のハッキリとしたサウンドなど、山内の情熱的なプレイはStratocasterの幅広い音のキャラクターを引き出していた。「Feverman」では観客が踊り出し、客席は夏祭りのような様相に。加えて、金澤が駆け巡るような鍵盤さばきで魅せる「電光石火」「星降る夜になったら」と続き、会場はさらにヒートアップしていく。

この数年で日常の様相は大きく変化した。日常の中のものを音楽に昇華しているフジファブリックも、さまざまな思いを持って今回のツアーに臨んでいるはずだ。しかし、MCで彼らが語ったのは“かつての日常に戻りたい”という願いではない。更新されていく毎日をファンとともに歩み、ここから新しい光を作っていきたい――ステージでそう語った彼らは、リスナーに寄り添いながら、常に前を見据えている。

「ちょっと不穏な時に、自分の心の居場所がないと感じる瞬間がある人も、もしかしたらいるかもしれない。でも、今日来てくれた野音であったりフジファブリックの音楽が、あなたにとっての心の居場所です。僕らフジファブリックは、あなたの心の居場所をこれからずっとずっと作り続けていくと約束しますので、また会いに来てください」(山内)

そして“この先のあなたの未来に光があることを願って”という山内の言葉から「光あれ」を披露。希望を感じさせる温かなサウンドで会場を包み込み、本編を終えた。

アンコールでは、日常や生きることへの慈しみが表現された「LIFE」から、ラストは過去2回の野音公演でも演奏した「虹」。山内はAmerican Vintage Telecasterのボディと62年製Stratocasterのネックを組み合わせた白いTelecasterを軽やかに奏でる。エッジの効いた明瞭なギターサウンドが楽曲の情景を豊かに表現し、金澤が奏でる粒子感のあるシンセの音色や、加藤によるPrecision Bassの骨太な音色が、バンドサウンドを有機的に仕立てる。アウトロではソロ回しを行い、最後まで熱量の高いパフォーマンスを見せてライヴを締めくくった。

さまざまな時期の楽曲を散りばめたセットリストで魅了した、通算3回目の野音ワンマン。多くの出来事や葛藤を乗り越えてきたこれまでの歩み、バンドとして成熟している今現在の姿、そして2年後のデビュー20周年に向けた未来への一歩と、楽曲とともにバンドの道のりや彼らの想いが伝わってきたライヴだった。

All photo by 森好弘

【SET LIST】
SE.LOVE YOU
1.SUPER!!
2.楽園
3.東京
4.スワン
5.桜の季節
6.徒然モノクローム
7.モノノケハカランダ
8.Water Lily Flower
9.透明
10.若者のすべて
11.STAR
12.LET’S GET IT ON
13.Feverman
14.電光石火
15.星降る夜になったら
16.光あれ

ENCORE
17.LIFE
18.虹


フジファブリック:https://www.fujifabric.com/

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