
Fender Flagship Tokyo Special Event with Shigeru Suzuki
日本製の新シグネイチャーモデル、Limited Shigeru Suzuki Stratocasterの発売を記念し、その購入者だけが参加できるスペシャルイベントが開催された。鈴木茂本人が、長年の愛器である62年製のストラトを基にした“理想の一本”の秘密を語り、多彩なエフェクターでその音色も披露した一夜をレポートする。
62年製のオリジナルストラトのウィークポイントを解消した理想の一本です
この日は5月13日に発売されたシグネイチャーモデル、Limited Shigeru Suzuki Stratocasterを記念したイベント。実はこの日の昼間、「Fender Radio Tokyo」の公開収録にも登場した鈴木茂。ラジオでもこのLimited Shigeru Suzuki Stratocasterについて話してくれたが、このイベントではさらに踏み込んだトークが展開された。というのも、本イベントの来場者はLimited Shigeru Suzuki Stratocasterの購入者限定。このギターを手にしている方に向けてということで、トークもディープに。購入者だけあって、会場の熱気は開演前からすごかった。
定刻の18時。MCのコールで鈴木茂が登場すると、大きな拍手が湧き上がる。登壇した鈴木も満面の笑顔で拍手に応える。


まずは近況報告からスタート。鈴木は現在、アルバムを制作しているそうで、その内容についてかなり詳しく語ってくれた。すでに5~6曲はまとまりつつあること、その中にバースデーソングがあること、さらにクリスマスソングも作っていることなどを教えてくれた。発売時期はまだ決まっていないそうだが、「できる限り10曲揃えてリリースしたい」と意欲を見せると、会場からは大きな拍手が。発売が今から楽しみだ。
続いては本題のLimited Shigeru Suzuki Stratocasterについてのディープトークへ。まずは本モデルの開発の経緯から。鈴木茂と言えば、62年製のFiesta RedのStratocasterがトレードマーク。その復刻版が、はっぴいえんど結成50周年のタイミングとなる2020年にFender Custom Shopから発売されたことは、ギターファンにはお馴染みの情報だろう。鈴木自身も「2020年のシグネイチャーモデルもとても素晴らしい出来で、たくさんの方に喜んでもらえました」と満足そうに振り返る。


鈴木は続ける。「ただアメリカ製だったので、どうしても値段が高くなってしまって、最終的には80万円台に。そうなると学生さんとかにはなかなかオススメできなくて。でも今回、フェンダーの方から“日本製でもう一度シグネイチャーモデルを出しませんか?”と言われて。どれくらいの値段を想定しているのか聞いたら30万円台だと。それなら前回購入できなかった方も購入できるなぁと思って。で、やると決めたらフェンダースタッフもかなり気合いが入って、今回も素晴らしいものが出来上がっています」と再び満面の笑顔。では、今回のLimited Shigeru Suzuki Stratocasterはどんな特徴があるのだろうか。そもそも…と鈴木が語り出す。
「長年愛用している62年のストラトは、音が浮き出てくるところがすごく好きなんだけど、どうしても低音が少なかったの。だから、コンデンサーや弦のゲージを変えたり、あの手この手で低音を上げてきたんです。今回のシグネイチャーモデルではピックアップの巻き数を変えることで低音が上がっていて、ローもしっかり出ています。ただ、低音を上げるとハイが埋もれてしまっていたんです。でも今回はブラックビューティーというコンデンサーを積んでいるので、ローが出ていてもハイが埋もれない。62年製のオリジナルのウィークポイントを解消した、理想の一本です」
そう話すと、ステージに置いてある実機を手に取り、実際に音を出しながらその感触を来場者に伝えてくれた。
その後も、鈴木はLimited Shigeru Suzuki Stratocasterへのこだわりを次々と挙げてくれた。ネックは弾きやすさを追求してラウンドネックに。ボディはオリジナルと同じアルダー素材。フレットも日本製。ボディカラーのFiesta Redは、自身が所有する62年製のボディ裏側の蓋を外したところに残っていた、経年変化する前のオリジナルカラーに合わせるなど、そのこだわりを嬉しそうに語ってくれた。


いよいよ演奏タイム。用意してきたエフェクターを一つひとつ説明し、それらを使いながらピックアップを切り替え、さまざまな奏法で短いフレーズを弾いて多彩な音色を来場者に届けていく。その音色に、オーディエンスも真剣に耳を傾けていた。鈴木が奏でた音色・設定のすべてを紹介することはできないが、彼がストラトらしさとして特に推していたのが次のポイントだ。
「ストラトの優れたところはいろいろあるけど、音の魅力としては、空間系のエフェクターを使った時に出る、鈴なりのような軽やかで美しい世界にあると思っていて。今回のシグネイチャーモデルでは、ピックアップをフロントとセンターの間のハーフトーンにして、空間系のエフェクターをかましてアルペジオで弾いた時に、その魅力を堪能してもらえます」
実際にその音色で演奏してくれると、オーディエンスはその美しき世界に魅了された。
さらに、オーディエンスからのQ&Aにも答える鈴木。さすがに購入者だけあって、かなり踏み込んだ質問がいくつも飛んだが、演奏を交えながら熱心に答えるその姿は、最高のギタリストであると同時に、素晴らしいギター伝道師のようでもあった。
締めにLimited Shigeru Suzuki Stratocasterを購入してくれた来場者へ向けてメッセージ。満面の笑顔で「ローも充分に太い音が出るようにしてあるので、弦のゲージを太くする必要もありません。だから、力を入れ過ぎずに演奏してください。無理な演奏をしていると、あとから大変なことになるので。あとは、エフェクターなどを使って、自分の好きなストラトらしい美しい音作りを楽しんでください。僕も楽しみます」と語り、イベントはクローズした。来場者からの拍手は、鈴木の姿が見えなくなってもしばらく続いていた。

鈴木茂
51年、東京都⽣まれ。68年にスカイを結成しプロデビュー。69年、細野晴⾂に誘われ、松本隆、⼤滝詠⼀とヴァレンタイン・ブルーを結成。翌年、バンド名を”はっぴいえんど”と改名し、アルバム『はっぴいえんど』でデビュー。アルバム『⾵街ろまん』、『HAPPYEND』を残し、72年末に解散。74年、単⾝L.A.に渡りソロアルバム『BAND WAGON』を完成させる。帰国後ティン・パン・アレーのメンバーとして数多くのセッション活動を重ね、ソロとしても7枚のアルバムを発表するかたわら、スタジオワーク、ライヴサポート、アレンジャー、プロデューサーとしても活躍。2000年、ティン・パン・アレーのメンバーだった細野、林⽴夫とともにTin Panを結成し、アルバム『Tin Pan』をリリース。2019年に活動50周年を迎え、現在も伝説的ギタリストとして幅広い世代からリスペクトされている。
http://suzuki-shigeru.jp

