Cover Artist | adieu(上白石萌歌) -前編-

好きなアーティストと同じコードを押さえるのって、こんなにも幸せなことなんだ

FenderNewsが毎月一組のアーティストにフォーカスする「Cover Artist」に、adieu(上白石萌歌)が登場。現在はTelecasterを手にステージに立つ姿も印象的な彼女。前編では、音楽の原体験や、エレキギターとの出会いがもたらした変化、2026年限定モデルのMade in Japan Hybrid II 2026 Collection Jazzmaster Misty Satinのインプレッションについて話を聞いた。


気づけば毎日ギターを触るようになりました

──まず幼少期の音楽体験について伺いたいのですが、萌歌さんは音楽が身近な環境で育ったんですよね。

adieu そうですね。母が小学校の音楽の教師をやっていたので、生まれた時からピアノの音色が日常の中にありました。一瞬ピアノを習った時期もあったんですけど、あんまりじっとしていられなくて、歌うほうが好きだなと思って(笑)。私も姉(上白石萌音)も、幼い頃からずっと歌を歌っていました。

──特に強く印象に残っている出来事はありますか?

adieu 幼少期の体験で色濃いのは、3年間メキシコに住んでいた時に触れたマリアッチ(メキシコ民俗音楽)の文化ですね。食堂でごはんを食べていたら、その場にいた人がふと歌い出したり、マリアッチの楽団が演奏したりする環境に身を置いていたので、ずっと音楽が身近にありました。日本とはまったく違う音楽カルチャーに触れられたのは大きかったです。
あと、初めて行ったライヴがポリスだったのも、今思うとすごいことだなと思いますね。その時もメキシコに住んでいて、父が好きだったので、家族全員で観に行ったんですよ。私が小学校2~3年生の頃でした。そういった経験が今の音楽愛につながっているのかなと思います。

──その他にも、ルーツとして挙げているアーティストはUKロックが多いですが、好きになったきっかけは覚えていますか?

adieu 映画の劇伴の中にザ・キュアーの曲があったのが、UKロックに目覚めたきっかけですね。そこから徐々に掘っていったので、映画からの影響は大きいかもしれないです。最近も『汚れた血』のリマスター上映で、デヴィッド・ボウイの「モダン・ラヴ」を映画館で浴びて、“こんなにシビれるサウンドってあるんだな”と思って。映画世界と音楽は自分の中で強く結びついています。

──さまざまなアーティストのライヴに足を運んだり、本当に音楽がお好きなんだろうなと思います。最近はどんな音楽を聴いていますか?

adieu 最近はインスト系をよく聴いていて、チャーリー・マーティンが好きです。ピアノやギターを弾くアーティストで、彼の『music for 2 pianos』を家でずっと聴いていますね。あと、クレイロもすごく好きです。衣装を選ぶ時も彼女のスタイルに影響を受けることが多くて、憧れている同世代のアーティストなので、いつか海外遠征してライヴを観たいなって。

──クレイロはギターを持った佇まいも目を引きますからね。萌歌さんは、いつからギターを始めたんでしょうか?

adieu adieuの立ち上げは当初匿名で活動していたんですが、(正体を明かして)活動を本格的に始めた2019年頃から、ギターを持つイメージも元々あったので練習するようになりました。最初はアコースティックギターを弾いていたんですけど、なかなか上達せず(笑)。でも、基本的なコードを押さえるだけで“好きなアーティストと同じコードを押さえるのって、こんなにも幸せなことなんだな”って思いましたね。その頃から、ギターを持って歌うことへの憧れが芽生えていました。

──どんな練習をしていたんですか?

adieu ギターのレッスンを受けたり、好きな曲のコードを調べて弾き語りしたりしていました。カネコアヤノさんが自分の中で歌のミューズみたいな存在で、まだ小さなライヴハウスでやっている時から足繁くライヴに通っていたので、自分でも弾いてみたり。彼女が弾き語りしている姿を見ていると、“身一つで音楽を表現できるってなんて素敵なんだろう”と思って。私がギターを始めた最初の衝動は、カネコアヤノさんの弾き語りスタイルから生まれたものだったと思います。

──当初はなかなか上達しなかったとのことですが、どんな部分でつまずきましたか?

adieu “Fは大きな壁だ”っていろんな人から聞いていたんですけど、自分もそこでつまずきました。セーハ系のコードはなかなか音が鳴らないし、音が鳴らないと楽しくなくなって、しばらくギターに触れなかった時があって。でも、エレキギターがその壁を軽々と越えさせてくれました。ファーストエレキのPlayer II Telecasterは弦高も低くしてもらって弾きやすいので、それまで弾けなかったコードも押さえられるようになって。このギターに出会ってから、気づけば毎日ギターを触るようになりましたね。家で弾く時はFender Toneというアプリを使っているんですけど、幅広い音が試せるので重宝しています。楽器があると自然と日常に音楽が溢れますし、最近やっとギターが楽しくなってきました。


新しい領域に挑戦するという意味でMade in Japan Hybrid II 2026 Collection Jazzmasterを選びました

──Player II Telecasterのお話は後編(近日公開)で詳しく伺うとして、今回Made in Japan Hybrid II 2026 Collection Jazzmaster(Misty Satin)を選んだ理由をお聞きできればと思います。

adieu 実は4月に商品情報がリリースされた時から、ずっと気になっていたモデルで。Yellow Mistの淡い色合いは今まで見たことがなかったですし、すごくかわいいなと思いました。あと、テレキャスを一緒に選んでくれたReiちゃんに相談したら、“Jazzmasterは違うギターの世界を知ることができるし、一つ持っておくと新しい武器になるんじゃないか”みたいなことを言ってもらえたので、また新しい領域に挑戦するという意味で、このギターを選ばせていただきました。

──サウンドの印象はいかがですか?

adieu (実際に音を奏でて)あー、深いですね。テレキャスはキラキラしたブライトな音なんですけど、これはより深い音で、特に重低音がおなかに響きます。骨太だけど温かみもあって、ドシンとした芯のある音ですね。包容力や安心感があります。

──浮遊感のあるadieuの歌声に、このギターの深みのあるサウンドは合いそうですね。

adieu そうですね。音がずっしりしているので、弾き語りとか、adieuの楽曲ならちょっとポップな曲で弾いてみたいです。今試し弾きしただけでもテレキャスとまったく違う音の印象を受けたので、これを持つと挑戦したい曲の領域が変わってきそうだなと思いました。

──ちなみに、ギターを弾くようになって、ご自身のパフォーマンスに変化はありましたか?

adieu 歌だけを歌っていた時は、どうしてもバンドメンバーの皆さんに“自分のサウンドを奏でてもらっている”という感覚があって、“これでいいのかな”と思っていたんです。でも、ギターを持つことで、ちゃんと自分がバンドの中にジョインできている感覚が濃くなりました。2026年5月のライヴでも、自分史上最多の7曲ほどギターを演奏したんですけど、グルーヴ感覚が増したというか。歌だけだと歌いづらいと思っていた曲も、ギターを奏でながら歌うことで歌いやすく感じるので、前とは違うパフォーマンスができている気がしますね。あと、バンドメンバーと対等に話せるようになったし、ギターを介して人とコミュニケーションを取れる機会が増えました。

──幼少期のピアノはもちろん、役作りで金管楽器や三線などの経験もあり、いろんな楽器に触れていますよね。その中で、ギターってどんな楽器だと感じますか?

adieu 今までやってきた中でも、一番歌に寄り添ってくれる楽器だと感じます。やればやるほど自分の体の一部のように一体化してくる感覚があって。もちろん難しさはあるし、まだまだ知らない深い領域もあるとは思うんですけど、触れやすいし、どこにでも持っていきやすいです。そういった意味では、ギターっていろんなところに連れていける相棒みたいな存在ですね。

Made in Japan Hybrid II 2026 Collection Jazzmaster Misty Satin(Yellow Mist)| Player II Telecaster(White Blonde)

>> 後編に続く(近日公開)


adieu(上白石萌歌)
2000年2月28日、鹿児島県生まれ。adieuは様々なクリエーターを巻き込み上白石萌歌が表現する音楽プロジェクト。2017年、映画『ナラタージュ』の同名主題歌シングルでデビュー。“時を止める歌声”と称されるその歌声で広く支持を集め、2019年にadieu名義での音楽活動を本格始動。以降、ミニアルバム『adieu 1』〜『adieu 4』を重ね、国内外のライヴ活動も精力的に展開。2025年には香港の音楽フェスに招聘されるなど活躍の幅を広げ、2026年4月には最新EP『adieu 5』をリリースした。
https://www.adieu-web.com/

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